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ディスコ探偵水曜日
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【この小説が収録されている参考書籍】
ディスコ探偵水曜日の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.18pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全31件 21~31 2/2ページ
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ちょっとファンシーな恋愛もの的な幕開けで始まったかと思えば、エログロでバイオレンスなお話になり、 不意に「館モノ」ミステリ的な展開になったかと思えば、ついにはSF超大作へと変容していく…… それでいて根底にあるテーマは常に不変でまとまっている。 何なんでしょうね、この小説。 理解が伴うより先に知識や概念をどんどん脳みそにぶち込まれていくイメージ。 その上、作中の名探偵諸君みたいに脳みそを箸で掻き混ぜられたような気分になります。 某三大奇書ですらここまでのヘンテコ体験は出来ません。まさに21世紀を反映した新時代の奇書誕生!って感じですよ。 タイトルも意味不明且つハイセンスですよね。語感からして妙に素敵。 裏表紙の「あらすじ」も未読だとカオス過ぎて何を言ってるのか理解不能。「あらすじ」の役割を果たしているのか疑問に思えるレベル。 内容はなんかもう、秩序を纏った混沌(あるいはその逆)って感じですね。まるで宇宙の神秘。 単行本が発売された時点で購入しなかったことを激しく後悔する一方、今回の文庫化に際して読めて良かった。 興奮しすぎて自分のレビューもまともなレビューになってないですけど、そんな本なんですよ、これ。 「ちょっと読んでみようかな」とか思ってる方はさっさとカートに入れてポチってしまうべきです。 「ふぅー終わった……ってまだ上巻!?まあいいや、さー中巻に行こうか」ってな具合にサクサク読んでしまうこと請け合いです。 作中の劇団員たちのように、名探偵が何言ってるのか理解できなくとも流れに身を任せてサクサク読み進んでしまいましょう。 その先にはきっと文字通り"新世界"の衝撃が待ってますから。 それはそうと、結局のところ表紙の金髪女性は誰なのさ!?(笑) | ||||
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時空すら意思の力で簡単に変えられるようになる主人公達。それでも世界は謎に溢れているため、謎解き自体は時空を超えてこの下巻でも展開される。この作品最大の矛盾点を挙げると、「未来/運命は変えられない」という決定論をベースにしているのだが、だとすると登場人物達がこんなに必死になって動きまわらなくても、結局ここのラストに書かれたような未来は達成されるはずだということになる。バタバタと死んだり生き返ったりする必要はない。でも、それだと小説にならないので、「可能性の未来」という重層的な時間観を作家は持ち出して、未来は頑張れば意思の力で別の未来に接続できる、ということにしてしまう。これにより、膨大な文字量で流れた上下巻のストーリー自体、敵(「黒い鳥の男」)側・主人公側双方から永遠にいじり続けることができることになるため、終盤のどんでん返しに次ぐどんでん返しが可能になる一方で、この物語を一つのオチに着地させて終わらせること自体が「矛盾」になってしまう。せっかくラストでうっすらとした希望が描かれているのに、この矛盾の存在がシラけさせる点が残念で星は一つ削りました。 弁当箱のスミをつつくようなケチをつけましたが、それでも、主人公達が世界/宇宙の謎を問い続けることで意思の力を獲得していく姿自体、デカルト的懐疑(「コギト エルゴ スム」)と実存的主体の立ち上がりそのものだと言えます。 「こんな世界で俺に信じられるのはこの俺だけだ。その俺は世界の形も全く信じてないぜ?(中略)だから俺は自分が見えて感じて触れるものしかとりあえず信じてない。」(下巻192p) そして、こんな哲学的な「見立て」のケチ臭さがバカバカしくなるくらいの奔放なスケール感は、さすが舞城作品です。 | ||||
