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夏への扉



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夏への扉の評価: 4.32/5点 レビュー 493件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.32pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全399件 301~320 16/20ページ
No.99:
(4pt)

時空を超えた出会いと別れ、タイムトラベルの傑作

才能ある技術者のダンは、画期的なロボット「万能フレディ」をより高度に進化させようとしていた途上、
すぐに商品化しようと目論む商業主義的な相棒のマインツと、彼をたぶらかしまんまと株を譲渡させて
しまった秘書の女ベンの二人に、会社の権利を乗っ取られてしまう。その上彼は、自暴自棄になって
一度契約したがそのあと思いとどまった冷凍睡眠の世界へ、ふたりの企みで突き落とされてしまう。
30年後に目覚めた彼は、ただ一人の味方である少女リッキィの行方を追いはじめる・・・。

ハインラインの残した傑作SF長編『夏への扉』は、時空をまたにかけて展開されるタイムトラベルミス
テリーだ。この小説を読むと、優れたSFというのは、その設定のみならず、小説世界全体に漂う気風、
主人公をはじめとする登場人物のパーソナリティの好悪、細部のギミックまで、文体のリズム感、その
ような幅広い角度から見て、やはり優れているということがよくわかる。特に、訳者の福島正実も解説
で「いかれた」と告白する通り、本作の魅力を底上げするのは、愛猫ピートを従えながら、所狭しと奔走
してトラブルシューティングしていく主人公ダンその人の魅力に他ならない。

最終的にダンを待っているのは、一つのハッピーエンドなのだけれど、その前に訪れる幾多の別れとい
うのは、読者に少なからぬ悲哀を届ける。タイムトラベルという、SF上の(今のところは)実現しようのな
い技術で生まれた出会いと別れであるにもかかわらず、それでもここに人間的な情緒を読みとってしま
う。それができるということが、逆説にこの作品のフィクションとしての強度を証明しているように思えて
ならない。
夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))Amazon書評・レビュー:夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))より
4150103453
No.98:
(5pt)

旧訳と読み比べてみて

福島先生の旧訳版を長年読みなれた者です。

小尾先生の作品はいつも丁寧に和訳されている感じで、
この本も言葉一つ一つの雰囲気を大切にしている感じが伝わってきました。
旧訳版で描かれていなかった部分(原文を読んでいないので削られたのか足されたのかはわかりませんが)が
とても新鮮でした。

読みやすくて理解しやすい日本語でほっこり読みたいなら新約お勧めだと思いました!!

旧訳版は最初から最後までジェットコースターみたいに突きすすむスピード感が楽しい感じ・・・かな?
(↑他の人が同じようなことをおっしゃっていたのでビックリしました)

人によって好みはあるだろうけど、私は両方とも大好きです。
夏への扉[新訳版]Amazon書評・レビュー:夏への扉[新訳版]より
4152090596
No.97:
(5pt)

本棚から絶対に消えない(消さない)一冊

ウチが生まれる前の1956年に書かれた1970年、2000年の「近未来」を舞台にしたタイムトラベルSFの古典中の古典。

技師のダニエルは自身が開発したお掃除ロボットを持って友人と起業。もっと良いロボットをと開発している最中に、友人はダニエルの婚約者と共謀してダニエルを裏切ってしまう。
失意のダニエルは酒におぼれ、婚約者のいない未来へ相棒猫のピートと冷凍睡眠会社へ……

再読……というか、もう何回読んだか分からない一冊。
50年以上も前のSF作品。科学技術も今とは異なっているし、1970年も2000年の「未来」も現実とはかなり異なっている。
それでも、何歳の時に読んでも、ダニエルの無謀なまでの走りっぷりに、ピートの男気ある「猫」っぷりに、リッキイの可憐さに、そして2つの時代に暮らすそれぞれの人物の生き生きとした動きに、ガーンと落ち込んで、頑張れと応援して、切なさに涙して……

最後には、
「ドアというドアを試せば、必ずそのひとつは夏に通じるという確信を、棄てようとはしないのだ。」
という自分になってしまう。

だから、この作品は5年後も10年後もおそらくウチの本棚に置いてある作品なんです。
「どんな本が好き?」
と聞かれたら、まずあげる一冊です。
夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))Amazon書評・レビュー:夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))より
4150103453
No.96:
(5pt)

ロリコンで機械オタク

大変面白くて一気に読むことができました。
その後、他の人がどんな感想なのか調べたりしました。
そこであったのが、ロリコンで機械オタクが主人公な物語という指摘
でした。たしかにそういう捉え方も可能なのでなるほどなと思ったり
しました。しかし、そんな主人公なのに面白いと感じさせるというこ
とは、この作品がすごい面白いということのあかしでもあります。

