月の夜は暗く
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点8.00pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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オーストリアを代表するミステリー作家となったグルーバーの邦訳第三弾。ミュンヘンの女性刑事ザビーネとドイツ連邦刑事局の事件分析官(プロファイラー)スナイデルの二人を主人公とするシリーズの第一作である。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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「夏を殺す少女」が面白かったので期待しすぎてしまったのかもしれません。 犯人の残虐性といい、プロファイル+捜査の流れといいどうしてもクリミナルマインドのノベライズを読んでいる感が否めませんでした。 面白くなかったわけではないんですけど、驚くような展開があるわけでも終盤に捻りがあるわけでもないので 「夏を殺す少女」以上のものを期待すると肩透かしを食らうかもしれません。 | ||||
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躾の為の童謡をモチーフにしての殺人だがとても怖いし、捕らわれた女性そして犯人の心理、登場人物のそれぞれの心理を上手く捉え、読者を飽きさせないストーリー展開は最高❗新作が楽しみ | ||||
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ドイツのミステリー小説は初めて読む。こういう類の小説はアメリカが圧巻の市場を築いているので、なかなかお目にかかる機会が無い為、かなり楽しみにしていた。 最後まで読み切った感想として著者が一切の手抜き無くものした作品である事は否定しない。だが、捜査とセラピーの組み合わせでプロットを構築しているが、その事が結果的に作品からスピード感を失わさせている事は否めない。それと同時に犯人があっさりよめてしまう。それとともに捜査側の登場人物は魅力的に構築されているが、タイトルにもあるよう捜査過程の文章に緊張感が演出できていない。僕は原書が読めないので原作のせいなのか、翻訳のせいなのかはわからないのだが、これはサスペンス小説として大きな失点だ。そして捜査過程での犯人を探り出す分析も分析というより推測に近く『羊たちの沈黙』のメガヒット以降続いてきているサイコサスペンスの中でも、どうも凡庸な感が否めない。それとともに『羊...』にあったようなレクターとクラリスの関係性の様な象徴性を欠いている。唯一犯人逮捕の部分だけは流石に緊張感を帯びスリリングだった。 作品全体を通して、力作である事は否定しないが、どうもツメの甘さが残る読後感だ。 | ||||
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ミュンヘン市刑事警察の捜査官ザビーネ・ネーメスのもとに母ハンナが殺害されたとの知らせが入る。遺体は大聖堂のパイプオルガンの演奏台にくくりつけられ、口にはホースが突っ込まれていた。母はインクを無理やり飲まされて溺死させられていたのだ。母が猟奇殺人の犠牲となったのは一体なぜなのか。 しかし母の死は奇怪な連続殺人の一片に過ぎなかった…。 ウィーン出身の作家アンドレアス・グルーバーのミステリー最新邦訳作品です。私は著者のこれまでの作品(『』、『』)を酒寄進一氏の卓越した翻訳で大いに楽しませてもらった経験があり、今回の作品も同じ作者・訳者のコンビで出来(しゅったい)したと聞いただけで、あらすじも知らぬまま迷わず手にしました。 ドイツのAmazon.deサイトでは2016年4月12日現在608人によってレビューが書かれ、そのうち485人が5つ星をつけているほど評価が高い作品だけに、今回も期待を裏切らぬ面白さでした。 一体全体この不気味な殺人事件の背後にはどんな謎が隠れているのか――事件解決のデッドラインが区切られた中で、手に汗握る物語が展開していきます。 主人公たちとともに犯人を追いかける謎解きの面白さといったらありません。500頁を超える厚さもなんのその。描かれるのは猟奇的殺人ですから、心臓の弱い読者には向かないかもしれませんが、私は最後まで倦むことなく頁を繰り続けることができました。 またザビーネとコンビを組むことになるドイツ連邦刑事局事件分析官のオランダ人マールテン・S・スナイデルの偏屈ぶりがどこか憎めず魅力的に見えてくるから不思議です。他人の心情を一切斟酌せず、ところかまわずマリファナを吸い、書店で万引きまでしながら、完全な厭世人ということではなく、心の奥底では人間を信頼しているという奇妙なキャラクターです。 スナイデル分析官を主人公にしたシリーズものはオーストリア本国でさらにあと2冊出ているそうで、やがて邦訳されることでしょう。 なお、読み終わってから裏表紙に書かれているあらすじを読んだところ、「童謡殺人に挑む」という言葉が書かれていることに気づきました。「童謡殺人」じゃなくて「童話殺人」ではないでしょうか。 | ||||
