■スポンサードリンク
(短編集)
メルカトルかく語りき
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!
メルカトルかく語りきの評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.00pt |
■スポンサードリンク
Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全40件 21~40 2/2ページ
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
メルカトルを主役にした短編のシリーズ2作目だが、1作目の美袋のための殺人が、癖がありつつもまっとうな本格推理集として展開されていたが、本作は論理から導き出される推理過程を描いた紛れもない本格推理作品だが、結果的に真犯人が判明しないというその論理性ゆえに全体的としては何とも変な論理的帰着となってしまうという一種のギャグミステリーというかアンチミステリーというかとにかくコピーの実験的本格というキャッチフレーズがこれほどぴたりとハマる作品はないだろうという異色作。 探偵が全ての手掛かりから論理的に導き出した解決が絶対的な真理とはなり得ないというミステリーの命題を自覚的に麻耶氏ならではの意地悪さで描いた作品と言える。 全編、犯人が分からないので宙ぶらりん感がハンパないが、試みとしては非常に興味深く、面白く読める作品である。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
一種の思考実験とでもいいましょうか、アンチ本格ミステリでありつつ、まぎれもなく本格ミステリという怪作であります。 論理を突き詰めた果てに待っている、不条理な結末。 「答えのない絵本」「収束」の論理構築が凄まじい! | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
麻耶雄嵩が本気を出すとこうなる、ということ。 アンチ・フーダニットの短篇集ですが、捨てなし。 いずれも捻りが利き、不条理感以上に「洒脱さ」さえ感じてしまうのは、 デビューから20年経って、この著者も何だかんだ成長しているということでしょう。 取分け「答えのない絵本」は驚嘆すべき出来栄え。 後期クイーン的問題(簡単にいうと推理小説におけるゲーデル定理)を逆手に取った離れ業には脱帽するほかありません。 やはりすごい作家です。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
朗報です。 真犯人のいなくなる、わけのわからない作品なんか読みたくないとお嘆きの貴兄に。 本書で出てくる話の真犯人を教えましょう。 本書のメルカトルは無謬ですが、別に言及している犯人が正しいわけじゃありません。 むしろ、メルカトルの利益を最大値化するために、積極的に嘘をついています。 美袋を騙すために。 美袋いじめるのが最大の喜びなんですね。嘘犯人をでっち上げて美袋を騙して最後に美袋に真犯人を説明するかしないかの違いで。 収束にしても三分の一で三通りの犯人。答え自体は合っているわけです。 答えのない絵本 事件のアリバイをいろいろ分析しましたが、そもそも最初に目撃者が犯行現場に入ったとき、 被害者のタバコの煙で部屋は立ち込めていました。 スクリーンセイバーの時間をいじれて、アリバイを誤誘導できたのは、メルカトルただ一人ですね。 データは二つ。 ・真犯人は偽物のアリバイで完全に安全なもの。 ・メルカトルがかばうだけの必要のあるもの。依頼者の存在。 犯人は土岐ですね。 憎からず思っている視点人物から見て完璧にアリバイがあり(他の人物は教室を出入りして犯行は可能)、 父親は高級官僚でメルカトルに依頼した可能性が大。 おそらくは息子に泣きつかれた高級官僚から依頼されたメルカトルが、 同じような依頼人の警察官僚やヤクザの態度が悪いので、おどかすために、 そちらの依頼人にはちょっと穴のあるアリバイ提供したのでしょう。 いつでもお前らの娘は犯人にするぞと。 彼女たちは教室出入りしてますし、友達からの情報聞くことで犯人たりえます。 メルカトルの嘘アリバイでは土岐のアリバイだけ完璧です。 密室荘に至っては謎も何もありません。 確かに、密室荘は密室でした。死体は玄関ところにでもほうってあり、それを見たメルカトルが中にはこんで隠蔽工作してるだけです。 痛い腹探られたくないから。絵本のヤクザあたりが脅しつけるために、死体を置いといたんでしょう。 本当に外から中に入れてないなら、そもそも被害者はどうやって入ったんでしょうか。 美袋が馬鹿なだけです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
