暗闇のスキャナー
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ヤバい。ウケる。翻訳一つでまさかハードSFの印象があるディック小説がこんなゲスい作風になるとは! (不適切発言 笑) だけど、どこからともなく供給されるドラッグ「物質D」がアメリカ中に蔓延している未来社会が舞台で、皆んながラリパッパなので、これでOK。最っ高。 主人公は覆面麻薬捜査官のボブ・アークター。 ヤク中の様なナリで、ヤク中の様な話し方をし、ヤク中仲間の二人と共に、カリフォルニア州オレンジ郡の一軒家で暮らしている。捜査官あるあるとでもいうか、アークターは物質Dの常用者になっていた。 アークターは、複数人の売人から物質Dを買い付けていた。売人が仕入れ金額を賄えないくらいになって、上部とアークターとの直取引を望む様にするために取引量を増やしていっていたが、売人の中でも、ドナ・ホーソンに絞り込んでいた。何故なら調査を始めればしょちゅう会わなければならないし、なによりアークターはドナを自分の女にしたかったからだ。 彼ら覆面捜査官は、表だった場所に出る際にはスクランブル・スーツというものを身につける。このスーツを着ると周囲からはぼやけたもやの様にしか見えなくなり、声まで変わる。正体がバレない様にだが警察署内でも同様で、仲間や上司も皆スクランブル・スーツを着ているので、お互いがもやっている訳だ。 スーツ着用時の彼は、フレッドと名乗った。 或る日、フレッドは盗視聴機(スキャナー)を仕掛けてアークターを監視せよと上司から命令を受ける。情報提供者からのタレコミがあって調べたいと言うのだ。 命令に従うフレッドだかアークターだかだったが、その彼に事件が重なり始める。 そして、やがて彼自身の意識に異常が起こってきた。それは、物質Dによる副作用だった。 英国SF協会賞受賞、ディック後期の傑作と名高い本作は、『スキャナー・ダークリー(A Scanner Darkly)』として、リチャード・リンクレイター監督により2006年にアメリカで映画化された。 主演のキアヌ・リーブスには興味は湧かないが、ウィノナ・ライダーが演じるドナはちょっと観てみたい。 尚、ヤク中たちの言動や妄想などは、アークター同様、ヤク中たちと共同生活をし、麻薬を常用していた頃のディックの体験に基づくのだそうだ。 で、読後感だが、ディック作品としては異例の作品ではないか。訳には関係なく。 ディックお得意の「これは現実か」「何が真実か」といった虚構と現実のせめぎ合いや、形而上学的な展開もない。ましてやスクランブル・スーツの存在を除けば、殆どSF的でもない。 稀有な一作ではあるが、しかし、ディックが自ら評した様に、本書が最大の傑作だということには異存がない。 | ||||
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現在30代以上の人にとって「スキャナー」は「スキャナー・ダークリー」ではなく、山形浩生(あるいは飯田隆昭)の訳した「暗闇のスキャナー」である。 2006年に映画になったときには、こんなヘンな小説がよく映画になったなあ、と不思議に思っていた。というのは、SF的でありながら、麻薬中毒を題材に扱った(ディックもその仲間たちも当事者だった)、深刻な、悲しい小説だからである。 登場人物は、とにかく遊ぶ、後先考えず、麻薬に手を出す。脳ミソや内臓にダメージを与えようが、使用する。たとえ身近に死人が出ても。 ディックは、「この小説に教訓はない。ただ結果がどうなったかを書いているだけだ」と書き残している。かつて、ドラッグこそがすべてを変える、などとアホらしい戯言に騙され、いろんな麻薬が消費された。ヘロインやコカインでいくら死人が出ても、人々はやめようとしなかった。 「ぼくは見た。死が地面からのびのびと生えているのを見た。」このセリフは、忘れることができない。 ディックは、統合失調症になり、内臓に回復不能のダメージを被り、50代で死んだ。彼の「仲間たち」も、みんな不治の病で死んだ。 あんまりに悲しい小説である。でもそれをいうなら、ディックの小説はほとんどすべてが悲しく、残酷で、救いがない。 そんな状況の中、人物は懸命に生きている。廃人になって死ぬのが落ちなのに。狂ってしまうのに。 大昔、フランソワ・ヴィヨンという人が「質草は放っておけ、現金をつかむんだ。」と言った。けど、その現金が小銭程度で、質草が自分の一生だったら、そうはいかない。 