秘密
- ストーンサークル (3)
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レビューとしては私の稚拙な文章より他の方の素晴らしいレビューをご参照ください。 20年以上の間、新刊が出る度に楽しませてくれたP・D・James、 2014年11月27日に亡くなりました。 ほんとに寂しいです。 | ||||
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本作品では、職業倫理とは何か、仕事とは何かなど、いろいろと考えさせられました。 しかし、もしこの人がこういう理由で、こういう職業を選んでいたら怖いなと思う事って、 確かにありますね。ついつい、正当的な動機で、この人はその職業を選んだと解釈したく なりがちですが。 しかし、現実を見ていると、必ずしも、そういう正当的というか、立派ではない、 どちらかというと、あまり感心しかねる動機で、その職業を選んでいる場合も、多々あるというか。 そしてまた、そこら辺が人間の厄介な所と言うか。 今回も、そういう人間心理の怪奇・歪み等に、焦点を当てた内容となっています。 このように、本書の内容自体は相変わらず完成度が高いのですが、「灯台」の解説の中でも指摘されていたように、かつてダルグリッシュは結婚させないと作者自ら明言していたのに、結局は他の作家の 例と同じく、適当に登場人物を次々くっつけたり、結婚させてしまうようになった所に、長い歳月の間に、さすがにジェイムズとはいえども、彼女の年齢とその長い年月の間に、確実に嗜好が変ってしまった事が、窺える。 女性と恋をしても、自分の領域を頑なに守り、 心の最奥部にまで立ち入らせず、それゆえに本当に彼女達との深い関係を築く事ができなかった、ダルグリッシュが、 (ケイトをして、ベロウンと同じく、こんな男達を愛する女性達は、幸せになれないと言わしめる程。) 最終的に選び、結婚した女性が、このエマでなければいけなかったという必然性が、どうも感じられない。 途中でダルグリッシュは、一生結婚させないという予定を変更して、彼を結婚させる事にしたというのなら、エマとの結婚に、それなりの必然性が感じられるように、して欲しかったですね。 簡単には女性を好きにならず、かといって、けして女性に不自由しているという訳でもなく、 そこら辺は現実的に、それなりに深い交際にまで至っている女性達が、 過去に何人かいたと思われ、それでも自分の長年の生活スタイルを崩さず、孤独ながら気儘で優雅な 独身貴族を貫き通し、おそらく初めは愛する妻と息子を失った悲しみから、あえて孤独の中に閉じ込もっていたが、しだいにそのような一人の生活自体が心地良くなり、現在に至る彼独自の 生活スタイル・ぺースが確立。しかし、長年の間馴れ親しんだ、それらを手放してまで、最終的に結婚相手として選び、ついに再度の結婚という、彼にとっての大決心を させる事になるのが、なぜこの女性だったのか? 別に、特に男性読者なら、ダルグリッシュへの好意の延長線上みたいな感じで、その彼が選んだ女性 だからという事で、彼の結婚相手がエマでも別にいいじゃんくらいにしか思わないのかもしれませんが、女性の私としては、何でわざわざ、特に必然性も感じられないまま、 こんな面白くない女性と?と、どうしても思ってしまいます。 私にはいまいちエマの魅力が、伝わってこなかったもので。 何かこのエマって、入念に練られた人物造型及び登場というより、適当に、教会関連という事でも、 ダルグリッシュとの共通点があるし、また更に詩作という、彼と共通の趣味も持ち、警察官にしては インテリ過ぎる程の彼と趣味が合う、同様のインテリ女性、そしてこれも好都合な事に、 彼の仕事にもある程度理解を示してくれる女性として、いかにも途中から急遽設定・登場させられた ようにしか思えませんし。 やはり、こちらの方は手近な所で間に合わせた?という気がしてしまう、ケイトの新しい恋人ピアース出現と合せて、いかにも取って付けた感じのこれらの恋愛エピソード、 二人とも急いでハッピーエンドという事にしてしまったという感じが、ひしひしと伝わってきて しまいます。 また、エマにレズビアンの友人がいるという周囲設定も、予想される、彼女に対する女性読者達の反発を逸らそうとしたのか、真面目そうに見えて、意外に砕けて柔軟な所があるんだよと思わせたいみたいな、何か作為的なものを、どうしても感じてしまうし。 