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高い城の男



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高い城の男の評価: 3.85/5点 レビュー 92件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点3.85pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全61件 21~40 2/4ページ
No.41:
(4pt)

読み終わった人の感想をたくさん聞きたい

有名なSF作品なので、わざわざ解説するまでもない。第二次世界大戦で日本とドイツが戦勝国になった世界を描く歴史改変物である。特徴的なのは、作中に登場する小説が、日本とドイツが敗戦国となった世界を描くことだ。その物語が登場人物を巻き込み、ひとつの結果に導かれる。

結末について、日本人として考えるものはあるが、それ以上に、米国人など戦勝国の人々はこの小説を読んで、何を感じるのだろうか。戦勝国と敗戦国が強者と弱者の関係になり、特に弱者の境遇がどんなものなのか、私は敗戦国の立場で読めたが、米国人らは異なる境遇をどう感じ取ったのだろうか。名作であるがゆえに様々な人の意見を聞きたい。
高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)Amazon書評・レビュー:高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)より
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No.40:
(4pt)

物足りなさはあるが独特な世界観

この本は歴史にIFを持ち出し、その後の世界を描き上げたものです。
ここで描かれる世界が成立する歴史的妥当性を論じるのは不毛ですので行いませんが、
成立したと仮定した場合の整合性についてはそれなりにしっかりしています。
これについてはあとがきにも『ディック作品にありがちなプロットの破綻が見られず』と記されています。
しかしながら、そうまでして作り上げられた世界において焦点を当てた人々の生きざまはさほど劇的なものではなく、
読む人によっては物足りなさを覚えるかと思われます。実際、私はそういう感想を抱きました。
また、これをSFと呼ぶべきかどうかについても議論が分かれるところで、筆者もそれを感じ取ったのか、
本文中で重要な役割を担う『イナゴ身重く横たわる』という本に関する議論として登場人物に代弁させています。
「(前略)サイエンス・フィクションは未来を扱うものでしょ?とくに、いまよりも科学の進歩した未来を。この本はどっちの条件にも該当しないわ」
「しかし、もう一つの現在を扱っているからね。有名なサイエンス・フィクションでそういう種類のものはたくさんあるよ」
SFかどうかを抜きにして、独特な世界観を描いた一つの物語として見れば、傑作と呼ぶにふさわしいと思います。
高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)Amazon書評・レビュー:高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)より
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No.39:
(4pt)

どうなったのか

あの戦争に枢軸国側が勝利。アメリカは日独により分割統治されています。アメリカ人によるとドイツより日本の統治の方が優れているようです。あと宇宙に進出する力がありながらテレビが全く普及していないというツッコミどころもあります。
 話としては、ドイツ本国内で政権交代というか指導者の交代があり、それが新たな火種を巻き起こそうとしているのですが、最後はそれがやや下火になっただけで、決して消えたわけではないという終わり方をするので、それからどうなったかを知りたかったですね。
高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)Amazon書評・レビュー:高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)より
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No.38:
(4pt)

一回では読みこなせないかも。

冒頭、米国人チルダンが出てきて、やけに日本人に腰が低いなと思ったが、

先の大戦で枢軸国側が勝利した世界が舞台で、その設定が自分には新鮮だった。

フランクの作った装飾品があらすじに大きな影響力を及ばすのかと思いつつ読んだが、そうではなかった。

2名射殺し精神的ダメージを受ける田上が、公園で瞑想にふける場面は、小説の中で何らか役割があったのだろう。

読み物としては楽しめた。ただ、ラストにもっと刺激が欲しかったな、というのが感想。

アメリカが敗戦国となる設定なら、戦争について読者に考えさせる内容もあってよかったように思う。

ハラハラドキドキも中途半端。哲学的な深淵も感じず、自分には「電気羊」の方が良作に感じた。
高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)Amazon書評・レビュー:高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)より
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No.37:
(5pt)