メルカトル、という名前をミステリ好きの方からよく聞くので初めて読みました。 最初の登場シーンから、やられた・・・という感じです。ワトソン役の友人とのやりとりが非常に楽しかったです。・・が、 短編ひとつひとつの読後の感想は「・・・え?!」や「・・・・!?」でした。 私がバカだから分からないのもあるかもしれませんが(苦笑)初めてこういったミステリを読んだので私は楽しめました。 すっかりはまってしまいました。 きっとハマるか、嫌いか・・・という感じなのかもしれないですね。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
この短編集は、少なくとも「後期クイーン的問題」と言われて何のことかわかるような人でなければ、楽しめないと思う。 作者が「不可謬」「解決も当然無謬」だと言い、本人もそう振舞っている探偵を登場させることによって、はじめて「後期クィーン的問題」を物ともしない、恐るべき推理劇が展開される。 その結果、「探偵の知らない情報が存在することを探偵は察知できない」ことなど問題にしないストーリーが展開され、「作中で探偵が最終的に提示した解決が、本当に真の解決かどうか作中では証明できない」まま、読者は宙吊り状態に置かれてしまうのだ。 たとえば『答えのない絵本』という短編においては、実は別の解決がありうる。 学校という舞台の中には、誰からも相手にされず、いじめの標的にすらならない、空気のような存在感の生徒が、存在しうる。 そんな「見えない生徒」の存在は、事件現場にいた者たちの証言からも、漏れてしまう。 実際には、その時その場にいたのだが、後になって関係者一同を招集したときに、ひとり欠けていたとしても、誰も欠けていることに気付かないような生徒の存在を、読者は想定できる。 だが、その場の当事者ではなかった探偵には、その存在が自分に伝わっていないこと自体を察知し得ない(または、探偵がそのように振舞うことは、推理小説という虚構の中では許される)。 そして、ここでの探偵役・メルカトル鮎は、そうした「後期クイーン的問題」など問題にしない超絶的な存在であるため、依頼内容に基づき与えられたデータから論理的な解決を導き出し、それ以外の解決など求めない。 実に恐るべき展開である。 麻耶雄嵩という作家がメルカトル鮎という探偵を起用してはじめて成し得る境地としか、言いようがない。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
メルカトルと美袋ときたら、碌でもない話なのは最初からわかりきっていて、 それでも読んでしまう。ああなんとアンビバレントな… 全編コテコテの反推理小説です。「収束」なんて、メタミステリにも程がある。 爽快な読後感とかすっきりした解決とかがないと耐えられない方には向きません。 TV版エヴァが好きならOkかな? ってところですね。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
日本推理作家協会賞・第11回本格ミステリ大賞受賞作。ミステリが読みたい2位・2012本格ミステリベスト10 2位。このミス2012 7位。 上記に挙げた通りミステリ会においてかなり評価の高い作品だったので読んでみた。 感想は、見た目はミステリの体裁をとってはいるが、厳密にはミステリとはいえず、探偵役のメルカトル鮎が起こった事件に対し、語った内容を楽しむ作品となっている。 5つの短編が収録されているが、全てにおいて犯人は判明しない。理由は、メルカトルが事件の真相よりも自己の利益を最優先するためである。そのため自分の利益に都合の悪い真相を隠し、あたかも真実であるかのようにカバーストーリーを事件関係者やワトソン役の美袋三条に騙る。 そのため、論理的ではあるが作品の肝である真犯人が判明せず読者はかなりのもやもや感が残るという内容になっている。この作者のファンならば楽しめるが、ミステリ初心者や犯人当てを楽しみにして読む人にとっては噴飯ものであるため、注意が必要。 5つある作品の中では「収束」の出来が良く、1から3章の内容が、最後まで読むと分かる構成はうまいと思った。箱の蓋を開けてみるまで中の猫が生きているのか死んでいるのか分からないというシュレディンガーの猫をミステリにあてはめた内容は面白かった。逆に最後の書き下ろし短編である「密室荘」はすぐに落ちが分かってしまい、いまいちの出来。 高校1年の生徒20人が容疑者になる「答えの無い絵本」の結末は、いかにもこのメルカトル鮎らしい落ちのつけ方で、犯人は存在しないというふざけたことを言ってはいるが、利益最優先のメルカトルが真実を述べるわけがなく、依頼人が誰かを考えれば真犯人は見当がつく。 メルカトルのキャラが面白いため、ストーリーは楽しく読めるがミステリ小説としてはかなりの変化球である為、作者のファン以外の人には勧めにくい小説である。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