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主人公、ディスコ・ウェンズデイは迷子専門の探偵。カリフォルニアから日本に渡ってきた。ある仕事で、山岸梢という迷子を探し出すが、捜索を依頼した両親も、なんか実の娘と思えなくなった、と言い、誘拐した犯人も、ほんとすいませんでした、なんなら賠償金もつけるんで、もうぼくにはかまわないでください、といって梢を引き取らない。んで、結局ディスコが梢を引き取ることになる。 それで、梢を引き取ったことが間接的な原因となって、ディスコは福井で起きた連続殺人事件に巻き込まれていくことになる。普段は迷子専門なのだが、そこは探偵なので、結局事件の解決に立ち向かうことになる。 舞城王太郎の小説では毎度のことなのだが、この小説も論理的にほぼ破綻している。というか、普通の世界の理屈では動かない世界を描いている。世界はどうやってできているのか?ということを、名探偵がたくさん集まって議論する場面がある。結論として、点/線/面/空間/時間、の次からの次元は、意識/知/創造や発明/好き嫌い、と続くということになる。つまり、「好き嫌い」が全てを超越するのだ。舞城は意外とこれまじめに書いているんじゃないかという気がする。世の中「愛」なんだ。「愛」というモチーフは古今東西ずっと小説のテーマとなってきたのだが、舞城が描く愛は、コミカルでみょうちくりんで(押しつけられた迷子と、探偵の愛だ)、けど真剣で、読者の心を打つ。荒唐無稽な描写を1000ページも読まされるとさすがに辟易ともするのだけども、最後の愛に満ちた場面が救いなのだ。それは小説を救っているし、なんだかんだといって、世界が救われそうな予感を与えてくれる。 | ||||
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短くはない時が流れて、当時発売されたばかりの煙か土か食い物 (講談社ノベルス)に大きな衝撃を受けたハナタレの高校生だった私は、もうすっかり社会人になり、気付けば20代を折り返している。見る物全てにいちいち感動していたはずなのに、知識を身につけ、経験を積んで、目紛しく全てが流れて行く中で、最近では何かに心を動かされる事が少なくなってしまった。そんな状況で久しぶりに手に取った舞城の作品。ディスコ探偵水曜日。 効いた。めちゃくちゃ効いた。 時間をおいて、改めて彼の作品に触れる事で、高校生だった私がこの作家の何処に惹かれていたのかが分かった。それは、作品に収まりきらない彼の物語に対する圧倒的な情熱の在り方だ。譜面通りの演奏を完璧にこなしてしまうピアニストにとって、長い時間をかけて磨き上げた技量というのは、突飛な調子はずれの展開を形成する事を難しくさせ、それはある種の不便さにもなる。作中に、そういった内容の一文が出て来る。その点、彼の文章は、文章に収まりきらない彼の不器用な情熱でもって、文章以上の内容を語る。彼の中にある大きな塊を、どうにか形にしようとする譜面通りではない形の熱が、その文章から滲み出ている。やっぱり、良い作家だと思った。彼の熱によって感化された、賢くなりすぎた臆病さに守られていない自分の中の柔らかいハナタレの部分が、まだまだ残されている事にも気付かせてもらえた。 ディスコ探偵水曜日は、これから初めて舞城の作品を読もうと言う人にはお勧めしない。理由としては、彼のこれまでの作品タイトルや登場人物達の名前が、ある程度、以前の物語で語られた意味内容を含む記号として作中に鏤められており、現時点での舞城ワールドの集大成、あるいは新天地と呼べるこの作品を楽しむには、読み手側が持つべき受け皿として、そういった部分を事前に理解しておく事が望ましい。 難解、というレビューがいくつかあるけれど、舞城の作品は、それぞれいつも一つの強固なテーマを骨子として持ち、そのメッセージを伝える為に物語が紡がれて行くような所があるので、今回のディスコ探偵水曜日も、そうして見れば、非常に分かりやすく読めると思う。 とにかく、舞城が好きな人は買って損する事が無い一冊だといえる。ただ、ミステリやSFの要素が取り入れられつつも、決してミステリでもSFでもない「カテゴリ:舞城」の本作は、純粋なミステリーファンの方々には受け入れがたい内容となっているので、その点は注意されたし。 | ||||
