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(短編集)

いまさら翼といわれても



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【この小説が収録されている参考書籍】
いまさら翼といわれても
いまさら翼といわれても (角川文庫)

いまさら翼といわれてもの評価: 4.39/5点 レビュー 150件。 Aランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.39pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全125件 21~40 2/7ページ
No.105:
(5pt)

「いまさら」翼といわれても

暗い話が多い気もしましたがとても好きな作品でした。
千反田が自由になる話だというのは題名で察しがついたのですが
千反田家の跡取りとして育てられてきた、えるが他人には計り知れない葛藤と覚悟の上で今まで過ごしてきたのに、「いまさら」自由になれと言われるのは、今までえるが背負ってきたものは全部もう無駄になったと感じる何とも言えない物語です。
いまさら翼といわれてもAmazon書評・レビュー:いまさら翼といわれてもより
4041047617
No.104:
(5pt)

良かった

タイトルのいまさら翼といわれてもは、そういうことかと思い、読み終わった後、氷菓らしい締め方だなぁと思いました。
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No.103:
(5pt)

短編的にわりと傑作

どれもいい話だ。みんなの関係性がみられる。「箱の中の欠落」について批判の意見も見られるが、元々推理小説作家はわりとトリックや解明に重きをおきがちで動機はどうでもよいのだ。
ここでは主人公の目線で物語ることから、動機は知らなくていいことになっている。うまい方式だと思う。
「長い休日」は傑作だ。全体的に満足できる。
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No.102:
(4pt)

迷ったら、、、

とりあえず読むのだ
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No.101:
(5pt)

映像で見たかった作品

今回のお話では古典部の4人が日常の謎を解きながら、将来について考えるような一幕が見られます。
一人は将来の目標になるような自分の在り方に気が付き、一人は夢を見据えて自分の取るべき舵を切り、一人は過去を振り返り休日に終わりをつげ、一人は急に目標を失い動揺します。
それぞれの話に、それぞれの生き方、在り方が詰まっています。
長い休日は、自分にも勝手に重ねてしまい、心に残るところがありました。
この本の中で一番出会えてよかった作品です。
余談ですが、京アニの事件のため、おそらく映像化はされないでしょう。
氷菓の続きとしてこの作品がいつか映像になることを願います。
彼らの卒業までこの作品たちを見届けられたらと思います。
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No.100:
(5pt)

17歳は選択の季節。

神山高校古典部のメンバーそれぞれの、2年生になってからのお話。『氷菓』は入学したての1年生の話だった。その後のストーリーも季節は進むがメンバーは1年生。進級したのは『二人の距離の概算』から。そして本書が夏を中心にした6つの短編。
 その中でも表題作「いまさら翼といわれても」が、古典部のメンバーの苦悩を象徴しているのではないだろうか。1年生でもなく3年生でもない2年生。余裕があると思われる学年なのだが、最近は卒業後の進路を考え始める時期になってきている。3年生になってからでは遅いとうのだろう。
 メンバーの中でもっとも早くから進路が決まっていたはずの千反田えるが、どうやら悩みを抱えているらしい。詳しいことがよくわからない奉太郎は進路案内の本を読むえるに違和感を覚える程度だった。その後えるが事件を起こすことに…。
 奉太郎よりもさらに何も考えない17歳を過ごした私は、「みんな大変だねえ。」と人ごとのように思えるのだが、実際のところ他の一般的な高校2年生はどうなのだろう。ただ、私が奉太郎や里志がうらやましい思うのは、高校時代にあんなに女子とおしゃべりをした経験を持たなかったからだ。もと女子校で全校生徒の半分以上が女子生徒だったのに。進路に悩んでもいいからおしゃべりがしたかった。
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No.99:
(5pt)

秀逸

「いまさら翼といわれても」
初めてこのタイトルを目にした時、内容が想像できませんでした。不思議なタイトルだなあと思っていましたが、
読み終わった今は、この一文に込められた切なさに胸が苦しくなります。

登場人物の彼らにとっては、分岐点になる作品ではないでしょうか。いつまでも彼らの物語を読んでいたいですが、そうもいかなそうでこれまた切ないです。

穏やかでどこか物悲しい雰囲気漂う秀逸な作品、大変オススメです。
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No.98:
(5pt)