基本的にはおもしろかった。実験小説ですよね、でも。 なので、あんまりネタバレはかけません。 端っこの方を触るようにレビューすると、 文章としては、最近マンネリ気味な東川作品よりも 毒が効いていて、好き。 そして、論理的なタッチも好みです。 本作は、この「論理」を突き詰めていった先の 結論の意外さを楽しむというか、馬鹿にするな!っていう 人には受けないだろうなぁというエンディングをするという ああ、何とも書きようがないですが…… 扉袖に、作者から、メルカトル(探偵)は不可謬です。 したがって彼の結論も無謬です。あしからず。 みたいなメッセージが書かれていて、全編読んだ後に 改めて見直したら、あ、それであしからずなのですね、 と腑に落ちました。 なので、読むものに困ってる人とか、とにかく本が好きな人は これ好きだと思うんですけど(僕は後者)、一発でおもしろい 推理小説に出会いたい、という人はやめた方がいいんでしょうね。 実験的「本格推理」としては興味深いけど。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
最初の短編を読み終えて、あっけに取られた。え?これで終わり?と。正直もやもやとした気分が消えず、釈然としない時間を過ごすはめになった。 なぜならミステリにおける基本構造の一要素を完全に無視したまま、話が終わってしまったからだ。実験的なストーリーを作る作者と知っていてもなお、面食らった。 しかし読み進めていき、そういうコンセプトのもとで作られた短編集だということが分かってくると、がらりと印象が変わった。 まず、基本構造の一要素を完全に無視することで、より一層、銘探偵メルカトルの性悪さが際立つ結果になっている。そのため美袋とのやり取りが他のシリーズと比較しても面白く、より楽しめるものになっている。そうすると、これはこれでありかもと思えるようになった。 また、逆説的にメルカトル以外のいったい誰が、このコンセプトの短編集で探偵役を務められるのかと考えると、他の誰にもできるわけもなく、銘探偵メルカトルシリーズの短編集としては、この話でもありという判断に落ち着いた。銘探偵とはよく言ったものだ。 実験的な要素とメルカトルの性悪さを堪能できたので個人的には☆5つだが、万人には薦められないので☆3つ。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
麻耶雄嵩氏の最新作で、日本推理作家協会賞受賞後の第一作となります。 メルカトル鮎という、彼の作品シリーズの中で登場する銘探偵(名探偵ではなく銘探偵です)が主人公ときいて思わず買ってしまいました。メルカトル鮎は、つねにシルクハットにタキシードという衣装で暮らし、初登場作品でいきなり死亡するという、ものすごく特殊でエキセントリックな活躍で記憶に残る銘探偵でしたので、彼が主人公というだけで買ってしまいました。 内容のほうは、彼が遭遇する五つの事件を、彼とその記録作家の美袋が解き明かしていくというものですが、、、普通のいわゆる一般推理ものを期待して読むと大いに肩すかしというか、投げたくなる話ばかりです。なので、普通に推理ミステリを読もうという方にはおすすめできません。でも、普通のミステリではなく、メタミステリであるとか、定石から外れた変則的なミステリを読もうという方であれば、或はミステリという枠の中で何ができるかという実験的要素を楽しめる方であれば、はまる方も出てくるのではないかと思います。 過去作品から比べると、盛り上がりや、推理の切れ、カタルシスという点については落ち気味ですので、高評価はできませんが、かなり特殊なミステリを書くという視点はぶれない麻耶さんらしい作品には仕上がっています。 ファンにはお勧めできるけれど、一般にはお勧めしづらいという点でもぶれていないです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
麻耶雄嵩氏の最新作で、日本推理作家協会賞受賞後の第一作となります。 メルカトル鮎という、彼の作品シリーズの中で登場する銘探偵(名探偵ではなく銘探偵です)が主人公ときいて思わず買ってしまいました。メルカトル鮎は、つねにシルクハットにタキシードという衣装で暮らし、初登場作品でいきなり死亡するという、ものすごく特殊でエキセントリックな活躍で記憶に残る銘探偵でしたので、彼が主人公というだけで買ってしまいました。 内容のほうは、彼が遭遇する五つの事件を、彼とその記録作家の美袋が解き明かしていくというものですが、、、普通のいわゆる一般推理ものを期待して読むと大いに肩すかしというか、投げたくなる話ばかりです。なので、普通に推理ミステリを読もうという方にはおすすめできません。でも、普通のミステリではなく、メタミステリであるとか、定石から外れた変則的なミステリを読もうという方であれば、或はミステリという枠の中で何ができるかという実験的要素を楽しめる方であれば、はまる方も出てくるのではないかと思います。 過去作品から比べると、盛り上がりや、推理の切れ、カタルシスという点については落ち気味ですので、高評価はできませんが、かなり特殊なミステリを書くという視点はぶれない麻耶さんらしい作品には仕上がっています。 ファンにはお勧めできるけれど、一般にはお勧めしづらいという点でもぶれていないです。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
