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死者の国
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死者の国の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点4.18pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全11件 1~11 1/1ページ
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結局、周囲に助けられて何とか生き延びましたね、主人公。 設定は部署No.1の有能刑事だそうですが、どこがそんなに?ニエマンス警視正にも同種のことを感じたのですが、そもそも捜査方針がねぇ。大抵の刑事だったら思いつくでしょう、という内容。しかも一旦犯人像を描くと後は周囲に目が行かず突っ走る。 引き換え、上司、部下、GFたちが沈着冷静、客観的、包容力あり。出来過ぎです。 特に、何も聞かず優しく包み込んで労って見返りも求めなくていつも機嫌が良くて………なんてGF都合良過ぎでしょう、コルソには勿体無い。そんな奴とはさっさと別れてもっと大事にしてくれる彼を見つけて!と言いたくなる。 それに「絵画に隠されたトリック」とか妻の性嗜好とか、もっと複雑な「絵解き」要素があって事件に絡んで来るのかと期待したけど……。 でも主人公が「突っ走る」なかで次々に出会う謎に一つひとつ向き合い、現場に乗り込んで確認して行く過程は読み応えがありました。さすがです。 | ||||
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欧州のミステリーでよくある雑で乱暴な捜査官が主役のミステリーはあまり好きではありません。 単独で違法捜査を繰り返して事件をめちゃくちゃにするのは腹立たしいかぎりです。 こんなことでは犯罪は決して立証されることはないでしょう。 | ||||
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2段組で760ページ! 読む前に圧倒されるボリュームだが、読み始めると引き込まれる。 オープニングは猟奇的な殺人事件でサイコ的な味付けが強いが、容疑者が浮き上がってからの話しの展開が上手い。そのたびに話の風景まで変わっていく。 「セブン」のようなサイコ犯と刑事の追いつ追われつの闘いかと思えば、法廷モノに姿を変え、そこからは贋作犯の話しになりつつ…。 話しが起承転結と動くたびに形を変えながら、最後にタイトル「死者の国」に繋がる余韻が残るラストまで、プロット展開の巧さは見事の一言。 登場する異形のキャラも濃厚で、そこに展開される個々のドラマの味付けも強烈だし、映画や美術、文学に対する作者の造詣の深さもあって散りばめられたガジェットの数も多い。 プロットの巧さ、しっかりとしたキャラ立ちゆえに、グランジェの作品は映像化向きではあるが、この作品はこのままでは映画化は無理だろうから、大人向けのテレビシリーズにしてほしい。 | ||||
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とにかくかなり長いのだが、それに見合うだけのごほうびはある。翻訳ミステリは始めに提示される事件の猟奇性が結局大した意味は持たないことが多いが、きちんと一貫して収まるとこに収まる。それはその犯罪に当然あるべき必然性の描写であって、同時にミステリ小説の作法が守られているということなのだが、逆に捜査の方は着実に進むとは言い難い。一応警察小説にはなるのだろうが、主人公の一人称視点で話は進むのでノワール小説という趣き。ここは結構重要な点で、正しい方向に捜査が進んでいるのか、あるかなきかの手掛かりを追うので主人公もチームのメンバーも常に暗中模索。しっぺ返しの世間からのバッシングに常に戦々恐々としている。