面白かった

面白かった
走れメロスの着眼点が面白い
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No.97:
(4pt)

大人が楽しめる人間ドラマ

古典部シリーズ第6作だが、本作はホームズ役の奉太郎によるキレのある推理ではなく、部員個人の物語がメインである。だから、クドリャフカの順番のようななぞ解きの要素が濃い作品を期待すると、本作には少々ガッカリするかもしれない。ただ、古典部シリーズを読み続けているファンにとっては、奉太郎、里志、える、摩耶花の4人の辿ってきた道のりと現在そして未来が見えてくる、絶対に読んで損はしない作品となっている。

古典部シリーズは、推理小説ではあっても殺人事件などはなく、あくまで校内や町のちょっとした謎を解くことにとどめていること、さらに主要登場人物がすべて高校生であることから、ラノベ同様の扱いを受けている。しかし、各作品を読んでいくと、これって実は登場人物こそ高校生だけど、実は大人の世界の複雑さやいやらしさを書いたと思える箇所が至るところに出てくる。奉太郎の小学校時代を描いた「長い休日」や漫研の摩耶花を描いた「わたしたちの伝説の一冊」など、そこに出てくる人間模様の複雑さというかいやらしさは、大人の世界で起きてもちっともおかしくない。だから、登場人物はいずれもその考え方や行動様式は高校生以外の何物でもないが、私のような中年でも人間ドラマとして面白く読める。

古典部シリーズのキャラクターは年を重ねているので、いずれ受験などを経て次のステップへ踏み出すことになる。本作を読み終えて、この4人が居心地のいい古典部という繭から出てこれからどう成長していくのか、その人間ドラマを見守って行きたいと改めて思った。
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No.96:
(4pt)

さわやか

ミステリー小説に疲れて読みました
まっすぐだけど迷いがあって、そこがさわやかでした
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No.95:
(4pt)

それぞれの過去と未来が

米澤の「古典部」シリーズの短編集である。あとがきに米澤自身がそのようなことを書いているが、これをいきなり読むのは全くお勧めできない。「古典部」シリーズの長編(これまで出ている分)を読んだ後のほうが楽しめるだろう。

内容はというと、おなじみの古典部メンバー4名を主役に据えた短編が6つ並ぶ。といっても長さはいろいろ。これまでの長編で何度も語られてきた設定やら前提にしてきたことがらについて、その過去と未来について語られる、という趣向である。もちろん謎解き的な楽しみも織り込まれるわけだが、最後まで読み切っての感想は、ミステリとして書かれたというより、「古典部」の世界観を拡張もしくは補完するために書かれたのでは?というもの。まったく見たことはないのだが「古典部」シリーズはアニメ映像化されているはずで、本作は、そちらの方面からのもろもろの要請が成せる業なのかもしれない、と。うがった見方すぎかもしれないが。

まぁそんな裏読みなどせず、おおぉーそういう背景でそういう設定になったわけなのか(涙)、とか、ええぇーそんないきなりちゃぶ台返し(梯子外しともいう)で今後この人はいったいどうなるどうなる?、とか、そういう楽しみ方のほうが本来の姿なのかもしれませんね。
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No.94:
(5pt)

変化?成長?

優れた人物にも凡庸な人物にも、本人なりの信念や美学があるのだろう。
人として未熟な高校生にも、もちろんあるだろう。
今作では、これまでと異なる行動をとるキャラクターが複数いる。
多感な少年少女たちが、何かをきっかけに考え方や行動を変えてしまうことは決しておかしなことではない。
キャラがブレたと感じる人もいるようだが、人間は絶えず変化するものでしょう。
「ドラえもん」や「水戸黄門」のような年をとらない作品は変化するといかんけど。
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No.93:
(5pt)

どんな結末でも後悔しない

古典部シリーズはどれもタイトル回収が鮮やかです。「いまさら翼といわれても」のタイトルから物語の展開を予想できたとしても、奉太郎の思考や会話から伝わる心情の描写はこの作者しか描けない内容でした。同じ短編の「遠回りする雛」は登場人物の関係性が進展していく場面が多かったですが、本作では登場人物たちの感情がさらけ出されるようで物語もピークに近づいたのかな、と少し寂しさを覚えました。それでもきっと今後の展開がどんなものであっても、このシリーズは僕にとって大切な物語になると言い切れる素晴らしい作品です。
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No.92:
(5pt)

今、自分の人生に誇りを持って生きていますか?

