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平成猿蟹合戦図
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平成猿蟹合戦図の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.77pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全35件 21~35 2/2ページ
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「これは吉田修一の最高傑作だ!」と知人が絶賛しているのを聞いて、勝手に「悪人」を超える作品ってどんなのだろう?と想像していた。 何のことはない。趣味嗜好の違い、好きな小説のタイプがその知人とは違うだけだった。 登場人物の皆さん、そんなに素敵な人たちでしたかね?心優しき人たちでしたかね?一生懸命頑張っている人たちでしたかね? ただ流されて生きているようにしか見えない登場人物も多かったような・・・。 話に芯があるようで、でもそれがいつのまにか置き去りにされたままで、なんとなく終わりましたという感じだ。 奥田英朗や伊坂幸太郎の群像劇を読んでいる時のような、「そうきたか!」と膝を打つことが無いまま、「ああ、これで終わりですか?」という拍子抜けで終了。 吉田修一そのものは否定しない。「悪人」は星5の評価をしたいくらい好き。 でも「横道世の介」や「平成猿蟹合戦図」のような作品は残念ながら好きではない。 | ||||
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タイトルの通り、“親の敵を子が討つ”復讐劇がモチーフとなっている。 復讐劇の発端となるエピソードは、吉田修一らしくリアルで酷い。 しかしながら、『悪人』や『さよなら渓谷』の様に、犯罪を通してどうしようもなく 重くやるせない人間の“業”や“性(さが)”を深く抉る作品にはなっていない。 瑛太(=赤ん坊)が無邪気にすくすくと育っていくように、朋生が、美月が、夕子が、圭司が、美姫が 竜也が、友香が、そしてサワおばあちゃんが、純平の衆議院議員選挙活動をきっかけに各々の過去を 乗り越えて本来の自分を取り戻し、あるいは新しい未来を=自分を作り出していく。 (そしてそこには『悪人』のもう一つのテーマであったとも思われる閉塞感あふれる地方社会の再生 への思いも込められている。) 人の力を信じよう!!…誰だって新しい自分になれる!そんな再生に向けたメッセージが込められた作品である。 | ||||
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個人的には凄く好き。 誰も救わない、救われない名著「悪人」の後に、ベッタベタの王道展開の本書。悪人の逆は善人だし、諸行無常の後は勧善懲悪でしょう、とでも言いたげな本書。 確かに、悪人の重厚さを期待して読むと確実に幻滅する内容かと思う。その一方で、悪人と同じ世界の中で、こんな話もあるんだよと自己理解しながら読むとこのヌルさがなんか嬉しく感じるのも事実。 多くの主要人物の話を交互にまぶしつつ、ラストに向けて収束していくストーリー展開は読んでいて非常に小気味いい。内容が良い意味で軽いので、何かおもーい本を読んだ後に読むと丁度良いと思います。 | ||||
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地方出身者たちが東京そして秋田を舞台に織りなす群像劇。 昔話のさるかに合戦を下敷きに,2組の親を殺された(に等しい)者たちの復讐劇を描く。しかし,この復讐ストーリーは同時進行ではなく,片方の復讐がなされたところから物語は始まり,もう一つの復讐劇は読者にそうとは知らされずに,最初の復讐に関与した人間を含めて全登場人物を巻き込みながら本物語を構成してゆく。 登場人物たちが,いずれも愛すべきキャラクターの持ち主なのが,読み手を引きつける。その上に,作者特有のストーリーテリングの巧みさと相まって,非常に面白く読める。結末は予定調和的であるが,それに至るプロットには起伏もあり,十分に楽しめる作品だ。 他レビュー者が言うように,人間性の深い部分をあぶりだすような視点や仕掛けはなく,純文学的な深みには欠けるが,純粋なエンターテイメント作品としては完ぺきなのではないか。 | ||||