さらに主人公は子どもの親権を巡る裁判にこの事件を解決して武勲を挙げれるかどうかが重要な意味を持つようになるので二重の重圧に苦しめられる。功を焦って見込み捜査をしているのか、主人公はしばしば自問自答するのだが、それに読者もかなりやきもきさせられる。そのやきもきは最早イライラの領域にしばしば踏み込み、しかもまだページはたっぷりあるので投げたくなる気持ちが頭をもたげてもおかしくない。しかしその強烈なやきもき(イライラ)の高まりはこの小説の重要な魅力だろう。それを起こさせるのは巧みな人物造型による部分も大きい。作者はかなり取材をしたと思う。結構序盤の展開なので裏表紙に書いてある部分に少し触れるが(自分は裏表紙は見たくないタイプなので)、「名画をめぐる」とあるが、それ系のそれに終始する話ではないし、紙幅を稼ぐために名画うんちくを垂れ流すような部分もない。というかこの帯や宣伝文句だけしか見てなかったら自分はこの本は買わなかった。ネタバレしなすぎて魅力が見えづらい。そして読むと決まったなら(先行のレヴュアーさんに感謝)それが有り難い。万人が楽しめるなんて絶対言わないが、序盤はたしかに長すぎると感じても、後半は怒濤。とにかく謎と逆転逆転の連続で、何が真実かもはや一周回ってどうでもよくなりかけるほど。それでも最後まで付き合えば、最下層の世界を這いずり回った先で壮大な大伽藍が立ち上ってくるのを見れるはず。 | ||||
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新書サイズで厚さ35ミリ!とシャレにならない自称ポケット・ミステリ、 それも上下二段組の780ページ、 いつ読了できるだろうかと読み始めたが、訳文はとてもこなれており実に読みやすい、 全編主人公視点で語られるノワール小説フォーマットで、各文章も短くさくさくと読み進められる、 厚さにためらっている方も遠慮せずに手にとっていいでしょう、 ただし先行レビューでも指摘や批判があるとおり、誰にでも推薦できるタイプの小説ではない、 にっちもさっちも、とっくのとう、など現在の日本語としてはどうだろうと思わせる古い訳語を当てていると反応するのは読者の好みかと思う、 物語を離れてまず興味深かったのが、すでにEU内ではパリ・ロンドン・マドリード・ウィーン相互間が日帰り圏化して自在に往来できるまでになっていることであり、日本(人)の行動半径の狭さを感じてしまった、 物語はとりあえずミステリ体裁ではあるが、さて何が語られているかといえば、主人公の魂の遍歴と呼んだ方がいいかと思う、 神も仏も存在しないような邪悪なフランスの裏社会で犯罪と対峙し続ける刑事コルソにキリスト(教)の救いは訪れるのか? 読了してみれば本作には780ページ必要だったことは明瞭だ、 大長編ではあるが松本清張全盛期の口述筆記小説のようなわずらわしい繰り返し描写はいっさいない、 それだけ語るべきことに満ちていることになる、 以下蛇足、 特別に何か強いメッセージを語る小説ではないが、繰り返し記述されるポリティカル・コレクトネス批判が隠し味なのだと思う、 現在のような過剰なポリティカル・コレクトネス強制と氾濫がけっきょく世界を窒息させゆく、 サイコパスをどれほど治療しても出来上がるのは教育されたサイコパスでしかない徒労感ともいえる、 著者はポリティカル・コレクトネス擁護者たちを容赦せず刑事コルソの意見として次のように嫌味たっぷりに批判している、 例えば、 P.498 今はもう存在しない高邁な理想を追求する左派 P.642 知識階級のブルジョア・ボヘミアン ここでひとつだけネタばれさせておけば、上記二件で批判されるキャラクタが真犯人なのだが、本作がただその程度の批判をするだけの底の浅い物語でないことはもちろんであり、最終ページに近づくにつれ湧き上がる深い慟哭とともに読者を再び世間の闇に突き放してゆくのである、 主人公コルソを破天荒なキャラクタに造形しているが、彼は、つまり彼の姿を借りた作者の言葉だろうが、”よこしまな考えは悪習に似ている。