バードカバーが刊行されたとき、私はまだ失意の中にいました。文庫化されるまでの時間、私の人生には奇跡が起きていました。人並な世界に戻ってきた私には、本作に登場する愚かな人々の不条理と、そして変わらない友が待っていてくれました。
構想不足?消化不良?いえ。全編を通して著者が表現している内容が理解できるまでには、私の心は成長していたように思います。
シリーズものに舞台を借りた、これはそういう物語。
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No.91:
(5pt)

色々な部分を繋ぐ短編集。 なかなか興味深い内容でした。

二年半前に単行本を購入し、今また文庫版を購入し、文庫版の方を読了。
単行本は重くて携帯には向かなかった...
しかし、それぞれ切り替えると別の注文日が出てくるのか...

閑話休題。
奉太郎たちのあれこれを繋ぐ短編集。
生徒会選挙の話から始まり、タイトルのいまさら翼といわれてもで終わり。
あとがきから言わせれば、焼きそばから冷し中華で終わるとも言える?

今まで謎だった、摩耶花嬢が奉太郎を嫌っていた理由や、奉太郎の省エネ主義の理由。
摩耶花嬢と漫画研究会のその後などが綴られています。
なかなか興味深い内容でした。

そして、最後のタイトルは...
いまさら、ですか。 確かに。
しかし、それはそれで良いのかもしれません。 その後のことは気になりますが、それは次巻、綴られるのでしょうか?

もう二年半。 そろそろ続きを読みたいと思います。 実際、読み終わったのは今現在ですが。
今度はきちんと単行本を読もう。
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No.90:
(5pt)

『翼をさずける』現時点におけるシリーズ最大の転換点が描かれる

本棚に並べたときの美しさかつ収納スペースの問題から小説は文庫本になってから読むことに
しているため、前作『ふたりの距離の概算』文庫版から七年、『小説野性時代』ほかへの掲載
そして単行本刊行から待ちに待ち続け、約二年半を経てようやく刊行された本作を手に入れる。

『箱の中の欠落』
六月。生徒会長選挙で投票総数が有権者数を上回る水増しが発覚する。総務委員会副委員長と
して投票に立ち会っていた里志は夜中に奉太郎を呼び出し事情を話すも、「やらなくてもいい
ことならやらない」という奉太郎のポリシーにより一度は断られるが、一年の選挙管理委員に
責任をなすりつけた選挙管理委員会委員長の言動が気に入らないという点で意見が一致し、
道すがらのラーメン屋で一転して推察を繰り広げることに――という話。序盤に何気なく提示
された情報がきっかけとなって解答を導き出すことになるのだが、罪をなすりつけられた
一年の選挙管理委員や真犯人の具体的な情報が言及されていないのは、この話で最も重要なのは
フーダニットではなくハウダニットであるということを呈示している。
また、話の本筋とは少し外れるが、ふたりの会話の内容から、奉太郎がえるに対して
社会的階級の違いをまざまざと感じされられていることに言及しており、おそらくこれが何か
の伏線になっていることを予感させる。