オールタイムベストなどでは必ずといっていいほどあげられる作品な
ので、興味があれば読んでみてもいいのではないでしょうか。
夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))Amazon書評・レビュー:夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))より
4150103453
No.95:
(5pt)

夏への憧憬

遠い記憶のこの小説には、今もかわらぬ温もりがあります。

ピートの焦れる夏への想い、その愛しき本能。

お人好しの主人公とその場所へと辿りゆく、
幾度の奮闘劇に、きっと読者は勇気を得ます。

厳しい冬をよく心得て、こうして話を結べる力。

私のとってのSF小説は、ハインラインの
このユーモアへの憧れなのかもしれません。
夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))Amazon書評・レビュー:夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))より
4150103453
No.94:
(4pt)

新訳版です!

まだ読みかけですが、この本を初めて読んだ時のシチュエーションや思い出がよみがえってきました。山下達郎の同名の曲を聴きながらだと、なおいいです。
夏への扉[新訳版]Amazon書評・レビュー:夏への扉[新訳版]より
4152090596
No.93:
(5pt)

気持ちのよい作品です

まず、始めの数ページで、コレは面白いかも・・・と思いました。
それは、猫のピートが「人間用のドアのどれかひとつが、夏に通じているという固い信念を持っていたからである」
の一文のためであると思います。
内容自体は、1956年に書かれたものなので、50年以上たった今読むと、SF的には、目新しいものはないのかも知れません。
でも、話の面白さは、まったく色あせていないのではないかなと思います。
時々、ここはちょっと都合よすぎるんじゃない?って思うところもありますが、これだけすっきりできたら、気持ちいいと思います。
夏への扉というタイトル。
もうこれだけで、希望に満ちた気持ちになります。
とても気持ちのいい物語です。
訳者が変わって新しい版が出ているそうなので、そちらも読んでみたいと思います。
夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))Amazon書評・レビュー:夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))より
4150103453
No.92:
(5pt)

世のなべての猫好きに この本を捧げる

タイトルの文言は旧訳版の冒頭にある謝辞ですが、この新訳は旧訳と比べるとかなりちがった印象に仕上がっています。

大きく変わったのは主人公の印象で、旧訳では主人公がいかにもちゃきちゃきのカウボーイという感じでしたが、新訳ではおとなしめになっている様に思います。なんというか、かなり丸くなってますね。
また、ねこの気持ちがルビ付きで表されているのも新訳の特徴です。例えば、「ナァーウ?(いーまあ)」、「ナァーウ!(すーぐ)」という風にです。旧訳ではルビはなく読者が読み解く様になっていましたが、もし旧訳にルビを振るとしたら「ナァーウ?(今すぐか)」、「ニャアウ!(よし行こう)」といった調子になるのではないかと思います。

新訳本は旧訳を知っているとなかなか馴染めない場合も多いのですが、この本に関してはそういったことはなく、違いを楽しみながら読むことができました。新・旧どちらが良いかと問われると、読み慣れていることもあり私は旧訳が好みですが、やはり旧訳の歯切れの良い会話や独特のテンポは捨てがたいものがあります。
新訳を読んでこの作品のファンになった方は、旧訳も読んでみてはいかがでしょうか。またちがった夏への扉が見つかると思いますよ。
夏への扉[新訳版]Amazon書評・レビュー:夏への扉[新訳版]より
4152090596
No.91:
(4pt)

季節は・・・

あらすじ

舞台は1970年のロサンゼルス。
技術屋のダンは婚約者と親友に裏切られ自棄になり
コールドスリープで2000年にトリップすることを決意する。
だが、その前にあの二人に復讐を、と親友の家に向かうが・・・
夏への扉を探し続ける飼い猫ピートとダンの波乱万丈の物語。

感想

どういうわけかずっと勘違いしていて
家の扉が異世界に通じていて・・・
そんなファンタジーものだと思っていました。

そう思ったままページを開くと
美しいあるエピソード(これがまたぐっとくる)から幕を開け
そこから、自棄になった主人公が
飼い猫と一緒にコールドスリープさせろと
保険会社にどなりこむシーンになって、ちょっとたまげた。
タイプトリップものの名作みたいですね。