個人的にはディックで一番の傑作

人物描写に関してはSFだし昔のアメリカ人なんだからまあそんなもんかと思えるかな。
それよりも、深く読むと見えてくる虚構とが真実になり、真実が虚構になるストーリーの構造の緻密さが良い。ガワはSFだけれども、物語の根底に流れる「何に価値を見出すか」「何が価値となるか」というテーマは純文学のそれである。
またディック自身が書きたかったらしい「市井の人間がカッコ良い瞬間」がとても小気味好い。チルダンとポール梶浦のシーケンスや、田上の危難のシーケンスなど、そこらへんにいそうな普通のおっさんのかっこいい瞬間ってめっちゃかっこよく見えるわな。
高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)Amazon書評・レビュー:高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)より
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No.36:
(5pt)

戦争に負けて良かった

僕は中学生の時読んだ毎月SFマガジン買ってたので書評が良かった。でも激賞ではない。記憶。枢軸国が戦争に勝った、という発想にまだ敗戦から20年頃の日本で違和感があった。外人が蕪村など知ってるので戦時中情報機関にいた作者だろと思った。ドナルドキーンはそうだ。後は受験。マルクス主義からで忘れてしまった。自殺は後に知った。ブロディガンも自殺で夢のカリフォルニアではないことが。ケルアックも緩慢な自殺で暗い気分に。デックがウイノナライダーのヒッピーの両親と知り合いだというのは明るい気分に。ウイノナがオフビートなのは子供のころの知的環境だろ。
高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)Amazon書評・レビュー:高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)より
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No.35:
(5pt)

ディストピア小説ではなく、世界を選び取る人間の力を描いた小説

ドイツと日本がもし戦争に勝っていたらという、いわゆる平行世界ものですが、このSF小説がそれ以前のものと異なっているのは、このフィクションの世界の中でも、もしイギリスとアメリカが買っていたらという逆の小説が流行っているという設定になっている点です。言わば、フィクションの様々な登場人物を我々が覗いている一方で、彼らも、もうひとつの現実に気づき、他の世界を垣間見ているのです。
ドラマ版ではどうしても視聴率を上げる為に、「自由の国アメリカを取り戻す」というテーマにすり替わってしまっていますが、原作はそんな事はなく、むしろ、どちらの世界でも結局はそんなに変わらないという事を描いているように思えます。ある登場人物は、もしドイツが負けていたら、「世界はウォール街とモスクワのユダヤ人によって支配されていただろう」と語り、また戦争に勝ったイタリア人の登場人物はイギリス兵による無差別攻撃や残虐行為について語っていたりします。
それともうひとつ、本書はディストピア小説では全くなく、登場人物の多くが易によって人生の岐路でどちらを選ぶべきかを占ったりしますが、最後に世界は人間ひとりひとりが選び取っていくものだという事に気づいていきます。異世界に迷い込んでしまった田上(Tagomi)も自分の強い意思で元の世界に戻ってきます。そういった希望を残してくれる小説です。
高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)Amazon書評・レビュー:高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)より
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No.34:
(4pt)

読み手を選ぶ本

あらすじだとか世界観は他のレビュアーが書いていますので省略

ごく素朴なこの本を読んだ感想ですが
「読み手を選ぶ」なぁ~という感じでした。

面白い面白くないの二択で答えるなら
自分には面白かったです。

毎日1時間程度、約50ページづつ読むとして
400ページ強なので一週間ちょっとで読めます。
その気になれば一晩で読破できるでしょう

時間が許せば、その方が前後の繋がりなど
分かりやすいかと思います。
なにせ、話がアチコチの場所に飛びますから
少し前の事になると忘れてしまいます。

この小説には重要な人物が何人かでてきますが
最初はジュリアナが主人公かと思っていましたが
今では田上氏がそうなんじゃないか?と感じています。

準主人公はロバート・チルダンかな?
フランクのおかげでアメリカ人の誇りを取り戻したみたいなもんだから・・

ただ、このお話には終始、易経がでてきて物語を支配しています。
自分はその方面はとんと疎いので何とも言えないですが

まさかの最後もそのオチとは・・

事前に得ていた情報から、想像していた展開と
大いに違っていましたが、こういうソフトな終わり方も悪くないと思いました。

まだ一度しか読んでないので、また二度三度と読んだら
感想も変化するやも知れませんね。

あと、軍事的用語が多く出てきますので
それなりの知識があるのとないのとでは
絶対ある方が楽しめるかと思います。



特高・・特別高等警察、大日本帝国の政治警察、取り締まり対象は主に無政府主義者、共産主義者、社会主義者など

国防軍・・ドイツの正規軍(陸・海・空軍)