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題名がどうにも謎だった。 ヤンキーというか、典型的に軽率な生き方をしている九州離島の二人の男女から物語は始まる。 東京・歌舞伎町に出て来て、更に軽はずみな若者と交流し、そしてあれよあれよという間に犯罪に首を突っ込んでいく。 いくつかの泥沼のような過去のしがらみを抱えた、何人かが描かれる。 一見関係なさそうな彼らが次第次第につながり合って絡まっていく様子は、 ちょっと伊坂 幸太郎の作風に似ているかも。 最後は秋田を舞台に活劇風に盛り上がる。 ただ、サワ婆さんの内面描写は深い。女手一つで高校まで出して一人息子を東京に送り出し、美容院の鏡に胸を張るシーン、孫が田んぼの向こうからかけてくるシーン、夜叉孫に「スカッとする話には毒が入ってるのだ」と秋田弁で話す場面、いずれも鮮やかに心に刻まれる。 そして、最後に語られるのが平成猿蟹合戦図なのだ。どんなオチさつげだんだべさね? | ||||
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かろうじて小説となっているが、携帯小説に近い軽さ。筆者は20代前半かと思いきや40代。 登場人物にまったく魅力がない。薄っぺらい。何て力のない小説だ…。 | ||||
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吉田修一にハズレなし。 そう思っていたけど、本作はちょっぴり期待はずれ。 ストーリーもキャラクターも悪くはない。 けれど、ぐいぐいと引込まれる独特の高揚感、リーダーズハイがなかった。 「悪人」のような人間の業を描き切るわけでもなく、 「横道世之介」のような抜けきった登場人物も出て来なかった。 これは邪推だけれど、あの震災が影響しているかもしれないと思った。 後半、予定調和のハッピーな結末に向かっていく展開が、らしくないと感じた。 それは、読後感をポジティブなものにしようと途中で方向転換したのではないか。 読者を少しでも勇気づけたり、元気にしようと意図があったのではいか。 ぜんぜん、そんなことないかもしれないけど。 次回作に期待です。 | ||||
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有り体に言えば“8人の一般市民が悪に立ち向かう”…という中身。 『南総里見八犬伝』を思わせる面白いテーマではありましたが、残念ながらインパクトに欠ける仕上がりでした。 吉田修一氏は切り口が面白いと言うか物を見る視点・角度が独特で、 この作品でも随所にその片鱗は窺えるのですが なぜか今回はその度合いがやや淡泊で、また起伏のない平坦な導入部がかなり後半まで引っ張られている感じ。 正直なかなか読むスピードが上がらずに、読み切るまで時間がかかりました。 決して難解な小説ではなく娯楽作品でありながらも芯は通っているのですが、 先述した通り変化のない低空飛行の導入部分がいつまでも続く割に “本題”に入ってからの展開とそこに費やされた文字数が少ないために えらくアッサリ終わってしまう印象でした。 作者は年齢的にみてもNHKの『新・八犬伝』を見て育った世代でしょうか。 確かにワクワクさせるストーリーだったので、これをモチーフにしいているとしてもおかしくはない。 しかし同じ年齢層の作家/脚本家が作った物で『南総里見八犬伝』をモチーフにした作品のNo1は 三谷幸喜氏のTVドラマ『合言葉は勇気』でしょう。 『合言葉は勇気』はコメディーですが、視点・切り口はこの『平成猿蟹合戦図』と全く一緒です。 両者を比較した場合の決定的な違いは“山あり谷あり”の起伏の差だと思います。 その意味で『悪人』の比類なき面白さ・プロットの濃密さは最高でした。 次作に期待です。 | ||||
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吉田修一氏は、最高の小説家の一人であると思っていましたが、少々残念な終わり方です。 前半は、歌舞伎町に生きる人々や上京してきた人の心情や人間関係を見事に描き切っており、凄いなあ、と感心しましたが、後半の元バーテンが選挙に出るあたりで作り話っぽい感じになってきて残念です。 地方議会等で、政治について考えてことがないような人(馬鹿っぽい人)が立候補していることを持ち上げる風潮があるような気がしますが、そういうのに、吉田修一氏が迎合しているようで、悲しくなります。 もっと厳しい目で現実の社会や人を描いてほしいと思います。 | ||||
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一体いつになったら面白くなるのかと思っているうちに盛り上がりもなく読み終わってしまった。 今年初めて読み終わった後、燃やしたくなるほどつまらなかった最低の一冊。『悪人』と同じ作者とはとても信じられない。 今すぐ捨てたいが少しでも回収したいので売りに出します。 | ||||
