空間亀裂
- 覗き (20)
※タグの編集はログイン後行えます
【この小説が収録されている参考書籍】 |
■報告関係 ※気になる点がありましたらお知らせください。 |
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点0.00pt |
空間亀裂の総合評価:
■スポンサードリンク
サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
現在レビューがありません
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
巨匠フィリップ・K・ディックの作品の中ではマイナーな作品のはずなのに、すべてのレビュアーさんが5つ星!をつけていたので、気になってAmazonで購入しました。 読んでみて高評価の理由も納得できました。登場人物のキャラと巧みなストーリー展開で読ませる異世界SFでした。 超高速移動機の内部に発見された「空間亀裂」。その亀裂の向こうには荒涼とした別の世界(平行世界=パラレルワールド)が広がっていた。 この物語設定自体は、私にジェリイ・ソールの『異次元への冒険』(ハヤカワ文庫SF)を思い出させました。30年以上前に読んだ異次元世界ものの傑作。 『異次元への冒険』も面白かったけど、それを上回るのが本作『空間亀裂』でした。 まず人物設定で一番目を引くのは、黒人初の大統領をめざすジム・ブリスキン候補。 主要登場人物だけでも20人近い本作の中でも、彼は主役級の扱いです。 本作は、オバマ大統領の登場を40年前に予言していたという点でも注目されたようです。 開巻早々、大統領選挙運動がピークをむかえている時期であることが分る。それに伴う、現職大統領ビル・シュウォルツ陣営と、ブリスキン陣営との丁々発止の政治的な攻防戦が見どころのひとつ。 ブリスキン候補にはソール・ハイムという名選挙参謀がいて、このハイムの縦横無尽の活躍も見もの。妻のパトリシアとの、おしどり夫婦ぶりも読んでいて楽しい。 かたや超高速移動機の開発元、テラン開発の老社長ターピンや、専務のスタンリー、はたまた超高速移動機自体の製造・販売業者であるペテル等、SFをSFたらしめている技術面担当のキャラも立っている。 おまけにこの作品世界、たいへんな人口過剰に悩まされており、これ以上人口を増やさないために、避妊具は無料配布、地球の上空には娼館衛星なる巨大人工衛星が周回していて、男性たちは大挙して娼館衛星を訪れ、5000人もの美女たちと性の遊戯を楽しんでいる。 その天空の巨大娼館のオーナーが、ジョージ・ウォルトという、1つの頭に2つの体を有する結合双生児の御仁。この男が本作最大の大悪党―――言い方を変えればトリックスター的な存在。 貧しい有色人種(コルズ)たちは、人口過剰であるがゆえに職も住居もままならず、本人たちの希望で冷凍保存され凍民 (ビブズ) になっている。その数7千万人以上! 今回、超高速移動機の故障による空間亀裂の彼方に新天地が発見されたことを機に、大統領候補のブリスキンは、新天地への大量移民を選挙公約として謳いあげ、国民の心を掴むことに成功する。 ところがどっこい、新天地 (パラレルワールド) には独自の進化をとげ、ある種の科学技術さえ有している北京原人が住んでいて移民なんかできたものではなかった。 しかも、娼館衛星オーナーの悪党ジョージ・ウォルトが、あろうことか北京原人がわに寝返って、結合双生児という奇妙な体型を利用して異世界で神として崇められることに成功する。 こうして、現生人類(ホモサピエンス) VS 北京原人の間で、あわや戦争というところまで行きそうになるが・・・・。 という具合で、とにかく登場人物たちのキャラが立っており、現大統領シュウォルツ陣営 VS 黒人候補ブリスキン陣営の丁々発止の政治的駆け引き、プラス、現生人類 VS 北京原人の駆引きという2段構えのストーリー展開が読者の興味を引きつけて離さない構造になっているのです。 駆け引きに次ぐ駆け引きは非常に読みごたえがあり、途中で読むのをやめられなくなりますね。ディックの術中にハマった感じです。 ディックファンは言うにおよばず、異世界・異次元・平行世界の荒涼としたディストピア的な風景に郷愁(?)のようなものを覚えるかたにも、ぜひお勧したい作品です。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