SS・・ドイツ親衛隊、元はヒトラーを護衛する党内組織として創設されたが、
   第二次大戦開戦時には軍事組織の保有を許可されている↓

武装SS・・親衛隊における武装集団、国防軍とは違い徴兵権はないので基本的に志願による入隊が中心

SD・・親衛隊情報部または親衛隊保安部(諜報組織)

ゲシュタポ・・秘密国家警察(ドイツ警察の中の秘密警察部門)

※主にWIKIより抜粋
高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)Amazon書評・レビュー:高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)より
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No.33:
(5pt)

古風な文体を求めて旧訳にチャレンジ

言わずと知れた「高い城の男」の旧訳です。原作は62年出版なのでほぼ同時期の翻訳です。現行だと90年に改訳されたものが主流ですが、果たして作者と同時代の人物が訳した文章はどんなものだったか知りたくて購入しました。

読んでみるとさすがにSF小説らしく、旧訳と新約で大きな文体の変更はありません。しかし旧訳には現代ではもはや使われなくなった漢字などが多用されているので、読みづらくはありますがより時代というものを感じられました。

思ってみれば作品は大戦が終わってからわずか十数年後に書かれたもの。日本でも戦前の記憶がまだ生きていた時代です。新約ではそれがすべて現代の漢字に置き換えられているので、読みやすくはありますが少々残念です。骨董品的な価値を文学に求める人なら買ってもいいのではと思います。
高い城の男 (1965年) (ハヤカワ・SF・シリーズ)Amazon書評・レビュー:高い城の男 (1965年) (ハヤカワ・SF・シリーズ)より
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No.32:
(4pt)

魅惑的なディストピア

魅惑的なディストピア. Very interesting ideas
高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)Amazon書評・レビュー:高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)より
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No.31:
(5pt)

【追記有】プライムビデオのドラマとは設定が異なります

『ブレードランナー』『トータルリコール』『マイノリティリポート』の原作者による、第二次大戦で枢軸国が勝利したパラレルワールドの1960年代北米を舞台にした小説です。
「本物と偽物の違いは何か」「本物であることに果たして意味があるのか」という問いが全編通して流れるのは、ディックの定番だなと思います。
プライムビデオでドラマ化され大好評を博し、第2シーズンも今年12月に公開になる予定の、話題の一冊です。
(現時点ではドラマ版は日本のアマゾンでは公開されていませんが英・米のアマゾンで英語版、ドイツのアマゾンで英語/ドイツ語版の第1シーズンが視聴可能です。)

