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テラ・アルタの憎悪



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【この小説が収録されている参考書籍】
テラ・アルタの憎悪 (ハヤカワ・ミステリ)

テラ・アルタの憎悪の評価: 7.00/10点 レビュー 1件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点7.00pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全1件 1~1 1/1ページ
No.1:1人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

主人公のキャラは良いが、最後に腰砕けの感あり

2023年の英国推理作家協会の最優秀翻訳小説賞を受賞した、スペイン製ミステリー。カタルーニャの鄙びた町で起きた残虐な富豪夫婦殺しを捜査する熱血刑事の戦いと苦悩を描いた警察ミステリーである。
着任早々に「退屈する時間はじゅうぶんにあるぞ。ここではなにも起こらないんだからな」と言われたテラ・アルタ署の刑事・メルチョールだったが、町の半分を所有すると言われる富豪夫妻が拷問され、殺害される事件に遭遇した。強盗かという見方もあったのだが、拷問の凄惨さに違和感を覚えたメルチョールは被害者の周辺に犯人がいると推測し、家族や会社関係に捜査の手を伸ばしていった。その結果・・・。
犯人探し、動機探しの警察ミステリーで、大筋の構成は平凡というか、ありきたりの感を否めない。だが主人公・メルチョール刑事の設定に、物語に奥行きを与え、読者を引き込んでいくパワーがある。娼婦の子として育ち、10代で投獄されたのだが、刑務所で囚人に「レ・ミゼラブル」を読むことを勧められ作品に魅了された。さらに、服役中に母が殺害されたことで犯罪から決別し、母親殺害犯に罪を償わさせるために警察官になることを決意した。見事に警察官になったメルチョールだったが、イスラム過激派のテロリスト4人を射殺したことから、過激派の報復を危惧する警察上層部によって田舎町のテラ・アルタに配属されたのだった。娼婦の息子の刑事と言えば「ハリー・ボッシュ」を筆頭に何人かを思い浮かべるが、いずれのヒーローも正義と不正義、悪との向き合い方に苦悩するのがお約束で、メルチョールも例外ではない。さらに、レ・ミゼラブルの深い影響という独創も加わり、極めて複雑なキャラクターである。
事件捜査を中心に据えた警察小説だが、謎解き部分は最後に薄味になり肩透かしを喰らう。ミステリーというよりヒューマンドラマ的な面白さが読みどころ。スペインの風土や歴史、社会を知ることができるのもオススメポイントと言える。

iisan
927253Y1

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