いったん取り憑かれるともうほかのことは考えられなくなる”と自省させるような冷静さも同居させている(つまり公平な観察ができないことをわかった上でコルソは暴走していることになる)、 ここでわれわれ日本人なら黒澤明「赤ひげ」の司葉子エピソードを思い出すべきなのだと思う、 つまり赤ひげの名せりふ”こいつは病気だ”を敷衍した物語が本作なのである、→治療不可能な病気は存在する、 大長編には繰り返し日本の話題が登場している、 緊縛・縄師・アニメ・おじぎ、、、、 そして物語後半になり謎解きが加速してゆくと描写の端々に金田一シリーズのイメージが浮かび上がってくる、 遂には物語りそのものが「悪魔の手毬歌」のパロディなのではないかとさえ思えてくる、 著者に直接コンタクトできる人は著者が毎年フランスで行われるジャポン・フェス等で横溝正史に接していないか、ぜひ質問してほしいと思う、 本作は性風俗を含めた現在フランスの社会風俗小説としても楽しめる、 冒頭の第1ページ上段に、 ”デヴィッド・リンチの映画で使われるような、期待と不安を高めるような効果音が” 22ページで主人公の服装が、 ”ニルヴァーナのファンのような服装をして” P.143には”キース・リチャーズのような髪”とある、 そう、同時代のポップ・カルチャ/サブ・カルチャにある程度通じていると主人公が身を置く状況がまるで良く出来た脚本のように眼前に現れる面白さも本書には満ちている、 逆に上記三例になんの反応もしない読者層では読み進むのが辛くなるかもしれない、 グランジェはマイ・フェイバリットのフランス映画「クリムゾン・リバー」の原作者、 先行作がジャン・レノ主演映画「エンパイア・オブ・ウルフ」として映画化されており、本作の情緒になじんだ方には鑑賞を推薦(二作品が好きな人は本作のエグさも好みのはず)、 本作もおそらくヴァンサン・カッセルあたりを主役に映画化の企画が進んでいるに違いない、 | ||||
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私にとって最悪な内容でした。主人公の刑事コルソの無法の行動は、ありえないでしょう。これをかばう上司(元愛人)もおかしい。幾度も描写されるコルソの生い立ちをもってしてもこの反社会的な行動は、許されない。話の中に元妻が、マゾヒストであってそれに辟易して離婚しただのという挿話もあるが、こんな話主筋に関係ないでしょ。さらにこの妻と息子の親権争いをしているという話も出てくるが、こんな両親に育てられる息子は、どちらが親権をとっても最悪人生が、待っていること確実でしょう。そのほか、事件の鍵のひとつとして日本の緊縛が出てくるなど、おそらく著者の傾向の現れだろうと思う。兎に角、このコルソは、他人から「あいつが犯人だ」と示唆されるとあとは、ただストーカーと化して殺人まで犯してしまう。それを上司や部下たちが、グルになって隠蔽してしまう。フランスは、恐ろしい国としか思えない。765ページもあるが、不愉快で残り150ページくらいは、斜め読みで読み飛ばし怒りを込めて可燃ゴミの袋に投げ込んだ。本代3000円と無駄に使った時間を返せと著者に言いたい。あなたは、無駄な話を盛り込んで原稿料を詐取しているエセ作家です。 | ||||
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凄いものに出会った。 初めて手にした時、あまりのボリュームにたじろぎました。 主人公の不良刑事の捜査は決してスマートではありません。 大丈夫かよコイツ、と何度も突っ込みを入れてしまいます。 エロ、グロ、バイオレンス全て詰まっています。 それでも毛嫌いせずに読んでください。 ある意味、スター・ウォーズのような展開が待っています。 | ||||
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分厚い”赤レンガ”も気付けば3日で一気読み。よく宣伝文句で「驚愕の真相」なんて言うけど、ラスト数頁が本当に驚愕の展開で。8割方読み終えた時点で「先入観に囚われた刑事の独り相撲では」と半ば失望した己を恥じる。先入観に囚われていたのは俺でした! | ||||
