わが職業は死
- 科学捜査 (72)
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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今回は全く不運としか云い様が無い。たかが500ページ強の本書を読むのに何と十日以上も費やしてしまった。これも途中で飲み会が3回もあった事、風邪を引いてしまったことにより、中途半端な読書になってしまった。 | ||||
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P・D・ジェイムズ大ファンなのだけれども、この人はなかなか気難しい御仁で、作品によって波長というか当たりはずれが合わないと、どの作品も「素晴らしい、少なくとも上出来で失望までさせられることはない」ことは判っていても、個々の作品が「好み」かどうかは別になる。 人物描写はうならされる。アダム・ダルグリッシュやケイト・ミスキン警部(まだこの作品では未来に出てくる人だが)とかの過去のトラウマ・来歴に関わる人格・仕事についての姿勢とか、あるいはイギリス社会を皮肉を交えて書く渋いユーモア、そして人間が生きていく上で展開する悪と滑稽さを醜くなく節度を以て、でも容赦なく抉り出す気品とかで、どの作品も安定の水準を保っているのである。 この、個別の人間の悪だったりくだらなさだったりを徹底して暴き出すのに嫌気が差さないで、むしろ品格を以て感じられるのは彼女の稀有の特質だと思う。 「合わない」「気に入らない」展開(「現在」「ナイチンゲールの屍衣」がそれでした)、重厚だけどいまいち空疎な内容(「殺人展示室」「黒い塔」がこれにあたる)とか、大好きな作家なのだけれども作品の中には今市ピンと来ないのもあるのだけれども、どの作品も「つまらない」「くだらない」と思ったことは一度もない。 という訳で「死の味」「人類の子供たち(これはSFですけど)」「正義」「灯台」は何度でも楽しく読み返せる、筆者個人の嗜好がジェイムズと合った傑作だった。 「わが職業は死」はどうかというと、まあ、まあまあという所か(ナニコノ上から目線) 被害者は殺されて当然の嫌な奴で、ドタマかち割られて死んでるシーンでは祝杯モノだったが、それにしてもこの周辺はこの人物が死んでも全然事態が解決しない、人生が好転するとは限らない陰鬱だがリアリズムの展開で、結末まで読んでも「事件というよりは重たいドラマが解決した」カタルシスと満足感はあったが、登場人物たちの人生はある人は警察を退職することになるし、ある人は人生の岐路に立たされるし(犯人のことではない)またその人は遺言の不公平さから人生がもともと制限されたものになったりしていたので、後味はあんまり良くなかった(しかし「原罪」ほどひどくないし「殺人展示室」ほど浪費された人生がありました感ではないが) 当作を読んで、改めて思った。 彼女の最大のヒロイン、コーデリア・グレイが「女には向かない職業」「皮膚の下の頭蓋骨」以外に「黒い塔」「死の味」などでちらほらとその姿を(直接ではないが)見せるように、以後、発表された作品の中で、過去の作品の犯人や人物たちがどうなったか、偶然の範囲でも一行でもその後を書いてくれたらより奥行、深みが増しただろうに、と思わずにはいられなかった。 ラストは緊迫感を持ったワンシーンを切り取って終わる。この幕切れも良い。 という訳で、いまいち波長があった作品とは言えなかったなあ、という個人の感想でしたが、ジェイムズの常で作品の出来、内容、品性に失望したことは一度もないので、その意味では十分に読み応えのある良作でした。 そう…筆者はジェイムズをミステリというより、ミステリの衣をかぶった普通小説として読んでいる。 ジェイムズを通してみた世界という作品世界の中に入るため、彼女を読んでいるのかもしれない。 文学のように。なので多少の出来不出来は… | ||||
