■スポンサードリンク


贋作『坊っちゃん』殺人事件



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!

贋作『坊っちゃん』殺人事件の評価: 7.33/10点 レビュー 3件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.33pt

■スポンサードリンク


サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(7pt)

夏目漱石の『坊っちゃん』を読み返せば2倍楽しめる?

日本の文豪、夏目漱石の書いた超有名作である『坊っちゃん』の世界観と登場人物をそのままに、あの親譲りの無鉄砲でいつも損ばかりしている「坊っちゃん」が探偵役となり、殺人事件を解決するというユニークな作品。

まずなんと言っても感心するのは、夏目漱石の『坊っちゃん』の文体をそのまま再現していること、そして主役の坊っちゃんをはじめ、登場人物の言動も完全に再現されており、まるで『坊っちゃん』の続編のようで、まさにこれは”贋作”なのだと感じました。

また20世紀初頭という時代背景を上手く実際に『坊っちゃん』の作中で起きた事件とも絡め、作中で新たに起こる殺人事件に絡めて行く手法も見事で、社会派ミステリとしての側面も持っています。(その反面肝心の殺人事件に関するトリックや犯人当てには少し物足りなさや、強引さを感じましたが)

またこの作品を読んで改めて感じたのは、夏目漱石の作品の中でも特に『坊っちゃん』という作品が大衆受けしたのは、この「坊っちゃん」の無鉄砲で喧嘩っぱやく、しかし一本気なキャラクターが非常に主人公的な魅力に溢れ、好まれるからだと言う事です。
『坊っちゃん』が発表されてから、日本は二つの世界大戦を経て、世の中の多くの価値観が大きく変動したにも関わらず、大衆に好かれるキャラクターというのは平成も終わろうとしている今日においても変わらないというのが面白いと思いました。

こんなふうに言いながら私はこの作品を読む前に元ネタの『坊っちゃん』がどんな話だったかは殆ど忘れていたのですが、思い出しながら、あるいは完全に未読でも楽しめる。あるいはこちらを読み終えてから改めて『坊っちゃん』を読み直しても楽しめる。もちろん、事前に『坊っちゃん』をしっかり読んでいても楽しめる。いずれにせよ夏目漱石の『坊っちゃん』を読めば2倍(2回)楽しめる作品ということです。

▼以下、ネタバレ感想

※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[]ログインはこちら

マリオネットK
UIU36MHZ
No.2:
(7pt)

贋作『坊っちゃん』殺人事件の感想

先日「坊ちゃん」を読んだので、内容忘れないうちに本作を続けて読了。前半は文章といい、登場人物の行動といい、まんま続編を読んでいるかの様に楽しめました。中盤から後半はミステリー色が濃くなりますが、段々つじつま合わせが苦しくなったかな?。しかしながら、本家をかなり気に入った私としては、あの世界にもう一度帰れた気分だけで、かなり満足しました。ただミステリーとしては、ラストはあまり好みじゃ無いねぇ。途中の伏線も、回収仕切ったかどうか微妙だし。いっその事ミステリーにせず、作者には「続坊ちゃん」書いて欲しいなぁ。

なおひろ
R1UV05YV
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

贋作『坊っちゃん』殺人事件の感想

親譲りの無鉄砲で小供の時から損ばかりしている。
性根が真っ直ぐで血気盛んな根っからの江戸っ子、坊ちゃん。
彼は東京の物理学校卒業後、四国は松山に新任教師として赴任することとなる。
田舎社会の閉塞感、学校教員間の人間関係、生徒による悪戯。
坊ちゃんは単純に惑わされたり、辟易したりしつつ、持ち前の気質で真正面から不器用に向き合う。
最後は山嵐と共に卑怯な赤シャツと野太鼓を天誅よろしく撲り、教師を辞して東京へ戻る。
その後、坊ちゃんは東京で街鉄の技師となる。
それから三年。
社会は日露講和条約について対立論争したり、身近では自身を可愛がってくれた下女の清が亡くなったり。
周りの変化はあったが、坊ちゃん自身は自分を変えることなく働いていた。
そんな中、炭坑で働いていたらしい山嵐が訪ねてくる。
何と赤シャツが自殺したという。
赤シャツは卑怯で悪びれない輩で、到底自殺するタイプとは思えない。
赤シャツは誰かに殺されたのではないか。
真相を探るため、二人は四国松山へ赴く。
しかし、真相を探るうち、ある疑問が生じる。
三年前の様々な出来事の、自身の認識と事実は異なるのではないか。
赤シャツの死の真相は。
坊ちゃんと四国松山の地でいったい何が起きていたのか―・・・
という展開です。

原作の雰囲気、文体、登場人物の特性をよく掴んでいます。
まるで原作の続編のようで、違和感がありません。
坊ちゃんの心境や登場人物の言い回しなど、「そうそうこんな感じ!」と思いました。
真相を探る過程で度々三年前の出来事が関わってきます。
原作でもひとつの騒動として大きく取り上げているものもあれば、原作ではサラッと読み飛ばすような些細な箇所もあます。
「あぁ、こんなのあった!」「おぉ、こう繋げるか!」と感心しました。
原作の別解釈、そして思いもよらぬ世界観の広がり。
「坊ちゃん」をこう読めるとはという驚きと新鮮さがありました。
また、柳広司氏が夏目漱石も「坊ちゃん」という作品も好きで、原作を読み込み敬意を示しながら執筆したのだろうなと感じました。

解説では原作未読でも楽しめる一冊と書かれています。
しかし、私的には既読向けだと思いました。
確かに登場人物や三年前の出来事の説明はありますが、短編ですし、説明くさくならないようサラッと最低限に留められている気がしました。
そのため、原作を読んでいないと、どうしてそう名付けたか、どうしてそう思ったのかといった空気や流れまではわかりにくいです。
原作既読だからこそ楽しめる箇所が多く感じました。
原作では些細な箇所を取り上げている際などは、既読の場合「こんな処をこう取り上げるか!」と楽しめますが、未読の場合サラッと流してしまうのではないでしょうか。
文体も原作らしさを十二分に残しているため、古めかしいとも言えます。
坊ちゃんの江戸っ子気質や当時の田舎への偏見も好みがあると思います。
既読の場合その辺りは承知の上で楽しめるでしょうが、未読で更にミステリを求めている人には読みにくい上とっつきにくいかもしれません。
勿論、原作未読で本作を読んだ訳ではないので一概には言えないのですが。

また、ミステリとしては後半少し急展開で駆け足気味だと思いました。
ネタバレになってしまうのであまり書けませんが、田舎松山から大きく広げた風呂敷のたたみ方が急で、「えっ、それでその後は」といった感じでした。
トリックもないわけではないですが、メインは原作のオマージュや世界観の新解釈にあると思います。
既読の場合、既読故に犯人の予想がついてしまいますし、未読でミステリを求めた人にはニーズに合いにくいかもしれません。

ミステリを楽しんだというより、「坊ちゃん」の別の見方を楽しんだ一冊でした。
既読だからこそ高評価ですが、未読だったら普通評価かもしれません。
解説にある通り、未読だからこそ楽しめる箇所もあるのかもしれませんが、既読だからこそ、「ここがこう繋がるのか」の連続で面白かったです。
あと、四国松山を田舎と称していますが、原作準拠ということで、申し訳ありません。

▼以下、ネタバレ感想

※ネタバレの感想はログイン後閲覧できます。[]ログインはこちら

あんみつ
QVSFG7MB

スポンサードリンク

  



新規レビューを書く⇒みなさんの感想をお待ちしております!!