小説版とドラマ版とは、かなり設定が異なっています。
キーワードになる『イナゴ身重く横たわる』は、この小説版では「高い城の男」と呼ばれる謎の小説家の書いた大ヒット小説で、連合国が勝ったパラレルワールドを描いていることからナチス政府に目を付けられている(帝国日本政府は「あくまでフィクションにすぎない」として黙殺しており、日本人の中にはかえって面白がって読みふけっている者までいる)ということになっていますが、ドラマ版では日独およびそれらの傀儡政府に所持を禁止され地下で密かにやり取りされている謎の8ミリフィルムで、それをレジスタンスの手を借りて「高い城の男」という謎の人物が収集しているということになっています。
主人公の一人ジュリアナは、小説版では夫のフランクと離婚しているけれども元夫の姓を名乗り中立地帯で柔道のインストラクターをして生計を立てている「ジュリアナ・フリンク」ですが、ドラマ版ではサンフランシスコで恋人フランクと同棲し合気道を学んでいる「ジュリアナ・クレイン」です(第1シーズンで役所に就職します)。
フランクは、ともに「フランク・フリンク」という名前でユダヤ系であることを隠している人物ではありますが、小説版では表向きは建具工場、その実は骨とう品の贋作を作る秘密工場に勤めていたけれども嫌気がさして同僚とともにアクセサリー製造工房を立ち上げた青年であるのに対し、ドラマ版では合法的な骨とう品レプリカ(昔の拳銃のコピー)を作る工場に勤めながら趣味のアクセサリーをコツコツ手づくりしている青年という風に変わっています。
ジョーは小説版では「長距離トラックの用心棒でイタリア系の元軍人ジョー・チナデーラ」と名乗っていましたが、ドラマ版では「レジスタンス活動のため自らナチス政権下のニューヨークからトラックを運転してきた青年ジョー・ブレイク」となっています。
また、ドラマ版で重要なキーパーソンである、ジュリアナの種違いの妹(実の母とその再婚相手の娘)でレジスタンス活動をしているトゥルーディ、ナチスの傀儡国家の東アメリカのナチ党親衛隊支部高官であるスミス元帥、サンフランシスコ憲兵隊本部の木戸主任捜査官は小説版には全く出番がないです。
ドラマ版を見て原作が読みたくなった方は、以上の違いに注意して下さい。

さて、この小説版では先述の本物と偽物云々という以外にも、以下の3つの視点からストーリーが展開されていきます。
一つ目は、勤め人を辞めベンチャーのアクセサリー工房を立ち上げたフランクの一代記(と、そのフランクに影響されていく周りの人々の物語)。
二つ目は、「高い城の男」の謎を探るジュリアナとジョーの冒険物語。
三つ目は、史実の米ソ同様に同盟国としてともに世界大戦に勝利したものの、冷戦に突入し、いつなんどき核戦争を起こしかねないという状態になった日独の国際政治ドラマ。
ディック作品の常として、これらの表面上のストーリーラインの下を流れる哲学は一貫して「本物と偽物の違い」に関する問いなのですが、その哲学の部分をあまり考えなくてもそれなりに楽しめるレベルなのはさすがだと思います。
最期の1ページまでドキドキハラハラが止まりませんでした。
ディックの長編では珍しく哲学の部分は控えめな主張となり、エンターテインメントの部分が強調されています。

ドラマ版は、欧米ではヒットしていますが、日本では恐らく物議を醸すだろうなという描写が多いので(まあ日本が勝ってる世界を描いた作品なので当然なのですが)、結局日本には上陸しないかもしれません。
ですが、それを差し引いても本書は読む価値のあるすぐれたエンターテインメントだと思います。
是非、一読してディックの世界に足を踏み入れてみて下さい。

ただ文句をつけたいところが一点。
原語版で"Baron L. B. Kaelemakule"とされている人物がこの版では「鎌倉男爵」という名前になっていること。
"Kaelemakule"は誤記ではなく、ネイティブハワイアンのファミリーネームです。
史実の帝国日本には実は、李氏朝鮮王家の血縁者である等の理由から、朝鮮籍で爵位を与えられた人物も数十名単位で存在していました。
この小説の世界ではハワイ、アラスカ、アメリカ西海岸が日本の領土になっているので、この「カエレマクレ男爵」はハワイ出身、おそらくカメハメハ/カラカウア/ルナリロ王家の血縁者であることから爵位を与えられた人物なのではないかと思います。
(実際、イニシャルは違いますがカエレマクレ姓の、カラカウア王家の末裔の方が複数現在もハワイにいらっしゃるようです。)
まあこの男爵はいてもいなくてもストーリーにはあまり関係しない人物なのですが、そこ以外は本当に好きな作品です。

【2016年12月13日追記】
日本でもドラマ版のシーズン1が公開になりました!
吹き替え版・字幕版が用意されていますが、キャラクターの役職名等、私の解釈と違う訳され方をしたところがありました。
(どっちがニュアンス的に近いかはよくわかりません。)
上記のドラマ版に関する記述は、あくまでも私が通しで見た英国公開版を基準にしていることをあらかじめご承知おきください。
高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)Amazon書評・レビュー:高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)より
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No.30:
(5pt)