さすが読み継がれる作品だけあって凄く面白い。

ダンの無尽蔵なバイタリティに引っ張られ
気づいたときには読み終わっていました。

夏の扉を探し当てたと言うよりは
夏の扉をたぐり寄せたという印象でしょうか。

読み終えて思ったのは、あの頃の人たちにとって
2000年と言うのは特別な存在だったんだ、ということ。

最後に書かれた翻訳者の一言に自問自答してしまいました。

おそらくこ、あの時代だからこそか描けた作品なんでしょう。

読んでからの一言
こんな主人公の思いも、今のご時世だと危険視されるのかな?
夏への扉[新訳版]Amazon書評・レビュー:夏への扉[新訳版]より
4152090596
No.90:
(5pt)

初めてのSF小説

今までSF小説など読まなかったのですが、読みやすい。というレビューが多かったのと、私が猫好きということで購入してみました。
正直、内容としてはいろいろとツッコミどころはあるったのですが、話のテンポもよく、あっというまに読み終えてしまいました。

涼宮ハルヒシリーズなどの気楽(ひたしみやすいという意味で)なSFも読まれているかたなら、オチは読めちゃうとおもいますが、
読書の時間を無駄にすごした!とはならず、とても心あたたまるものがあります。
SF入門として、ぜひ涼宮ハルヒの消失とご一緒にご購入ください(笑)
夏への扉[新訳版]Amazon書評・レビュー:夏への扉[新訳版]より
4152090596
No.89:
(5pt)

SFタイムパラドックスの金字塔

『ぼくらは、1970年12月、コネチカット州に住んでいた。
猫のピートは、いつも冬になると、夏への扉を探す。
たくさんあるドアのどれかが夏に通じていると信じ込んでいるのだ。
そう、ぼくも夏への扉を探していた。 』

書評の内容が物語の初めに書かれている。
これだけどグットくるのよねぇ〜。

でもこの本はSFタイムパラドックスの金字塔。
超有名です。ドキドキハラハラ目からウロコの連続本。
これも何度も読み返しているなぁ〜。
夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))Amazon書評・レビュー:夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))より
4150103453
No.88:
(5pt)

大きく生きよう

過去と未来を行き来する主人公は、時を変えるごとに価値観も変えてゆく。そして変わらないもの。
普通では早すぎる心の変化は、冷凍睡眠と時間旅行の急激な環境の変化と対比して考えられるから面白い。
この構成が巧いから読み手が感情移入しやすく、大切な事を考えさせてくれる。

扉は開いているのだから前へ進もう
夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))Amazon書評・レビュー:夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))より
4150103453
No.87:
(5pt)

タイムトラベルの決定版

読みたかったハインラインの「夏への扉」が、文庫になったので、早速手に入れました。
 タイムマシンものが大好きなのですが、これはとても良くできています。特に、タイムマシンものの「つぼ」とも言うべき部分がしっかり押さえられていて、何度も読み返してしまいます。古い時間軸で見た展開と、新しい時間軸で見た展開・・・。
 タイムマシンもの独特の、あれ、あれはどこに行ってしまったのだろう、と、頭の片隅に置いておいたことが、後半次々と解決していく楽しさが、あちこちにちりばめられています。
 全体的な展開は、ベタかもしれませんが、逆に楽しく読むことができました。
夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))Amazon書評・レビュー:夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))より
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No.86:
(5pt)

夏への扉、猫への扉、むしろ猫も扉

ジャケットのさわやかさにも惹かれたが、決定的だったのは、帯に書かれていた言葉だった。

明日は、今日より、ずっといい日になる 時をかけるエンターテインメント 新しい翻訳で贈る、すべてのひとびとへの応援歌

 冬に「夏への扉」を買う俺って、なんて間抜けなんだろう、と考えもしたが、いや、これは、冬にこそ読むべき作品だ、読了した今は、そう思っている。

 仕事上のパートナーにも、婚約者にも裏切られ、挙句の果てには、最愛の雄猫ピートとも離れ離れになってしまう。これのどこが、応援歌なんだ、ずたずたのぼろぼろじゃないか、今日も明日も、ちっとも、よくない。ばか! などと、ぶちまけどころのない怒りにとらわれた。

 物語が進むにつれて、私の怒りは収まり、ハッピー・エンドの結末に、胸をなでおろした。

 「夏への扉」。別に、<春への扉>でもよさそうなのに、と思ったが、<夏>でなければならないのだ、と思い直した。<夏>の開放感のイメージは、<扉>を押し開けるエネルギーを秘めているから。

 うちには飼い猫はいない。けれど、もし、どこかで猫にであったら、あごの下をなでてやろうと思った。間違っても、たたくもんか。「夏への扉」――明るい未来への扉――が開くかどうかは、審判者様の猫が決めるんだから。