これなら、まだケイトと結婚という展開になった方が、納得しやすかったのですが。 彼女の方が、丁寧かつ、ずっと魅力的に生き生きと描かれているように思えるし。 ダルグリッシュの方も、満更でもなかったようだし。 このように本シリーズにおいても、適当な感じで、大急ぎで主人公達の恋愛問題の収束が図られてしまった形跡からしても、基本的にミステリーにおいては、 やはり恋愛部分は添え物・スパイス程度の扱いになりやすいのかなと思わざるを得ません。 しかし、シリーズ終盤からのぽっと出で、基本的に、ダルグリッシュの恋人キャラとしての存在意義 しか、与えられておらず、途中から現れて、突然彼の心を奪っていってしまったエマよりも、 問題を一つ一つ乗り越えていく、芯の強さを感じさせる、どこかコーデリアと共通するものを 感じさせる、ケイトの方に、遥かに作者の思い入れがあるように感じられるため、予定を変更して、 いくら途中で主人公を結婚させる事にしたといっても、よけいこの展開には、 釈然としない、モヤモヤ感が残るんですよね。 本編中のほんの合間に描写されるだけで、しかも、まさに 幸せな恋人同士という、通り一辺の描写に終始している感じの、彼とエマとの関係に比べて、 数冊をかけて、単なる本篇中の合間の一描写に留まらない、もっと丁寧に描かれていた感じがした、 ダルグリッシュとケイトとの関係のそれからも、明らかにそれが感じ取れる気がするのですが。 このように、どう考えても、終盤で突然に登場させたエマよりも、ずっと作者の愛情が感じられる ケイトとは、ダルグリッシュとの結婚という事にはせず、彼女の失恋については、新しい恋人出現と いう形で解決を図り、また以前には作者が主人公は、結婚させないと明言していた事から考えると、 もしかしたら、彼女のダルグリッシュへの報われなかった片思いは、成就させるためのものという より、最後の彼女の試練みたいな感じのものとして、設定されていたという事なのでしょうか。 それは、確かに同じ警察の同僚という職業意識が絡んだ抑制が強すぎる、理性及びおそらく彼女の プライドも関係し、素直に恋心を表わせないケイトと、やはり彼女に魅力は感じないでもないが、 やはり同じ警察関係者という抑制、そして頑なに自分のプライバシーを守り、相手のそれも、 むしろ尊重し過ぎる性格から、彼女が表面に出している部分以上には、ケイトの心の中にも、 踏み込んでいこうとしないダルグリッシュの性格からして、二人の関係がなかなか職場の同僚以上に 進展しづらいのは、わからなくもないのですが。 最終的に彼とくっつくのがエマならエマで、せめてもう数巻と枚数をかけて、丁寧に二人の関係が 深まっていく様子を描いた上で、二人を結婚させてくれれば、まだ納得できた気がするのですが。 もしかしたら、その内に、何か彼女個人の魅力のようなものも、発見する事ができたかもしれないし。初めにエマとの結婚ありきではなくて、そこに至るまでのプロセスも、大切にして欲しかった。 ダルグリッシュとエマとの恋愛において、そこの部分が、大切にされていないから、どうしてもいかにも後付けという印象が漂ってしまうんだと思うし。 他の主要人物と比べて、ほとんど具体的なエマの生い立ちなどの、彼女の背景についての、詳細な描写もなく、ダルグリッシュとすぐに恋愛・結婚という展開になってしまっているため、彼女に感情移入する事が難しかったです。 このように、シリーズ終盤に、駆け込み的に登場させられ、 本編中の、ほんの合間合間に登場してくるだけの女性と、たった四冊でくっつけられても、 あまりにお手軽過ぎというか。同様に、ケイトの新しい恋も、もう少し丁寧に、 彼との関係を時間をかけて描写してくれれば、まだ良かったのに。エマって、本当にただのダルグリッシュの恋人キャラ、そして彼の将来の奥さん最有力候補キャラという一点だけで登場させられ、 この一点のみの役割しか与えられていない感じであり、その存在・人物造型に、奥行きを感じる事が できませんでした。長年の間、それなりに楽しいけれど、いつの間にか自然消滅していくような 女性達との関係に、秘かに悩むまではいかずとも、何か空虚さのようなものも、絶えず抱えていたと 思しきダルグリッシュの恋愛問題が、ある時たまたま、ある事件をきっかけに、幸運にも自分と 同じ趣味嗜好を持った、ぴったりな感じの女性と出会えたという事で、こんなに簡単に解決して しまって、いいのでしょうか? 