いたずらの問題
- ディストピア (15)
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初期ディストピアSF。潔癖な社会と堕落した社会。どっちも極端。若き作者の気概の反映か主人公にガッツあり。 | ||||
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「道徳」に基づく相互監視社会において、「パケット」製作会社の社長アレンが無意識のうちに行なってしまった「いたずら」を巡る物語、と、そう言えば説明したことにはなるのだが、およそ何のことだか分からない。そもそも「パケット」とは何なのか? おそらくは「物語」であり、あるいはその映像化されたものを示すのだろう。しかもその「パケット」は常に道徳的でなければならないし、教訓的に読めなければならないらしい。そんな社会においてなぜアレンは「いたずら」をしてしまったのか? 自分でも不明な理由を求めてアレンは精神分析的治療を行なうが効果はなく、それどころか治療をきっかけとして「道徳」に反する悪夢的な行動へと走る。その反道徳的な行動が結末への突破口を開くかと思いきや、事態はむしろアレン自身の捨て身にも似た独創的な「パケット」製作とその公開によって世間に議論を引き起こすところで幕を閉じる。結局「いたずら」をした原因は不明のままである。分かったようでよく分からない、整合性があるようでない、いかにもディック的な「混乱した世界」。まあ「とっちらかった物語」ではあるだろう。 | ||||
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本作は創元SF文庫として出版された後長らく絶版となっていた1956年ディック初期の作品(長編3作目)です。 ここ最近、長らく復刊されていないディック作品が徐々にハヤカワ文庫から再刊されており、次は何が出るかととても楽しみになってきます。 というわけで、本書は、本書の翌年1957年刊行の「宇宙の眼」、1959年刊行の「時は乱れて」といったバランスのとれたサスペンスフルな傑作作品には及びませんが、初期作品らしい硬さも感じさせる佳作といえます。 舞台は西暦2114年の高度に道徳的な社会。 週に一度は居住区のブロックごとに集会が開かれ、誰もかれもがお互いを監視して、あらを探し、他人を引きずりおろそうとしている。賃借権を獲得するためのばかげた闘い。不安。緊張とストレス。 ハサミムシそっくりで体長50センチ金属のボディで地べたや壁を恐ろしいスピードで這うことができる機械探偵ジュブナイルは、不道徳な場面を見逃すまいと走り回る。 そんな高度な道徳観が求められる社会で行われたある「いたずら」の意味は・・・。 といったお話。 監視社会に対する抵抗、といったお話は格別珍しいものではありませんが、本書の主人公は、この道徳社会において高い地位を手中にしており、いわば公共の倫理の番人、自身が倫理をつくることができるという立場において「いたずら」をもって世界にバランスを取り戻そうとする点がディックらしい。 上記の傑作「宇宙の眼」「時は乱れて」などに比べると、冒頭から物語にグイグイとのめり込むような勢いはなく、突然場面が変わって、なんだどうなっているんだと、なんだかよくわからないまま読み進めていくと後からなるほどそういうことか、と分かる、そういう書かれ方がなされていますので、多少とっつきにくさが感じられます。 | ||||
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不思議な話。物語の掴みが巧い。小説世界の情報を小出しにして、読者の興味を引きつつ、ストーリーは予想しにくい方向へと脱線させていく。このような巧い小説を読むと、ディックのストーリーテラーとしての側面にも気づかされる。 ディックの小説には、「主人公が今まさに生きている世界」とは別に、「もう一つの世界」がよく登場する。『いたずらの問題』で言うと、モレクのない世界がそれにあたる。そして、これもディックの小説の特徴の一つなのだが、主人公が「もう一つの世界」を体験することで、「それまで生きていた世界」の価値は揺らぎ、相対化される。けれども、主人公がその世界を見捨てることは決してなく、むしろ、そのような相対化された世界でいかに生きるかに焦点が当てられる。 既成概念と時代遅れの制度で縛られた世界を打破し、新たな世界を作り直すのは英雄的行為だが、ディックの小説の主人公はそのような英雄ではなく、あくまで小市民的な人物である(とはいえ、有能なサラリーマンであることが多いが)。理想とはほど遠い今の世界を壊そうとするというよりは、そのような世界でも何とか生きていこうとすることに重点が置かれている。だからこそ、ディックの小説は脱線的で、読者の予想を裏切り、些細なことにこだわっていく。 ブロック集会での匿名による糾弾。集団によるサディスティックな個人攻撃という構図は、まさしく現代のインターネットの突発的炎上システムと同じである。天才は未来すらも見通せるのか。「個性を欠いた“正義”の声」なんて、明日からすぐに使いたいぐらいの鋭利なフレーズである。 | ||||
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