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沈黙の町で



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【この小説が収録されている参考書籍】
沈黙の町で
沈黙の町で (朝日文庫)

沈黙の町での評価: 4.05/5点 レビュー 92件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点4.05pt


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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください

全92件 61~80 4/5ページ
No.32:
(5pt)

ハラハラドキドキ

人間模様が細かく描かれて最後の最後まで息をつかせず一気に読み上げました。いじめ問題をテーマにしてあくまでもリアルに問題が進められていく様は現実もこうなんだろうと、読み終わった後感じました。この複雑な問題を社会に提起してある作品であると思います。だから自分はどうするんだろうという結論は出せませんが、読み終わった後リアルすぎて後味の悪い作品でした。これは奥田ワールドへの称賛です。媚びることなく現実にメスをいれ考えさせる、「オリンピックの身代金」以来の名作です。」
沈黙の町でAmazon書評・レビュー:沈黙の町でより
4022510552
No.31:
(5pt)

読み応えあり!

「噂の女」に続き図書館借りで読んだ。
グイグイと引き込まれる内容に満足の一冊だと思う。
内容はさておき「邪魔」「最悪」に並ぶ作品と思った。
是非、お読み頂きたい一冊です。
沈黙の町でAmazon書評・レビュー:沈黙の町でより
4022510552
No.30:
(5pt)

ちゃまおの気持ちが不可解

連載中からとても興味深く読んでいた。登場人物、生徒ひとりひとりの人物描写がとても細かかった。最後まで真実が明かされないミステリー小説的手法にひきこまれた。ただ被害者ちゃまお君は客観描写だけなので本人の気持ちが不可解だった。この子は特殊な例だろうか?いじめ問題の多発する昨今に問題を投げかける作品だ。
沈黙の町でAmazon書評・レビュー:沈黙の町でより
4022510552
No.29:
(5pt)

深く考えさせられる物語です

読み応えありの一冊です。 イジメがテーマなだけに読んでいる間中、不快な気分になりますが 内容はノンフィクションかと思えるくらいリアリティに溢れています。 とにかく登場人物の描写が丁寧で素晴らしいです。 グループ内の子供達はもちろん、それを囲む親達、先生、検事、弁護士 それぞれの顔が浮かんで来るくらいの人物描写です。 イジメの被害者、加害者とは簡単に言えないくらいの背景で色々な事を考えさせられる小説です。 読後感も後味も悪いけれど、久しぶりに一気に読めた作品でした。
沈黙の町で (朝日文庫)Amazon書評・レビュー:沈黙の町で (朝日文庫)より
4022648058
No.28:
(4pt)

尻切れトンボの印象

いじめられっ子が転落死した事件の前の経緯と事件後のストーリーが、時系列に沿った形ではあるが交互に語られる。
事件前の経緯は、最後にいじめられっ子が死亡する場面の真相を明らかにしたところで終わり、物語全体もそこで終わりになるため、事件後のストーリーは、そこまでで語られた事件の1ヶ月後くらいで終わってしまう。

事件前と事件後の叙述を並行して行うことによって、転落死に至るまでの経緯がよりスリリングに語られ、この著者が得意とする、読者を引き込むようなストーリー展開を楽しむことができる。しかしその一方で、読者の多くは、事件後の顛末をもっと長期にわたって(決着がつかなくても良いのだが)詳しく知りたいと感じると思うのだが、その願いはかなえられない。

その点で、本作は読み手の欲求不満を残した終わり方をしているように感じた。こういういきさつのいじめに関連する死亡事件があった、という事実の叙述だけで、あとは読者に余韻を感じさせるという方向もありだとは思うが、もう少し著者の主張を書き込んでも良いのではないかと感じる。本作の後編として、著者の考える後日譚を追加してくれると、もっと読者の方も考えさせられる作品となったのではないか。

もっとも、これがこの著者のスタイルなのだろうから、読者としてはそれを好きになるか、それとも好まないので作品を読まないか、いずれかを選べばよいのかも知れないが…。
沈黙の町でAmazon書評・レビュー:沈黙の町でより
4022510552
No.27:
(5pt)