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検死官の事務所の所長代理が殺され・・・というお話。 検死をする仕事の男が検死される事になり・・・という展開の推理小説でした。いつものこの人の作品同様、一人一人のアリバイ尋問に多くのページが割かれていて、そこで追求される事実をよく覚えていないと後の展開を楽しめなくなるので、ご注意を。 読み終わった結論から言えば、ジェイムズ氏の他の作品、例えば「ナイチンゲールの屍衣」や「策謀と欲望」よりは、若干落ちるかなとか思いました。もちろん、つまらなかったと言う訳ではないですが、一番最初に出てくる死体も本筋にからまないし、アリバイ尋問のくだりもいつもよりいわゆる「伏線の美学」が感じられなかったので。 というのは個人的な感想で、評論家だった故・瀬戸川さんは「犯人像などじつにしっかり書きこまれており、読後には感銘すらあたえられる」と書いてらっしゃるので、私の読みが浅いのかも。読んで損はないとは思いますが、一ファンとしては少し物足りない物を感じたのも真実でした。再読したら印象が変わって私の感想も豹変するかも(すいません)。いつも道理、登場人物をこれでもかというくらいじっくり描いているのは読んでいて楽しかったですが。 英国を代表する推理作家の佳作。機会があったら是非。 | ||||
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ダルグリッシュ・シリーズの6作目( 「女には向かない職業」を含めると7作目 )です 。第一発見者はホガッツ法科学研究所の受け付け係ブレンダでした。生物研究室の床で事切れていたのは、生物部長ロリマー博士。鑑定人としての実力は評価されていたものの、その狷介な性格は多くの憎しみを買っていました。肝心のダルグリッシュ警視長が登場するのはポケミス版で78ページ目なのですが、法医学者が殺人現場へ呼び出される冒頭から重厚で濃密なジェイムズの世界に引き込まれます。作者ジェイムズ本人が若かったせいでしょう、のちの作品におけるダルグリッシュの人物造型と比べるとやや不安定なところも見られます。とはいえ、登場人物たちの錯綜した愛憎とその果てに起こる殺人事件、更には犯人の正体を冷徹かつ丁寧に暴いていく筆致に迷いはありません。さすがはP .D. ジェイムズとうならされる犯罪小説です。 | ||||
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もちろんP.D.ジェイムズという作家が居ることは知っていましたが、ようやく第1作から順に読み始めました。年齢を知って驚きました。普通の人よりも何十年も遅れてしまいました。 いつも、登場人物の人間関係が複雑なので、ちゃんと記憶していないと何度も確認しなければなりません。それで、読むのが遅いのですが、登場人物の役割をあやふやななまま読んでしまうともったいないです。本書は、特に導入部分をきちんと読まなければ、途中で犯人は分かっているはずなのに、私は置いてきぼりをくってしまいました。とても悔しかったです。微細で繊細、無駄なく複雑で、読み終えた後の余韻でもあります。いろいろな作品で賞を取っていますが、この作品はなぜか何の賞も取っていないようですね。なぜ? | ||||
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英国ミステリの女王と呼ばれながらも、彼女の作品のファンだという方は少ないようですが、私はP.D.ジェイムズのファンです。それで齢が齢だけに新刊が出たと聞くたびに、季節はずれのクリスマスプレゼントをもらったような気分になります。 では、彼女のどこがそんなに良いのか?というと、私は彼女の描く人物と独特の雰囲気に惹かれるのです。ジェイムズの人物描写は現実的で非常だと言われますが、彼らは現実の世界に住むにはあまりに情緒的で詩のようです。負の感情をたくさん持ちながら、それでもそれだけではなく、美しく、哀しい感情も抱いている彼らとその世界に惹かれ、私はジェイムズを読むのです。「女には向かない職業」を読んだ方は、彼女の描く人物が美しくもあるのを知っているでしょう。 この作品はさほど有名じゃないものの、そういった魅力を特に備えています。殺人事件の、犯罪のエキスパートである人々への波紋と、誰よりも詩的なダルグリッシュ警視長の捜査を同時に描きながら物語は進んでいき、ダルグリッシュが犯人を突き止めたとき、彼らの世界は大きく揺れ動きます。 ラストで明かされる、決して単純な悪などではない血の通った人間であった犯人の姿は誰より心に残るでしょう。 | ||||
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