『鏡には映らない』
日曜日。Gペンを買いに街に出た摩耶花は鏑矢中学時代の同級生と偶然再会する。
ふとしたきっかけで折木奉太郎の名前が出たとき、嫌悪感を隠そうとしなかった彼女の表情に
摩耶花は中学三年の頃の話を思い出す。
卒業制作で大きな鏡のフレームを作ることになった三年生。フレームを細かく分割し、
各グループでひとつのパーツを彫刻刀で彫り、再びそれを組み合わせることになっていたが、
締め切りギリギリに奉太郎が提出したのは明らかに手抜きをしたであろう代物だった。
いざフレームを組み上げると、場所ごとに出来の善し悪しがばらけていたことに一度は
安心した摩耶花だったが、デザインを担当した鷹栖亜美の態度が急変したことから奉太郎は
その責任を一身に背負うスケープゴートにされてしまう。だが、えるの叔父のメッセージを
汲み取り、未完の映画を完成させ、なんだかんだ言って真面目に文集を仕上げた奉太郎と
フレームに手を抜いた当時の奉太郎が一致せず、何か別の理由があるのではないかと考え
奉太郎に色々尋ねるが適当にはぐらかされてしまう。そこで摩耶花は自分で調査を
始めるのだが――という話。
確か小説野性時代掲載時は、摩耶花が奉太郎と里志の目の前で真相を突き付けるのではなく、
摩耶花が奉太郎に謝ることで真相にたどり着いたことを悟った奉太郎が摩耶花に軽く手を
挙げるという終わり方だったと記憶している。
『クドリャフカの順番』以来である摩耶花視点で描かれており、本シリーズでは初めて
奉太郎以外が探偵役を務めている。また、なぜこのシリーズの当初で摩耶花が奉太郎に
対しあまり良くない感情を抱いていたのかという理由が分かる。

『連峰は晴れているか』
部室の窓の外に飛ぶ一機のヘリコプターを見た奉太郎が、中学時代の教師・小木が授業中、
同じく部室の窓の外に飛ぶ一機のヘリコプターを見て「ヘリが好きなんだ」と言っていた
ことを思い出すが、里志の「編隊を組む自衛隊のヘリには興味を持たなかった」という言葉に、
小木は本当にヘリコプターが好きだったのだろうか、そして雷が多い地域ではないにも
かかわらず「雷に三度打たれた」という小木のエピソードに疑問を抱いた奉太郎はその
真相を調べることに……が簡単なあらすじ。
小説野性時代に掲載されたあと単行本化されることなくアニメーション化され、
さらにコミカライズ化されたのちようやく単行本化されるという、順番が前後してしまった
珍しい経緯があるエピソードであり、本巻唯一のアニメーション化されているエピソードでもある。
この出来事から数年の時を経て、仲間が遭難する中、気丈にも授業を執り行い、あまつさえ
自身の動揺を悟られまいとヘリコプターに興味があるふりまでした小木の思いを知るとともに、
物事の表面だけを見てすべてを断じるべきではない(これを奉太郎は『無神経』と表現した)と
いうことを読者に突き付けている。

『わたしたちの伝説の一冊』
文化祭の一件(参照:クドリャフカの順番)から漫画研究会は、『読む派』と『描く派』に分裂し、
もはや関係の修復は不可能な状態になっていた。そんな折、摩耶花は『描く派』の浅沼から
部費を流用して同人誌を作り、漫画研究会は漫画を描くところだということを明らかにしようと
持ちかけられる。この企てには田井、西山、針ヶ谷も参加することになっていたが部長の湯原が
引退し、パワーバランスが崩壊するとともに『読む派』の羽仁が新部長に就任、追い詰められた
田井がすべてを吐いてしまったため、摩耶花と浅沼は吊し上げられ、同人誌を完成させたら
『読む派』は退部して新しい部活を立ち上げる、逆なら『描く派』が退部させられるという
条件を呑まされてしまう。そんな中、摩耶花がしたためていたネームを描いたノートが
盗まれてしまい――というストーリー。
純粋に漫画を描きたかっただけだったのが、いつの間にか『読む派』を追い出すことが
目的となってしまったことを通じ、実は本作には「現状維持バイアスにかまけてレベルの低い
ところに居続けると時間や才能を奪われる」という教訓が含まれていることが分かる。
また、実は摩耶花が隠れて努力をして、その結果が少しずつ出つつあるとともに、かつて対立
していた河内亜也子(作中作『ボディトーク』の作者)と「互恵関係」になったのはある意味
救いなのかも知れない。