圧倒的なリアリティ。

新聞広告で見てからずっと読みたくてKindle化を待っていました。
Kindle化されてからすぐに購入しました。
前評判通り、読み応えがあります。

新聞記者、検事、警察、被害者の親、加害者の親、加害者本人たち、教師、傍観者たち。。。。
と視点がコロコロかわるのですが、不思議と読みづらくありません。
それぞれの立場に感情移入出来るので、
こういった事案がどれほど複雑で、出口がないものなのかよくわかります。
こういった話は永遠に終わりがない、と思わせてくれるラストでした。
誰を悪者にしたって、亡くなった方は帰ってこないということを
何度も思わせてくれます。

自分にも中学生だった頃があるので、
そうだよな、中学生ってこんな感じだよなと思いながら読んでいました。
思春期の焦燥感みたいなものは、ディテールまで書き込まれていたと思います。
沈黙の町でAmazon書評・レビュー:沈黙の町でより
4022510552
No.26:
(4pt)

小さな町で翻弄される人々を入念に描く

ある小さな町で起きたいじめによる中学生の死亡事件。
事故なのか、事件なのか。
被害者家族、被疑者家族、学校関係者、警察など、
翻弄される周囲の人々を緻密に描く。
文章も読みやすく、筆力もあるため、読み始めると一気読みしてしまいます。
ただ、僕個人の考えとしては、
作者が最後に言いたかったであろうメッセージには疑問でした。
沈黙の町でAmazon書評・レビュー:沈黙の町でより
4022510552
No.25:
(2pt)

10年前のイジメ

起こりうるだろうストリーだけれども、現実の中学生(の一部)はもっと残忍だ。
全員が全員とは言わないが、大人もここまであからさまではない。確かに学校は有事には弱いけれども、イジメが社会問題化している現代で、こうもアタフタする学校はないだろうし、親も親で自分の子を守るためといっても、ここまで短絡的に自己防衛に走ることもないだろう。

一言でいうと10年前のイジメだ。10年間のギャップをもって作者は何を言いたかったのだろうか?最後のミステリー調も何が目的かよくわからん。

高村薫の後に読んだことも影響して、心理描写も表面的でステレオタイプに感じた。
沈黙の町でAmazon書評・レビュー:沈黙の町でより
4022510552
No.24:
(5pt)

いろんな問いかけをしてくる本

中学生の転落事故から、実は彼がイジメに合ってたという事実が発覚し・・・という、大津の事件とパラレルになるストーリィで、新聞連載中だったが、唐突に締めくくられた、という話をどこかで読んだ。その後単行本化するに当たって加筆訂正されたかどうかは知らない。当事者意識から遠い世界にいるので個人的にはイジメ問題への興味は薄い。でも、この本を読むと、イジメたと言われた側が、実は人望も人気もありクラスのリーダー格。しかも、実際には首謀者ではなく、庇ったりもしていた。虐められた子は、小心、パシリ、でもウザがられても後を着いて来るし、裏切って先生にちくるし、女子や弱者には威張るし、庇ってあげても感謝しないし、もし、近くにいたら、ほんとにウザくてイライラするような子として描かれている。イジメはいけない、と綺麗事で言っても、実際にこういう状況だったら、あんたはちゃんと判断できるのか、と挑戦してくるようなストーリィだ。双方側の親の利己的な言動もこれでもか、と描いている。作者は、それでも、おまえは、被害者側に100%立てるのか、同じ状況になったら、おまえも虐める側にならないと言えるのか、と追い詰めてくる。
沈黙の町でAmazon書評・レビュー:沈黙の町でより
4022510552
No.23:
(4pt)

この題材を扱った作品では最もリアルなのでは

正直に言えば子供の頃の僕はどちらかといえばいじめる側だった。教師に怒られても「しまった」くらいにしか
思わなかったが,自分のした事で人の心がどれ程傷つくか自分で気づき,改めるようになったが
罪悪感は大人になっても残る。
でも改めようとしてもどうしてもここに出てくる「ちゃま夫君」のような子がいて,幼い私の改心を妨げた。
誠意をもって親しくなろうとすると鼻で笑うような態度をとられ,呆気にとられた後で沸々と怒りがこみ上げる。
元は自分が悪いのだからと何回かは我慢はするが,良いと思う行動をとる程小馬鹿にされたような気になり
ならば関わらなければ良いと思うものの幼い我が心は見返りを求め,ジレンマに耐えられなくなり
結局イジメをするクラスメイトに混ざるばかりか率先して加担してしまい,また自己嫌悪にさい悩まされる日々の繰り返し。
自分を含め幼いが故,未熟であるが故に感情表現が上手に出来ないのだと知るには自分自身未熟過ぎた。
でもあの時私にとっての「ちゃま夫君」が死んでいたら。私は今普通にこの社会で生きてゆけたろうか。

