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(短編集)
黒猫の遊歩あるいは美学講義
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黒猫の遊歩あるいは美学講義の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点2.94pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全5件 1~5 1/1ページ
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第1回アガサ・クリスティー賞受賞作の連作短編集。 美学とは何ぞや?と首を捻っていたのですが、美意識を論じる学問だったのですね。そんな学問があるんだ。勉強になったのであります。 日常の謎(?)から変死事件まで、天才青年美学教授「黒猫」が遭遇する6つの事件。それぞれエドガー・アラン・ポーの代表作をモチーフに、ペダントリー満載の論理が展開されます。もっとも、明かされる真相はどれも拍子抜けといいましょうか、煙に巻かれた気分といいましょうか、これまた首を捻らされてしまうというのが正直な感想。 「黒猫」はあだなの「黒猫」で呼ばれるだけで、最後まで本名不肖。こういうライトノベルっぽい設定がいまどきの流行りなのかしらん。 | ||||
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「ジャケ買い」なんて言葉がありますが、美しい装丁や言葉のリズムに惹かれて手に取る作品というものがあります。 今日、手に取った一冊はそんな一冊。 早川書房が主催する第1回アガサ・クリスティー賞受賞作。 24歳にして教授職につく通称「黒猫」と、同じく24歳でエドガー・アラン・ポオの研究者「付き人」が出会う6つの事件を通じた物語。 殺人事件と名探偵といった狭義のミステリではない、いわゆる「日常の謎」系の短編小説。 かなりクセの強い小説。ミステリよりも、黒猫と付き人、各編に登場する人々の幻想のような淡く浮かぶ恋物語を感じる小説、だと思う。 そういう意味で、英国アガサ・クリステイー社の許諾を得て募集した第1回のアガサ・クリスティー賞がこれでいいの? という気持ちで揺れてしまいます。 「黒猫」も「付き人」も研究者であるが故に、会話も高尚すぎてついて行けない点が多数。焼き鶏屋で、「焼き鳥というのも死のアレゴリーになったりはしないのかしら?」「んん、普遍性がまだ足りないね」なんてやり取りをされると、もうね……。 選者の一人の北上次郎さんは「謎解きではあるけれど、そこに人間のぎりぎりの営みがあるという点で素晴らしい。」と評価されていますが、この点は同感。 人を想う、生きる、死ぬが全編とも書き込まれており、その一つ一つを「理解」できなくても「感じる」ことが出来、読み終えたあとに何か小さなものが読者の心に張り付きます。 美学講義に囚われると、難解でつまらない作品になりますし、それに囚われずに作品全体を音楽のように流して感じることが出来れば……個人的にはあまりはまれない作品ではあります。 選者にも指摘されていましたが、エドガー・アラン・ポオの作品をモチーフにしながら、ネタばらしをしている点はちょっとマナー違反な気がします | ||||
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ファイロ・ヴァンスという名探偵をご存じでしょうか?S・S・ヴァン=ダインという作家が生涯に書いた12作の長編推理小説(ベンスン殺人事件、グリーン家殺人事件、僧正殺人事件、カナリ殺人事件…)のすべてに、この名探偵が登場します。ヴァン=ダインは1920年代末から登場した古い作家ですが、第二次大戦後、欧米の翻訳<探偵>小説全盛期に高校〜大学生だった変愚院は夜遅くまで読みふけったものです。 ファイロ・ヴァンスが断片的な証拠から犯人を見つける推理は明晰ですが、その過程で様々なウンチクが散りばめられていて、煙に巻かれながらも楽しみでした。今でいえば、TVドラマ「相棒」の杉下右京を、もっとスペシャリストにしたような感じです。 昨年、早川書房がイギリスのアガサ・クリスティー社の公認を得て「アガサ・クリスティー賞」を創設して、新人の発掘を試みました。アガサ・クリスティーはE・ポワロやミス・マープルもので知られる「ミステリの女王」と呼ばれた作家ですが、候補作107編から選ばれて「第1回アガサ・クリスティー賞」を受賞したのが、この本です。(副賞100万円、漫才大賞に比べるともっとあげて欲しい) 最初にファイロ・ヴァンスの事を書いたのは、この本の探偵役「黒猫」が、ファイロ・ヴァンスに負けず劣らずのペダンティックな言葉をまき散らすからなのです。なにしろ「黒猫」は弱冠24才の「美学」を駆使する大学教授。