あなたをつくります(あなたを合成します)
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「憂鬱な気分に浸りたい時はディックを読むことにしている」とは村上春樹の言葉だが、そんな言葉にぴったりのディックの名品。同時期の有名作「高い城の男」に似て、SF色は弱い。ちょうど主流文学への移行を図っていた時期の作品である。 最初はいつものディックらしいストーリーである。落ち目の電子オルガンメーカーが起死回生の製品として製作した「シミュラクラ(模造人間)」。これを主人公(わたし)は反感を覚えながらもアメリカ一の実業家に売り込もうとするが・・・みたいな出だし。 ディックにはめずらしく一人称の主人公、しかもこの「わたし」は少しナーバスで偏屈なところがあり、それを隠そうともしない。なんだかそう好かれそうにもないこの「わたし」を、ディックにしては非常に珍しく一人称で語り続けるその理由は、後半、「わたし」が同僚の娘で精神分裂病で入院歴を持つ黒髪の少女プリスに出会ったところから分かりはじめる。 他人の心に共感できず、試したり利用してばかりのやっせっぽっちのプリスに、罵倒され、時には誘惑?され(それすらもどういう思いからのことか「わたし」には到底理解できない)、翻弄されつづける「わたし」。後半は遂にシミュラクラに心から共感し、ますます自分も人間もわからなくなっていく「わたし」。そしてプリスのあまりにも絶望的な拒絶と、激しい妄想に溺れていく「わたし」。その「わたし」の心がこわれていく様は、共感とか感情移入というより、自分も心を失ってしまいそうなくらいの素晴らしい描写だった。 ある時期のディックらしく、プロットは混線し伏線は忘れられ、混迷を深めていくのだが、この破綻ぶりが、これは黒髪のヒロインに出会った「わたし」と、書き手であるディック、そして読んでいて涙を貯めたくなる読者、3者の混乱と悲しみそのものを表してしているかのようで、かえって情動的な作品になっている。ちょうど、人と話しているときに、悲しい思い出に触れてしまい、そっちに話がどんどん進んでいってしまったときのようだ。 やるせない悲しい読後感は忘れられない。ぜひ買って、何度か読む愛読書の一つに加えて下さい。 | ||||
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似非人間機械シミュラクラは機械でありながら、人間同様の試行回路と情動をもつ。 シミュラクラを設計した黒髪のスレンダー美人プリスは、その容貌と氷のような理性と心からして「アンドロイドは電気羊の夢を見るか」のアンドロイド・プリスの原型(文字通り「このプリスを型どりした」という意味)かとも見える。 主人公の電子オルガン会社のライバルは、電気羊でおなじみの「情操オルガン」。 「シミュラクラを作る能力をもったシミュラクラをつくれば」などのセリフは「変種第2号」に続く道か、と思わせる。 主人公はプリスに恋して、常軌を逸した行動をとり、精神異常者として施設に収容される。11人に一人は精神異常、という異様な世界。思春期の精神不安定も、恋愛初期の多幸症も、大きな不幸による鬱も精神病の症状だなんて言われたら、あなたも私も精神異常だ。 主人公は快癒して退院する。それだけ。 唯一「まとも」であるはずの主人公がどこでプリスに恋したのか、全く理解できない。 取り付かれたあるいは電気的に同調された、としか思えない。ちっとも情動的でない恋なのだ。 主人公と感情的に同調できたのがシミュラクラのリンカーンだけ、というのもリンカーンの人間性よりは主人公の非人間性を証明するようにも見える。 後半「主人公もシミュラクラ」なんてありがちなオチになりませんように、と祈りながら読み、願いはかなえられた。しかしその陳腐にはまる誘惑に耐え切れず、ホワイト氏の加筆による別の版では、まさにそのような最終章が加えられたものもあるそうだ。 この版は、純粋にディックの筆によるものだそう。ああ、よかった。 | ||||
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ディックの作品には、SF的な世界での現実と妄想の混交が醸し出す独特の雰囲気というのを期待してしまう。しかし本作品ではそれはかなえられない。「材料が揃っているのに、うまく料理されていない」そんな感じだ。 解説には「SFから主流文学への橋渡し」をめざした作品とあるが、仕事半ばという気がする。 | ||||
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破綻寸前の電子オルガン製造会社を営むルイスは、パートナーから商品の鞍替えを持ちかけられる。精巧なシミュラクラ(模造人間)・・・それはパートナーの精神不安定の娘プリスが天才的頭脳を発揮して作り上げたものだった。彼らは事業を拡張するため、億万長者に売り込みをかけるが、それぞれの思惑の違いから事態は奇妙な方向へ捻じ曲がっていく。 ヒロインの名は、プリス。氷のように冷たく獣のように敏捷でガラスのように脆い。まさにディックの理想的ヒロイン像。彼女に対する愛憎から、主人公は狂気の淵へとひた走る。 混乱した作品である。決して読みやすくはない。だが、読了後は奇妙な愛着を抱かずにはいられない。そのあまりにも個人的な筆致ゆえに。 | ||||
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