テラ・アルタの憎悪
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2023年の英国推理作家協会の最優秀翻訳小説賞を受賞した、スペイン製ミステリー。カタルーニャの鄙びた町で起きた残虐な富豪夫婦殺しを捜査する熱血刑事の戦いと苦悩を描いた警察ミステリーである。 | ||||
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原題は「テラ・アルタ」。これはバルセロナのあるカタルーニャ州最南西の僻地とのこと。 カタルーニャ州といえば、数年前にスペインからの独立投票をめぐって大きなニュースとなったが、本書でも警察内に「独立派」と「スペイン主義者」がいたり、当時のプチデモン州首相が登場したりして、ホットな話題となっている。 また、この地は20世紀前半にはスペイン内戦の舞台ともなり、共和派とフランコ派の血で血を洗う戦争の記憶が語り継がれている。 実は、こうしたスペイン近現代史がミステリーの重要な背景となっている。 このテラ・アルタの支配的実業家夫婦の惨殺事件がミステリーを紡ぐ縦糸なのだが、犯人も惨殺の動機も最後に明らかにされるまで推理の手がかりが見えない。ミステリーの企みといえば巧みではあるが、やや不親切か。 他方、実業家夫婦惨殺事件と並行して、主人公の刑事の物語が語られるが、著者はここでヴィクトル・ユゴーのあの『レ・ミゼラブル』を重要なライトモチーフとして用いている。 主人公はジャンバルジャンのような生い立ちながら、敵役のジャベール警部に心酔して刑事を目指すという意表を突く設定だが、これは正義を徹底的に貫こうとして挫折する若者を通じて、正義とは何かを問題にする意図であろう。実際、最後に主人公はジャベール崇拝を捨てる。 警察小説としては、捜査会議などのディテールが丁寧に描かれているのが素晴らしいが、他方で、重大事件とはいえ現職の刑事が法を犯した捜査に踏み込んでしまい、それが露見しても注意程度で黙認されてしまうのは、やはり疑問である。上司の言葉どおり正義にはその形式、すなわち手続的正義も不可欠であり、違法捜査で得られた証拠は裁判で証拠能力が否定されるからだ。 適正手続の枠内で刑事たちが苦労しながら証拠を積み上げていくのが警察小説の醍醐味ではなかろうか。 なお、主人公の母親殺害事件の犯人と、主人公を少年時代から庇護し続ける刑事弁護士の正体は謎のままだが、本書は3部作の第1作ということであり、今後明らかにされるのだろう。 『レ・ミゼラブル』のような19世紀的大ロマンの復権を期待したい。 | ||||
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スペインのミステリーを読むのは、はじめてだ。最近、ヨーロッパのミステリーがおもしろいと感じる。物語は、重層的で背景となる社会や人間関係も深い。 さて、この作品だが。主人公の母が娼婦で何者かに殺されたことは、マイクル コナリーのハリー ボッシュシリーズと似ている。このことが彼を警官にさせ、捜査のモチーフとなっていることも似ている。 しかし、物語に通奏低音として、「レ・ミゼラブル」のテーマが流れていることがおもしろい。これ以上書くとネタバレになりそうなのでやめておく。 読んでみな、スペインミステリー! | ||||
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善とは何か、悪とは何か、ビジュアルにして 完成するのでは。 | ||||
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白川貴子氏の翻訳が見事。 主人公メルチョールは娼婦の子で前科者の刑事という設定。しかも刑務所時代からの愛読書がユーゴーの『レ・ミゼラブル』で、心酔するのが作中主人公のジャン・バルジャンではなく敵役のジャベール警部。余談ながら、自分は本作を読みながらマイクル・コナリーの『ハリー・ボッシュ・シリーズ』と2019年のドイツ映画『コリーニ事件』を思い出した。これ以上言うとネタバレになるので割愛。訳者の白河氏は英語・スペイン語・ポルトガル語を操る才媛。スペイン語の原書を流れるように訳してくれている。脱帽。 | ||||
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今風の造りではなく、ちょっと前の、小説がまだ信じられていた時代の造りだから、安心して身を任せて読める。が、今を期待して読む人にはちょっと物足りないかも。 | ||||
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