普段の付き人(これが同世代の女性でポーの研究者)との会話でも「僕がここで言うカタルシスはプラトン的なものではなくてアリストテレス的なもので、アリストテレスは負の感情を浄化する点で悲劇にこの効用があるといっている」くらいは当たり前。焼き鳥屋にいっても「焼き鳥というのも死のアレゴリーになったりはしないのかしら?」「んん、普遍性がまだ足りないね」といったやり取りになるんです。ついていけんなあ。 この本は六つの短編からできていますが、すべて彼と彼女の身の回りのちょっとした謎ばかりです。たとえば「川に振り掛けられた香水」「でたらめな地図」などで、大きな事件は起こりません。しかし、すべてE・A・ポーの作品、これまた懐かしい「モルグ街の殺人事件」「盗まれた手紙」「黄金虫」…をモチーフにしているという趣向です。 その謎をイケメンで、頭が良くて、ぶっきら棒なようで時にふとした優しさを見せる「黒猫」が解いていく。こんな男には敵いません。もちろん「話し手」でもある私はメロメロ。最後には、どうも黒猫もまんざらではない様子で、これはプラトニックな恋愛小説でもあります。ウンチクもそれ程嫌味もなく、難しいところはザット読み飛ばすと爽やかな読後感が残りました。 ただ、この本で惜しいと思ったのは、何か所かにポー作品の「ネタばらし」があることです。 S・S・ヴァン=ダインはアガサ・クリスティの処女作『アクロイド殺人事件』を酷評しました。理由は彼が推理小説を書く上での鉄則を記した「ヴァン・ダインの二十則」に、クリスティが違反している、つまり「読者に対してフェアでない」という点にあります。 いかにポーの作品はすでに古典に属するとはいえ、推理小説のネタをばらすことは、最大のルール違反ではないでしょうか? | ||||
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院生の主人公をとりまく日常の出来事(多くは事件、というほどではない)や謎を もと同級生で教授の「黒猫」がひもといていくというもの。 どれもエドガー・アラン・ポオの作品中のキーワードとからめているのが 新しく、どこかインテリで高尚な印象でまとまっている。面白かった。 キャラ設定やふたりの関係性はなんとなく最初から予想がついてしまうが キレ者なのにソフトで、つかみどころのないミステリアスな黒猫の人物像が 章を追うごとにわかってきて、主人公との距離が縮まっていく様子がじわじわ甘い。 東京の西側のどこか?が舞台でどこかのどかで居心地もいい。 本筋からそれるが、 学生時代は何一つ誇れるような勉強をしなかったからか この本を読んでまず「今からでもいいからなにか自分の学問を究めたい、 なんでもいいから何か研究したい!」と感じてしまった。 年をとればとるほど、「学生」という存在が輝いて見える気がする。 | ||||
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この作品は第1回アガサ・クリスティ賞受賞作です。天才美学教授とエドガー・アラン・ポーを研究する大学院生が探偵役の、6本の連作短編となっています。 各章の冒頭にご親切にもポーの作品のあらすじが書かれています。このそれぞれの作品がモチーフになって、見立て殺人とかが起きるのかな。。。と思ったら、そんなワクワクするような血なまぐさいことは一切起こりません(それは、例えば、平石貴樹『だれもがポオを愛していた』でやられています)。 「日常の謎」派の作品でした。ワトソン役のポー研究者の院生の女性が一人称で語ります。「黒猫」とあだ名される、弱冠24歳で教授に登りつめた天才美学者が探偵役で、美学に関するペダンティックな会話を通じて、事件の真相に迫ります。基本は、安楽椅子探偵もので、「美しくない真相は真相じゃない」と、逆説的な美学理論で謎を解いていきます。 ただ、事件そのものは実に大したことのない話。別に解かなくても誰も困らなさそう。また、ポー研究で博士号を取るつもりの主人公ではなく、「黒猫」の方が毎回ポー作品の解釈を示すってのはどういうことなんでしょうね? わたしは主人公と「黒猫」との丁々発止の美術談義を期待していましたが、そういうことはありません。 主人公は「黒猫」に密かに恋心を抱いています。「黒猫」も安からず思っているようです。でも、お互いはっきりとは口にしない。ねらってのことなのですが、ちょっともどかしいかな? 二人とも大人ですし。 つまり、事件にせよ、恋にせよ、どうもいま一つ盛り上がりに欠けます。ドキッとするところがない。全体に小粒な話が淡々と続いている感じです。 文章はとても上手いです。さすがです。ぜひお手本にしたいほど、きれいな文章です。 でも、どうも読んだ後、事件や謎やトリックや物語が心に残らない。薄味のミステリでした。また、6本の短編は、主人公が同じというだけで、最後に全部がつながって衝撃の結論が! みたいなこともなかったです。 やはり、アガサ賞を冠するなら、最後にとんでもないどんでん返しがある長編を期待しますよね。残念です。 | ||||
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