奥田英朗はデビュー作から多分全部読んでるがこの人はやっぱりシリアス路線が凄い。
いじめ問題に関しては最近特に多くて,中には分厚い上中下巻でとりあげる問題作もあったが
どれもちょっといじめられる側いじめに走る側の人物描写にリアルさがないばかりか
「不良はバカで横暴,勉強出来ないお人よし,勉強スポーツ出来る家庭円満な奴が利発で正しい行い」
みたいな構図なんとかならんのか古いよなぁと読むほどに冷めた。
この作品はその点も含め(自分の体験を思い起こさせる程)リアルであり,生徒それぞれが
「いたな〜こういう奴」という感じ(ちょっと出来過ぎたキャラもいるが)
イジメに至る経緯,場面にも臨場感あり。
さらにその親達の描写が一層凄味あり,その世代になった私にとっては二重で胸に突き刺さるものがあった。

重松清氏の「十字架」も似た題材で読み応えあり比べてみるのもよし。
ちょっとラストが薄味で疾走感による前のめりがつんのめる部分があるが,
間違いなく奥田氏の現時点での最高傑作であろう。いや奥田氏の作品には毎回そう思ってるような。
買って読んで損した気分にはまずならない。
沈黙の町でAmazon書評・レビュー:沈黙の町でより
4022510552
No.22:
(5pt)

現代の等身大の中学生の姿がリアルに描かれていた

中学生の学校内での転落死をめぐるミステリ。

死亡した生徒をいじめていた生徒、学校の教師、生徒の母親、刑事、警察、マスコミなど、多くの視点で物語が描かれており、手に汗握る展開で最後まで一気に読めた。

本書の中で、

「子どもには残虐性があって、年齢を重ねていくと徐々に消えていく。中学生にはその性質が残っており、ひどいいじめは中学生が一番。高校生になると手加減や同情心がはたらく」

という表現があるが、これはもっともだと思った。その中学生の残虐性、先輩との上下関係、自分を強く・格好良くみせたい気持ち、周りの友達に嫌われたくない気持ちなど、現代の等身大の中学生の姿がリアルに描かれていた。

また、いじめを受けていた生徒・いじめをしていた生徒、それぞれの母親の心理描写が素晴らしく、事件に対する不安感、焦燥感、なんとしても自分の子どもが正しいと信じたい気持ちが痛いほど伝わってきた。
沈黙の町でAmazon書評・レビュー:沈黙の町でより
4022510552
No.21:
(4pt)

中学生のいじめの現状・・・

男子中学生が学校内で高所から落ちて死亡した。
その生徒は複数の同級生からいじめを受けていたようであった。
果たして自殺か?事故か?という内容。

亡くなった生徒の家族、いじめを行っていた同級生とその家族。
中学教諭、警察、報道関係者といった多くの登場人物が出てくる。
それぞれの視点に立って物語は進行していく。

いじめの現状やきっかけなどは良く書けていると思った。
改めて、本人の気質や性格・周囲の環境にも大きく左右されてしまうものだと思った。
しかし、決していじめを肯定する内容となっているとも、いじめられる生徒を否定しているとも思わない。

登場人物が中学生に対し、「もう大人だ」「まだ子供である」「こんなにもずるい面がある」「とはいえまだ中学生なのだ」などといった感想を持つ。
確かに中学生は大人と子供の狭間に居る。
家庭と学校という2つの世界でしか生きることが出来ずに、ともすれば生存競争にさらされている。
そのような描写は真に迫っていると思った。