忙しい仕事にかまけて、恋人をほったらかし過ぎ、 ついにそんな男性に愛想をつかす女性という、恋人同士の普遍的かつ説得力ある破局を、 かつてのダルグリッシュとデボラとの恋の顛末でも描いておきながら、最後にこんな「運命の出会い」を持ってきて解決なんて、やはり、ジェイムズらしくない気がします。 更に、ついでに失恋したケイトにも、恋人を見つけてあげて、最後だから、急いでみんなハッピーエンドにしちゃいましたみたいな、この、何とも予定調和的な終わり方には、残念なものを感じました。 これこそ、おそらくジェイムズがそれまで嫌っていたはずの、ご都合主義では? これまでのジェイムズ作品においてのリアリティーある恋愛は、どこへ行ってしまったのでしょうか。 以前に各文庫版の解説で、クリスティー作品における恋愛の位置付けとは、大いに異なる、運命的な ロマンチックラブに懐疑的な覚めたリアリスト、主人公とデボラの恋は、セイヤーズのピーター卿と ハリエットに倣ったものかと思っていたがなどの指摘から思いましたが、 ダルグリッシュとデボラのそれはあくまで一時的なパロディーであり、やはり作者自ら主人公は 結婚させないと、こういうセイヤーズの古典的ロマンス路線との訣別・自分独自路線開拓宣言を しておきながら、結局は数十年後に、計らずも、ダルグリッシュとエマとの出会いと結婚という 形で、回帰してしまったようで。 また、エマ登場の回となる「神学校の死」の中で、ケイトの推理について、ピアースに、まるでクリスティーみたいじゃないかなんて言わせたりしていて、無理にこれまでにない ユーモアを入れようとしている形跡が見られるのも、象徴的だなと思いました。 確実に、彼女の中で何かこれまでの感覚が、変ってしまった事を、感じさせますね。 どうも、長期化したシリーズだと、やたらと主要登場人物を次々とカップルにしてしまったり、 結婚オチにさせてしまうのは、万国共通の傾向のようで。ある種の硬質な世界、 それは恋愛においても例外ではなく、けして甘々ではなく、そして、時にはほろ苦かったりもする、 リアルさが特徴だったジェイムズも、やはり、長年の間に、かなり嗜好が変ってしまった所があるのかなと思わせます。 ダルグリッシュの口から、エマとの間に子供云々なんて発言は、聞きたくなかった。 いくら人気シリーズだからといって、作品のクオリティーが保てないまま、ダラダラと これ以降も、続編が出続けず、ついにこれで完結となったのは、エマとの新婚生活とか、 パパになったダルグリッシュなんて、見たくなかったので、私としては歓迎したいと 思います。作者及びダルグリッシュの大きな変貌振りを見ても、人気シリーズには付き物の 落とし穴とはいえ、少し長引かせ過ぎたのではと思えるくらいですし。 すでに、この分量で質・量とも、十分な出来映えの一大シリーズとなっていると思います。 私はやはり、当初の予定通り、ダルグリッシュにも独身を貫かせていた方が、良かったのではと いう気がします。 しかも、わざわざ当初の予定を変更してまで、彼と結婚するのが、コーデリアでも、デボラでも、 ケイトでもない、シリーズ終盤に突然登場させた女性であり、そこに至るまでの丁寧な描写も ないまま、急いで結婚させてしまったというのは、失敗だったのではと思います。 あの浅見光彦だって、出会った恋に落ちる事があっても、特定の女性とカップルにまではならないし、 基本的にこういう長編推理もののヒーローって、特定の女性とくっつけない方が、良いのではないかという気がします。 ミステリーらしからぬ、その高い文学性も、大きな魅力だったはずのジェイムズ作品だっただけに、 たぶん、どうせ緊急の後付け設定だからと思えば、当然なのかもしれませんが、結局は他のミステリー同様に、このように、主要人物達の恋愛部分においては、 描写が軽視傾向になってしまい、形式的・予定調和的大団円という感じの、主要人物達の結婚もしくは新たなカップル成立という形にしてしまい、その他の部分との整合性が取れていない印象を与え、 その質が損なわれてしまった部分が生じたのは、本当に残念です。こういうご都合主義的展開は、 他作品ではしばしば見られる事とはいえ、重厚さ・リアルさが持ち味のジェイムズ作品の中でだけは、やって欲しくなかった。かつて文庫版の解説の中で有栖川氏に称賛された、あの、ロマンティックな 憂愁と、詩情を湛えた、ミステリアスかつどこかひんやりとして静謐で重厚な ジェイムズの世界、そしてあのクールなダルグリッシュは、一体何処ヘ? 本当に小説や漫画における恋愛エピソードって、後付け展開が、難しいものなので。 やはり、こういった作品群における恋愛エピソードは、二人が恋に落ち、関係が深まっていく までの、そのプロセスの十分な描写が、大変に重要なものなので、そこが省かれてしまうと、 上手くいかない。 | ||||
