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シンデレラの罠



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シンデレラの罠の評価: 3.91/5点 レビュー 35件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.91pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全35件 21~35 2/2ページ
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No.15:
(3pt)

独特の表現が故に、かなり人の好みによるでしょう

主人公は若い女性。火事の後、病院で目を醒ますが、誰だかよく分からないほど顔に火傷をおっており、記憶もなくしている。
そして時間が経つにつれ、自分は周りから思われている女性とは別人なのではないかと思うようになる。そのため退院後は、
自分の正体探しを兼ね、火事の起きた背景を調べ始めるが、徐々に信じられない様な疑惑が浮上していく。

自分が誰かさえ分からないという気持ち悪いストレスの中、次々と浮上してくる疑惑に押し潰されそうになって行く心理が、見事に描かれている。
また、結末はある程度自由に想像して下さいと言った感じで終わり、最後まで主人公の頭の中の霧が完全には晴れないため、それがかえって人間の心の闇を
上手く伝えていると思います。ちなみに、本書は創元社から本格ミステリーとして発売されていますが、実際にはミステリー風の心理サスペンスであり、
トリックや謎の解明等には重きが置かれていませんので、ご注意下さい。しかし心理サスペンスとしては、全体的に上手く出来ていると思います。

一方、難点ですが、フランス的な甘ったるい表現で長々と書かれた箇所も多いため、私はその辺りに退屈した口ですが、その手のフランス的な文章が
苦手な人にとっては、読んでていて退屈な箇所と楽しい箇所の浮き沈みが激しい小説でしょう。この小説を英米人が書けば大分イメージが違い、
私好み、否、比較的ベタに万人ウケしたかも。それともう一つの難点として、オチはけっこう見当付き易いと思います。

結論。心理サスペンスとしての全体的なレベルの高さは評価できるものの、難点をマイナスして、だいたい星3つ位ですかね。
但し、フランス的な甘ったるい表現が好きな人になら、星4つ位でオススメできるとは思いますが。
シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)より
4488142060
No.14:
(4pt)

ここに顔の焼けて記憶喪失の女性がいます

更に紛らわしいことによく似た女がいて、二人はある遺産相続に関わっていました。
そちらも火事で誰だかわからないように死んでいます。
この生き残った女性は誰でしょうか。

どうやら、その火事は遺産を奪うために仕掛けられた殺人事件みたいですが、
この女は犯人でしょうか?被害者でしょうか?
自分を取り戻すために事件を調べる女はどちらの真相に行き着くのでしょうか?
ひょっとしたら記憶喪失というのは本当でしょうか?
全ては最初から知ったうえでの演技なのでしょうか?

あなたがよく知っているあの小説。あの連続ドラマ。
あのアイデンティティの謎を扱ったハリウッド映画、
あの信用できない主人公を扱ったサスペンス。

数限りない物語は直接間接にこの小説にインスパイアされています。

あなたもこの罠にかかってみませんか。ガラスの靴を履いてみませんか。
シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)より
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No.13:
(4pt)

Sebastien Japrisot: Piege pour Cendrillon
原書:1962年

創元推理文庫は子どもの頃よく読んだが、翻訳特有の読みづらさ(特にミステリーやSF)があった。
この本も、誤訳が多かったらしいが、今回の新訳はよい出来だという書評があったので購入。
冒頭の意識の混濁状態が「ジョニーは戦場へ行った (角川文庫)」に似ている。

現代ミステリーに毒されて?いるからか、ストーリー展開はともかく、結論は「読めて」しまう。逆に言えば、この古典トリックは多くのミステリー物に影響を与えた、ということだろう。ネット上で結論がわからないという質問が出ているが、ラストと「題名」で自ずと明らかである。(ただし、ミステリー界では最後の文章はでっちあげの疑いがある、と深読みしている。)

横溝正史の「夜歩く (角川文庫)」を読んだときは完全に騙された。と思って調べたら、「夜歩く」は1948年の作品だった! 逆にすばらしいぞ横溝正史!
また、毛色は違うが、貴志祐介の「十三番目の人格(ペルソナ)―ISOLA (角川ホラー文庫)」へもヒントとなったネタかもしれない。登場人物「ミシェル・イゾラ」のスペルは「Michele Isola」である。