『長い休日』
日曜日。珍しく体調が良い奉太郎は午後から散歩がてら自宅から適度な距離に位置する
荒楠神社に向かうと、境内で偶然十文字かほと出会い、「えるもいる」と言われるがままに
詰所内にあるかほの部屋に連れて行かれ、えると会う。かほが買い物に行っている間、
えると一緒に神社の清掃をすることになった奉太郎はえるから「やらなくていいことなら、
やらない。やらなければいけないことなら手短に」という考えに至ったのかという質問を
受ける。そこで奉太郎は小学生の時のある出来事を話し始める――というのが序盤の
ストーリー。
小学生の頃の話であるため、周囲から都合の良い存在として使われる程度で済んでは
いるが、実は『氷菓』において周囲によって名目上のリーダーに仕立て上げられ、
スケープゴートにされた関谷純の姿がオーバーラップする。つまり奉太郎は
『省エネ主義』というよりも、他者に自分のリソースを使われることに対し癪に
触ったということになる。

『いまさら翼といわれても』
二年の夏休み初日。摩耶花から奉太郎のもとにえるの居場所を尋ねる電話がかかってくる。
今日市民文化会館で開催される市の合唱祭に参加予定、しかもソロパートがあるえるが
バスで文化会館に到着してからの行方が分からなくなってしまったという。
奉太郎は文化会館に向かうとともに、えるがどこに行ってしまったのか、そしてその理由を
探るべく、考えを巡らせる――というおはなし。
本作を読み終えることで『いまさら翼といわれても』が何を意味しているのかが分かるだけ
でなく、彼女の中で信じ、受け入れていたものが崩壊してしまったというシリーズの重大な
転換点であろう展開から、個人的にはおそらく次に描かれるであろう長編は千反田家の謎と、
えるに『翼』が与えられた理由について迫る話になると勝手に睨んでいる。
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No.89:
(4pt)

古典部メンバーたちがそれぞれ転機をむかえるシリーズ第6作

本書は〈古典部〉シリーズ第6作で、6つの短編で構成されています。各作品内の時期は、折木 奉太郎、千反田 える、福部 里志、伊原 摩耶花、と古典部メンバーの4人が2年に進級して以降、おそらくは1学期内にあたります(「連峰は晴れているか」以外)。

・「箱の中の欠落」(6月)
・「鏡には映らない」(おそらく第5作『二人の距離の概算』(5月末)以降)
・「連峰は晴れているか」(時期不明)
・「わたしたちの伝説の一冊」(5月中旬)
・「長い休日」(2年進級以降という以外不明)
・「いまさら翼と言われても」(夏休みの数日前から夏休み初日)

「箱の中の欠落」は本書のなかで一番「ミステリ」しています。一見するとドライな奉太郎と里志の関係はたがいに尊重しあっているからこそ、というのがうかがえる1篇でした。

「鏡には映らない」「わたしたちの伝説の一冊」の2篇の語り手は、いつもの奉太郎ではなく、摩耶花。安楽椅子探偵型の奉太郎よりも一般人の感性をもち、好奇心と行動力と執念をそなえた彼女は、ハードボイル型探偵のように当たって砕けろの精神で謎を追います。「鏡には映らない」では奉太郎に対する誤解をとき、「わたしたちの伝説の一冊」では第3作『クドリャフカの順番』における漫画研究会の内部抗争に決着をつけることになります。

「連峰は晴れているか」「長い休日」の2篇は、えるが奉太郎について理解を深めていく物語。とくに「長い休日」では、「やらなくてもいいことなら、やらない」という奉太郎のモットーの由来が明かされます。そして彼のそんな「長い休み」を終わらせたのは…。奉太郎とえるがお互いを意識し合う様子がうかがえて、ほほえましい1篇でした。

「いまさら翼と言われても」では、優等生えるの謎の失踪が描かれます。奉太郎をかりたてるのは、やはり彼女の存在。事件をとおして奉太郎は、えるが抱える責任と覚悟の重さ、それゆえの苦しみの大きさを知っていきます。本書のなかではもっとも苦みがある1篇でした。