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この10年、私のもっとも注目する作家は吉田修一氏であった。彼は読者の前に現代社会を切り取って見せ、考えさせ、感動させてくれたからである。一作ごとにテーマや状況を変え、新しい課題に取り組み、自らに試練を課す姿勢は求道者を思わせた。おかげで「東京湾景」「静かな爆弾」「悪人」を読みながら胸がヒリヒリする感覚を私は初めて味わった。 その吉田修一氏の最新作が「平成猿蟹合戦図」である。期待して臨んだがそれは少なからず裏切られた。長崎の離島から新宿歌舞伎町、大館へと列島を縦断しながら8人の男女が繰り広げる奇想天外な群像物語である。ストーリーは面白く、500頁を息つく間もなく読めた。人物はよく描かれているし、プロットに破綻もない。 しかしである、胸に響かないのだ。主人公たちの行動の「必然性」が弱いのだ。「悪人」において祐一と光代を描いたように「人間」を突きつめて見つめることがないのだ。「これはエンターテインメントだから」と言えばそれまでだが、吉田修一氏への私の期待は大きいのである。 | ||||
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明るい!感動! 何で大館?でも良く取材してるなぁ。なんかあの町にありそうな話。 飽きない展開に一気読みしました。 | ||||
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最初の書き出しの章、歌舞伎町の路地裏で、田舎から出てきた若い女の子と、その赤ん坊が途方に暮れている・・。 悲劇的な話を想像して読み始めましたが予想に反して、読後爽快な気分になるお話でした。 前半、ひき逃げ事故に関する脅迫の話が中心で進み、後半いったいどんな展開になるのか読めないような話ですが、 思わぬところに話が落ち着き、ストーリー運びがさすが巧みです。約8人の主人公が登場する群像劇ですが 「悪人」とは、また全く違うイメージの話で、面白かったです。 | ||||
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善良な人たちが頑張って大きなことをやり遂げようとする作品。五島列島から東京歌舞伎町をはさんで秋田へ、中心的な舞台の移動とともにチェンジされる言語がダイナミックで味わい深く、またそれぞれの言語を用いる登場人物たちがとにかく魅力的。暗くて重いものを抱えながら新しい道を探す者たちがいれば、根っからの呑気さを強みにして世の中に出て行こうとする者たちがいる。極道も政治家もおばあちゃんもそれぞれの個性を発揮。特に物語の根底をいろんな意味で支えているおばあちゃんが最高。彼らが織り成す群像劇が、読み進めれば進めるほどドラマチックに盛り上がっていき、やがて読むものに前へ進む元気を与えてくれる劇的なクライマックスへ。吉田修一さんの書いたもののなかで、ここまでエンターテイメント性の濃厚なものは今までなかったように思う。『悪人』に代表される人間のダークサイドの多様性の探求から、『横道世之介』の叙情あふれる常春な青春ストーリーをへて、さらに別の境地へ。これから次の展開にまた期待してしまいます。 | ||||
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また犯罪小説かと思って読み出したが、読み終わった感じは全く違った。 『悪人』のせつなさややりきれなさとは真逆のハッピーエンドで、わりとすっきり読了。 『悪人』同様、一貫して三人称、場面は次々変わる。舞台は現代の長崎、東京、秋田。 登場人物は0歳児から100歳目前のおばあちゃんまで、 バーテン、クラブのママ、美大生、ホスト、音楽家、ヤクザなどなど老若男女多彩。 誰が主人公というのではなく、それぞれの舞台で、それぞれが主人公。 えん罪、轢き逃げ犯の身代わりなど、重たいテーマがありながら、終始『横道世之介』的な軽いテンポ。 つらい場面で、登場人物のちょっとした一言や、間抜けな言動に癒されたり、 日常の描写に幸せを感じたりできる。 吉田作品の好きなところは、感情や身体感覚の表現など細部がすごく丁寧なこと。 感情移入しやすい。 地方出身者の東京に対する感情、里帰りしたときの感情などめちゃくちゃリアリティがある。 現代にしては方言がきつ過ぎるような気もするが、 地方出身者を東京の町のなかで浮かび上がらせるのに、すごい効果を発揮している。 あと、寂れた地方のできごとや、一般的にいう“下流”の人たちが、 スト―リーの表舞台で活躍すること。優しい気持ちになれる。 連載が朝日新聞の『悪人』に対して『週間朝日』だからなのか、 後半のりのりのエンタメ小説的になり、 フィクションならではのうまくいきすぎる展開がポンポン出てくるが、 割り切って読めば率直におもしろい。 歌舞伎町にいっぱいいそうな若者が政治家になっちゃう、 あり得ないストーリーのはずなのに、妙にリアリティがある。 政治がらみの小説を、こんなに気持ちよく読めたのは初めてで楽しめた。 あえていえば、最後の最後の終わり方だけちょっと残念かも。 自分の日常がつまらないと感じるときに、読むとわくわくできる一冊。 | ||||
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