「アルジェリア帰還兵のフランス人」というキャラが出てくるが、すぐ連想したのは、1968年のアラン・ドロン&チャールズ・ブロンソン共演映画「さらば友よ(Adieu l'ami)さらば友よ [DVD]」。NHKドラマ「リミット〜刑事の現場2」でも演じられた、ブロンソンによる有名な「コインゲーム」。ところが、調べてみたら、この本の著者が原作・脚本を書いていた! なんという因果か・・・。

(追記)
上記の「ミステリー界の深読み」について。
「深読み」について、まず翻訳者自身があとがきで書いている。そしてフランスの文学者等の「見解」も引用している。
しかし、著者はそんな「深読み」を一般読者には求めていない。最後の2ページ前まで揺り動かしてはいるが、「結論」は書かれている通りなのだ。
エキスパートたちは、可能性としてオーデコロンの名称自体が虚構であり作り物めいているとし、この部分が客観的叙述である保証はない、としている。そして「シンデレラ」という一語がラストと冒頭で一致していることを挙げている。
だが、大事なことを忘れている。ラストの2ページは「太文字」で書かれている(原作では大文字か斜体字?)。この「太文字」は本書を通して、ところどころに出てくるのだが、この意味は「客観的で現実に起きている事実または発言」を強調しているのである。「冒頭部分のシンデレラ」は「太文字」で書かれてはいない。
上記のような「深読み」こそ、著者が「エキスパートに対して仕掛けたトラップ(罠)」である、と私は断言する。
シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)より
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No.12:
(5pt)

罠は誰にしかけられたか

Sebastien Japrisot: Piege pour Cendrillon
原書:1962年

創元推理文庫は子どもの頃よく読んだが、翻訳特有の読みづらさ(特にミステリーやSF)があった。
この本も、誤訳が多かったらしいが、今回の新訳はよい出来だという書評があったので購入。
冒頭の意識の混濁状態が「ジョニーは戦場へ行った (角川文庫)」に似ている。

現代ミステリーに毒されて?いるからか、ストーリー展開はともかく、結論は「読めて」しまう。逆に言えば、この古典トリックは多くのミステリー物に影響を与えた、ということだろう。ネット上で結論がわからないという質問が出ているが、ラストと「題名」で自ずと明らかである。(ただし、ミステリー界では最後の文章はでっちあげの疑いがある、と深読みしている。)

横溝正史の「夜歩く (角川文庫)」を読んだときは完全に騙された。と思って調べたら、「夜歩く」は1948年の作品だった! 逆にすばらしいぞ横溝正史!
また、毛色は違うが、貴志祐介の「十三番目の人格(ペルソナ)―ISOLA (角川ホラー文庫)」へもヒントとなったネタかもしれない。登場人物「ミシェル・イゾラ」のスペルは「Michele Isola」である。

「アルジェリア帰還兵のフランス人」というキャラが出てくるが、すぐ連想したのは、1968年のアラン・ドロン&チャールズ・ブロンソン共演映画「さらば友よ(Adieu l&#39;ami)さらば友よ [DVD]」。NHKドラマ「リミット〜刑事の現場2」でも演じられた、ブロンソンによる有名な「コインゲーム」。ところが、調べてみたら、この本の著者が原作・脚本を書いていた! なんという因果か・・・。

(追記)
上記の「ミステリー界の深読み」について。
「深読み」について、まず翻訳者自身があとがきで書いている。そしてフランスの文学者等の「見解」も引用している。
しかし、著者はそんな「深読み」を一般読者には求めていない。最後の2ページ前まで揺り動かしてはいるが、「結論」は書かれている通りなのだ。
エキスパートたちは、可能性としてオーデコロンの名称自体が虚構であり作り物めいているとし、この部分が客観的叙述である保証はない、としている。そして「シンデレラ」という一語がラストと冒頭で一致していることを挙げている。
だが、大事なことを忘れている。ラストの2ページは「太文字」で書かれている(原作では大文字か斜体字?)。この「太文字」は本書を通して、ところどころに出てくるのだが、この意味は「客観的で現実に起きている事実または発言」を強調しているのである。「冒頭部分のシンデレラ」は「太文字」で書かれてはいない。
上記のような「深読み」こそ、著者が「エキスパートに対して仕掛けたトラップ(罠)」である、と私は断言する。
シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)より
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No.11:
(5pt)

