(短編集)
漱石先生の事件簿 猫の巻
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「漱石先生の事件簿」とあるから、夏目漱石が探偵となって事件を解いていくのかと思いきや、さにあらず。 文庫本の表紙カバーで、猫がでかく描いてあるから、『吾輩は猫である』の〈猫〉が事件を解決していくのかと思いきや、さにあらず。 この作品、夏目漱石あるいは苦沙弥(くしゃみ)先生(漱石の『吾輩は猫である』に出てくる人物)と思われる〈先生〉のところに、書生として置いてもらうことになった〈僕〉の視点で語られ、探偵小説好きな〈僕〉が事件の謎を解きほぐしていく話なんですね。 で、事件そのものの妙ちきりんな面白さもさることながら、作品の一番の面白さは、常識ある〈僕〉から見た、変人と言うしかない〈先生〉とその客人──迷亭(めいてい)氏、寒月(かんげつ)さんといった常連客とのやり取りのおかしみ、そのとぼけた会話の妙味にありました。そして、その変てこで味のある人間たちの脇で、目立たないけれど、名前のない〈猫〉が昼寝をしたり、〈先生〉の謡(うたい)を聞かされたりしていると、まあ、そうした情景が、語り手である〈僕〉の目を通して描かれてゆきます。 「吾輩は猫でない?」「猫は踊る」「泥棒と鼻恋(はなこい)」「矯風(きょうふう)演芸会」「落雲館(らくうんかん)大戦争」「春風影裏(しゅんぷうえいり)に猫が家出する」の六つの話の中、第一等の妙味を感じたのは、四番目の「矯風演芸会」でしたね。 途中に出てくる〝こんにゃく問答〟が、話の仕掛けとして後で効いてくるあたり、上手いもんだなあと思いました。 | ||||
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ミステリ作品なのでネタバレがないよう、これから読もうとしている人に 参考になるよう心がけてレビューします。 著者のジョーカー・ゲームシリーズが面白かったので その信用で本書も読みました。 夏目漱石を特に好きなわけでもないですし 「吾輩は猫である」は読んだことがありましたが 内容も結構忘れてました。 あんまり期待しないで読み始めたのですが とても良かったです。 本書はミステリ作品の分類でいうと 殺人といったような物々しい犯罪というわけではなく いわゆる”日常の謎”と言われるものに当たるかと思います。 通常、それらのミステリ作品は 【謎の提示→解決】というのが多いのですが 本作では 【他愛ない日常の描写→謎の推理と解決】という あまりない形式なので楽しめました。 なので、話の途中では ”これのどこがミステリなんだ?”と思いながら 読みすすめると終盤、探偵役の主人公の名推理が出てきて びっくりしました。 私自身は、あまり夏目漱石のファンではないのですが 著者の夏目漱石への愛情がとても伝わってくる作品です。 本書の元ネタは 「吾輩は猫である」なのですが 単に設定を借りた、というよりも 「吾輩は猫である」の物語をなぞらえて 別の視点で描いたもの、といったほうが近いかと思います。 本書を読むことで、 「吾輩は猫である」を読んだことがない人は、読みたくなる 「吾輩は猫である」を読んだことがある人は、読み返したくなる そんな作品です。 | ||||
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この作者の同系統の作「坊ちゃん贋作殺人事件」でも感じたことは「こりゃ究極のパロディだな」だった。原作を尊重し、活かして、なおかつパロディ作品を面白く読ませるすべを心得ている。 一般にパロディは、オリジナルになにかあたらしいものを付け加えているが、柳広司は「まったく話をつくっていない」。原作そのまんま。原作から話を展開させているのだが、その展開—―原因がこれで経過はこうなって結末はこうなった、まですべて原作に内包しており、付け加えたものはみあたらない。文体も一致しているし、ひょっとしたら原作には書いていないけど、これが完成品なのかと錯覚に襲われる。 ここまで徹底したものを書けるのはただごとではないと思う。 | ||||
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「吾輩は猫である」をインスパイアあるいはオマージュして作成された作品だと思います。 丁度、「吾輩は猫である」をオーディブルとkindleで楽しんだ後に、この作品をオーディブルで楽しみました。 私が論評するにはチョット出来が良すぎますので、論評というよりは、感想として評価させていただきます。 「吾輩は猫である」を楽しむ時には、思わず笑いだしてしまうことが多くありました。 この「漱石先生の事件簿」は、ニコニコしながら聞き惚れるという感じだと思います。 この作品を聴いてから、今、再度「吾輩は猫である」を3度目にオーディブルで楽しんでいます。 間違いなく 柳 広司 先生が、夏目漱石先生をリスペクトしていることが、偲ばれる、良作にできていると思います。 素晴らしい作品を提供いただき、ありがとうございます。 白川 周作 さんのナレーションも素晴らしく、何度も聴くことになると思います。 | ||||
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本当に楽しい物語である。ミステリ風味を伴った「猫」のパスティーシュ物には面白い作品が多いのだが、本作は奥泉光氏の「「吾輩は猫である」殺人事件」と双璧の傑作と言って良いのではないか。"猫"ならぬ、先生の家へ居候するハメになった中学生の書生の眼を通した連作短篇集なのだが、各編で書生が「猫」に潜んでいる数々の謎を解いて行くという構想がまず卓越している。あの泥棒事件や三毛子の死の真相にまで解決を与えるのだから恐れ入る。 登場人物やその人間模様、そしてそれに纏わるエピソードも「猫」そのままで、更に各編の順序が「猫」の進行に沿っている点も嬉しい。漱石に対する敬愛の念がストレートに伝わって来る。金満家が幅を利かし、人々が戦争に熱中する当時の世相に対する批判、粋(江戸文化)好み、徹底した探偵嫌いといった「猫」に込められた漱石の思惟(大きく言えば近代化がもたらす悲劇・不幸への警鐘)をキチンと把握し、本作に反映させている辺りも上述の漱石への敬愛の念が生んだものだろう。特に、寒月君(=寺田寅彦)の出番を原作以上に増やしている点は、漱石-寺田の師弟関係の絆の強さも作者が理解している証左と言え微笑ましい。それでいて、原作の設定を活かした作者独自の笑いやミステリ的アイデアを盛り込んでいるのだから、何とも贅沢な作品である。 漱石、「猫」の愛読者が楽しめるのは勿論の事、余り馴染みのなかった方をも漱石、「猫」の世界に魅き込む力を持った快作だと思う。 | ||||
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