全篇をとおして、シリーズいつものことながら、嫉妬、焦燥、葛藤、逡巡、不安など青春時代ならではの自意識のゆらぎがうまくとらえられています。2年に進級したことで、進路にまつわる話もからんできました。終わり方がけっこう引きずるものだったので、読了したそばから早く続きが読みたくなります。
そろそろシリーズも半ばあたりまで過ぎたでしょうか。この先どんどんと、卒業を見すえる古典部メンバーたちの内面が掘り下げられる比重が増していくと思われますが、できるだけ彼らには苦みのある結末が訪れないようにと願うばかりです。
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No.88:
(5pt)

ラスト2編が白眉で古典部シリーズファンなら必読

これは明らかに古典部シリーズを読んで来た読者のみが対象で、この作品だけで読んでも面白さは感じられないに違いない。が、古典部シリーズを読んで来た読者にとっては、主要メンバー4人の少々不思議な関係の謎の一端が明かされる、読み甲斐のある作品群だ。とりわけラストの表題作とその前に置かれた「長い休日」が白眉。奉太郎が姉に言われた「きっと誰かが、あんたの休日を終わらせるはずだから」。それに続いて千反田えるの苦しみを推理してえるに迫る奉太郎。奉太郎が、女の影響で成長する様が見事に表されており、ストンと腑に落ちた。
 ラスト2編を読むだけでも十分満足のいく作品群だったと思う。古典部シリーズファンなら必読だ。
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No.87:
(5pt)

ミステリー小説であると同時に、苦々しさのある青春小説

2年生になった古典部員それぞれの変化、成長が見て取れる短編集。
いつもどおりミステリーとしても面白いが、それ以上に丁寧に描かれている登場人物の心情や葛藤が素晴らしい。
単純な正義感や知的好奇心で謎を解くミステリーとは違い、謎を解く理由や動機に人間味と面白味がある。
古典部シリーズファンなら絶対に読んだ方がいい一冊。
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No.86:
(5pt)

4章目「わたしたちの伝説の一冊」感想

ネタバレあります

謎になっていた伊原摩耶花が漫研を退部する部分が描かれたストーリー。
ギクシャクが更に酷くなって辞めたんだろう程度に思っていた自分が浅はかだった。いつもの推理要素は非常に少ない話だが、そんな事どーでも良くなるくらい深く染み込む内容だった。最後は柄にもなく泣いた。
アニメ版で河内先輩の事を人間性的に嫌いなタイプだと思っていたが、今回の話を読んで見方が180度変わった。と言うか、今でも学園祭時点の河内先輩と出会えば、この人嫌いなタイプだと感じるだろう。ただ、学園祭当時から見え隠れしていた彼女の努力と悲痛。そう言った経験の中から、最終的に導き出される河内先輩の生き方の答えが、今回変化したことにより、嫌いな人からイキナリ大好きな人になった。
そして、そういう意味で言えば伊原に対しても、私は同じ感情を抱いていた事に気づかされた。伊原は主人公サイドなのでマイナスに描かれる事が少なく、また人間性として尊敬できる存在なので、私自身自覚できていなかった。しかし、伊原に対しても、漫画を描きたいだけだと超然的な事を思いながら、漫研を辞めるでもなく漫研を変えるでもない姿勢に擬かしさや苛立ちに近いものを感じていた。それが、今回一足先に変わった河内先輩によって、伊原も変わり、私の中でグッと好きになった。更に言えば、河内先輩を一足先に変えたのが、無自覚ながら伊原だという点にも感動した。

この「わたしたちの伝説の一冊」を読んで、今の段階で「この人嫌いなタイプだな」と思った相手が、明日もそうとは限らないんだと気付かされた。そして、伊原が河内先輩を変え、河内先輩が伊原を変えたように、自分が嫌いだった誰かを大好きな人に変えることもあるのだ。勿論、河内先輩や伊原が漫研の人達を見捨てたように、全ての人に対してそんな努力をする必要もないし、自分が好む人間が全てにおいて正しいなんて思うほど傲慢じゃない。ただ、学園祭の頃の河内先輩や伊原のように、「今の君は好きじゃない。それでも、君には何か感じる物がある。」そんな相手とは、例え苦手だと感じていても、関係を持っていくようにしたいと思う。

そして、本当に大事な事を見据え、つまらない人間関係に囚われて人生を無駄にするのは止めようと思う。
今回も素敵な話をありがとう。
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