Obergruppenführer

昔PKDにはまって読みました。破綻がなくて淡々としています。
昨年amazonのテレビドラマシリーズができて、それを見ました。ドラマと原作はストーリーも登場人物も違うところがずいぶんありますが、共通の雰囲気は保っています。
高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)Amazon書評・レビュー:高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)より
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No.29:
(5pt)

良い

良い商品をほかより安く手に入れることができてとてもよかった。
高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)Amazon書評・レビュー:高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)より
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No.28:
(5pt)

高い城の男

村上春樹がこの小説の新訳を準備中とのことです。 タイトルはあえての「ハイな城の男」 あわせて読みたいです。
高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)Amazon書評・レビュー:高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)より
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No.27:
(5pt)

こんな事あり!

現代で考えると非常に複雑な心境になります。 もしも、もしもですが、この本の内容が起きていたらって考えると おそろしいかも。
高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)Amazon書評・レビュー:高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)より
4150105685
No.26:
(4pt)

戦後、世界は何を得何を失ったか

今話題になっているので手にとってみた。
 第二次大戦の勝者が逆転した世界。舞台は60年代ながら、日本人が非創造的なおかげでこのパラレルワールドでは人力タクシーがいまだに走り、自動車はそれほど普及していない様子だ。日本の支配地域では人々の聖書は「易經」に代わっていて日本人は精神的な「道」を求める人々というように描かれ(これらは日本人をデフォルメしすぎだが)、被支配者のアメリカ人がそれについて戸惑う姿も描かれる。一方でドイツの支配地域は彼らドイツ人の理想世界に現実を無理やり従わせようとする管理主義的な世界で、宇宙に進出するほど科学技術もかなり発達している。これらの仮想世界では、現在の物質主義が支配的な英米の価値観ではなく形而上のものが上位を占めている。支配者の行動の指針となっている第一のものは精神論や理想論であり物欲や金銭欲ではない。
 さらにこの仮想世界のなかには、もし連合国が勝っていたらという架空の小説が登場する。こうした入れ子状態をつくることで作者は何を示したかったのか。読者はいろいろと考えさせられるはず。最後に登場人物が意味深な言葉を言うのだが、おそらくこれは易や太極図の構造を述べたものだろう。作者の東洋哲学に対する興味と理解が結集された作品。
高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)Amazon書評・レビュー:高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)より
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No.25:
(5pt)

エーデルワイス。。。米国にとってのパラレルワールドとは

アメリカでは低予算の割にかなり頑張っているとYoutubeなどでも評判の本作ドラマ化の"the man in the high castle"というAmazonビデオが米国amazonで放映されてかなり高評価のようである。中国の海洋進出に右往左往している米国の現状からすると、なんか冗談とも笑っていられないストーリーなんだろうか。フィリップ・K・ディックは「ブレードランナー」とか「トータル・リコール」とかの原作で、なんとなく尖ったSFのイメージがあったが、本作はジョージ・オーウェルの「1984年」の向こうを張ったのか、少々肩に力が入り過ぎて、日本とドイツの戦前の雰囲気が妙な感じで表現されていると思う。ただ、寧ろ本作のような作品から入ったほうが、なぜ彼がSFに拘ったのかなど、彼の作品の真の意味を理解できるのかも知れない。
いずれにしても、せっかくアメリカでドラマを流しているのだから、Amazonさんも遠慮せずに日本でビデオを流してくれないだろうか。
高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)Amazon書評・レビュー:高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)より
4150105685
No.24:
(5pt)

