七つの墓碑
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点8.00pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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イタリアのジュニア向け作品を書いて来た中堅作家のミステリー第一作。マフィアのボスたちが標的になった連続殺害予告事件をテーマに、犯罪組織で生きる男たちの怨讐を描いた傑作ノワール・エンターテイメントである。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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イタリアの組織犯罪に関わる人間を、その世界に憧れ、足を踏み入れる段階から その非道さや虚しさを知るところまで、結構凝った構成で物語っています。 謎解きの要素もあるけれど、犯人当てのものとは思わない方がいいでしょう。 暴力的シーンが多いのは否定できませんが、著者が経歴から独自に知った、 日本とはだいぶ違うある種の事情(読んでからのお楽しみ)が、 興味を惹かれると思います。 | ||||
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ミステリとは新人としても小学校教師である婦人との共著で何作もジュニア向け小説を出し、そこそこの評価を受けている現役の刑務部主任警察官という経歴は、気にならないではいられない。本書は、刑務所で始まり、凄惨な犯罪現場に舞台を移す。連続殺人事件の予告とも見える七つの生きている人間の墓碑。マフィアの抗争とも見られる墓碑銘のメンバーたち。 その中の一人が長い獄中生活にピリオドを打つ直前に火ぶたを切ったこの連続殺人事件。出獄者であるミケーレが語る現在と暗い過去の交錯。もう一方では連続殺人事件に臨むベテラン刑事だが孤独な中年男でもあるロブレスティの屈折した視点で進む捜査状況。 イタリアならではのマフィア、宗教、深い暗闇のような歴史や、時を孕んだ古い町といった素材が、生かされ、語られると同時に、ミケーレが獄中で読んだ同房者の本が各章で重要な暗示をもたらす。コンラッド、ユーゴー、セリーヌ、トルストイ、デュマ、他、ヨーロッパの名だたる文豪と名作が各章毎に、章題として切り取られる構成、それを追随するかのようなミケーレの脳内における過去への旅。 それぞれの現在が過去を掘り返し、現在行われている惨たらしい復讐劇に回答を与えるが、墓掘り男が誰であるかは最後の最後まで明かされず、その意外性には度肝を抜かれる。だからこそ、全体はスケールの大きなミステリなのだが、勧善懲悪と呼べない人間たちの複雑な関係こそが『ゴッドファーザー』同様にマフィアという素材の厚みやデリケートさを感じさせる。 早川書房が、本書をHMではなくNVに分類したのも、ミステリとしてよりもノヴェルズとしてより大きなドラマティック要素を本書読者に提供できるものと期待したのではないかとぼくは類推する。 とは言え少々無骨で生真面目な面はあるものの、エンターテインメントのミステリとして、派手な舞台装置、様々な事件の背景となるイタリアの各地方、あるいは国外ヨーロッパのいくつかの古都に、キャラクターを散在させ、スケール感を出しつつドラマティックに進めてゆく話法には、ジュニア小説で鍛え、世界の作品へとジャンプアップする意欲とエネルギーに満ちている。単純に物語を楽しめるところは最近のイタリア・ミステリのグレードに見られる安定感から想像に難くないと思う。 奇妙な経歴の新しい作家による新しい試みへの意欲溢れる力作としての第一作、それなりに気になる作品であったからこそ、読んで正解だったと言える。次作でも新しい地平を見せてくれることを期待したい。 | ||||
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刑務所ものや麻薬ギャングものはたくさん読んできた。本作もそのひとつであることにちがいはなく、出てくるのは悪人ばかりだ。 だが、どことなく古めかしい、静謐な感じがするのはなぜだろう。 主人公が刑務所で「本を読む人間」に変わったからか。 読後感は静かで穏やかだ。 追う警察側の描写が少なめなのは私にとってはちょうどよかった。サディストのブルガリア人、情けない弁護士、何十年経っても妻ひとすじの捜査官、いつまでもナンバー2のままのギャングなど、出番は少なくても濃いキャラのおかげで楽しく読めた。 | ||||
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ファミリーのドン争い、主人公ならまだしも登場人物のそれぞれの経歴がダラダラ 途中かなり飛ばし読み、読者の中には奥深いと感じる方もいるのかな 一言、二作目は手に取らない! | ||||
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七つの墓碑に名前を刻まれた者たちが、何者かによって一人ずつ殺されていく。 同じ頃、20年の刑期を終え刑務所を出所した主人公が、ある目的をもって行動を始める。 いかにもミステリアスなこのあらすじに惹かれて購入したが、それがほのめかす謎解き要素はほとんどなく、大きく期待を外された。 半世紀前なら通用したかもしれない平坦なストーリーを端的に表すなら、退屈。 このひと言につきる。 元マフィアの主人公のパートは、彼の内省的な心情描写が半分を占め、特に目を引くような展開がない。 事件を追う警察の捜査はノロノロ運転で遅々として前進しないので、追跡劇のサスペンスもない。 主要人物らしき刑事は、大した役でもないのに無意味に個性が強くその描写にページを大量に消費し、他の一瞬しか登場しない人物たちの背景描写もやたらと長い。 終盤まで明かされない主人公と犯人の目的は、全くの想像通り。 刑務所内やマフィアの世界の暴力的な描写には、それなりの迫真性はあるものの、百番煎じぐらいなので新鮮味は皆無だし、一応「意外な犯人の正体」的な要素もあるにはあるけれど、屈強な退屈さを相殺するにはささやかすぎる。 事件終結後の犯人の状況が不明なのも、画竜点睛に欠ける。 ところで、犯人は自分ひとりで七つの墓石を調達し名前を彫り、墓地まで誰にも気付かれずに運んだのだろうか。 だとしたら、さぞかし大変だった事だろう。 著者の技量が最もプロの域に達していないのが、段落ごとの人物の視点の統一が全くできていない点。 数行ごとに視点が頻繁に変わるので非常に読みづらく、ひどい所になると、改行すらせず突如視点が変わるという粗雑さ。 知識がないのか、あえてなのかは分からないが、書き手は楽でも読者には一定の苦を与えるこういう書き方は、現代の作家としての矜持を少しでも持ち合わせているのなら、次作からは改めるべきだろう。 | ||||
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