生徒たちの親たちの心理についても、非常に分かりやすく描けていた。
学校関係者の描写についても同様。

物語後半、現在と過去の内容の両者が出てくるが、どちらの内容なのかが分かりにくい面があった。
沈黙の町でAmazon書評・レビュー:沈黙の町でより
4022510552
No.20:
(4pt)

いじめ問題がはらむ根本的問題にあえて挑んだ快作

最初の200ページ弱,展開がゆるく,遅々としたテンポに思わず,
「奥田さんらしくないな。いつもの疾走感はどこにいっちゃたんだよ」
と思い,少しいらいらした感じをもってしまいました。ところが,
中学生たちの物語が始まるやいなやそうした感想は吹っ飛び,
いつものスリリングな,奥田ワールドへと引き込まれ,後半はほとんど
一気に読みきってしまいました。読むのを途中でやめないでよかった。

「いじめられる側にも何らかの問題がある」という非常に危うい
テーマに挑んだ快作だと思います。最近の世間の常識ではいじめや暴力は,
いかなる理由があろうともいじめる側が100パーセント悪いのであり,
その視座からのみ,この種の問題は論じられるべきだ,というもので
あろうと思います。この小説はそうした世間の常識を逆手に取り,
「普通の人々」から見ればいじめられる側には困ったところが見られるのだ
という,大勢から猛反発を受けるテーマをあえて取り上げたように思えました。

しかもこの小説では,いじめられる側も一歩間違えればいじめる側へと
簡単に転換するものであり,ひとつひとつのいじめの現場では加害者,
被害者という枠組みをあてはめることができそうなものの,個々の人間
を見ると,いろいろな立場になりうるのだということが示されます。
結局のところいじめという現象は,いじめっ子,いじめられっ子という
レッテルを貼ることで解決できることではなくて,そのときどきの状況
によって,どちらの立場にもなりうるということなのだと思います。
そのことを示すためにこの小説では,いじめられっ子が性格的にわけの
わからない人間で,周りからいじられやすい存在であるということを
極端な形で描き,なおかつこのいじめられっ子に,自分よりも弱い人間
に対して暴力的なちょっかいを出すような行動をとらせるのです。

「いじめ問題」には個々の暴力事件では切り取ることのできない,無数の
感情的交錯が背景にあるのであり,教師や親にできることはそれを察知し,
大きな出来事へと発展していくのを防ぐ,あるいはできる限り理解していく
ことなのだと思います。いじめは今や社会問題ですが,社会という枠組み
で解決できることはほとんど何もなくて,あるとすれば,実際に起きた
ある特定の暴力事件の中で「犯人」と「被害者」を特定し,その罪を
できる限り明らかにし,そしてそれに見合う罰を当てはめることぐらい
なのでしょう。

罪を明らかにして,犯した人を罰する。社会としてできることはそれだけ
のはずです。しかし実際には,学校なりメディアは,ときにはしぶしぶ,
そうした個々のいじめ事件の背景を探ることになります。いじめ問題の
背景を探ると,どうしたっていじめていた側だけでなく,いじめられて
いた側の問題点が浮き彫りになるのです。いじめられた側にも困った
ところがあった,ということが判明するのです。しかし,それがおおっぴらに
論じられることはありません。さらなる集団いじめが助長されるだけです。
だから結局,罪の範囲を定め,誰かがその罪を償い,その問題は終わった
ことにしていくしかないのです。

そうしたいじめ問題が根本的にはらむ問題を,私たちはどう受け止めて
いけばいいのか。それを考えさせてくれる小説でした。
沈黙の町でAmazon書評・レビュー:沈黙の町でより
4022510552
No.19:
(5pt)

ノンフィクションとは思えないリアリティ

ちょうど同じ年頃の息子、物語に登場する中学生達と同じ部活動をしているということもあり他人事ではない
気持ちで一気に一日で読み終わりました。

読者をぐいぐいと引き込む作品のリアリティさには脱帽しました。
ここまで引き込まれる小説にはなかなか出会えないものです。

中学生の子を持つ母親の気持ちと、自分が中学生だった頃の当時の気持ちを思い出し、
何ともいえない気持ちになりました。
沈黙の町でAmazon書評・レビュー:沈黙の町でより
4022510552
No.18:
(4pt)

