死の迷路(死の迷宮)
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こういう「色んな事情を抱えた人々が一カ所に集められてサバイバルして謎の怪物とか出てくる話」って大体同じようなオチになる印象があります。 「こういう陰謀があって~」とか「怪物の正体はこれで~」とか細かい設定も要らないし楽そう。と穿った見方をしてしまいます。 神様の設定は面白かったです。 本編には関係ないけど訳者あとがきには面食らいました。 普通はもうちょっと穏やかに作品の解説をするものだと思うのですが、びっくりするくらい偉そうに語り始めるので、「あれ、これ本編の一部なのかな?」と思わず見返してしまいました。 良く分からないけどそういう毒舌が売りの人なんでしょうか? | ||||
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読了後、私はこの小説の目次に各章ごとのあらすじ風の章題が載っていることに気づいた。しかしこれが内容を全く要約していない完全にデタラメな代物で、おふざけにしてもあまりウィットさを感じさせるものでもない。ほとんどの人が読みとばすであろうこのデタラメな章題の意図するところは何か、、、と私はぼんやり考えてみた。 だんだんと私の脳裡に浮かんできたのが、昔デニス・ホイートリーという作家の小説をそのどぎつい章題に騙されながら読み進めていった記憶だった。一体どんな経緯でこんなあやしい事態が起るんだろうとワクワク期待に胸をふくらませながら話を追うのだが、章のおわりで裏切られ、続く章でも騙されつづけ、本が終わる頃にはこれがある種の釣り手法であることに気づかされた。実はたいしたことの起こらない小説を、仰々しい章題で最後まで読ませてしまうテクニックだ(デニス・ホイートリー・ファンの皆さんゴメンナサイ)。一昔前のペーパーバック物にはこういう手法が常套手段としてまかり通っていて、章題が購買層への訴求アプローチになっていたのかも知れない。 ディック氏はおそらくこの手法をパロディ的に真逆の要素として本作冒頭に用いたのだと思う。そこにはパルプSFというジャンルで本を出す自分への諧謔めいたニュアンスもあっただろう。しかしそれにも増して私が感じるのは、作品に対するディック自身の矜持(とその裏返し)だ。実際この作品は本質的にはメインストリーム並みであるように思う。人類の叡智と真理よここに凝縮せよとばかりに小説を展開するディック。しかし今作もパルプSFである以上は安く扱われるのは必至。ならばこちらからB級パルプよろしくあらすじ章題を巻頭目次に並べて、それをわざと唆らない意味不明なものにしてやることで、逆説的にこの作品が高尚であることを示してやろうじゃないか。ディックがそうたくらんでいたのだと考えれば意味不明の章題にも合点がいくのだ(すごく解りにくいが)。 しかしよく考えるとこれはつまりイカサマの逆であり、翻ってはディックの誠実さの顕われともなる。そして、実にこのような彼の掛け値なしの誠実さが、死後における彼のブランド化に一役買っているようにも思える。陳腐な物言いかもしれないが、読者は彼のこういう姿勢に人類愛めいたものを垣間見てしまうのだ。もっとも実際にディックは(その内面において)人間を、また偽らぬ人間性というものを愛した人物でもあったのだろう。私たちは本作「死の迷路」に登場する一癖も二癖もある人物達に対して、初めこそなんてイカレタ連中なんだとあきれるが、彼らがひとりずつ居なくなっていくに連れて、いつの間にか何とも言えぬ喪失感を抱いてしまう。おそらくディックは、このキャラクター達、そのモデルとなった実在の人物ひとりひとりをとても愛していたに違いない。 そんな人間愛のなせる技か、ディックは本作で読者を一種のホーンテッド・ハウスに引き込みつつ、自らの神学的・哲学的到達点をなるたけ平易に開示してみせる。しかもその見解をキャラクター達に逐一弁証させることで、独断に偏向することを勤めて回避してもいる。ここに本作の読みやすさ、バランスの良さがあるのだろう。まあそもそも彼の真理への希求が本質的に純粋な問いかけから発生しているのだから、これは至極当然な姿勢なのだが。 こうした彼の誠実かつ真摯な姿勢が、「社会への表向きの顔」としてデタラメ章題となって顕われている、とこう私は想像を巡らせたのだが、しょってる感じで一寸ディックらしいでしょ? | ||||