あなたも一緒に「私は誰?」

私は、この『シンデレラの罠』という小説が面白いと断じる《証人》です。

また私は、この作品でミステリー中毒に感染させられた《被害者》であります。

更に私は、この中毒でより面白いミステリーを探すようになった《探偵》でもあります。

そのうえ私は、こんなレビューを書いて中毒感染を広めようとしている《犯人》でもあるのです。

わたしは…いったい…だれなのでしょう…。

※注・この小説を読むと、上記のような奇妙な言動に走るという、中毒症状がでる可能性があります。
シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)より
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No.10:
(5pt)

サスペンスの古典を是非堪能してください

「シンデレラの罠」。私が初めて読んだサスペンス。以後すっかりサスペンスの虜。もう、3冊も同じタイトルの本を持っているのに、新訳出版と聞いて、早速手にいれてしまった。40年まえ、少し違っているかもしれないが、帯にあった魅力的な広告は、「私は被害者で、犯人で、証言者で、そのうえ探偵です」この4役は、どういうシチュエーションで生まれるのか。ミシェルとドミニカは、ともに遺産相続人候補。お互いが相手が遺産を受け取ると思っていた。そして、放火による火事。生き残ったのは、記憶喪失の女。私は、ミシェル?それともドムニカ?私は、犯人なのか、被害者なのか。この本は、丹念に読まなければならない。でないと、真相がわからなくなる。私は、何度も繰り返し読んだ。何度読んでも、この記憶医喪失のパリジェンヌに、惹かれる。セバスチャンジャプリゾのもう一冊の傑作は「新車の中の女」。こちらが新訳出版されたら、こちらも是非どうぞ。
シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)より
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No.9:
(5pt)

名惹句サスペンス、読みやすくなって凄く嬉しい

火事で記憶喪失になった女性が次第に回復していくが、やがて不穏な状況に巻き込まれ・・・という粗筋のサスペンス。
この作品については有名な惹句の方がひとり歩きしてやがて「一人何役」がジャンルになるまでに至るが、小説を読むと若干ニュアンスが違うように思う。あの文章だと作為的に一人四役を演じているように読んでしまうけど、殺人の疑いのある状況に記憶喪失の状態の人が巻き込まれて結果として一人四役になってしまう、という展開なので。だから「一人四役のトリックを使った本格ミステリ」としてより「一人の女性が自分のアイデンティティを見失う悲痛なサスペンス」として読んだ方がいいと思うがどうでしょうか。このアイデンティティの不確定さはやがてクリストファー・プリースト「魔法」に受け継がれ頂点を極める、というメタフィクション的要素を内包しているようにも読める、短いながらも非常に濃密なサスペンス。

解説に詳述されているのであまり書かなくてもいいかもしれないけど最後も明確な解決が示されず読者を途方に暮れさせたまま終わる字義どうり不安定なサスペンスの傑作。次作の「新車の中の女」も傑作だと思うけど、これもやはり傑作、或は問題作として原著刊行から50年経っても古びてないどころか今読んでも新しい。この時代にこのようなメタフィクション的小説を書いていた尖鋭さにも驚く。とても金の為に書いたとは思えない。

それにしてもこの惹句は読者をそそる凄い文章だと思う。バリンジャー「赤毛の男の妻」と並んでミステリ史に残る名惹句だと思います。

蛇足ですがこの人の本名による処女作「不幸な出発」を新訳復刊してくれる奇特な出版社はないものか・・・
シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)より
4488142060
No.8:
(5pt)

華麗なる技巧

技巧を駆使した叙述トリックの歴史的傑作。
フランスミステリの存在感が今より重きを成していた元版翻訳当時はまさに轟々たるセンセーションを巻き起こした作品。
プロット自体はシンプルなものだがリドル・ストーリーめいた結末の微妙な余韻が素晴らしい。丹念に読めば主人公の正体が判る、伏線の絶妙さを楽しむべし。
個人的には、さらに華麗なテクニックが光る『新車の中の女』(浅丘ルリ子主演で連続ドラマ化されたのも懐かしい)の新訳も希望。
シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)Amazon書評・レビュー:シンデレラの罠【新訳版】 (創元推理文庫)より
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No.7:
(2pt)

‘私’は探偵であり、殺人犯人であり、犠牲者であり、目撃者である

私がこれから物語る事件は巧妙にしくまれた殺人事件です
私はその事件で探偵です
また証人です
また被害者です
そのうえ犯人なのです
私は四人全部なのです
いったい私は何者でしょう