この作品の前半部はすでに冬木亘訳「カンタータ140番」として発表されていたが、このたび佐藤龍雄氏の手で晴れて完本として本邦全訳されたというわけだ。 特殊飛行体の一部の空間亀裂から覗いた別次元の地球。それは現生人類ホモ・サピエンスならぬ絶滅したはずの北京原人が独自の進化と発展を経て誕生させたパラレル惑星だったが、人口爆発で苦慮する大統領派と次期大統領派がこの新天地を活用しようとあの手この手で暗躍するというプロットに多少の既視感があるとしても、そこに登場する人物の存在感と一寸先の闇を猛進する際に物語が巻き起こす本物感と真実味は、他のいかなる作家の追随を許さぬものがある。 まことにディックのいかなる駄作といえども本邦の優れた小説に匹敵し、ましてやその傑作ともなれば後者のいかなるそれも及ばぬ高みに光り輝くのである。 ハンパない真逆ツンデレぜんぜんオッケーてへペろきゃわたんワイルドだろぉ 蝶人 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
正直、未だにディックの新刊買ってレビューするからには思い入れ補正コミで星5つ以外の評価はつけられません。 まだ未訳が残っていたのかという軽い驚きとともに、どんな出がらしの駄作なんだろうと思って読んでみると、以外にそうでもありません。 半世紀近く昔の執筆ということを鑑みればむしろ評価すべきだと思います。文章も読みやすいし、アイデアも構成も秀逸です。 ただそれもこれもディックフィルターを備えた目を持つ人が読んだ場合に限ってのことであるというのも間違いないでしょう。 お洒落な表紙のイメージに騙されてはいけません。「カッコイイ」とか「洗練された」とか「緻密な」とかの対極にある世界観を許せる人にはたまらなく面白いでしょう。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
この時代の著者は、まだ、まともだった。なので内容は書かれている以上でも以下でもなく、ただ娯楽用に書き飛ばされただけのエンターテインメント。従って、面白い。 空間を超越して移動する乗り物が一般に使用されている社会で、装置の故障から現世人類ではなく北京原人の子孫が繁栄している平行世界に繋がってしまうが・・・ 黒人初のアメリカ合衆国大統領を目指す男、衛星軌道上で娼館を営むシャム双生児(だった)の男、失業者対策にもなっている冷凍睡眠事業(貧困層が多く眠っている)、臓器移植で名を馳せている高名な医師と愛人・・・様々な者や要素が絡み合い事態は予測不可能な方向へ転がって行く。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
ディックファンが待ち望んでいた本邦初訳長編の出版である。 ハヤカワSF文庫の中短編集「シヴュラの目」所収の中編『カンタータ百四十番』に後半部を書き足し長編化したもの。 ありゃま、せっかくのハッピーエンドを削除しさらなる「混乱」と「戦い」とが付け加えられ、一体どうなっちゃっうんだろう?おいフィリップ大丈夫なのかっ?と言う感じではあるが、最後はまあまあな解決法で終わるのでご安心を。 ディック初心者は「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」とか「ユービック」(ハヤカワ文庫SF)とかの完成度の高い長編から読んだ方が無難であると私も思っていたが…。 ディックの作品には『慣れ』が必要なので。 しかし初心者でも「創元SF文庫」に在るような少しマイナーな作品にも挑戦してもらいたいですね。ディック作品に駄作無し! まあとにかく残る未訳長編(SFの)も「Vulcan's Hammer」と「The Ganymede Takeover」の2つだけになった。長く苦しい出版待ちの歳月幾星霜であった…。 サンリオSF文庫版作品(「銀河の壺直し」「怒りの神」「シミュラクラ」「時は乱れて」)の新訳再販にも早い出版を期待したい。 と、ここでご注意。 創元SF文庫は後で読もうと思う作品も、出版されたらすぐ購入しておかないとならない。 次に再版されるのは何年後何十年後の「夏の復刊フェア」になるか分からないからである。 | ||||
| ||||
|
その他、Amazon書評・レビューが 5件あります。
Amazon書評・レビューを見る
■スポンサードリンク
|
|