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本陣殺人事件
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本陣殺人事件の評価:
| 書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.31pt | ||||||||
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全68件 61~68 4/4ページ
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| 本書は、本陣殺人事件の他に二つのショートショートがついている。 『本陣殺人事件』は密室ものである。途中で筆者は金田一に密室の探偵小説について語らせている。曰く、犯人がある方法で−針金だの紐だのを使ってですね−あとから錠だの閂だのをおろしておいた、などというのは感心しない・・・ であるならば、本件はこういうトリックではないということが分かる。 ではあくまで密室なのであろう。しかし、犯行に使われたと見られる凶器は部屋の外にあるのである。となると・・・ 『車井戸はなぜ軋る』は、酷似している異母兄弟が戦争から帰って来る、が、一人は戦死し一人だけで。さあ、その本人はどちらか、というのが話しの中心である。何か犬神家の一族にこんなのがあったような・・・ 『黒猫亭事件』は「顔のない屍体」ものである。筆者曰く、探偵小説には「一人二役」型だの、「密室の殺人」型だの、「顔のない屍体」型だのがある。後の二つは途中でそれと気付くが、「一人二役」型は読者に感付かれたが最後、その勝負は作者の負けであると。また、「顔のない屍体」は、十中八九被害者と加害者がいれかわっていると考えて間違いはないと。 さあ、本件のトリックは如何に・・・ この作品の最後にこういう文章がある。 「私は正直にいうが、見破ることが出来なかった。読者諸君はいかに?」 至らない作家がこんなことを書けば噴飯ものだが、この作家に言われるとどうにも、にやりとして、ああ分からなかったよ、と言うしかないのである。 三篇の内では『本陣・・・』が有名なのだろうが、トリックとしては『黒猫亭・・・』が一番練れている気がした。 | ||||
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| 「本陣殺人事件」「車井戸はなぜ軋る」「黒猫亭事件」の3篇が収められている。いずれも中篇という分量である。 「本陣殺人事件」は金田一耕助のデビュー作。本格的な密室トリックが使われており、著者の代表作としても広く知られている。しかし、正直なところをいえば、それほど優れた作品とは感じなかった。トリックもアレだし、真相もいまいち。探偵小説史上、貴重な作品だとは思うが。こういう、正面から取り組んだ密室トリックは著者は得意でないのでは。 「車井戸はなぜ軋る」は、煮え切らない作品という印象。 「黒猫亭事件」が、本書では最良なのではないか。プロットにトリックが組み込まれており、ついついだまされてしまう。読者への挑戦の仕方も粋だし、サービス精神に満ちた一編と思う。 | ||||
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| 本書は第二次大戦後、国内で初めて発表された本格推理小説で、金田一耕助初登場作品にして、第1回日本探偵作家クラブ賞(現在の日本推理作家協会賞)を受賞した、作者の代表的傑作である。 本書の魅力は大まかに次の3つである。 1)本格的な密室トリック 作者いわくはカーター・ディクスンの『プレーグ・コートの殺人』に刺激を受けたとのことだが、密室トリックに類似性や関連はないに等しく(『プレーグ・コート〜』は、密室の構成方法という点では機械トリックではなく、むしろ心理トリックのように思う)、「雪の密室」という点からはむしろ『白い僧院の殺人』を連想する。 またこれも作者の言だが、ガストン・ルルーの『黄色い部屋の秘密』を意識して、「黄色い部屋」に対してべにがら(紅殻)塗りの「赤い部屋」に仕立てている。 (ルルーの作品はミュージカルのおかげで『オペラ座の怪人』の方がすっかり有名になってしまったが、『黄色い部屋〜』は江戸川乱歩が名作推理ベスト10の2位に挙げる、密室ものの古典である。) なお、私は本書の密室トリックについて、クリスティー唯一の密室ものの長編『ポアロのクリスマス』に近しいものを感じる。一度読み比べられたら面白いと思う。 2)謎の三本指の男 この謎の三本指の男のように、たとえば『獄門島』の謎の靴跡の男や『犬神家の一族』の復員兵とか、『悪魔が来たりて笛を吹く』の椿子爵(に似た人物)、『悪魔の手毬唄』の「おりん」など、本書以降も作者は様々な作品で謎の人物を徘徊させているが、とくに本書ではこれが謎を深めさせ、怪しげで不気味なムードを醸し出すことに成功している。 3)金田一耕助の登場 本書の最大の功績は、金田一耕助を登場させたことに尽きるのではないだろうか。 本書とほぼ同時に発表された『蝶々殺人事件』と本書について、江戸川乱歩ら職業的推理作家たちは本書に軍配を挙げ、坂口安吾ら純文学作家たちは『蝶々〜』を支持したらしい。 もはや好みの問題だろうが、私は金田一の登場しない『蝶々〜』には味気なさを覚える。もしも本書に金田一が登場していなければ、きっと同じように感じたことだろう。 なお金田一耕助のモデルは、本書で作者が記載しているとおり、A・Aミルンの『赤い館の秘密』(本書では『赤屋敷の殺人』と記されている)に登場するアントニー・ギリンガムで、『赤い館〜』は江戸川乱歩が名作推理ベスト10の8位に推した作品である。 ちなみに『赤い館〜』の著者A・Aミルンは、『クマのプーさん』の作者である。 もう一つついでに、本書に記されている金田一耕助が解決したアメリカでの事件について、ヴァン・ダインの『僧正殺人事件』の続編として、『僧正の積木唄』という作品が山田正紀によって執筆されている。 (この中でファイロ・ヴァンスと金田一耕助のコラボが実現している) | ||||
