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六の宮の姫君



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【この小説が収録されている参考書籍】
六の宮の姫君 (創元推理文庫)

六の宮の姫君の評価: 5.00/10点 レビュー 1件。 Dランク
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(5pt)

六の宮の姫君の感想

季節は春。
<私>は最終学年を迎え、卒論に取り組みはじめる。
卒論は芥川龍之介。
そんなある日、近世文学の加茂先生にアルバイトを打診される。
先生には二年生のときのある出来事がご縁で、以来名前を覚えてもらっている。
卒論執筆のためワープロが欲しい<私>は、人生初のアルバイトをすることに。
アルバイト先はみさき書房。
水を飲むように本を読む<私>には嬉しいアルバイト先である。
指導係の天城さんに、図らずしも文壇の長老である田崎信先生と引き合わせてもらう。
田崎先生は芥川と出会っているため、芥川の人となりを聞けるかもと、機会を設けてくれたのである。
さっそく芥川について尋ねると、『六の宮の姫君』について芥川が呟いたという。
《あれは玉突きだね。・・・いや、というよりはキャッチボールだ》
ただ今昔物語の『六の宮の姫君』を元に、新たな芥川の『六の宮の姫君』が出来たというわけはないようである。
<私>は『六の宮の姫君』について調べていく。
調べるうちに、用語の出典元、芥川、そして菊池寛と『六の宮の姫君』執筆の謎は複雑に広がっていく。
はたして、芥川の言葉の意味はなんだろうか―・・・

<私>と円紫師匠シリーズ第四作目。
第三作『秋の花』同様長編です。
しかし、今作はこれまでのシリーズに比べ異色作だと思います。
前作までは基本的に日常の謎を取り扱う、いわゆる「死なないミステリ」です。
『秋の花』は死を取り扱っていますが、死そのものより真相を探る過程にある成長やメッセージに重きがおかれていると思います。
シリーズ通してそうした成長やメッセージが見られ、<私>は見守られています。
今作は解説の佐藤夕子氏の言葉を借りれば、「人となりをめぐるミステリ」です。
しかし、正直に申し上げるとミステリという印象はありません。
出来るだけ小説に寄せた論文という印象です。
佐藤氏は学問も謎を発見し、答えを見つけるある種のミステリと続けていますが、娯楽と学問とでは違うのではないでしょうか(私のような不勉強で読書家でもない者が言うのはおこがましいのですが)。
私はやはりミステリ小説ではなく、小説風の『六の宮の姫君』から読みとく芥川及び菊池の人物像と執筆の背景という論文を読んだというのが、正直な感想です。
一読では理解が難しいです。
論文のようで、小説でもあります。
論文ならば引用文の出典は脚注をつけたり、一覧の添付資料をつけたりします。
しかし、著者の意向で出典も文中に挿入されています。
それが私には読みにくく、会話文としても少々不自然と感じます。
また、<私>が調べるうちに、繋がりが見え、調べる対象が増えていきます。
論文ならばシンプルに章立てし副題をつけるところですが、あくまで小説なので書き方が異なります。
<私>の心情や『六の宮の姫君』と直接関係ない場面もあるため、整理しにくいです。
否定的なことを書きましたが、面白くないわけではないです。
芥川・菊池についてはもとより、論文執筆の姿勢や取り組み方という意味でも、勉強になります。
あくまで、私はミステリ小説を読んだというより、小説風論文を読んだという印象なだけです。
そういう意味で異色作であり、好みがあると思います。
読書家で芥川・菊池が好きな方はとても楽しめると思います。
しかし、芥川らに興味がない方や、一般的なイメージのミステリを求める方は合わないかもしれません。
本シリーズのファンは読むべきですが、人を選ぶ一冊です。

▼以下、ネタバレ感想

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あんみつ
QVSFG7MB

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