難しい問題

男子中学生が、部室棟の屋上から転落死した。その中学生には苛められた痕跡があった。

加害者家族や被害者家族、また学校や警察、検事など様々な視点から物語が語られ、事件が明るみになっていくのかなと思いましたが、ちょっと違いました。

途中から、事件発生前の中学生活が語られ、いじめが醸成されていく過程が語られます。あまり気持ちのいいものではありませんが、ああ、なるほど、と思わせる筆者の描写は見事ですね。

ラストはその時何があったのか判明しますが、テーマがテーマだけに明確な結論が出る訳でもありません。

それにしても、現実にこのような事件が発生した場合の被害者・加害者家族、学校関係者は、まさにこの小説に書かれているようなことになるんだろうか、と考えていくと、何ともやり切れない気持ちになりました。
沈黙の町でAmazon書評・レビュー:沈黙の町でより
4022510552
No.17:
(5pt)

すごいリアルティー

読み終えたあとの後味は非常に悪いが、実際こんなに引込まれた作品を読んだのははじめてだ
沈黙の町でAmazon書評・レビュー:沈黙の町でより
4022510552
No.16:
(4pt)

小説なのか?実在事件の再現なのか?

この作品は、朝日新聞で連載されていたそうですが、時期的に、世間的に
大問題となった、S県O市の『いじめ自殺問題』を意識されたものなのでしょうか?
『事故か?殺人か?』
まさにS県O市の問題を彷彿とさせるコピーです。
本作品の終わり方についても、『え?これで終わりなの?』『どこか中途半端では?』
という意見がネット上で数多く出ています。
S県O市の事件がマスコミで取り上げられ大騒ぎになっていたので、なんらかの圧力で
物語を強引な形で収束せざるを得なかったのでしょうか?
本作品では様々な登場人物の視点から描かれていますが、唯一、いじめられていた
少年の視点では描かれていません。
彼なりの気持ち、言い分も当然あると思いますが、作者は意図的に?描かなかった
ものなのでしょうか。ここが不思議です。

人生の中で、中学時代が一番残酷なのだ、と作品中に出ますが、昨今のいじめ事件や
傷害事件においても、中学生の検挙率が突出して高いことから、作者の言いたいこと
も頷けます。
読了後も気分は決して良くありません。
奥田氏の作品は大好きですが、この作品は二度と読み直さないでしょう。
読んでいて辛いです、読み終わると索漠とした荒涼感が出てきます。

物語とは関係ありませんが、私はS県警に電話をし、亡くなった少年が仰向けで
倒れていたことから、これは殺人なのでは?と聞きましたが、応対してくださった
警部補さんは『それも含めて捜査中です』とのことでしたが…
あれから捜査が進展しているという話は聞きません。
(補足:自分から飛び降り自殺した場合はうつ伏せになるのが普通。仰向けに
 倒れていたのは、第3者から胸を押されて後方に倒れたとしか思えない)
沈黙の町でAmazon書評・レビュー:沈黙の町でより
4022510552
No.15:
(5pt)

いじめを素材に現代社会における人間の弱さを描いた力作

地方都市で中学生が転落死します。死亡した生徒がいじめを受けていたことが分かり、傷害で4人の生徒が逮捕・補導され、殺人容疑をも視野に入れた捜査が始まります。いったい真相はどこに…。

本書の帯には「事故か、自殺か、それとも…長編傑作サスペンス」とあります。
しかし、読み終わって私はこの小説の主題は「いじめ」でも「謎解き」でもないと受け止めました。作者は地方都市のいじめ事件を素材にして、
より普遍的なテーマ、つまり人間の弱さと社会の現実をあぶり出そうとしたのではないでしょうか。
そうだとすれば、その試みは見事に成功しています。

様々な視点から事件が語られて.隠されていた事実が次第に姿を現します。投じられた小石が水面を波立たせ渦を生じるように、
事件は狭い町の人間関係にまで深刻な影響を与えていきます。いじめの原因が単純でないことが明らかにされ、生徒たちの幼くて危うい集団心理、
母親の我が子への執着、刑事や検察官による執拗な捜査、学校の保守的な対応、教師間の食い違い、新聞記者の取材、等がていねいに描かれます。
どこにでもいる普通の人ばかりが登場し、特別な状況はひとつもありません。

