死者の国
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点8.00pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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「クリムゾン・リバー」で知られるグランジェの2018年の作品。猟奇的な連続殺人事件の謎を追ってパリ警視庁の刑事が東奔西走する、警察サスペンス・ミステリーである。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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結局、周囲に助けられて何とか生き延びましたね、主人公。 設定は部署No.1の有能刑事だそうですが、どこがそんなに?ニエマンス警視正にも同種のことを感じたのですが、そもそも捜査方針がねぇ。大抵の刑事だったら思いつくでしょう、という内容。しかも一旦犯人像を描くと後は周囲に目が行かず突っ走る。 引き換え、上司、部下、GFたちが沈着冷静、客観的、包容力あり。出来過ぎです。 特に、何も聞かず優しく包み込んで労って見返りも求めなくていつも機嫌が良くて………なんてGF都合良過ぎでしょう、コルソには勿体無い。そんな奴とはさっさと別れてもっと大事にしてくれる彼を見つけて!と言いたくなる。 それに「絵画に隠されたトリック」とか妻の性嗜好とか、もっと複雑な「絵解き」要素があって事件に絡んで来るのかと期待したけど……。 でも主人公が「突っ走る」なかで次々に出会う謎に一つひとつ向き合い、現場に乗り込んで確認して行く過程は読み応えがありました。さすがです。 | ||||
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欧州のミステリーでよくある雑で乱暴な捜査官が主役のミステリーはあまり好きではありません。 単独で違法捜査を繰り返して事件をめちゃくちゃにするのは腹立たしいかぎりです。 こんなことでは犯罪は決して立証されることはないでしょう。 | ||||
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2段組で760ページ! 読む前に圧倒されるボリュームだが、読み始めると引き込まれる。 オープニングは猟奇的な殺人事件でサイコ的な味付けが強いが、容疑者が浮き上がってからの話しの展開が上手い。そのたびに話の風景まで変わっていく。 「セブン」のようなサイコ犯と刑事の追いつ追われつの闘いかと思えば、法廷モノに姿を変え、そこからは贋作犯の話しになりつつ…。 話しが起承転結と動くたびに形を変えながら、最後にタイトル「死者の国」に繋がる余韻が残るラストまで、プロット展開の巧さは見事の一言。 登場する異形のキャラも濃厚で、そこに展開される個々のドラマの味付けも強烈だし、映画や美術、文学に対する作者の造詣の深さもあって散りばめられたガジェットの数も多い。 プロットの巧さ、しっかりとしたキャラ立ちゆえに、グランジェの作品は映像化向きではあるが、この作品はこのままでは映画化は無理だろうから、大人向けのテレビシリーズにしてほしい。 | ||||
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とにかくかなり長いのだが、それに見合うだけのごほうびはある。翻訳ミステリは始めに提示される事件の猟奇性が結局大した意味は持たないことが多いが、きちんと一貫して収まるとこに収まる。それはその犯罪に当然あるべき必然性の描写であって、同時にミステリ小説の作法が守られているということなのだが、逆に捜査の方は着実に進むとは言い難い。一応警察小説にはなるのだろうが、主人公の一人称視点で話は進むのでノワール小説という趣き。ここは結構重要な点で、正しい方向に捜査が進んでいるのか、あるかなきかの手掛かりを追うので主人公もチームのメンバーも常に暗中模索。しっぺ返しの世間からのバッシングに常に戦々恐々としている。さらに主人公は子どもの親権を巡る裁判にこの事件を解決して武勲を挙げれるかどうかが重要な意味を持つようになるので二重の重圧に苦しめられる。功を焦って見込み捜査をしているのか、主人公はしばしば自問自答するのだが、それに読者もかなりやきもきさせられる。そのやきもきは最早イライラの領域にしばしば踏み込み、しかもまだページはたっぷりあるので投げたくなる気持ちが頭をもたげてもおかしくない。しかしその強烈なやきもき(イライラ)の高まりはこの小説の重要な魅力だろう。それを起こさせるのは巧みな人物造型による部分も大きい。作者はかなり取材をしたと思う。結構序盤の展開なので裏表紙に書いてある部分に少し触れるが(自分は裏表紙は見たくないタイプなので)、「名画をめぐる」とあるが、それ系のそれに終始する話ではないし、紙幅を稼ぐために名画うんちくを垂れ流すような部分もない。というかこの帯や宣伝文句だけしか見てなかったら自分はこの本は買わなかった。ネタバレしなすぎて魅力が見えづらい。そして読むと決まったなら(先行のレヴュアーさんに感謝)それが有り難い。万人が楽しめるなんて絶対言わないが、序盤はたしかに長すぎると感じても、後半は怒濤。とにかく謎と逆転逆転の連続で、何が真実かもはや一周回ってどうでもよくなりかけるほど。それでも最後まで付き合えば、最下層の世界を這いずり回った先で壮大な大伽藍が立ち上ってくるのを見れるはず。 | ||||
