ブラック・ハンター
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点6.00pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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やはり重たい作品でした | ||||
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大ヒット作「クリムゾン・リバー」の続編。蘇ったニエマンス警視が新たなパートナーと組んで、ドイツの黒い森を支配する富豪一族の闇に切り込んでいく警察サスペンスである。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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巻末の解説を入れても380ページで、短くも長すぎもしないほどほどの長編、 訳文はとてもこなれており速読にも向く、 クリムゾン・リバーほどの新鮮さも、死者の国のような怒涛の大河感もないが、まるでシャーロック・ホームズの帰還のように現場に復帰するピエール・ニーマンス58歳はいまだ体内にデンジャーを抱えたままだった、 物語の面白みは先行レビュー二件でほぼ語られていると思う、 つまり、読者を選ぶタイプの暴走刑事サスペンス、 ブラック・ハンターと聞き、あれのことかなと想起できるものがある読者にはそのとおりの物語が語られる、 先にテレビドラマが公開されたらしく、いわゆるノベライゼーション作品だと思って読んだほうがいいかもしれない、 馴染みのない固有名詞がずいぶんとたくさん登場するのはミステリの常道だが、読み終えたらちょいと物知りになった気分にもさせてくれた、 舞台となる仏独の国境沿いはそれぞれが両国にとり微妙な立ち位置である不安定さのようなものが物語の底にあるように感じた(日本にはそのような場所が存在しない)、 捜査前半ではジプシーと思っていた集団が、捜査が進むと実はイニシェだとわかるのも特定の地域性の現れに違いない、 三年前に死者の国を読んだ時も感じたが、作者はほどほど以上に日本趣味があり、横溝正史も知っているに違いない、 グランジェは邦訳が出ていない作品がまだたくさんあるが、娯楽性が本作レベルの作品が多いとすれば未翻訳も仕方がないようにも感じた、 以下蛇足、 先述したように、例えば、シグ・ザウアー、ポンプ・アクション、ウルナイフのような武器関連の単語が頻出するのは作品の性格から当然だが、シュバルツヴァルト(黒い森)が舞台となるため植物名もたくさん登場する、 黒い森のメインとなる樹木がトウヒとモミからなるのはよく知られたことだろうが、カバノキ、ウマゴヤシ、シナノキ、ヤマナラシ等調べないと形状を想像できない名前も多く描写の中に現れる、 ウマゴヤシは主人公がアクションする草地を覆う植物だからだが、これが文章表現を読む時の難しい部分になるが、身近に繁茂する草の名を知っていれば、ただウマゴヤシと単語を記せば、体にまとう草の感触や香りも、葉擦れで汚れる服の色も想像力不要で理解できるのだった、 一日50ページほどのスピードでサクサク読み進みはしたが、分からない名詞等を検索するのにずいぶん時間を使ってしまったが、これも読書の楽しみでもある、 いまだに未見の映画サスペリアの撮影場所について言及されており、鑑賞予定映画のリストに加えることにした、 | ||||
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「クリムゾンリバー」で活躍したニエマンス警視の第2弾ということですが、残念ながらこの作品は駄作です。 主人公は色ボケしたロートルのような描かれ方であるし、他の登場人物たちは類型的な人間ばかりで魅力に欠けます。推理小説として読むと登場人物は少ないので犯人はすぐわかりますし、サスペンスとして読むと展開がグダグダとしていて、主人公の精彩の無さが際立ちます。 この作家の特徴は、犯罪者側の秘められた狂気・情念が中心にあって、主人公が半ばそれに感染しながら追い詰めていく恐怖が持ち味だと思うのですが、この作品の中心にあるのは主人公の価値観や生きざまであり、普通のどろどろとしたサスペンスという感じでした。 | ||||
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反転と<はなれわざ>が炸裂する大部の傑作「死者の国」(2019/6月)以来になりますが、ジャン=クリストフ・グランジェの新しい翻訳「ブラック・ハンター」(ハヤカワ・ミステリ)を読み終えました。本作は、「クリムゾン・リバー」の続編でもあります。 昏睡状態から蘇ったニエマンスは、警察学校での教官生活を経て、フランスの凶悪犯相手の特命係に任命され、現役に復帰します。相棒は、警察学校での教え子・イヴァーナ。彼女はクロアチア移民の父とフランス人の母との間に生まれ、ドラッグに溺れ、心に深い闇を抱えています。「死者の国」のステファン・コルソ同様、極端なキャラクターを持つ二人の主人公たち。 舞台は、ドイツに接するフランス、アルザス地方。自動車産業により財を成したVGグループの総帥が、催された狩りの会の最中惨殺されます。犬を使って獲物を追いかける追走猟。ニエマンスとイヴァーナは、ドイツの警視・クライナートと共にその犯人を追って、時代の闇、国家の闇、家族の闇を潜り抜けて、その真相を探り出そうとします。勿論、ストーリーのディティールは、お読みいただければと思います。 この物語について、不満を先に言ってしまうと、ページ・ターナーでありながら、舞台と背景が限定され、そのストーリーはかなりもたつきながら進行していきます。道具立ては充実しているものの、より膨らみのある(例えば「死者の国」のような)物語を期待すると少し肩透かしをくらうかもしれません。接近猟。伝説のようなブラック・ハンター。シュヴァルツヴァルト(黒い森)。精霊と魔法の国。マッドマックスのように爆走する伝説のノートン。むしろ、水面下に向けて、限りなく深い家族の歴史に目を向ける作者の視点は、どちらかと云えば、米国の私立探偵小説に近いものなのかもしれません。 主題は、ニエマンスとイヴァーナという警察組織に属していながら、アナーキーで、ファナティックで、やり放題で、何者をも恐れない「無双」の気性を持ちながら、常に過去に纏わる罪に囚われ続けるその二人のキャラクタリゼーションの<つながり>にあり、孤独を生きることを強いられた人間たちだけが共有でき、感じ取ることができる「情念」の発露が、グランジェが書く小説の魅力なのだと思います。 最後に今回の物語を端的に表すとするならば、「原罪」を背負うファムファタール、マチズモを刺激する<Why-Done-It>。 | ||||
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