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早川書房さんのツイッターによると、本書『死者の国』がポケミスの中で、厚さが一番になったらしい。 それまでは『エンジェルメイカー』だったとのこと。 届いた瞬間、その風貌にかなり怯んだものの、読み始めたなんの。あっというまに読み終わったという感じ。 一旦世界に入り込んだら、出てくるのがもう嫌になってしまう。それくらい夢中で読みまくりました。 『クリムゾン・リバー』が代表作とのことですが、実は映画も観ていないので、早速原作を手元に取り寄せました。 この作者の作品を他にも出ている分は読んでしまおうと思います。 | ||||
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ポケミスの愛称で知られるハヤカワ・ポケット・ミステリだが、年々ポケットという名が似つかわしくない厚手の本が増えている。もともとポケミスは、海外のペーパーバックを真似た洒落たオトナのデザインを身に纏っている。ペーパーバックは、海外ではハードカバーよりは下に見られていて、安い原稿料でノワールやアクションを書いて糊口を凌いでいた三文作家のことはペーパーバック・ライターと呼ばれて一段下に置かれていた時代があったと言う。ところがペーパーバックから多くのエンターテインメントの巨匠や天才が生まれ育つにつれ、世界の読者はペーパーバックこそが、名作の卵であったり雛であったりすること、そして何よりも面白く読めること、大衆小説としてのエンターテインメント性の確立という意味で、文学史に大役を果たしてきたこと等々、評価される部分も今の評価に繋がっている。 現在でも、日本では、ハヤカワ・ポケミスは翻訳も早く、日本の読者への永くベストなトランスポーターとしてのその役割は、誰もが認めるところとなっている。無論、ポケミスは装丁を真似るだけではなく、ペーパーバックにこだわらぬ良質な作品選びをやって来て、これは現在も続いている。今や古書店で小説という商品価値が事実上ゼロと帰している中、ハヤカワのポケミスだけは値段が付くそうである。そのくらい希少な出版価値、作品への拘りを見せてくれているのがポケミスと言えよう。 しかし最近は、ポケットに入らないポケミスが増え、ポケット・ミステリではなく、バッグ・ミステリとでも愛称を変えるべきではないかと個人的には思ったりしていると、いうところで、さて話は本題に戻りましょう。そのバッグ・ミスと言いたくなるのが、二段組で760ページ強の、弁当箱のような厚みを誇る本書。ポケミス史上最厚ではないだろうか? そしてその厚みに値する壮大な仕掛けに満ちた大掛かりなミステリであることから、こいつは今年の翻訳ミステリ界の注目を集めるに違いないとも予感させる、いわゆる「大物」なのだ。作者も、フレンチ・ミステリの巨匠である。グランジェの名を聞いても実はピンと来ない人にはあの『クリムゾン・リバー』の原作者であると言うと、おわかりだろうか。 全盛期の少し忘れかけていた作家というイメージであろうが、邦訳作品が少ないだけで、実は今も世界では30ヶ国で翻訳され作品を世に出し続けている現役作家として活躍を続けているらしいのである。昨夏『通過者』(このミス17位)という実に13年ぶりの邦訳作品がTAC出版から出ているらしいが、ぼくは見逃している。機会があれば是非読んでみたい。 さて、本作。主人公は、出生不明の孤児から、数奇の運命を経て、現在の上司に拾い上げられ、今はパリ市警の最優秀捜査官として名を馳せているステファン・コルソ。彼の存在自体が、不幸とサバイバルと暴力に育てられた、いわゆるノワールな存在なのである。キャロル・オコンネルのキャシー・マロリーに類似した境遇だが、よりエキセントリックに、状況をぴりぴりに尖らせたようなダーティ・ヒーローと言えば、少し想像しやすいだろうか。 一歩間違えれば犯罪者の側に回っていたであろうこの警視コルソの超弩級の動物的勘に、圧倒的な行動力を加え、時間軸を揺さぶりつつ、ヨーロッパ中を走り回らせると、この単独捜査が、狂気に満ちたこの連続殺人事件を真相に近づけてゆくことが何とか叶いそうに見えてくる。