 「訳者あとがき」にもあるように、ユーモアあふれる文章も、この作品の魅力だ。こんな風に。

ジョンとジェニーのサットン夫妻は、教養もあり、ものに動じず、親切なひとたちで、地震すらもお茶に招きかねない人なつこいひとたちだった。

 ちなみに、この本のジャケットをはずしても、表紙も水色なので、さわやかな気分が味わえる。
夏への扉[新訳版]Amazon書評・レビュー:夏への扉[新訳版]より
4152090596
No.85:
(5pt)

猫好きにもお薦めの絶対の面白本。初めて読む人は幸せです。

【旧訳版】の本作に出会ったのは、高校生の頃(1970年代後半)。特にSFマニアでは無かったのですが、この作品は夢中になって何度も読みました。
 数十年ぶりに、また【新訳版】で本作に触れられて幸せでした。【旧訳版】が手元に無いので比較は出来ませんが、文章がスムースになりずいぶん読みやすくなっているのではと思います。
 “若い人”と“いつまでも若い気持ちを持っている人”、そして“猫好きな人”にお薦めします。
訳者の小尾美佐さん、出版社の早川書房さん、ありがとうございます。
 ★装丁もイラストも綺麗で、価格もお値打ちだと思いました。
 《追伸》この本が好きな皆さんは、山下達郎氏の曲「夏への扉」(作詞は吉田美奈子さんで、名盤「ライド・オン・タイム」に収録)のチェックも忘れずに!
夏への扉[新訳版]Amazon書評・レビュー:夏への扉[新訳版]より
4152090596
No.84:
(4pt)

一度は読んでおきたい本です。

話題になったという理由だけで読んだ、私にとって久々のSF小説だったのですが、読み始めてすぐ「なんかこの主人公『アルジャーノンに花束を』みたいな口調だな…」と思ったら、やはり翻訳が同じ人でした。

 全てのレビューが☆5つだからといってケチをつけるつもりはありません。
 主人公ダンと猫のピートの愛情がしっかりと完結させてあるのも満足したし、ベルやマイルズの行く末、本書が1963年刊行にも関わらず、さほどずれていない2001年は、私自身、仮に60年代に生まれてたら、コールドスリープを使って、2001年を確認したいと思うでしょう。

 ちょっと理解できないのは、主人公ダンが愛するリッキーのことです。
 ベルに裏切られたダンが、まるでバスに乗り換えるようにリッキーを「女」として扱う心境の変化。
 読み返してみても、リッキーがダンを愛する気持ちは、自分の周りにいる人間への憎しみ、つまり消去法でダンだけが残ったようにしかみえないのです。
 髪も薄くなった「オジサン」のダンを、11歳のリッキーが愛を交わすことも「SF」と捉えなければいけないのでしょうか。
 ちょっと、そこだけが疑問でした。
 旧訳版が読みづらいという評価を見ましたが、本書は小学生でも読める、とても面白い本だと思います。
夏への扉[新訳版]Amazon書評・レビュー:夏への扉[新訳版]より
4152090596
No.83:
(5pt)

扉は前に向かって開かれている

時は1970年のロサンゼルス。家事用ロボット発明者として、
また、企業の経営陣として成功を収めつつあった主人公ダンが
背信行為で全てを失い、失意のため30年間の冷凍睡眠に入ろうと考えた…

そんなダンが目覚めた2000年はハインラインの卓越した
創造力により、細かいシステムこそ違うものの、発展の方向は
現在とほぼ同じ未来像があり、そこから時間旅行がはじまります。

小気味よく展開するストーリーが読む者を飽きさせず、更にかなり
緻密に組み立てられているので、時間旅行にありがちな矛盾も
無理のない形で避けながら気持ちのよい扉を開けることができるはずです。

少しの想像の産物を使った小説として感動的な話が仕上がっている印象で、
むしろSFとして読むと物足りないといった風合いの話となっています。
夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))Amazon書評・レビュー:夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))より
4150103453
No.82:
(5pt)

明日は今日よりずっといい日になる

もし一度だけ、これまでのいつかの夏へ帰れる扉があったら。僕だったら、やっぱり大学生の頃、可愛いあの子とでかけた由比ケ浜あたりに戻りたい。そんな夏を、誰もが持っていると思います。でも、現実にはそんな夏への扉は開いていません。僕達はあの夏の思い出は胸にしまって、明日へと歩いていく。だから、どうせなら明日は今日よりいい日だと思っていたい。そんな気分の時に、ハインラインの「夏への扉」はどうでしょう。