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大傑作です。と同時に難解です。「九十九十九」を読んだ方で「難しい」という感想を持った方も多いと思いますが、あれは竹本健治氏の「匣〜」をモデルにJDCトリビュートという企画の下で清涼院流水氏の作風を踏襲、超越して書かれたミステリで、極上の娯楽小説です。なので「九十九十九」が難解だと感じた方には、この作品はお薦めできません。今作は「九十九十九」の100倍は難解だからです。最近の、特に「ドリル〜」からの舞城氏の作品と作品を貫く想像力は突飛で、W・バロウズにも通じる醜悪なもので、整然ではなく混沌としたものが多くありました。しかし今作ではその舞城氏の想像力が適度に抑制され「煙〜」「暗闇〜」「世界〜」「山ん中〜」にあった物語の「形」を見事構築しています。今回も舞城氏は普通の作家が何作かに分けて使うようなトリックを惜しみなく一作の中で使っています。島田荘司氏的な想像力を原形とした物理トリック。今回使われているトリックも今まで同様、馬鹿げていながら論理的です。けれど今作は今までの舞城作品と異なりトリックも謎も数が半端ではないです。パインハウスでの推理でも顕著ですが一つの謎に対して多面的な解釈がなされます。何度推理しても中々解決しない事件も「さすが」ですが舞台であるパインハウスという建造物を考えた舞城氏には舌を巻くばかり。更に作中で起こるほぼ全ての出来事に意味があります。伏線ばかりです。上巻で舞城氏は「時間と空間の壁は意志次第で超えられる」ことを証明しています。現実的でなく、あくまで小説的な意味で。その証明なしには下巻の話が成立しません。その証明の説得力は、かつて京極夏彦氏が「姑獲鳥の夏」で探偵、榎木津礼二郎の「他人の記憶が見える」能力について行った説明と同等か、それ以上のものです。今作はSFではありません。「FF8」と同様「ミステリ的な観点でSFを取り入れたミステリ」です。SFには今作ほどの謎もなければ論理性もないからです。やはり破格の作家。次回作にも期待します。 | ||||
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小説に強弱があるならば、この小説は紛れもなく強く、それゆえに正義だ。 そして、そんな小説の主人公として、誰よりも強く正義を望む探偵ディスコ・ウェンズデイは、罰の様に過酷な運命を、鉄の意志で乗り越えていく。 『よう、これが合図だ。動き出せ。踊り出せよディスコティック。急いでな。恐怖にたちすくむような贅沢なんて、お前にはもう許されてないんだ』(本文抜粋) 舞城ファンは買い、 みんな元気。→SPEEDBOY!の流れで敬遠気味だったファンも買い、 他作品はしんどいけど、奈津川家シリーズは好きだよ、な方は上巻だけ買って様子見。 新規開拓者の方は、奈津川家シリーズ一作目『煙か土か食い物』で適正診断をどうぞ。 本読みとしてビビッと運命を感じたら、値段設定に負けない意志を揃えて、ぜひ本作品をご購入下さい。 | ||||
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こんなに面白い小説だったなんて。読みながら何回もうわああああああってなったけど。この長さを感じさせないテンポ良すぎる文体で、読むの遅い僕でもあっというまだった。 こんな本読んだの初めてになるのは当たり前で、この舞城さんの本を初めて読んだときに感じたうわあああよりも更にうわあああああああああああああ。 まだ下巻は読んでないけど、上巻だけでも相当世界が変わった。この世はどうなってしまうんだな一冊。 | ||||
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一応の表向きはミステリー小説の体を成し、本当に多くのトリック やドンデン返しが散りばめられていますが、(特に上巻は清涼院流水氏『コズミック』を彷彿させるような不条理トリックのオンパレード!)この本筋は主人公 ディスコ・ウェンズデイ(≒舞城王太郎?) の文字通り「強い意思」によって駆動されてゆく、ハードボイルド小説として読んでいくことができました。 小説全体の完成度はさておき、末広がりに拡大されてゆく小説内世界を維持し、展開してゆく力量と胆力には感服。枚数に比例する迫力がありました。すごい! 特に物語の終盤は、中盤に広げた大風呂敷が、さらに接いで巨大化してゆくので、 「おいおい、大丈夫かよ。舞城!」と突っ込みたくなるような展開でした。 ただ、一応それなりに収束はしていきますが、首をかしげる所も多々あり。 私の努力が足りなかったのでしょうが、この物語世界を完璧に把握できた(もしくはしようとする)読者が果たしてどれだけいるものか・・・。(私にはこの世界の詳細な理解がこの小説の本筋ではない、と思いましたので気にせず読み進めました。) テクニカルな部分は抜きに、その底流に流れる舞城っぽさというか、恥ずかしげもなく晒される青臭い倫理観(否定的な意味でなく)は、『阿修羅ガール』『世界は密室でできている』『みんな元気。』『好き好き大好き超愛してる』から一貫して見られる従来の舞上節が全快です。 その部分を多少なりとも期待されている方には買いかな、と思います。 特に終盤へと加速してゆくところは、『阿修羅ガール』の後半部分と近似しており、舞城思想の水先案内人(?)桜月淡雪も登場。舞城の小説って・・こう、なんだか毎回作家自身に萌えてしまいます。 | ||||