それ以外のどんな捜査でも不可能だろうと言えるほど、二重三重の間違った皮相に覆われた、とにかく仕掛けだらけの難事件が相手である。そして複雑な主要人物たちの中に犯人像が浮かび上がるかと思えば、さらに想像を絶する仕掛けで裏をかかれる。あるいは裏をかかれたと思えばそれも怪しい。さらなる想像力を掻き立てられつつ、警視コルソとともに読者は暗闇の危険水域へとめくるめく旅を強いられる。 圧倒的なプロットに、幾重もの想像力と罠に満ちた執筆力との闘いが期待される本書。分厚さに納得のゆくだけの質感を与えられる超大型ミステリである。簡易な言葉で綴られるページターナーでもあるゆえに、冗長さはまず無いのでご安心を。 推理、アクション、リーガルサスペンス、コンゲーム、サイコ、画家ゴヤとその作品群に纏わる歴史ゴシック、宗教と科学のぶつかり合い。あまりに多くの面白要素で溢れかえるこの作品は、分厚いお弁当箱というには、おそらく煮え滾り過ぎている。ミステリ好きの少年が持つ探求心や冒険心を満足させてくれるおもちゃ箱のような存在と言った方が適切であろうか。 現在フレンチ・ミステリをリードするピエール・ルメートルに比肩するこのグランジェ。この作家の復活に、心臓がばくばくするほど興奮を覚えつつ、是非最後まで挑んで頂きたいと思うほどの大作登場なのである。 | ||||
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あの「クリムゾン・リバー」を書いた作者による最新作「死者の国("LA TERRE DES MORTS")」(ジャン=クリストフ グランジェ 早川書房)を読了。 フランスの警察小説と言えば、直近では「パリ警視庁迷宮捜査班」を思い浮かべますが、今回はかなり異なります。パリ警視庁犯罪捜査部第一課長、ステファン・コルソが主人公。二人のストリッパーが<性倒錯>に満ちた姿で殺され、コルソがその事件を狂熱的に追うことになります。主人公は、子供時代を社会の底辺で過ごし、盗み、ドラッグに溺れ、助けられ、ナルコティクス・アノニマスの力を借りて回復した警察官。そして、問題を持つ妻との離婚調停に苦しむアンチ・ヒーローとして登場します。前半は普通の警察小説かと思わされつつ、少し長いとすら感じました。 フランシスコ・デ・ゴヤ、「赤い絵」?、白いボルサリーノを被る白いスーツの男。マイクル・コナリーの初期の著作とヒロエニムス・ボスの関係性を想起させるような世界が待ち受けているのかと勝手に想起しながら、長いと感じたストーリーの中盤、コルソがユーロスターに乗り込み、ドーバー・トンネルを渡りロンドンへと向かうやいなや物語は輻輳する悪魔的なダイナミズムの中に取り込まれていきますね。そして、コナリーは消え、スコット・トゥローのあの有名な2作のような世界へと読者は葬送されることになります。これ以上は、もう具体的なことは書けません(笑)。 三分の二、<はなれわざ>が炸裂します、そして息詰まるような反転、反転、そして反転、<はなれわざ>。忘れていたエピソードまでも拾い上げて、最後にはすべてがしっかりと収斂していきます。 自分が何か違うと感じ、苦しみ、拒食、自傷、アルコール、ドラッグ、セックスへの依存を繰り返し、最後まで自分に価値を見出せない奥深い闇の中に生きる人間たちの救済のない、ペシミスティックで狂おしい、絶望に満ちたスリラー。 パリ、マドリード、ブルガリア・ヴァルナ、ロンドン、ブラックプール、スイス、オーストリア。フレンチ・ミステリーなどという軽い呼び名からは遠く離れて、ナパーム弾のように炸裂する「倒錯したEU」とその「呪われた血の悲劇」。 傑作だと思います。 少し隔靴掻痒気味のレビューに堕ちてしまっていますが、ストーリーの核心にはやはり言及できません。 型破りで直情型の主人公、コルソに何度も苛立ちを覚えました。そのキャラクターそのものが、この物語に仕掛けられた大いなるミス・ディレクションなのかもしれません。 | ||||
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