> 1970年12月3日、ぼくも一緒に夏への扉を探し続けていた。

今回小尾芙佐による新訳が出た「夏への扉」は、アメリカのSF3巨匠の一人と言われるロバート・A・ハインライン(ちなみに他の二人はアイザック・アシモフとアーサー・C・クラーク)が1956年に発表したSFの古典です。主人公のダンは優秀な発明家で、事業は成功を収めつつありましたが、美しい恋人と経営者の友人に裏切られ、発明も盗まれるなどすべてを失ったところから物語が始まります。ダンの傍らにいるのは、人間のドアは夏の世界に通じていると信じている雄猫のピートだけ。

すべてに絶望したダンは、結果的に冷凍睡眠によって現代を去り、西暦2000年の世界で目を覚まします。30年間という時間による社会の変化に、ダンは戸惑いを隠せませんが、持ち前の学習能力と機転を活かして次第に2000年の世界でもうまくやっていけるようになります。そんなダンの心から離れないのは、自分のことを思っていてくれたにもかかわらず気持ちに答えることができなかった少女リッキーの存在。そして、リッキーへの思いを遂げるためにダンの取った手段は−−と、ここから先は読んでのお楽しみ。

ここで言えるのは、SFやアドベンチャー小説の主人公の多くは、異常な事態に遭遇して、その事態を打開しようとあがくのが定番になっています。しかし、海兵隊に所属し、その後も様々な職業に就いて人生経験豊富なハインラインの描くヒーローは、読者さえも手玉に取って自ら事態を転がしていくように行動します。そんな作風を、時にアメリカナイズされたマッチョイズムとして嫌う人もいるでしょう。本作のダンも、ただ過去を振り返るのではなく、未来の世界から、さらにその先の未来を作るために行動していきます。

最後のページに、こんな一節があります:

> でもピートはまともな猫なので、外に行く方が好きだし、家じゅうのドアを開けてみれば、そのなかのどれかひとつは必ず''夏への扉'≠ネのだという信念を絶対に曲げようとしない。

ページを閉じるとき、そんなピートの信念を、ダンは、あなたは、どう感じるか、ぜひ確かめてください。
夏への扉[新訳版]Amazon書評・レビュー:夏への扉[新訳版]より
4152090596
No.81:
(4pt)

爽快な読後感

痛快なSFでわかりやすく読みやすい。
反面、オーソドックス過ぎて先は読めてしまうし、
後半はあまりに主人公に都合の良い展開。

また、1970年代から見た未来が2000年と、
『未来』を遥かに過ぎた現在この小説を読むと
”2000年はそんな時代ではない”ことが分かってしまっているので
やや滑稽に感じてしまうところはある。

主人公の相棒、猫のピートへの愛情は感情移入出来、
あやうくもう二度と会えなくなるかと思った時は
つい焦ってしまった。
また、ピートが複数の家にあるドアに対して
どれかが夏につながっていると信じて
夏を探して全ての扉を開けようとするところが
微笑ましくも飽くなき純粋な探究心に尊敬の念も抱く。

いくつかの突っ込みどころはあるものの
犬派の自分にとっても読後は爽快感が残る良い作品。
夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))Amazon書評・レビュー:夏への扉 (ハヤカワ文庫 SF (345))より
4150103453
No.80:
(5pt)

元祖ラノベ

タイムマシン、かわいい女の子、王道の展開とハッピーエンド、そしてもちろん猫。
これらをデータベース消費にカテゴライズするなら、本書は「元祖ライトノベル」と称してもいいのかもしれない。

旧訳を自分が初めて読んだのは1995年。家事ロボットも、もちろん冷凍睡眠もなく、あと5年で来る2000年に「未来」はほとんど感じられなかった。
それから14年。我々の生活はやはり「未来」には大して近づかなかった。体重計みたいなリモコンカーに部屋の掃除をさせられるようになったのが関の山だ。
つまり本書はレトロフューチャーであり、ステレオタイプな世界観を具現しているに過ぎない。しかしそれゆえに(ラノベ的であるゆえに)、本書は面白さの骨格を失わない。
ラノベのイラストがアップデートなものに変換可能であるように、数十年ごとに本書は適した服をまとって高い評価を受け続けるはずだ。そういう点で、今回の新訳は改善だと感じた。「ばんのうフランク」なんて、ひらがなにするだけでここまで印象を変えられるとは!センスに脱帽。
夏への扉[新訳版]Amazon書評・レビュー:夏への扉[新訳版]より
4152090596

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