■スポンサードリンク


蟻の棲み家



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
【この小説が収録されている参考書籍】
蟻の棲み家
蟻の棲み家 (新潮文庫)

蟻の棲み家の評価: 3.04/5点 レビュー 48件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.04pt


■スポンサードリンク


Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全48件 41~48 3/3ページ
<<123
No.8:
(5pt)

凄まじい世界が広がっている。

強烈な社会派サスペンス。
前半部分の「これでもか」っていうほどの前ふりが後半で開花する。
読み進めるほどに、無惨な光景が広がってくる。
それが当たり前の事実のごとく表れる。
どうもがいても這い上がって来れない環境の中。
そこでも必死になって生きている。
這いずり回り必死に生き抜く環境では、生きるべく行為は”悪”といえるのか問いかけていく。
ひとは見かけだけで、ひとの哀れを感じているのではないか。
慈善活動よりもやることがあるのではと、社会に問いかけている。
蟻の棲み家 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蟻の棲み家 (新潮文庫)より
4101033412
No.7:
(5pt)

もう全てを電子化に。この本も頑張って読んで視力が落ちた。

どうしようもない環境や、選べない道や道徳など、なんの足しにもならない希望など、ない人達は、確かに存在しているし、生きていこうとしている。悪循環の迷路の中で、孤独で、死と背中合わせで。この筆者は、真っ直ぐに偏見なくいろんな人を見る。色眼鏡ではなくて、そこが世論の見方のお手本のように。木部シリーズにはまり読みたいが、そろそろ単行本の字も読めなってきた。電子書籍にしてもらわないと、もう好きな読書もできない。紙媒体は大切だろうが、読む人達の事も考えて欲しい。いつかは全て電子化されるのだから。
蟻の棲み家 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蟻の棲み家 (新潮文庫)より
4101033412
No.6:
(5pt)

自分自身に突き付けられる現実と怖さ

貧乏ではなく貧困。
日雇いではなく非正規労働。
しつけではなく虐待…。
昔も良く耳にした数々の言葉が、現代風に置き換えられ、
日々メディアで流されるフレーズとしてこの本の随所にあって、
小説なのか現実なのかわからなくなります。
昔からあったはずの貧乏や不安定な労働環境や暴力が、非日常ではなく日常として私たちの周囲に存在し、
ふと気づくと、それらの悲惨さや凄惨さに慣れていく自分がいる、その恐ろしさ。

小説の中で、事件を話題にする会話を弾ませながら待ち合わせ場所に急ぐ人々が登場しますが、
まさにそこに自分の姿を見た気がしました。
半ばから、犯人が分かってしまったのですが、それでも犯罪を起こさざるを得ない切羽詰まった犯人の苦悩に
圧倒され、殺人=悪とは思えなくなってしまいました。
美智子が最後、どんな行動を取るのか、が私にとっての最大のハラハラドキドキでしたが、
私ならこうする、という結果だったことが、たくさんの重い課題を残しつつも少し気持ちが和みました。

これは映画化したらきっと安っぽい内容になってしまうのでは…とも思わせました。
何故だかはわからないけど。
蟻の棲み家 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蟻の棲み家 (新潮文庫)より
4101033412
No.5:
(5pt)

リアルなフィクション

児童虐待家庭を生き延びた子ども=サヴァイヴァー。おとなになったサヴァイヴァーが犠牲者であり、
加害側にもかかわる、そんなストーリー。

事件や人物の背景として、サヴァイヴァーの境遇の描写は避けられないが、
その悲惨さを殊更に訴えることなく、抑制の利いた筆致でストーリーに沿って淡々と描き出している。
近年、児童虐待による幼い死が報道されることが多くなり、テーマに扱うルポルタージュの類も出版されて、
従来そんな世界とは縁のなかった読者もその実態の一部を垣間見ることができる。
それらから窺い知る詳細からすれば、本作におけるサヴァイヴァーの境遇の描写は、
かなりソフィスティケイトされたものと言えるだろう。
だがその描写が抑制されたものであることが逆に、子どもたちのすぐそばに
日常的に死が横たわっていることを想像させ、成長の過程で彼らが犯罪の隣に常にあることを
説得力を持って明らかにし、ストーリーに一貫したリアリティをもたらしている。

一方で、彼らに差し伸べられる周囲の温かさが、ささやかな抵抗など顧みられることなく
なりゆきのまま闇の底に沈んでいくしかない彼らをその一歩手前にとどまらせる「最後の救い」として、
随所に描出される。
それは幼い末男を見守る商店街のひとびとであったり、高校生の末男に前科をつけさせないために
奔走する教師であったり、あるいは、木部美智子の末男に対する、無暗な同情を伴わない
ぶっきらぼうとも思える、だが実際は末男のことを真摯に知ろうとする態度であったりするが、
なによりも作者自身のサヴァイヴァーに向ける視線が温かさを持つものだからこそ
そうした温かさを含んだ本作が生まれたのではないか。
その象徴が、谷底から這い上がった先から末男が見る「青い空」である。
末男の記憶の中にはいつも、子どもの頃に見た青い空があった。

