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暗闇のスキャナー
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暗闇のスキャナーの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全18件 1~18 1/1ページ
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ヤバい。ウケる。翻訳一つでまさかハードSFの印象があるディック小説がこんなゲスい作風になるとは! (不適切発言 笑) だけど、どこからともなく供給されるドラッグ「物質D」がアメリカ中に蔓延している未来社会が舞台で、皆んながラリパッパなので、これでOK。最っ高。 主人公は覆面麻薬捜査官のボブ・アークター。 ヤク中の様なナリで、ヤク中の様な話し方をし、ヤク中仲間の二人と共に、カリフォルニア州オレンジ郡の一軒家で暮らしている。捜査官あるあるとでもいうか、アークターは物質Dの常用者になっていた。 アークターは、複数人の売人から物質Dを買い付けていた。売人が仕入れ金額を賄えないくらいになって、上部とアークターとの直取引を望む様にするために取引量を増やしていっていたが、売人の中でも、ドナ・ホーソンに絞り込んでいた。何故なら調査を始めればしょちゅう会わなければならないし、なによりアークターはドナを自分の女にしたかったからだ。 彼ら覆面捜査官は、表だった場所に出る際にはスクランブル・スーツというものを身につける。このスーツを着ると周囲からはぼやけたもやの様にしか見えなくなり、声まで変わる。正体がバレない様にだが警察署内でも同様で、仲間や上司も皆スクランブル・スーツを着ているので、お互いがもやっている訳だ。 スーツ着用時の彼は、フレッドと名乗った。 或る日、フレッドは盗視聴機(スキャナー)を仕掛けてアークターを監視せよと上司から命令を受ける。情報提供者からのタレコミがあって調べたいと言うのだ。 命令に従うフレッドだかアークターだかだったが、その彼に事件が重なり始める。 そして、やがて彼自身の意識に異常が起こってきた。それは、物質Dによる副作用だった。 英国SF協会賞受賞、ディック後期の傑作と名高い本作は、『スキャナー・ダークリー(A Scanner Darkly)』として、リチャード・リンクレイター監督により2006年にアメリカで映画化された。 主演のキアヌ・リーブスには興味は湧かないが、ウィノナ・ライダーが演じるドナはちょっと観てみたい。 尚、ヤク中たちの言動や妄想などは、アークター同様、ヤク中たちと共同生活をし、麻薬を常用していた頃のディックの体験に基づくのだそうだ。 で、読後感だが、ディック作品としては異例の作品ではないか。訳には関係なく。 ディックお得意の「これは現実か」「何が真実か」といった虚構と現実のせめぎ合いや、形而上学的な展開もない。ましてやスクランブル・スーツの存在を除けば、殆どSF的でもない。 稀有な一作ではあるが、しかし、ディックが自ら評した様に、本書が最大の傑作だということには異存がない。 | ||||
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現在30代以上の人にとって「スキャナー」は「スキャナー・ダークリー」ではなく、山形浩生(あるいは飯田隆昭)の訳した「暗闇のスキャナー」である。 2006年に映画になったときには、こんなヘンな小説がよく映画になったなあ、と不思議に思っていた。というのは、SF的でありながら、麻薬中毒を題材に扱った(ディックもその仲間たちも当事者だった)、深刻な、悲しい小説だからである。 登場人物は、とにかく遊ぶ、後先考えず、麻薬に手を出す。脳ミソや内臓にダメージを与えようが、使用する。たとえ身近に死人が出ても。 ディックは、「この小説に教訓はない。ただ結果がどうなったかを書いているだけだ」と書き残している。かつて、ドラッグこそがすべてを変える、などとアホらしい戯言に騙され、いろんな麻薬が消費された。ヘロインやコカインでいくら死人が出ても、人々はやめようとしなかった。 「ぼくは見た。死が地面からのびのびと生えているのを見た。」このセリフは、忘れることができない。 ディックは、統合失調症になり、内臓に回復不能のダメージを被り、50代で死んだ。彼の「仲間たち」も、みんな不治の病で死んだ。 あんまりに悲しい小説である。でもそれをいうなら、ディックの小説はほとんどすべてが悲しく、残酷で、救いがない。 そんな状況の中、人物は懸命に生きている。廃人になって死ぬのが落ちなのに。