版元のフランス・ドノエル社がつくった内容紹介の宣伝文である。

本書は、こうして’62年10月(邦訳初版は’64年11月)、センセーショナルに世に出たフランスの作家ジャプリゾの2作目のミステリーである。

こういう一見不可能な設定がミステリーでどう“論理的”に解決されるか。その1点に注目して読んだ。
‘私’は火災に遭い、髪も、顔も、皮膚も燃えて、真っ黒な体になって、しかも記憶を失っている。同年代の幼な友達がいる。余命いくばくもない億万長者の伯母さんの遺産相続人である。なるほどこういうことか。2度読み返して充分とはいえないまでもようやくシチュエーションが頭に入ってきた。

あやうい人間入れ替わりらしい述懐、何かと暗躍する後見人の35才の婦人、ラスト近くに登場する恐喝者。全217ページに凝縮された‘私’の一人称叙述による謎に満ちたサスペンス。

本書は、深刻な性格描写や綿密な動機づけより、プロット全体のツイストを効かせることを重視するというフランス・ミステリのエスプリである。
ひとつ言わせてもらえば、ひとり四役という宣伝文にあまりこだわったり惑わされたりせずに、素直にフランス流サスペンス小説として読むほうが楽しめるだろう。

シンデレラの罠 (創元推理文庫 142-1)Amazon書評・レビュー:シンデレラの罠 (創元推理文庫 142-1)より
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No.6:
(2pt)

かなり読みにくく、作品的にも、緻密さを求める日本人には合わないのではないか

私がこの作品を読んで、最初から最後まで、ずっと感じ続けていたのが、「この作品は、なぜ、こんなにも読みにくいのだろうか?」ということだった。私も、海外の名作ミステリは、結構、読んできたのだが、これほど読みにくいと思った作品は、初めてだったのだ。
ジャプリゾの筆致は、基本的には、簡潔だと思う。しかし、たとえば、クリスティーや東野圭吾の筆致が、簡潔にして明瞭で、すらすらと読み進められ、ページ数がどんどん進むのに対し、ジャプリゾは、同じ文章を二度読みしたり、ページを遡って確認せざるを得ない箇所が多過ぎて、一向にページ数が進まず、わずか217ページの作品を読み終えるのに、やたらと時間が掛かってしまうのだ。 
私は、全文を三度、じっくり読んで、この「簡潔でありながらも読みにくい」という不思議さの原因を探ってみた。すでにカスタマー・レビューにも書かれているように、たしかに、一部には、明らかに訳者の責任と思える、日本語の文章としての不自然な箇所もあるにはあるのだが、アルレーの作品では、望月氏の訳文でも、すらすらと読めているので、やはり、この読みにくさの原因の大半は、ジャプリゾの筆致の方にあると思う。 ジャプリゾの筆致は、簡潔な分、抽象的でわかりにくく、読者が自分で文意を補って読み取っていかなければならないので、読みにくく、読むのに時間も掛かると思うのだ。 
この作品のトリック自体は、「私はその事件で探偵です。また証人です。また被害者です。そのうえ犯人なのです」というキャッチ・コピーに不足のないものだとは思うのだが、それと同時に、奇抜なトリックだけが前面に出て、作品の構成自体には大雑把なところがあると思ったのも事実であり、ミステリに緻密な構成感を求める日本人には、作品的にも合わないような気がする。 
シンデレラの罠 (創元推理文庫 142-1)Amazon書評・レビュー:シンデレラの罠 (創元推理文庫 142-1)より
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No.5:
(5pt)

ミステリー史に残るおしゃれな傑作 

私は事件の探偵であり、証人であり、被害者であり、そのうえ犯人でもある……という一人四役のミステリーが海外にあると、日本の著名な推理作家は聞いて驚いたが、そのトリックの中で「記憶喪失」を使っていると聞いて、「なんだ」と安心したというエピソードが残っています。その海外ミステリーが、本書です。(確か、驚いた作家は都筑道夫氏だったような)
記憶喪失という技を使っているとはいえ、事件をつづる、作家の筆致は上品で、その不思議な話には、どんどん引き込まれて行きます。
途中で、あっ、たぶんこんなトリックだなと思ったのですが、読み進むうちに、えっひょっとして違うのかと思ったり……最後の最後まで、真相がわからない、謎の仕掛け方も素晴らしいです。
世界のミステリー・ベスト100などを選ぶと、必ず入っている作品で、日本では折原一氏らの作風に影響を与えた作家と言われています。
二人の生まれも育ちも違う少女の運命をつづった本書を、どうぞ、じっくりお読みください。
シンデレラの罠 (創元推理文庫 142-1)Amazon書評・レビュー:シンデレラの罠 (創元推理文庫 142-1)より
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No.4:
(4pt)