ビッグデータ解析のいまPディックをもう一度見る必要あり

パラレルワールド、つまり未来を予測した結果として現実と乖離した世界の存在を予言したSF。ヒモ理論M理論を思わせる深い考察。

ストーリでは、アメリカ合衆国の東半分をナチス、西半分を大日本帝国が分割統治する世界が描かれているが、それはひとつの可能性。中国の易経に凝ってさいころを振りながら書いたといわれており、本書には、じつは未来予測を可能にするテクノロジーの存在を、はっきりとみすえたPディックがいる。
つまり、グーグルがMSをつぶしてしまう可能性のある2015年からこのSFを考えると、ある時点で分離発展する現実の二面性について、ものすごい洞察力をもっているのがPディックだということがわかるはず。
素粒子が、確率的存在をもちながら時間的な経過をたどるという、物理ではごく当たり前の考え方(「パラレルワールド」の存在、ビッグバンによる拡張)の、現実世界への応用ともいえる。

一時期、オカルトみたいな行動をとったという私生活の神秘さもあり、もっとも今日的な意味をもつSFだといえる。アメリカでは再評価されており、フィリップKディック学会まであるぐらい。ちなみに、彼は、5回結婚したがずっと貧乏だった。ハリウッド映画の原作者として、死の直前に大金をつかみ、背の低い某アクション俳優、トップガンなどにも主演している、の主演で、映画化されている。が、映画そのものはできがわるい。原作者として大いに後悔したらしいのも、DVDをみるとなるほどと思います。

翻訳はできがわるいというか非力というか、日本語として、原著のダイナミックで荒々しい、しかし神経質な、言語的雰囲気を伝え切れていない。 原著をお勧めします。やたらと、大日本帝国を美化しているのは、やや事大主義の勉強不足。

お勧めします。
高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)Amazon書評・レビュー:高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)より
4150105685
No.23:
(5pt)

日本人の一言でなぜか引き込まれた

登場人物の名前を「わざと」ジャングリッシュで発音する日本人、その下りに妙に惹かれて最後まで一気に読んだ。 ただ、読み手は選ぶ。 そこはディックなのだから致し方あるまい。  分かりにくく、癖の強いSFが好きな向きにはお勧め。 そういうのは初めてという向きは取り敢えず2001年か、せめて華氏451度が無難かと思う。 プロット至上主義者は…まあディック自体を手に取らないか。  個人的には星4つ+登場人物の面白さ(何ら面白みのない連中だが、それが何故か面白い)に追加で一つ。
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4150105685
No.22:
(5pt)

因果

最初はアメリカ人が日本とドイツに戦争で負けた世界で、日本とドイツに再度戦争して勝つお話なのかな?と思って読んでいたけれど、そんなことはなかった。

序盤はロバート・チルダンというアメリカ人の話が主流。
この人物がただの商売人で「日本人嫌い、でも、ビジネスパートナーだし、戦勝国だから相手してやる」といった感じで、本書の世界の世知辛さを体現している。
だから、それだけの物語なのかと勘ぐってしまい、展開が少し退屈だと感じた。

だが、読み進めていくにつれ、出てくる登場人物同士が間接的に影響し合い、自らの運命を変えていく。
あるものは人を救い、あるものは新境地に達し、そして、あるものは別の真実にたどり着く。
それらの過程が日本人なら歴史の教科書で誰もが知る『易経』という占いによって様々に作用しあい、選択していく。
登場人物は立場は違えど、圧倒的な権力に屈服せざる得ない人たちだ。その者共が悩み苦しみ結果にたどり着く、または導く。
中でも、主要な登場人物である田上とフリンクの関係性には深い因果を感じた。
物語全体として派手さはないし、解りやすい一筋物語があるわけではないけれど、『易経』を通じて織りなす様々な人々の物語とその結果は読んでいて引き込まれていった。

本書には仏教や哲学的なもの等々の小難しいセリフが多い。
作中にロバート・チルダンが、ある日本人から”無(ウー)”に関することを熱心に説明されるシーンがあるのだが、ロバートはよくわかってなかった。
ぶっちゃけ、私もロバートと同じ状態だった。
単に教養がないだけ、本書を読み込めてないだけだと言われれば、ぐうの音もでないが...

以上のように多少小難しい話があるので取っつきにくい、読みにくいかもしれないが、
個人的に以上に述べた要素が好みであれば読んで損はないと断言できる。
高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)Amazon書評・レビュー:高い城の男 (ハヤカワ文庫 SF 568)より
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