一読して、ミステリとして欠陥品だという印象しか受けなかったが、「もしかしてミステリに対しての問題提起なのでは!?」「作者の稚気では!?」「メルカトルだから仕方ないのか!?」と考えた。でもやっぱりこれは『欠陥品』だと思う。相変わらず論理を突き詰めていくシーンは圧倒的濃度だが、説明文の堅さとヘタさで読者置いてけぼり。すべてが台無しになっている。それでも、『翼ある闇』や、途中まで読んで投げ捨ててしまった『夏と冬』よりはマシ(『隻眼の少女』は面白かった)。それにしても、昔から思っていたけど、メルカトルって、本当に邪悪な探偵だな〜…。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
一読して、ミステリとして欠陥品だという印象しか受けなかったが、「もしかしてミステリに対しての問題提起なのでは!?」「実験精神か!?」「作者の稚気では!?」「メルカトルだから仕方ないのか!?」と考えた。でもやっぱりこれは『欠陥品』だと思う。相変わらず論理を突き詰めていくシーンは圧倒的濃度だが、説明文の堅さとヘタさで読者置いてけぼり。すべてが台無しになっている。『翼ある闇』や、途中まで読んで投げ捨ててしまった『夏と冬』くらいつまらない(『隻眼の少女』は面白かった)。それにしても、昔から思っていたけど、メルカトルって、本当に邪悪な探偵だな〜…。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
左利きの人間もとっさに右手で何かすることがあるかもしれないけれど、そういうことを言い出したらきりがないからそれについては恣意的に考えない。 密室状態の室内でも、原子や空気が突然変な動きをして勝手に被害者を死に至らしめたのかもしれないけれど、そういうことを言い出したらきりがないからそれについては恣意的に考えない。 それが本格ミステリであるなら、「こういう方向に」恣意を働かせたって決してアンフェアではないよね? そんな声が聞こえてくるようです。 一分の隙もない論理を積み重ねた結果として現れる、幻想小説のように薄気味悪くカオスな光景。 解決するとはどういうことなのか? 根拠があるとはどういうことなのか? それを考えることで初めてこの本は幻想小説から本格ミステリに姿を変えるのだと思います。 余談ながら『答えのない絵本』の「もちろん、××は××より以前にぶら下げておく」には大いに爆笑しました…そのちょっと前から既に正気の沙汰ではないけどこれはもうだめだ、我慢できない。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
左利きの人間もとっさに右手で何かすることがあるかもしれないけれど、そういうことを言い出したらきりがないからそれについては恣意的に考えない。 密室状態の室内でも、原子や空気が突然変な動きをして勝手に被害者を死に至らしめたのかもしれないけれど、そういうことを言い出したらきりがないからそれについては恣意的に考えない。 それが本格ミステリであるなら、「こういう方向に」恣意を働かせたって決してアンフェアではないよね? そんな声が聞こえてくるようです。 一分の隙もない論理を積み重ねた結果として現れる、幻想小説のように薄気味悪くカオスな光景。 解決するとはどういうことなのか? 根拠があるとはどういうことなのか? それを考えることで初めてこの本は幻想小説から本格ミステリに姿を変えるのだと思います。 余談ながら『答えのない絵本』の「もちろん、××は××より以前にぶら下げておく」には大いに爆笑しました…そのちょっと前から既に正気の沙汰ではないけどこれはもうだめだ、我慢できない。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
「死人を起こす」「九州旅行」「収束」「答えのない絵本」「密室荘」収録。 メルカトルシリーズのうち2009〜10年と最近発表された作品4編と、書き下ろし短編が1編(「密室荘」)という構成。 著者の言葉からもわかる通り「銘」探偵メルカトル鮎は無謬の探偵としておかれた存在であって、その原理上彼が語る論理が誤りであることはない。だからこそ収録されている5編の結末のいずれもに読んでいる側は困惑させられることになる。なかでも後半3つ「収束」「答えのない絵本」「密室荘」はとても著者(メルカトル?)の性向が良く理解できるのでは。本格ミステリの本のレビューとしてあまり詳しくは話せないけれど「収束」は普通に1年に1度あるかないかの作品で、おすすめしたい。「答えのない絵本」「密室荘」は読んでいて途方に暮れてしまった。前作『メルカトルと美袋のための殺人』収録「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」を初めて読んだ時の困惑感。こちらは問題作ではあったが再読するほどに良くできた作品でしたがこちらは果たして・・・?少し時間を空けてもう一度精読するつもり。 相変わらず初めての方にはすすめづらい作風ですが、著者の本格を読み続けてきた読者の方には文句なくおすすめできる出来になっています。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