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| 角川文庫新版を購入し、旧版にあった「解説」が無くなっていることに気づき唖然とする。旧版の「解説」では、大坪直行氏がこの小説の誕生背景を語ってくれていた。正史が岡山県吉備郡岡田村に疎開し、敗戦後直ちに執筆活動を開始したこと等。更に正史自身、『金田一耕助のモノローグ』(角川文庫)で、詳細に疎開前、疎開後、敗戦後の生活を具体的に語っている。が、この書も現在では古本屋でしか入手困難となっている。正史が、疎開前に既に本格的探偵小説の構想があり、瀬戸内海の島々を射程に入れており、岡田村に疎開した時、戦争絶対反対者であり、戦争協力せざるを得ない窮地時は青酸カリ服用・「家族無理心中」の覚悟をしていたこと、玉音放送を聞いた瞬間「さあ、これからだ!」と内心叫び、直ちに、執筆の準備を開始、執筆時は言葉があふれんばかりであったこと。岡田村界隈の探偵小説大好きインテリが情報を提供し、共同作品の様相。上京せず、岡田村発の作品を発表、まさしく日本国で「超然と孤立していた」と語る。この勢いが『本陣』では、見事にでている。伏せ字が伏せ字で無く読める近辺で生活している者達は有り難いやら得意であったり。尚、吉備郡は消失し(平成17年)、岡田村は真備町を経由して倉敷市に位置づけられている。 | ||||
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| さすがに日本ミステリーの最高峰とか、言われてるだけのことはあります。凄い密室トリックです。こんな上手くいくのかなぁとは思うけど、現実で実行可能かは分からないしそんなの論外で、要は机上で論理的に解決されれば、本格ミステリーは上上なわけで。その辺は島田掃除のトリックに共通するのではないでしょうか。琴糸であるとか、日本刀であるとか、日本屋敷、そして本陣のある某村であるとか、、、昭和前期の雰囲気がとてもよく出てますんで、いいですね。それにしても、3本指のオヤジさんが、とても可哀想です・・。こんなとこ来なけりゃ良かったのにね(笑 残りの車井戸と黒猫亭も、かなりのレベルではないでしょうか。3編は横溝さんの黎明期のころのものらしいですが、さすがに完成度が凄いです。同時期に執筆されたという金田一ではないけど、蝶々事件がまだ未読なので、早く読みたいと思ってます! | ||||
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| 氏の戦後長編の中では若干評価を下げさせて頂きました。初めて読んだ中学生時、改めて読み返した現代に於いても密室トリックに不自然性と非現実性を感じてしまいます。犯行動機に到っては、おそらく現代ミステリーばかり読んでいる人には理解不能かもしれません。但し本作は、戦後本格推理小説の嚆矢的重要作であり、著者は本作以降、奇跡的勢いで傑作長編を残していきます。本書を最初に読んで、疑問符を感じた読者も続く「獄門」「犬神」「手毬歌」を読んで頂ければ、何故に未だに読み継がれているのかがお解りいただけると思います。あえて金田一初登場作から読む必然性は無いので高評価の「獄門島」等から著者の作に触れてみてはいかがでしょうか。併載の「車井戸」は短編ながら良く出来た佳作。 | ||||
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| 当時の日本の社会的な背景,日本的なモノを使った密室トリック,動機等々,どれをとっても和風な仕上がりなのに何故か洋物ミステリを日本風に置き換えたバタ臭い印象がぬぐえないのは,作者の初期の作品だからか?丁寧に書かれており、さらに真相の意外性という意味ではかなりの出来.読んでも決して損するようなことはない. | ||||
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| 金田一耕助初登場、いかにも日本的な密室、で有名な作品です。また、戦後まもなく書かれ、紙が不自由だったための中編。長編だったらもっととんでもない傑作になっていただろうことはよく言われています。が、果たしてそうでしょうか? この作品は、中編だからこそ名作として今まで残ったんじゃないかな。密室のトリックは機械的で味気ないし、いかにもな姿の名探偵もちょっと鼻に付く。今だからこそ、そう思ってしまうのでしょうが。 ただ、恐さ・まがまがしさ・緊張感が最後の最後まで持続しているので、読んでいるとまさに手に汗握るといった感じ。これが何百枚という長編だったら、この緊迫感が最後まで続かなかったのではないでしょうか。「本陣殺人事件」は中編だからよかったという理由です。 戦争の終わりを境に、本格推理を書こうと心機一転した著者の意気込みと、紙の不足という戦後の混乱の中だからこそ生まれた、時代が書かせた傑作といえると思います。 | ||||
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