狂ってしまうのに。 大昔、フランソワ・ヴィヨンという人が「質草は放っておけ、現金をつかむんだ。」と言った。けど、その現金が小銭程度で、質草が自分の一生だったら、そうはいかない。 1994年に、あるミュージシャンがヘロイン中毒で自殺した。彼もおそらく、ディックのいう「仲間たち」だろう。「こいつらは遊んでばかりいてけしからんとは言わない。ただ結果がどうなったかを書いているだけだ」。 1949年、ある小説家が入水自殺した。やはり彼もディックのいう「仲間たち」だったか。その作家は「罪の反対語は蜜さ」と書いていて、酒と麻薬に溺れた。 「罪があるとすれば、彼らが永遠に遊んでいたいと願った、ということだ」とディックは言う。ドラッグの濫用は病気ではなく、決断だ、とも。でも、そういう「決断」をする人は、麻薬があろうとなかろうと、走っている自動車に飛び込んでしまうのだ。彼らを癒し矯正する手段はない。そういうアドラー的人間は、そもそも麻薬で死のうと轢かれて死のうと、知ったことじゃないのだ。どこにでもそういう人はいる。彼らは死んでも、幸せになったり救われたりしない。「死と呼ばれるものは最後の苦痛にすぎない」。 | ||||
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私は先に浅倉久志訳のハヤカワ文庫SF版を読んでいたのですが、こちらの山形浩生訳の方がずっと良いと思いました。やや生硬な浅倉氏の訳に対して、山形氏の訳はドラッギーで、ラリラリで、独特のトリップ感があります。ただ、「女」を「ナオン」と表記しているのは如何なものか、と思いますが。バブル期に出た翻訳だからでしょうか。 話はディックにしては破綻が少なく、まとまっていますが、やはり鬼才ディックの長編なので一筋縄ではいきません。ディック未体験の方は、「ユービック」か「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」あたりを先に読んで、「ディック慣れ」しておいた方が良いかもしれません。一応、SF要素はありますが、ディックの実体験をかなり盛り込んでいるため、普通小説のような色合いが強いです。 それにしても、悪夢のような物語です。全く救いがありません。ディックはかつて深刻な麻薬中毒に侵されており、多くのジャンキー仲間をドラッグによって失ったこと、そしてディック自身も麻薬中毒の後遺症で寿命を縮めたこと・・・これらに対する自己批判が本書の執筆動機なのかもしれません。 長らく絶版になっており、一時期価格が高騰していたようですが、現在ではかなりお求めやすい価格になっています。有難いことです。 | ||||
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迷わなければたどり着けない場所。さらけ出さなければ守れないもの。 ディック作品というだけでなくて、あらゆる小説の中で一番好きな作品。 傑作って言うよりも、ケッサクって感じか?と思いきや、ちゃんと傑作。 人間ってバカで単純な、愛すべき生き物だって思えるときも少なくない。 けどそいつらが群れ暮らす「社会」ってものになってくると、 こんなにも複雑で難解になってしまうのはなんでだろう? 落ち込むことや怒りや憎しみにわれを忘れてしまうようなことに 満ち満ちているのはなぜなんだ? ディックって、本人が意図している以上に意欲的なテーマに 作品で取り組んでしまっている。それが、ここまで広く支持を得ている 理由のひとつだと思う。 もしこの作品を気に入られて『ゴールデン・マン』をまだお読みでないとしたら ぜひ手に取っていただきたい。前書きが本当に素敵なんです(いや、もちろん 各短編も本当に面白いです)。あれにはつらいとき、何度も救われた。 この「暗闇のスキャナー」とともに、おすすめします。 | ||||
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内容は文句無しに面白い。 でも最初、スラングやアメリカ的な言い回しなど慣れないと読みづらく全然頭に入ってこないかもしれません。 訳が悪いと言うよりは文化の違いなどもあるのでしょうきっと。 途中からだんだんと面白くなって小説の世界に入り込めました。 自分の読解力が足りなかったのか理解しきれなかった事も多かったので読み終わった後に映画を見ました。 映画を見て色々理解が深まりかなり良い作品だと思いました。 (映画の映像は賛否両論です。自分もいい面と悪い面を感じましたが小説の補足的な意味で見たので凄く楽しめました。) | ||||
