灯台
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全1件 1~1 1/1ページ
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最初から最後まで想像力との戦いになります。 | ||||
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フィリス・ドロシー・ジェイムズを読むときには、こう言う風に読んだ方がいいのでははないかと思う仮説があります。 それはジャンル小説としてではなく、普通小説として読んだ方が分りやすく、また深く楽しめるのではないか?と。 筆者、「トゥモロー・ワールド(人類の子供たち)」「死の味」しか読んでいないゆきずりの一見さんです。 「トゥモロー・ワールド(人類の子供たち)」はSFというより、「人類に子供が生まれなくなった」状況下での人間の反応を書いている印象が強く、スターウォーズみたく「遥か未来の銀河帝国」と舞台装置から非現実であることが明白な作品と違って、一つだけ非現実を持ち込んだ普通小説の趣でした。 「トゥモロー・ワールド(人類の子供たち)」が初めて読んだ彼女の作品でしたが(クリスティを継承するミステリの新女王の世評が定着している中では、珍しいファーストコンタクトだと思います)「死の味」「灯台」も「殺人という非現実的事態がある普通の日常」でしたので、P・D・ジェイムズは「ミステリ」「SF」と言ったジャンルの枠で考えるより、人間を観察し、登場人物たちの反応にたっぷりとイギリス文化の味付け、ユーモアをまぶした普通小説として読んだ方が楽、というか理解しやすいのではないかと思います。 もともとミステリは、作者によって読者は半分視野を遮断されている状態で謎解きに向かわねばならないので、その部分はちょっとズルいよね、といジャンルとして制限、限界を感じています。(もちろんそれが面白い、という方が多数派で、そうでなければミステリのこの隆盛はありません) 「死の味」「灯台」どちらも複数の殺人があったのですが、この「灯台」は、真相は最終段階に近いページで、それまで明かされた事実の隙間を縫うようにして、われらが主人公アダム・ダルグリッシュが状況から導き出される真相を演繹的に発見します。(これだけならネタバレにはなりますまい) しかし筆者は、事件の状況を登場人物たちの証言から組み立てるしかないので、そこに隠蔽、嘘、言われないけれどもありえたかもしれない可能性(そしてその中に真相があるかないかも不明)があり、アダム・ダルグリッシュ警視長が見出した真相を提示されても「あっ、それは気づかなかった」としてやられた感はあり(否定的な感覚ではないですよ。あっ、そういう見方が成立するわ、と手を打つ感じ)ミステリは作者の構築した真相を、描写と会話で「語られないこと」「隠蔽されたこと」「ウソをつかれたこと」の中から逆算して導き出さねばならない非対称性があるので「そういう謎の配置方法もありますね」という論理のアクロバットは楽しみましたが、怠惰な読者である筆者、読書しながら作者によって仕込まれた謎を描写と展開から計算するとか、叙述のなかにない、あるいは叙述のウソから殺人犯にとっての事実を逆算するという手間をかけながら並行して読み進める、パラレルな思考方法は面倒くさくてやりたくないのです。 しかも殺人という前提が課せられているので、正直ミステリにはそうした作為的な所と、読むときのある種の煩雑さから常に読み続けるタイプのジャンルではなかったのでした。(…さんざん言ってますが、バッドコメントだから口にすることもないだけで、じつはそう感じている方はそれなりに居ると思うのです。そうしたタイプの方はもともとミステリ自体を読まない。なのでこういう怠惰ないし億劫な意見は出てこない…如何でしょ) しかし、ジェイムズの本領はそれ以外、人格の描写、観察にあるので、 政治家は何百人という兵士を戦場に送って殺すのに慣れているから、死体二人ぐらい気にしないだろう。 と、ミステリの前提を覆すセリフを終盤でさらっと書き、ジャンルのお約束も笑い飛ばす黒々としたユーモア、でも決して陰湿ではない重たい観察が全篇を覆っており、筆者は彼女が作り出した観察とユーモアを本書の一番の娯楽部分として楽しみ、時々声を上げて笑いながら読みました。 