一人4役という超技巧テクニック

私は「被害者であり、証言者でもあり、探偵でもあり、そして犯人でもある」という謳い文句で有名なS.ジャプリゾの代表作。この文句が本の帯に書いてあるので、読者の期待は作者がどうやってこの奇跡的状況を創り出すかに掛かる。
これを実現するには本来力技が必要なのだが、フランス風のしゃれた展開と巧みな伏線や人物造詣、及び妖しげな雰囲気作りによって、それ程抵抗なく物語に浸れる。
さすがに作品の狙いが狙いだけに、他の作品のようなエスプリの利いた話という訳には行かないが、とにもかくにも一人4役を実現させた作者の見事な手腕は評価できる。話のタネとしても一度は目を通しておきたい驚異の作品。
シンデレラの罠 (創元推理文庫 142-1)Amazon書評・レビュー:シンデレラの罠 (創元推理文庫 142-1)より
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No.3:
(3pt)

息もつけない作品

エディターレビューに魅かれて読んでみた作品ですが、時々ある、紹介だけ魅力的で、内容が全然それについていってないという(推理小説で三重密室だとかいって実際は二重密室だったといったもの)タイプではないのですが、別の意味で期待を裏切られました。
 というのも、冒頭から衝撃的でサスペンスらしく戦慄の展開なのですが、読んでいてちっとも楽しくなかった。人物にまるで人間味がなく、すべて欺瞞でできているようで、読者としては人物にちっとも感情移入できません。それがまた、わけがわからずサスペンス感を高めているのですが、ストーリーが人物を食っていて、読者もそれに振り回されっぱなしです。これがまた、緊迫の展開ともしかしたら言えるのかもしれませんが、私にはちっとも面白くありませんでした。
 それでも、発表当時の時代としては素晴らしく独創的で魅力的なプロットを練り上げたのだから、その辺はすごいと思います。
 しかし、わざとかどうか知りませんが、著者の筆力は緊迫感を高めるのにのみ使われていて、人物描写はまるでできていませんでした。
シンデレラの罠 (創元推理文庫 142-1)Amazon書評・レビュー:シンデレラの罠 (創元推理文庫 142-1)より
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No.2:
(3pt)

翻訳が・・・

否が応でも興味をそそるその解説と作品自体の評価の高さに手に取った。確かに本作が出された1964年のミステリ界にとっては異色であり、衝撃的な作品だったに違いない。ぜひ当時、リアルタイムで読んでみたかったものだ。しかしである。仏作品ということも関係しているのかは定かでないが、恐らくその古さが顕著に出てしまっているのが『翻訳』だ。いくら古いとはいえ・・・まるで、某ウェブページ翻訳を髣髴とさせる箇所が多すぎる!なにしろ、訳が機械的過ぎるのだ。もしくは直訳的過ぎるのである。そのせいで、直接の意味の中からイメージを把握するために読み直すこともしばしば。再訳っていうのもありだと思うんですが、どうなんでしょう。物語的には、同じく仏女流作家で、ちょうど時代も重なるアルレーとよく似ている。アルレーといわれて手にしても、恐らく疑わずに読了するだろう。返す返すも、出版当時に読みたかった作品だ。
シンデレラの罠 (創元推理文庫 142-1)Amazon書評・レビュー:シンデレラの罠 (創元推理文庫 142-1)より
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No.1:
(5pt)

サスペンスを凝縮した中編小説

 作品のサイズとしても一冊の本として成立するにはぎりぎりの短さであるが、何度も映画化されていることからもわかるように、その短い長さにぎゅっと凝縮されたサスペンスを詰め込んだ、テンポの良い快作。ラストシーンとシンメトリーを構成する冒頭のシーンもいかにも映画的で、フランスのエスプリとでもいうのか、トリックを含めてとても「しゃれた」作品でもある。 ラストシーンでの主人公のショッキングな言葉によって、本を閉じた後にもじんわりとミステリアスな空気が漂う。
シンデレラの罠 (創元推理文庫 142-1)Amazon書評・レビュー:シンデレラの罠 (創元推理文庫 142-1)より
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