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ストーリーの肝心要の後半のスリルとサスペンスに満ちた展開の筆さばきは天下一品の腕前の著者が新たに童謡殺人テーマを取り入れて十八番である猟奇サイコ・サスペンスの持ち味に磨きをかけた正真正銘間違いなしの傑作です。本書はタイプ的には全く異なりますが、古典名作ミステリー「僧正殺人事件」ヴァン・ダイン作の様に犯人の正体についての興味は完全に切り捨て、その代わりに犯人の尋常でない異常性をとことん追及するという部分に重点を置いておりまして、加えて現在進行形で実行されつつある残虐な凶行を著者お馴染みのパターンの男女名探偵コンビが未然にストップ出来るのか否かという手に汗握る強烈なサスペンスで停滞する事なく一気読みさせてくれますね。まあ確かに犯人の意外性というお楽しみがないのは残念ではありますが、でも昔から多くの偉大な先達によってあらゆるパターンが書かれ尽しておりますし逆に平凡な手だったり不自然になったりすると却って悪い印象が残りますので、(少し寂しくはありますが)思い切ってスパッと割り切ってしまうのが著者に限らず現代ミステリーの道なのかも知れないなとは思いますね。 ミュンヘン市警の女性捜査官ザビーネは父から離婚した母が何者かに誘拐されたと知らされ、その後に大聖堂で異様な手口で殺された母の死体と対面する事となる。被害者が近親者である為に上司から捜査に当たる事を禁じられたザビーネだったがどうにも我慢出来ずに、容疑者になった父の疑いを晴らそうと手を尽くしやがて超変わり者の事件分析官スナイデルと出会って最初は拒否されながらも諦めずに粘り強く奮闘を続けるのだった。 本書で著者が現実にある童話「もじゃもじゃペーター」をミステリーと結び付けて童謡殺人の趣向に利用した大胆な着想の素晴らしさにまずは感嘆しましたね。まあ現実にここまでやるイカレタ野郎がいるだろうか?とは思いますが、そこは本格推理特有のぶっ飛んだ設定として許容できますし、被害者が女性ばかりなので(フィクションとは言え誠に女性の方に対して遺憾に思いますが)十分に実行が可能だろうというリアリティーもありますね。それにしても理由はどうあれ人間はどんなに残酷な事でも出来てしまう恐ろしい生き物だなと思い知らされますね。これはやはり深い部分では狂気に根ざしているとしか思えませんが、著者はよくぞこんなにもえげつなく陰惨な酷い因果の話を考え出すものだなと本当に驚くばかりですね。さて、気分を変えまして本書でも構成上の技巧として、メインの捜査官ザビーネと分析官スナイデルが殺人事件の謎を追う局面、心理療法士ヘレンが誘拐犯から見知らぬ女を誘拐したから2日以内に理由を突き止めろと強要され警察に連絡せずに独自に調査する局面、そしてもう一人の女性心理療法士ローゼによる問題男とのセッションの記録の局面、と3つのそれぞれに異なる場面を転換させて徐々にサスペンスを盛り上げて行く手法がお見事ですね。クライマックスに至る捜査陣と犯人の駆け引きの場面では、あまりにも犯人が臨機応変に対応できすぎ!の感はありますが、でも追いつ追われつの緊迫感を演出して心憎い程に興奮させ楽しませてくれますね。結末の遺恨のこもった善悪の対決の息詰まる劇的な演出も読み心地がありましたし、私はなにより狂人の唾棄すべき殺人犯に対してさえも最期に一片の哀れみの念を漂わせる著者の優しい心遣いに胸を打たれましたね。ここで著者が創造した誠に劇的な人間ドラマにふれますと、過去に不運にも理不尽な挫折を味わった心理療法士ヘレンが偶然の悪戯で事件に巻き込まれ、やがては夫の裏切りに気づき最低の心理状態の中でも懸命に頑張って挙句に殺人鬼のお陰で死の一歩手前まで行きながらも最後に真の愛を手にするという一級品の大きな感動が味わえて大満足でしたね。そして名探偵のマールテン・S・スナイデルは優等生ばかりの探偵達の中にあっては珍しい飛び切りの変わり者の第1印象は徹底的に嫌な野郎で、偉そうな大口を叩き皮肉に嫌味は当たり前、「簡潔に要点を3つ述べよ」の決まり文句、室内で平気でマリファナを吸う、ハイタル書店に立ち寄り本を万引き、ともう良い所を探すのが難しい程なのですが、でも意外にも最後には大好きにはなれないまでも彼の隠された実像が見えて来て結局は全てを受け入れてしまうのですね。次にヒロインのザビーネですが平凡な様でいて細かい点に良く気がつき、内心はムカムカしながらも変人スナイデルと上手につき合う我慢強い忍耐心を持ち合わせていますし、情に篤く好感度抜群で筋金入りの良心と真面目な正義感を貫く姿勢には本当に頭が下がりましたね。根は悪い人間ではないスナイデルはザビーネのひたむきさや純粋さに一目置いているのだと思いますし、今後の二人の活躍にはますます期待が持てますね。そして最後の最後に本書の訳題「月の夜は暗く」の謎の意味について終わり近くに犯人がわかったと言いながら結局は明かさないままだった点ですが、私には狂人の頭脳だからこそ理解が可能な種類(領域)のイカレタ答なのだと思えますから常人には謎のままの方が安全で決して知ろうと努力しないのが正解だろうなと思いますね。 | ||||
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