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舞城史上、最長かつ最高に難解な小説。 とにかく難しかった。めちゃくちゃ頭を使ったよ。 読後感は、難しい数学や物理の問題を考えて考えて解いた後の頭脳フラフラ状態の時に似てたような。 自分にとっては疲れる小説だった、というのが正直なところ。 某御代の大説的な疲労感やストレスが溜まる小説だったんだよね。 いいかげんにしろ!と本を壁に投げつけたくなるあの感じ。 特に推理合戦パートは苛々したな。あんなのもう何でも有りじゃん。それはこの小説全体に対して言えることだと思うけど。 でも、こんな難解で哲学的で学問的でミステリ的でメタメタな小説を書けてしまう舞城の力量はやっぱり凄まじいものがあるな、と感心した。 スゲーよ、舞城。どんだけ頭がいいんだよ。 やっぱり舞城は並の作家ではなかったと。 この小説を苦労して読んで、確信した。 これからの舞城の動向が気になるし、めちゃくちゃ楽しみだな。 でも、次はもうちょっと大衆ウケを意識した小説を書いて欲しいかな。 今回はちょっといくらなんでもいろんな意味で難し過ぎたと思うので。重ねて言うようだが。 | ||||
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最初は本当に脈絡無くエログロ描写が出てきます。 「こういうことやめてくれよな」そう思いつつも疑うような手つきでページをめくっていきます。ですが、そんなシーンに出てきた意味深長なセリフが、まるでリフレインのように度々繰り返されていきます。そうして進むにつれてその反復と共に場面が、世界が、スケールがどんどんと大きくなっていきます。誇張ではなく。 自分は上下二つを読み終わったとき、小栗虫太郎の黒死館殺人事件を思い出しました。引き合いに出されていく知識は北欧神話、タイム・パラドックス 、インドネシア語、マダガスカル語(!)、と雑多ですが、それら全く接点の無さそうな要素が交じり合い、最初に啓示されたエログロに集約されていく様は、読んでいて自分の世界が変えられていく気分になります。 今回の作品から従来のものと同じ匂いを嗅ぎ取るということは、すこし難しいかもしれません。しかしながら、この作品で見られた作者の『変容』を、自分個人はとても嬉しいものに感じます。 間違いなく、読む人にとって「初めてのタイプ」になる本だと思います。 | ||||
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次々に現れる困難や疑問に懊悩するディスコの姿は、ミステリーや純文の狭間で懊悩している舞城自身に思えた。所々に自作のタイトルをちりばめる手法に(物語の中ではそれらタイトルが結構重要な機能を果たしている)、今作によって作家として一つの区切りのようなものを示したかったのかな、とも感じた。または、キャリアの総括、みたいな。読了してから色々考えてるけど、それは作品の内容にではなくて、あくまでも舞城王太郎という作家のスタンスに対して。読書をしてこんな気持になるのは初めて。 今までの舞城作品を期待するとちょっと「?」かも。舞城初体験者は絶対「×」だよ。 でも、確か去年の6月頃に一度今作の発売案内出てたよな〜(無料と思いきや有料の冊子、『波』の巻末にちーっこくだけど)。それをキャンセルしてまで書き下ろし加えるその姿勢が必死で本気で、良い感じ。下巻はまるまる書き下ろしだし。 下巻の章題は「方舟」。連載当時、舞城自身書き進める中で収拾がつかなくなってしまったんじゃないかな。ほんとスケールでかすぎだから。紙と文字で表すの不可能なくらいスケールでかい(実際やたら図説多い)。それを救おうとして、リスク背負ってでも書き下ろさなきゃいられなかったんだろう。妄想に過ぎませんが。あ、この話って大雑把に言って「救済」の話だよな……物語を作家が体現している!? 妄想に過ぎないけどそう考えるとやっぱ凄い作家で、その労力と腕力に星5つです。次作に心底期待大。 | ||||
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