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☆五つはミステリー小説への星ではないかもしれない。 作者ならではの重厚なドラマ世界は健在だが、事件そのもや犯人さがしへの胸おどらせる興奮を「☆五つ」に 期待されると納得いかないだろう。 いま私の心に暖かい光にも似た満足感が広がるのは、ずっとひとりの作家にほれ込んで読み続けて きたことと切り離せない感情であると思うからだ。 しかし、だからこそ、P.D.ジェイムズをまだ読んでいないという方には、 初期の作品からこの作品へと読みついでほしいと願わずにはいられない。 それこそ☆をいくらともしても足りない世界があなたを包む、と確信する。 (ねっとりした描写が耐え難い方はごめんなさい。ちょっと読んだだけで肌が合うかどうか、わかりやすいはずです) 偉大な指揮者の最後のステージを固唾をのんで聴き入るような気分でページをめくり、 なかなか、ほんとになかなか事件は起こらなくて、いつ指揮棒が大きく振り下ろされるかと妄想が 広がりながらいつもながらの音を聴き続け、待って、待って、振り下ろされた指揮棒の動きはゆったりと 優雅でさえある。 そして、事件が終わったあと、幕切れの音も長く、流れ星の尾のように残像の如く語られる。 もしかしたらこれが愛する探偵の最後の事件かもしれないと思えば、 読み終わったあとは寂しくてたまらないはずなのだが、 終章で語られるつぶやきのような彼女の絶望やら希望やらの言葉があまりに私の心に届くので、 愛しのダルグリッシュの残念な結婚まで許せる気分になってしまった。 ひょっとして、ダルグリッシュへの作者の愛もさめたのか? | ||||
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著名になることで得る名声、地位、お金が膨れ上がるほど、かってあった作品の豊かさが、反比例していく作家の多い中で、P・D・ジェイムズの『秘密』は創作することに年齢が(精神と肉体)挑戦できるという意味においてもすごいものだと証明している。 P・D・ジェイムズは重苦しく,取っ付き難いと評論されるが、建築物や風景に対する審美眼、そこに生きる人間関係の洞察は、P・D・ジェイムズの世界を様式化していて、その堅牢な土台の上にミステリーという謎ときが絡んでくるので、好奇心が触発されるので、明晰で、楽しい。 P・D・ジェイムズの作品をほとんど読んできたけれど『秘密』に至まで全てつまらないものはなかった。確かに『死の味』や『ナイチィンゲールの屍衣』等にあった人間の心理の不条理に挑戦していく熱度と切れは、様式の完成で無くなっているようだが、それでもかって想像できなかった、ダルグリッシュの笑顔を感じられる『秘密』はシリーズを読み続けたファンとしては楽しめた。円熟という地平を もっと遠くまで広げていってもらいたいと願っている。 | ||||
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いやはや、衰えませんねぇ〜、ジェイムズ先生! この文字量を一気に読ませる圧倒的筆力。 次々暴露される哀しい過去、もつれにもつれる人間模様・・・・ 濃厚な人生の万華鏡スープにどっぷり浸かって、まるで一緒にシェベレル荘園に2、3泊したかのような、読後のこの快い疲労感。 もはやダルグリッシュとエマなんかどーでもいい(笑)。 (あまったるくて飛ばし読み?) 随所に織り込まれた社会批判は、「病んでるのは日本だけじゃない」と思わせます。 シャロンのエピソードの救いのなさは、フィクションを超えたリアリティでぞっとさせます。 そしてエピローグあたりのいきなりの説教クサさにはいささか「着地で減点!」という気もいたしますが、これは、本当に、これが「最終回」ってことなのか・・・(涙)?! 『永遠に終わって欲しくないシリーズ』の最高峰です。 | ||||
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