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新書サイズで厚さ35ミリ!とシャレにならない自称ポケット・ミステリ、 それも上下二段組の780ページ、 いつ読了できるだろうかと読み始めたが、訳文はとてもこなれており実に読みやすい、 全編主人公視点で語られるノワール小説フォーマットで、各文章も短くさくさくと読み進められる、 厚さにためらっている方も遠慮せずに手にとっていいでしょう、 ただし先行レビューでも指摘や批判があるとおり、誰にでも推薦できるタイプの小説ではない、 にっちもさっちも、とっくのとう、など現在の日本語としてはどうだろうと思わせる古い訳語を当てていると反応するのは読者の好みかと思う、 物語を離れてまず興味深かったのが、すでにEU内ではパリ・ロンドン・マドリード・ウィーン相互間が日帰り圏化して自在に往来できるまでになっていることであり、日本(人)の行動半径の狭さを感じてしまった、 物語はとりあえずミステリ体裁ではあるが、さて何が語られているかといえば、主人公の魂の遍歴と呼んだ方がいいかと思う、 神も仏も存在しないような邪悪なフランスの裏社会で犯罪と対峙し続ける刑事コルソにキリスト(教)の救いは訪れるのか? 読了してみれば本作には780ページ必要だったことは明瞭だ、 大長編ではあるが松本清張全盛期の口述筆記小説のようなわずらわしい繰り返し描写はいっさいない、 それだけ語るべきことに満ちていることになる、 以下蛇足、 特別に何か強いメッセージを語る小説ではないが、繰り返し記述されるポリティカル・コレクトネス批判が隠し味なのだと思う、 現在のような過剰なポリティカル・コレクトネス強制と氾濫がけっきょく世界を窒息させゆく、 サイコパスをどれほど治療しても出来上がるのは教育されたサイコパスでしかない徒労感ともいえる、 著者はポリティカル・コレクトネス擁護者たちを容赦せず刑事コルソの意見として次のように嫌味たっぷりに批判している、 例えば、 P.498 今はもう存在しない高邁な理想を追求する左派 P.642 知識階級のブルジョア・ボヘミアン ここでひとつだけネタばれさせておけば、上記二件で批判されるキャラクタが真犯人なのだが、本作がただその程度の批判をするだけの底の浅い物語でないことはもちろんであり、最終ページに近づくにつれ湧き上がる深い慟哭とともに読者を再び世間の闇に突き放してゆくのである、 主人公コルソを破天荒なキャラクタに造形しているが、彼は、つまり彼の姿を借りた作者の言葉だろうが、”よこしまな考えは悪習に似ている。いったん取り憑かれるともうほかのことは考えられなくなる”と自省させるような冷静さも同居させている(つまり公平な観察ができないことをわかった上でコルソは暴走していることになる)、 ここでわれわれ日本人なら黒澤明「赤ひげ」の司葉子エピソードを思い出すべきなのだと思う、 つまり赤ひげの名せりふ”こいつは病気だ”を敷衍した物語が本作なのである、→治療不可能な病気は存在する、 大長編には繰り返し日本の話題が登場している、 緊縛・縄師・アニメ・おじぎ、、、、 そして物語後半になり謎解きが加速してゆくと描写の端々に金田一シリーズのイメージが浮かび上がってくる、 遂には物語りそのものが「悪魔の手毬歌」のパロディなのではないかとさえ思えてくる、 著者に直接コンタクトできる人は著者が毎年フランスで行われるジャポン・フェス等で横溝正史に接していないか、ぜひ質問してほしいと思う、 本作は性風俗を含めた現在フランスの社会風俗小説としても楽しめる、 冒頭の第1ページ上段に、 ”デヴィッド・リンチの映画で使われるような、期待と不安を高めるような効果音が” 22ページで主人公の服装が、 ”ニルヴァーナのファンのような服装をして” P.143には”キース・リチャーズのような髪”とある、 そう、同時代のポップ・カルチャ/サブ・カルチャにある程度通じていると主人公が身を置く状況がまるで良く出来た脚本のように眼前に現れる面白さも本書には満ちている、 逆に上記三例になんの反応もしない読者層では読み進むのが辛くなるかもしれない、 グランジェはマイ・フェイバリットのフランス映画「クリムゾン・リバー」の原作者、 先行作がジャン・レノ主演映画「エンパイア・オブ・ウルフ」として映画化されており、本作の情緒になじんだ方には鑑賞を推薦(二作品が好きな人は本作のエグさも好みのはず)、 本作もおそらくヴァンサン・カッセルあたりを主役に映画化の企画が進んでいるに違いない、 | ||||
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