ここで描かれる「温かさ」は、サヴァイヴァーの境遇にとってはいずれも微々たるものでしかなく、
一瞬の救いではあるかもしれないが、救済にはなっていない。
被害者の女性二人は幼い子どもを残して殺されたし、末男の隣にはこれからも一生、犯罪の影が
ぴったりと付きまとっているだろう。
そういった意味で、「身も蓋もない」話ではある。
その自分たちの境遇の身も蓋もなさへの苛立ちが、末男に「死んだ女のことをちゃんと報道しろ」と
言わせたのだろう。同情ではなく、上っ面だけの理解したふりでもなく、ただ被害者やおれの置かれた状況を
ちゃんと知ろうとしろ。

一見、殺人事件とは無関係と思われた恐喝事件から始まった木部美智子の地道な取材の結果として、
最後にすべての真相が明らかになるが、そこで「正義」が行なわれるわけではない。
現実の社会において「正義」を標榜するのがジャーナリストだが、木部美智子は「正義」ではなく、
「知ること」を求めた。そしてそれこそ、末男が望むものだった。

本作に「正義」への快哉はないが、罰せられるべきが罰せられたことへの安堵、
昏い達成感とでも呼べる感情が読後に残った。
作家の著作を読むのはこれが初めてだったが、俄然、木部美智子に興味が湧いてきた。

冒頭の舞台となる地域の描写は、具体的にその界隈を知るわたしにとって、まさに「そのまんま」であり、
読み始めからあまりのリアルさに軽くのけぞった。
本作のリアリティをそうした舞台の土台が支えてもいることを付記しておく。
蟻の棲み家 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蟻の棲み家 (新潮文庫)より
4101033412
No.4:
(5pt)

平等を謳う社会が抱える闇。

ネットの紹介記事を見て即座に購入。翌日には7000円に高騰してました…年始ですが、出版社さん、重版急いで下さい。

「未婚の母子家庭」「子を捨てる母親」「ネグレクト」などを、きれいごとでなく切り込んでいて、胸が痛くなりました。
世間にも、親にすら見捨てられた被害者達。ある人物には、支援してくれる人達がいた。それでも……。
答えのない問題を突き付けられた気持ちです。お金があれば救われる人達、愛情さえあれば満たされる人達がいる。だけど金銭と愛情に満たされていても、どうしようもない人達もいる。
マスコミや「普通の人達」より、裏世界の人達、例えばキャバクラの雇われ店長や街金の男。彼らの方が、どこか人間味があったりする。あくまで小説だから、そんなキャラ付けされているだけだとわかっていても、緻密に組み立てられた作品の中では、説得力がある。
読んでよかったと思います。2000円の価値は十分にありました。
蟻の棲み家Amazon書評・レビュー:蟻の棲み家より
4103521910
No.3:
(5pt)

緻密な描写に圧倒される

私自身は日本の貧困の状況についてはWEBで見た知識しかないので,作者の描く世界が真実なのかどうかはわからない.しかし,圧倒的な描写力で,ありありとその世界を構築し,その世界に引きずり込まれて,一気に読んでしまった.
親として身につまされるラストも秀逸.
蟻の棲み家 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蟻の棲み家 (新潮文庫)より
4101033412
No.2:
(5pt)

主人公の木部さんが自然体で好感が持てます。

最近「アンダークラス」という言葉を知ったのですが、新しい下層階級のことなのだそうです。低賃金でも正規雇用であるならそれなりに収入が安定しているが、非正規労働者は正規雇用されることもなく、貧困に沈み、その子供達も貧困ゆえに生活環境、教育などに支障をきたし、正規雇用され安定した生活を送るという日の当たる世界に移ることができない。
 本書でもそういう人達が登場します。貧困の連鎖。虐待の連鎖。主人公の木部美智子は事件の調査を進めていく中で、「人間の尊厳の底を掃き集めているような気がした」と述べています。また、一般的な社会常識や善悪を学習せずに育ち、「自分が被害者なのか加害者なのか、わかってないのかもしれない」とも。
 しかし本書は、そのような状況の悲惨さばかりことさら強調するわけではなく、本の帯に書かれているように「淡々とした筆致で」話が進められていきます。

 ヒロインの木部さんは、特に若くもなく、美人でもなく、華やかな経歴でもなく、おしゃれというわけでもなく、しかし真面目で堅実で頭の回転も速く、男に媚びることもなく、かと言ってやたら張り合うこともなく、ごく自然体で対等に仕事をこなす、そんな人です。男性読者には物足りないかもしれませんが、同じ女性としては好感の持てるヒロインです。
 話の内容も、主人公も、良い意味でさっぱりと乾いた感じで、読後に余韻は残りますが、嫌な後味は残らない。そんな感じの作品でした。
蟻の棲み家Amazon書評・レビュー:蟻の棲み家より
4103521910
No.1:
(5pt)

歳をとらない木部美智子

久しぶりに木部美智子が登場する。やあ、木部さん元気でしたか、と挨拶したくなる。彼女は「電車の中を見回せば一人はいる女性」だが、事件に素直に立ち向かう。衒いや傲りはない。だから、この作品のような「えぐい」世界でも、読者はすっと入って行ける。ミステリーとしては、ラストが一級品。探偵が美智子でなければこんなオチにはならなかっただろう。
それにしても、デビュー作以来、約20年。美智子は歳をとらない。不思議だ。
蟻の棲み家 (新潮文庫)Amazon書評・レビュー:蟻の棲み家 (新潮文庫)より
4101033412

スポンサードリンク

  



<<123
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!