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幾つかディックの作品をすでに読み、ディックそのものを知りたい人には薦められる本です。 ドラッグに溺れていた頃のディックとその仲間達がラリッて与太話をするのが延々と続きます。 それが7割くらいでしょうか。残りの3割がSFと麻薬捜査官の刑事物といった感じです。 ドラッグの体験談としての部分が強く、SFを期待すると裏切られるかもしれません。 | ||||
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1977年発表。ディックの長編作としては31作目となる。問題作といわれる「ヴァリス」の前の作品でもある。 物質Dと呼ばれるドラッグが蔓延するアメリカ。覆面麻薬捜査官ロバート・アクター(=暗号名フレッド)は、捜査の為に自身も物質Dを服用しながら麻薬中毒者たちのグループに潜入して暮らしていた。アクターとそのジャンキー仲間たちはトリップしろくでもない会話をする日々を繰り返す。彼は他にも麻薬密売人でもあるドナという女性とは恋人関係を続けていた。ある日、フレッドは上司から任務命令を受ける。〜アクターの行動を見張るように〜と。それは一体どういう意味なのか。アクターの家に仕掛けられた盗撮カメラの再生映像で自分自身を監視するフレッド捜査官。彼の精神は次第に分裂していき、その日常は混濁へと向かい始める。 ディック自身がドラッグ・カルチャーと深く関わりあい、彼の自宅はジャンキーのたまり場になってしまった。そんなすさんだ生活の中で出逢った多くのジャンキー仲間のことや彼らとの語らいを記録したいというのが本書の執筆理由らしい。発表当時から約20年後の1994年のアメリカを描いた近未来小説だが、SF的なガジェットは主人公らの覆面麻薬捜査官が着用するスクランブ・スーツと呼ばれるアイテム(「攻殻機動隊」の光学迷彩みたいなの?)。これたったひとつのみ。ドラッグをメイン・テーマに描かれている日常風景は70年代アメリカ世相そのもの。それもかなりキツイ時代だった当事のアメリカを描いた普通小説に極めて近いスタンスだったりするこの作品は、メイン・プロットそのものが自己のアイディンティを喪失(崩壊)する話なので、読み進めていく程にどんどんと壮絶な内容になっていく。そうなった原因は麻薬作用だという答えが提示されるので、ディックの作品としては珍しく明確で単純なストーリー・ラインになっている。物語の内容も壮絶だけど、ディック自身が書いたあとがきにも驚嘆する。そこには彼の出逢ったジャンキー仲間(彼は同志と呼んでいる)の名前が数多く列挙されているが、その彼らの人生の終焉と言ったら!・・・。だが本作読後の余韻は素晴らしい! ディックらしいほんのささやかなどんでん返しが本当に嬉しい。 | ||||
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長い間SF作家として活躍してきたディックは、晩年神秘体験をしたことをきっかけに神学的な小説に転向するのですが、これはその過渡期の作品で、一応SFに分類できるもののSF色は極めて薄く普通文学に近くなっています。延々と描かれているのはドラッグ中毒患者の悪夢のような生活です。そのような特殊の人達の苦悩を描きながら、読者に「これこそ僕たちの人生そのものだ」と思わせるところはさすがディックです。 悪夢の中でのたうち回る中毒患者たちにディックは何もしてやることができません。ただ彼らの苦しみに胸を痛めるだけです。しかし、他人の苦しみに胸を痛めることができるというのは素晴らしいことではないのか。既に何度も教えてくれたこのことを、ディックはまた改めて僕に教えてくれました。 | ||||
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多分ネットで検索していただければわかりますが、実在の人物をもとに描かれている話とのこと。これを理解して読むとゾッとする描写がたくさんあり、いたたまれなくなります。猛烈に悲しい中に救いと感動のある作品ではないかと思います。 | ||||
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この作品には彼の妄想と現実の間を反映させた設定や言動が垣間見えるように思う。 マイケルクライトンが医者のストーリーのエキスパートならば、 フィリップ・K・ディックはドラッグで得られるイマジネーションを 更にエスカレートに表現し、いわば精神世界の冒険に関するエキスパートなのではなかろうか。 この作品にはあえてSFは排除され、ジャンキー達の戯れや言動が 手にとるような表現で描かれている。 | ||||