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キリスト教でもイスラム教でも仏教でもユダヤ教でもない宗教、というか神学が出てきて、それに対する登場人物たちの態度がストーリーと深く絡んできます。これをSFの「社会環境設定」の一つとして飲み込めるなら、「そして誰もいなくなった」的な生き残りサスペンスとして楽しめるでしょう。P.K.ディックのファンでなくても大丈夫です。もちろんディックファンなら、「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」や「ヴァリス」に通じる雰囲気や概念が散見され、味わいもひとしおです。感覚が裏返しになるようなどんでん返しもあり、最後にかっちりまとまっているようで、実は作り込まれた大きな穴が残されているところなど「あなたが落下し続けているゾッとする現代社会」を直観させてくれますよ。 | ||||
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ディックの小説はたいていの場合「本物と偽物の違いは何か」「そもそも本物ってそんなに価値がある物なのか」「むしろ偽物の方が優れているところもあるのでは」という問いが常に投げかけられるように話が組まれているんですけれども、これはその中でも最たるものなのではないかと思います。 帰る手段のない、辺境の植民惑星に集められた男女のグループ。 何の目的でそこにみんなが集められたかということが、全員そろった段階で衛星からの通信で伝えられるはずだったのですが、それが予期せぬ事故でメッセージの途中で止まってしまいます。 何の為に来たのかもわからず、奇怪な環境の中で、ある者は事故で、ある者は殺されて、どんどん死んでいく人々。 彼らが信じている独特の宗教。 ここに集められた目的の謎、惑星の環境の謎、人々が死んでいくことの謎を、かれらはなんとか解き明かそうとするのですが…。 面白くてどんどん読み進めてしまいましたが、残り10ページくらいになったところで「これどうやって落ちを付けるんだろう」とふと気づきました。 その解決手段はまあ、この頃のSFとしてはこんなもんなのかもしれませんけれど、救いがあるようなないような感じでしたね。 結局「何が本物で何が偽物なのか」というのはわからずじまいでしたし。 アマゾンプライム限定ドラマになった『高い城の男』や、映画になった『トータルリコール』『マイノリティリポート』『アンドロイドは電気羊の夢を見るか』あたりを期待すると、ちょっと肩すかしかもしれません。 中には怒ってしまう読者もいるかもしれません。 しかし、巻末の訳者の解説を読むと、これはこれでディックの文学史上の価値というものを考えるうえで重要な作品なのかもしれません。 ダメ人間賛歌というか、そういう登場人物たちのダメ加減のリアルさにも、やはりディックの手腕を感じますし。 登場人物はみんなどうしようもないダメ人間なんですけれど、自然と彼らについて感情移入ができ、どんどん物語に引き込まれていきます。 そこを味わうという意味でも価値があると思います。 とりあえず☆4つ。 ディックの他の作品も読み進めていきたいと思います。 | ||||
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10年くらい前に古本屋の100円コーナーで置いてあったのが目につき、買って読んだ。読んでいる最中は面白いと思ったが、少しして手放してしまった。ディックの小説はとくにヴァリスなんかは保存して何度も読みなおしているのだが、これは売ってしまった。 なんでかな、と思って今回電子書籍で買い直したが、それも納得だった。 これはディック後期の小説で、当時の彼の私生活では妻との不仲や知人の死が続発して参っていた時期のもの。その気分が小説に徹底的に反映されていて登場人物は次々に死ぬのに、それに恐怖するわけでもなく、助けようとするわけでもない。最後にSF的にありふれたオチがつくのだが、それもこの小説を覆う絶望感を覆すものではない。 ただ、全体的にユーモアはあり、慢全と読んでしまう。後期のディックは人生につきまとう絶望感に自分で発明した新宗教で対抗しようとした。この小説でもその新宗教の片鱗はあるものの、最後の三部作ほど徹底して捏造されたものではなく、擬似現実のキーアイテムでしかない。 ディックの小説の魅力はディックみたいな社会不適合者たちがたとえ狂ってでも現実に立ち向かおうとするところにあると私は思う。それは最後の三部作には顕著でそれが静かな感動を呼ぶのだが、今回は狂気の度合いが抑えられていて物足りないと感じた。 | ||||
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