1994年に、あるミュージシャンがヘロイン中毒で自殺した。彼もおそらく、ディックのいう「仲間たち」だろう。「こいつらは遊んでばかりいてけしからんとは言わない。ただ結果がどうなったかを書いているだけだ」。 1949年、ある小説家が入水自殺した。やはり彼もディックのいう「仲間たち」だったか。その作家は「罪の反対語は蜜さ」と書いていて、酒と麻薬に溺れた。 「罪があるとすれば、彼らが永遠に遊んでいたいと願った、ということだ」とディックは言う。ドラッグの濫用は病気ではなく、決断だ、とも。でも、そういう「決断」をする人は、麻薬があろうとなかろうと、走っている自動車に飛び込んでしまうのだ。彼らを癒し矯正する手段はない。そういうアドラー的人間は、そもそも麻薬で死のうと轢かれて死のうと、知ったことじゃないのだ。どこにでもそういう人はいる。彼らは死んでも、幸せになったり救われたりしない。「死と呼ばれるものは最後の苦痛にすぎない」。 | ||||
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私は先に浅倉久志訳のハヤカワ文庫SF版を読んでいたのですが、こちらの山形浩生訳の方がずっと良いと思いました。やや生硬な浅倉氏の訳に対して、山形氏の訳はドラッギーで、ラリラリで、独特のトリップ感があります。ただ、「女」を「ナオン」と表記しているのは如何なものか、と思いますが。バブル期に出た翻訳だからでしょうか。 話はディックにしては破綻が少なく、まとまっていますが、やはり鬼才ディックの長編なので一筋縄ではいきません。ディック未体験の方は、「ユービック」か「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」あたりを先に読んで、「ディック慣れ」しておいた方が良いかもしれません。一応、SF要素はありますが、ディックの実体験をかなり盛り込んでいるため、普通小説のような色合いが強いです。 それにしても、悪夢のような物語です。全く救いがありません。ディックはかつて深刻な麻薬中毒に侵されており、多くのジャンキー仲間をドラッグによって失ったこと、そしてディック自身も麻薬中毒の後遺症で寿命を縮めたこと・・・これらに対する自己批判が本書の執筆動機なのかもしれません。 長らく絶版になっており、一時期価格が高騰していたようですが、現在ではかなりお求めやすい価格になっています。有難いことです。 | ||||
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迷わなければたどり着けない場所。さらけ出さなければ守れないもの。 ディック作品というだけでなくて、あらゆる小説の中で一番好きな作品。 傑作って言うよりも、ケッサクって感じか?と思いきや、ちゃんと傑作。 人間ってバカで単純な、愛すべき生き物だって思えるときも少なくない。 けどそいつらが群れ暮らす「社会」ってものになってくると、 こんなにも複雑で難解になってしまうのはなんでだろう? 落ち込むことや怒りや憎しみにわれを忘れてしまうようなことに 満ち満ちているのはなぜなんだ? ディックって、本人が意図している以上に意欲的なテーマに 作品で取り組んでしまっている。それが、ここまで広く支持を得ている 理由のひとつだと思う。 もしこの作品を気に入られて『ゴールデン・マン』をまだお読みでないとしたら ぜひ手に取っていただきたい。前書きが本当に素敵なんです(いや、もちろん 各短編も本当に面白いです)。あれにはつらいとき、何度も救われた。 この「暗闇のスキャナー」とともに、おすすめします。 | ||||
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内容は文句無しに面白い。 でも最初、スラングやアメリカ的な言い回しなど慣れないと読みづらく全然頭に入ってこないかもしれません。 訳が悪いと言うよりは文化の違いなどもあるのでしょうきっと。 途中からだんだんと面白くなって小説の世界に入り込めました。 自分の読解力が足りなかったのか理解しきれなかった事も多かったので読み終わった後に映画を見ました。 映画を見て色々理解が深まりかなり良い作品だと思いました。 (映画の映像は賛否両論です。自分もいい面と悪い面を感じましたが小説の補足的な意味で見たので凄く楽しめました。) | ||||
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