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ディックの晩年の長編。 なぜこの長編が褒めらているのか疑問だ。 ディックの作品にしては、たいして事件が起きない。 ネタ切れになったディックの駄作である。 わざわざ読む必要はないと思う。 | ||||
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ディックの小説とは信じられないくらい登場人物一人一人に個性があって、いい意味で裏切られたって感じ。やっぱり登場人物にモデルがいるからなんだろうなぁ。訳はちょっとやりすぎ感アリですが、読んでるうちにはまってきて、結構好きです。 | ||||
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ディックの作品の中では比較的SF色が薄く、そういうの(アンドロイド、超能力など)を期待した人は戸惑うかもしれない。しかし、相変わらずのディック節というか、読む者を鬱状態へ陥れる小説世界は健在で、たぶんディックのファンはそれが目当てで読むのだと思うが、どうだろう? ディックにしてはストーリーが破綻してなく、展開がスピーディーで読みやすいところも良かった。 読み終えて、しばらく不快な感じがしたが、自分の周りの世界の方が幾分マシだなと思い、少し嬉しい気分になった。これがディックの魅力なのだろうか? | ||||
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プライマル・スクリームのアルバム『イーブル・ヒート』に収録されている『A Scanner Darkly』はこの作品からインスパイアされて生まれた曲。破滅的で暴力的な歌詞が表現するディックのSF世界は、この小説をさらに加速させた感じ。プライマル・スクリームのファンなら一度読んでみてはどうだろう? 読後に襲ってくる圧倒的な不快感こそがディック小説の醍醐味だ。 | ||||
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ディックらしいSFを楽しみたい人にはあまりおすすめできない内容。 SF的要素は多いが、ドラックに翻弄される人たちを描く、 オチがいまいち不発のミステリーっていった感じなので。 その分、プロットの破綻も少なく、読みやすい。 しかし、☆5つをつけたのは、 ベトナム戦争前後の西海岸文化好きおすすめしたいゆえ。 一時期、ディックは自宅にジャンキーたちを招き入れ、 自らもドラックにずぶずぶでだったそうで、 その体験に基づいたらしい、哀切きわまるエピソードの数々が胸をうつ。 そういう状況からサバイバーになった人の言葉は、半端じゃなく重く、 その当時の友人に捧げた、ディック自身によるエピローグは、 何度読んでも泣ける。 | ||||
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この本はディックの作品の中では比較的癖が無くて読みやすいとは思うけど、その分多くの短編やいくつかの長編のような引き込まれる感覚に欠けるような気が。。。でも、例えば「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」の様にあまりにも深読みしすぎちゃう物よりもとっつきやすいかも。 | ||||
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この本はディックの作品の中では比較的癖が無くて読みやすいとは思うけど、その分多くの短編やいくつかの長編のような引き込まれる感覚に欠けるような気が。。。でも、例えば「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」の様にあまりにも深読みしすぎちゃう物よりもとっつきやすいかも。 | ||||
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ディックの作品は割と似通った内容の本が多くて、この本もそのうちの一冊ですが、いくつかの点で他のディック本よりも頭一つ二つ優れていると思います。 (1)訳が良い(山形浩生氏の訳は、いつも原文のニュアンスが伝わるし、読みやすい) (2)訳者後書きが充実している(山形浩生氏の訳書は大抵そう)。 これらを考慮すると、ディックを読もうという人はまずこの本から入ると良いでしょう。 | ||||
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