白い悪魔
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人によって読後の印象がだいぶ異なる作品ではないでしょうか? 語り手は主体性に欠け、ただ運命に流されるだけの存在のように読めますし、語られる出来事もほのめかしや思わせぶりな表現に彩られて、なんだか曖昧な蜃気楼のように思えます。 このぼんやりとした調子が嫌いな人も多いかもしれませんが、独特の魅力があると思います。 ノワール物のミステリがお好きな方なら、一度手にとっては如何でしょうか? | ||||
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原題を舞台にしながら、ひどく古典的な香りのするノワールです。 明確に何か犯罪行為をした、ということが、おそらく意図的に隠されて、話が進行します。 そのせいか、読んでいると、じりじりとしてきます。 もっと単刀直入に書けないのか、と言いたくなってきます。 短気な人には向かないかもしれません。 ノンストップサスペンスの好きなかたは、他を当たったほうがよさそうです。 逆に、じっくりと読んでいこうとする方には、意外におもしろいかもしれません。 | ||||
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読者を遠くの世界に連れてゆく小説としては、とても成功している。セレブな世界。ローマ。教会という権威。マフィアという組織。アメリカ西海岸のプライベート・ビーチ。華麗な休暇。豪奢なディナー。一流の酒。 そういった世界に這い上がるギャッツビーみたいな世界は、アメリカン・ドリームと言われ、いくつもの物語を生み出してきた。たいていはのし上がって逆転してゆく物語と、そしてなぜか必ず幕を引くときには、破滅。 破滅の物語。ノワール。なぜかどんなに上り調子であろうと、そのままで終わろうはずがない、との予感はある。これは重ねられた罪の物語なのか。それは己の罪なのか? 他人の罪なのか? 不安定極まりない土台の上に構築されてゆくリッチな金と権力の王国。 美しいヒロインが物語を紡いでゆく。王国の建立の物語を。他人の王国を略奪してゆく物語を。彼女の足跡に残されてゆく、彼女のあずかり知らないいくつもの死。達成すべき欲望にストレートに進んでゆく如才のない兄との、深く途切れのない兄妹愛。不思議で不自然なコンビネーション。 ノワールの持つべき銃弾の破壊力を、弾倉に次々と込めながら、引き金に人差し指を置くような、危険な小説である。信じられるものが皆無。語り手の言葉さえも。ただおこなれてゆく不正と欲望の闘いは、破滅への歴史を形作る。求めている幸福のありようさえも疑わしい、力と力の攻防が、女性一人称の華麗な日々を通じて匂わす小説。 ハメット賞受賞。語らずに語っている小説、だろうか。ダシール・ハメットの如く。計り知れない暗黒の力に引きずられながら、どこまでも妖しい美女の言葉に耳を傾けて頂ければ、と思う。 | ||||
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最近Netflixでみた映画「2人のローマ教皇 "The Two Popes"」(監督:フェルナンド・メイレレス)。ローマ教皇・ベネディクト16世の座を継承するホルヘ・マリオ・ベルゴリオ枢機卿(現教皇フランシスコ)、その二人の対話による物語が、この小説の時代背景を炙り出します。 「白い悪魔 "The White Devil"」(ドメニック・スタンズベリー 早川書房)を読みました。「告白」の翻訳出版が2005年ですから、忘れていることもあって(笑)その<作家性>について語ることはできません。 主な舞台は、ローマ、そしていつしかカリフォルニア。アメリカ人女優、ビットリアの視点からこの蠱惑的な物語が語られていきます。アメリカ人作家、ビットリアの夫・フランク、イタリア元老院議員・パオロ、その妻でもあるイタリア人女優、そのボディガード、そしてビットリアの異父兄・ジョニーたちが奏でる<セレブリティ>たちのイタリアの夜。ビットリアのアメリカ、テキサスでの説明されない「過去」、イタリア人女優・イザベラの死、夫・フランクの死、そしてもう一つの死とそのすべてを操作したかもしれないジョニーの存在。 フランクの伯父でもある枢機卿も姿を現します。「ドイツの枢機卿の徳を褒め称え、彼にこそ教皇になって欲しいと言った」という描写で、この物語はそのラッツィンガー枢機卿が教皇になる前の時、着座する前の時ですから、2004年あたりから始まるのかと想像できます。そう、ローマ・カトリックがスキャンダルとマネー・ロンダリングの苦難に晒された時代の前にあたるのでしょうが、<ノワール>のない時代などこの世にはきっとなかったのだと思います。 スリラーですからストーリーを語ることはできません。吉野仁さんの長文の解説も読まずに書くことになりました。物語の「外縁」にいて多くを語ることができないもどかしさが常にありますが、少しだけ。 イタリア映画がロッセリーニ、フェリー二、アントニオーニ、ベルトリッチを輩出した時代からは遠く離れていますが、イタリア人女優・イザベラの容姿は誰と言うこともなく浮き上がってきます。官能的なシルクのような女優の晩年の姿。好きな女優をあてはめてみましょう。 そして、主人公・ビットリアと異父兄・ジョニーの関係性が、この物語を語る上での「鍵」なのかもしれません。ビットリアは人目を惹く美しさを持ち、多くの快楽という見せかけの喜びに満たされない自分を抱えながら、そして巨大化した自我を持て余しながらも、「何もしないこと」で悪魔との白い取引を成立させてしまう物語のようにも受け取れます。圧倒的な闇、妖しさ。富、善良さ、強さなど何の秤にもならない。ハメット賞受賞作だそうですね。「11月に去りし者」であれ、この物語であれ秀作を世に送り出しているのだと思います。 この本を読んだ後、国道16号沿いのコンビニで買物をしました。土曜日の夜、閑散とした店内。東南アジア系で、やせ型、そして瞳の大きな綺麗な女性がレジ打ちをしてくれました。名札を見たら、カタカナで「エンジェル」。この子もまた、「白い悪魔」なのかもしれない。 | ||||
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