「死人を起こす」「九州旅行」「収束」「答えのない絵本」「密室荘」収録。 メルカトルシリーズのうち2009〜10年と最近発表された作品4編と、書き下ろし短編が1編(「密室荘」)という構成。 著者の言葉からもわかる通り「銘」探偵メルカトル鮎は無謬の探偵としておかれた存在であって、その原理上彼が語る論理が誤りであることはない。だからこそ収録されている5編の結末のいずれもに読んでいる側は困惑させられることになる。なかでも後半3つ「収束」「答えのない絵本」「密室荘」はとても著者(メルカトル?)の性向が良く理解できるのでは。本格ミステリの本のレビューとしてあまり詳しくは話せないけれど「収束」は普通に1年に1度あるかないかの作品で、おすすめしたい。「答えのない絵本」「密室荘」は読んでいて途方に暮れてしまった。前作『メルカトルと美袋のための殺人』収録「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」を初めて読んだ時の困惑感。こちらは問題作ではあったが再読するほどに良くできた作品でしたがこちらは果たして・・・?少し時間を空けてもう一度精読するつもり。 相変わらず初めての方にはすすめづらい作風ですが、著者の本格を読み続けてきた読者の方には文句なくおすすめできる出来になっています。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
相変わらずのメルカトル、美袋の掛け合いが面白い。普通に読んでいて面白いというのも、存外大事なことだと私は思う。 内容だが、この五作はすべて同様の趣向が凝らされている。この趣向については前例はあるかもしれないが、ここまで徹底して様々な手法と実験精神で取り組んだのは麻耶が初めてだろう。この作家、とにかく独自の問題意識を持ち、非常に高度な論理構築の業を以てそれを支える。その問題意識を共有でき、論理の美しさを正当に評価できる読者、所謂マニアこそがどっぷりとはまってしまう所以だ。 「死人を起こす」で若干不満に思ったものの、全体の趣向から見れば妥当なラストか。何より面白かったのが「収束」。事件自体は単純なものなのに対し、途中まで著者の意図がまったくわからない。Who done itだのWhat done itだのそういう括りですら、もはやない。やはり問題意識を持たなければ真の創造はできないのだと身につまされる思いだった。そして単純にラストのどんでん返しの鋭さも一番だった。残りの三作も非常に個性的で粒ぞろい、独創的で意外なラストととても面白いのだが、欲を言えば若干問題意識が先行しすぎ、自縄自縛となった感もあり、評価が別れるところだろう。著者の作品の中でも実験要素が強い短編集となっている。 いずれにせよこの小品集には事件解決に伴う爽快感など欠片もないので、そういったものをミステリに期待される方は手に取らない方が懸命かと。 | ||||
| ||||
|
| ||||
| ||||
---|---|---|---|---|
相変わらずのメルカトル、美袋の掛け合いが面白い。普通に読んでいて面白いというのも、存外大事なことだと私は思う。 内容だが、この五作はすべて同様の趣向が凝らされている。この趣向については前例はあるかもしれないが、ここまで徹底して様々な手法と実験精神で取り組んだのは麻耶が初めてだろう。この作家、とにかく独自の問題意識を持ち、非常に高度な論理構築の業を以てそれを支える。その問題意識を共有でき、論理の美しさを正当に評価できる読者、所謂マニアこそがどっぷりとはまってしまう所以だ。 「死人を起こす」で若干不満に思ったものの、全体の趣向から見れば妥当なラストか。何より面白かったのが「収束」。事件自体は単純なものなのに対し、途中まで著者の意図がまったくわからない。Who done itだのWhat done itだのそういう括りですら、もはやない。やはり問題意識を持たなければ真の創造はできないのだと身につまされる思いだった。そして単純にラストのどんでん返しの鋭さも一番だった。残りの三作も非常に個性的で粒ぞろい、独創的で意外なラストととても面白いのだが、欲を言えば若干問題意識が先行しすぎ、自縄自縛となった感もあり、評価が別れるところだろう。著者の作品の中でも実験要素が強い短編集となっている。 いずれにせよこの小品集には事件解決に伴う爽快感など欠片もないので、そういったものをミステリに期待される方は手に取らない方が懸命かと。 | ||||
| ||||
|
■スポンサードリンク
|
|
新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!