謎の解明は安易だと思うし、ミステリとしては決して出来が良いとは思ってません。 ですがそれを越えて「殺人という超現実的事象が起きた時の各人各様の反応」を細密画のように書き留めた観察日記として読み、その読み方で大満足でした。 これは他のミステリでは適応できない、ジェイムズの小説を読むときに適用する方法論なのかもしれません(あるいは21世紀のミステリはある程度、そうした普通小説的なものになっているのかもしれませんけれども) …正統的ではないアマノジャクな見方かも知れませんが、でも筆者にはこの本、今年のベストテンに入るかもぐらいに重厚な満足感を受けました。 たぶん今の筆者は、クリスティよりクイーンよりジェイムズの方が好みと思うのです。 以上、あんまりミステリを読まない一見さんによる賛辞でした。 | ||||
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著者はもう80才台のはずだが、この筆力は何だ? 今作でも、ページを繰らせる力は衰えていない。 本格ミステリの黄金パターンの一つである 「孤島」を見事に甦らせた、本年の代表作のひとつでしょう。 ダルグリッシュが××し、ミスキンやベントンスミスの今後も気になるのですが はたして次回があるのか? そのへんが最大のサスペンスだったりして… | ||||
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昨年の『あなたに不利な証拠として』に続いて、今年も「ハヤカワ・ポケット・ミステリ」からヒット作が出た。それが本書、英国が生んだミステリーの新女王、P・D・ジェイムズが’05年、おん年85才で発表したダルグリッシュ警視長ものの新作である。 イギリスはコーンウォール沖に浮かぶカム島。このVIP滞在客だけを迎える高級保養地で世界的に有名な作家が灯台で首吊りの変死体となって発見された。事件の社会的影響に配慮した当局は、この、世俗から隔絶された孤島で、限られた容疑者の中から犯人を挙げるべく、地元警察ではなく、ロンドン首都警察からダルグリッシュ警視長ら3人を捜査に派遣する。 島の滞在客やスタッフからの地道な聞き取り調査から捜査を進める3人だったが、二人目の犠牲者を出してしまう。さらには、ダルグリッシュ本人の身にも思わぬ変事が・・・。 本書は“本格のコード”のひとつ、「孤島」を舞台に、過去の忌まわしい出来事が絡む‘フーダニット’である。 きわめて現代的な病、SARS(重症急性呼吸器症候群)まで飛び出して、「孤島」を二重の“クローズドサークル”状態にして、なおかつ連続殺人にまで発展して、真犯人が最後まで分からない、という本格謎解きのスタイルをとった、いかにも英国風の端正でクラシックなミステリーである。 | ||||
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「ミステリーの女王」P.D.ジェイムズも本作刊行時には御年85歳、でも筆の衰えはまったく感じられません。 相変わらずの重厚な筆致で、ダルグリッシュ警視長の推理が堪能できます。 静穏と休息を求めて孤島にやってきた地位もお金もある人々。 イギリス本土から孤立した閉鎖的な空間で起きた殺人事件の解決にあたるダルグリッシュ (と部下二人)を翻弄するかのような謎めいた人間関係が、少しずつ解きほぐされていきます。 ジェイムズ作品の魅力のひとつは、丹念に描き出された登場人物だと思うのですが、 本作でも著名な作家と娘、過去の医療ミスに苦しむ医師夫妻、貴族的な老嬢など個性的な 人物が織りなす人間模様が丁寧に描写され、純文学のような読み応えを感じさせます。 個人的には『死の味』がダルグリッシュ・シリーズの最高傑作だと思っていますが 本作は近年のどの作品よりも面白く、『死の味』を読んだ時の興奮を久々に思い出しました。 ある事情で捜査を継続できなくなったダルグリッシュに代わって、今回はケイト・ミスキンと ベントンースミスが大活躍します。 人間的に深みを増していくケイトの成長ぶりも、このシリーズを読む楽しみのひとつでしょう。 気丈で知的な彼女、本作ではとても魅力的です(ケイト・ファンは必読です!)。 またダルグリッシュの身にも・・おっと、この先は本を読んで確かめてくださいね。 | ||||
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