リアルで詳細な記述の積み重ねによって、いじめには相応の理由があること、中学生は状況や集団に流されがちであること、
大人は子供たちを理解できないこと、どこでもこうした事件は起こる可能性があることを著者は説得力をもって示すのです。

人間の持つ弱い部分が人間関係の歪んだ時に「いじめ」を生じさせ、社会の仕組みがそれを増幅する、これが著者の解釈だと私は理解しました。
新聞連載中に大きな反響を呼んだのは、この著者の意図を一部の読者が「いじめの肯定」と曲解したからでもありましょう。
しかし、著者はあくまで中立の立場であり、「いじめ」を手がかりにして日本社会の現状を切り取って私たちの前に提出したのです。

骨太の主題を完成度の高い小説として結実させたこと、すなわち30名を越える登場人物の一人ひとりの性格や心理を描き分け、
読者を惹きつけて離さない物語に仕上げた奥田英朗氏の筆力に私は感服しました。
沈黙の町でAmazon書評・レビュー:沈黙の町でより
4022510552
No.14:
(4pt)

ヒーロー不在の群像劇

北関東の地方都市。男子中学生の転落死事件をめぐっての捜査とリアクションを、次々と視点を入れ替えて描いた大長編。
顕著な特徴は、人物を善悪で塗りわけることが一切なく、ヒーローも悪人も不在なこと。
被害者の叔父と中学生の一人が比較的みもふたもない描き方で、逆に若い教師、刑事、検事はニュートラルに描かれているが、ヒーローと呼ぶには程遠い狂言回しである。
中学生の一人はかなり英雄的にふるまうものの、それも偏った正義感として突き放されており、事件全体の中では消極的加担者でしかない。
二人の母親の描かれ方が後半じりじり逆転していくのも印象深いが、特に回想部分の視点を担う少女の、ある「関わり方」が露呈していく場面は、痛ましくショッキングだ。ここの印象が強すぎて、ラストのインパクトが弱まってしまったのは残念。
沈黙の町でAmazon書評・レビュー:沈黙の町でより
4022510552
No.13:
(2pt)

筆者のいじめに対するスタンスには、疑問を感じざるを得ない。煽るだけ煽った結末にも、拍

奥田英朗の最新作は、今、大きな社会問題となっているいじめ問題を扱った作品だった。いじめ問題に対する世間一般やマスコミの論調は、「いかなる理由があろうとも、いじめることは悪いこと」一色だと思うのだが、本書を読む限り、筆者は、明らかに、「いじめられる方にもいじめられるだけの理由があり、いじめる方にもいじめるだけの理由がある」というスタンスに立っているとしか思えない。本書の「朝日新聞連載時に大反響を呼んだ衝撃の問題作」という触れ込みも、おそらく筆者のそうしたスタンスが、大反響を巻き起こしたということなのだろう。 

たしかに、本書を読めば、筆者のそうしたスタンスにも一理あると共感してしまう読者も出かねないとは思う。しかし、本書では、筆者が、被害者やその叔父の人格を歪めて描いて読者の反感を煽ったり、加害者を必要以上に良い人に描いたりと、筆者のそうしたスタンスに見合うような人物設定が意図的になされていることや、物語自体も、単なる典型的ないじめによる追い込まれ自殺にはせず、そうしたスタンスを展開し易い構造にしていることにも注意しなければいけないと思う。 

また、仮に、そうした人間関係が現実世界のいじめの構造の中の一部にあるとしても、それでいじめを正当化するようでは、世の中からいじめを根絶することはできないと思う。私は、筆者には、以前から、世の中を斜に構えて見る傾向があると感じており、筆者のそうしたスタンスは、いかにも筆者らしいとは思うのだが、たとえフィクションであろうとも、出版物という公器を使って、いじめという非常にデリケートで深刻な問題を正当化しかねないような論陣を張ることには、疑問を感じざるを得ない。 

筆者のいじめ問題に対するスタンスへの疑問の陰に隠れてしまった感があるが、「事故か、自殺か、それともー」と、煽るだけ煽ってくれた結末にも、拍子抜けしてしまった。
沈黙の町でAmazon書評・レビュー:沈黙の町でより
4022510552

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