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隠れ家の女



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【この小説が収録されている参考書籍】
隠れ家の女 (集英社文庫)

隠れ家の女の評価: 8.00/10点 レビュー 1件。 Bランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点8.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:
(8pt)

今まで邦訳が出なかったのが不思議なベテランの力作

アメリカでは人気があるベテランなのに、これまで日本では1作しか邦訳されていなかったフェスパーマンの20年ぶりの邦訳作。1979年のベルリンと2014年のアメリカを行き来しながら、冷酷非常なスパイの世界を生きた女性たちの苦悩と誇りを描いた歴史スパイ・ミステリーである。
冷戦下のベルリンでCIA支局の末端職員として隠れ家(SAFE HOUSE)の管理を担当するヘレンは、点検のために訪れた隠れ家で聞いてはいけない会話を録音してしまった。さらに、支局の現場担当官・ギリーが情報提供者の女性をレイプする現場に遭遇、憤りを覚えたヘレンは出来事を上層部へ報告したのだが支局長はまともに対応せず、あろうことか規律違反としてヘレンを解職し、アメリカ本国へ送還しようとした。それから35年後、メリーランド州の農場で主婦として生活していたヘレンが夫とともに、知的障害者である息子に射殺されるという悲惨な事件が発生した。長く故郷を離れていて葬儀のために帰郷したヘレンの娘・アンナは「両親と弟に何があったのか」、真相を探るため、実家の隣を借りている失業中の男・ヘンリーに調査を依頼する。ところが実は、ヘンリーはある組織からヘレンを見張る仕事を受けて引っ越して来ていたのだった・・・。
冷戦下でCIAがもみ消そうとした不祥事が35年後の悲劇につながって行く。スパイ組織がかかえる闇を、35年の時空を超えてじわじわと暴いて行く物語構成が絶妙。1979年ではヘレンが主役となって活躍し、2014年ではヘレンは死んでおり、その娘のアンナが活躍し、なおかつ2つの出来事がしっかりと連結されているのが面白い。歴史スパイ・ミステリーの設定ではあるが、物語の主眼は女性蔑視の取り付かれたスパイ組織に対する女性たちの反乱に置かれており、極めて現代的な社会派ミステリーである。なおかつ謎解き部分も秀逸で、最初から最後まで緊張感を持って読み進められる。
スパイ同士の諜報戦ではないので、スパイ小説ファンというよりはミステリーファンにオススメしたい。

iisan
927253Y1

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