刺青の殺人者
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点8.00pt |
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オーストリアを代表するミステリ作家の「夏を殺す少女」の続編。ライプツィヒの警部ヴァルターとウィーンの女性弁護士エヴェリーンが登場するシリーズ第二弾である。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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シリーズ第2作。 ヴァルター警部とエヴァリーン弁護士がそれぞれの立場から殺人事件に関わることとなり、章ごとに視点が変わりながら話が進んでいく。 前作同様、緻密な構成で、東欧そしてドイツと舞台を移動しながら話がテンポよく進み、全てが収斂していくラストまで全く飽きることなく読み進む。 話しの完成度が高く、セバスチャン・フィッツェック、ヘニング・マンケルらと並ぶストーリーテリングの巧さを堪能できるので、他の作品も期待大。 | ||||
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紹介のペースが最初はゆっくりでしたが気づけば早い物で本書が邦訳四冊目となる猟奇サイコ・サスペンスの鬼才グルーバーが2015年に著しドイツで大絶賛された最新傑作です。「夏を殺す少女」のあの人一倍正義感が強いやもめ刑事ヴァルターと女弁護士エヴェリーンの男女コンビが久々四年振り(本国と同じペースで)に帰って来ました!著者は「黒のクイーン」の探偵ホガート・シリーズ一冊と「月の夜は暗く」のスナイデル&ザビーネ・シリーズを二冊(+近刊一冊)を順調に書かれていて何れ紹介されるだろう日が本当に楽しみですね。 ライプツィヒの貯水池で見つかった若い女性の死体は全身の骨を折られて血を抜かれるというおぞましい様相を呈していた。身許確認に現われた母親ミカエラは残虐な犯人と殺された姉娘と同時に失踪した妹娘を捜す事に執念を燃やす。事件を追う刑事ヴァルターはミカエラの強引な性格に手を焼きながらも何時しか彼女のペースに巻き込まれて行く。一方、ウィーンの女弁護士エヴェリーンは女性殺害の嫌疑をかけられた医師から弁護を依頼され着手しようとしていた。 本書をフーダニット・ミステリとして読むと容疑者の範囲が二者択一でそれ程に難解な謎解きではありませんので一抹の不満を覚える厳しい方もおられるとは思いますが、著者は最初から複雑なパズル・ミステリを書こうとは考えておらず緊迫のサスペンスの部分に力点を置かれている様にお見受けしますので私としましては、その点は何とか気持ちを切り替えて納得しようと思います。また著者が「謝辞」で述べられている「将来またみなさんのために殺人が犯せることを楽しみにしつつ」という結びの言葉は少々悪趣味な冗談ではありますが、ありきたりでない殺人パターンを今後もどんどん考え出そうという確かな情熱が感じられますし、まだまだ倦み疲れてはいない著者の心意気が伝わって来て頼もしく、私としては険しい道程が予想されますが著者には猟奇サイコ・サスペンスの王道を極めて欲しいと願っています。キャラクター別に見て行きますと、まず冒頭から登場する「刺青の殺人者」である犯人のイカレタ人間性と殺人計画は今回も十分にぶっ飛んでいて抜群の存在感とカリスマ性で特異な狂気が存分に描かれていましたね。今回も犠牲者は殆どが女性で後追い捜査の為に悲劇が幾度も繰り返されるのですが、著者はそんな不公平な筋書きに対して被害者の強き母ミカエラを登場させる事で「女性だって何時までも大人しくやられっ放しじゃないからね!」という姿勢を示して見せたかったのだと思いますね。無惨に殺された姉娘の敵討ちと失踪した妹娘を捜す為ならなりふり構わず暴力を振るう夫にも負けずに立ち向かって行くミカエラはプロの刑事ヴァルターも思わずタジタジとなる程にど根性を持った「肝っ玉母ちゃん」と言えますし、過去の女性キャラ、リスベット(ミレニアム)やアレックス(その女アレックス)に貫禄で負けない(但し二人に比べて健全な方の)堂々たる女傑と呼んでいいと思いますね。また残虐な犯行描写は著者の得意技ではありますが、ヴァルターとミカエラが周辺諸国を調査して回る内に接する善意の人々とのふれあいの人情や友情の心が描かれる事で随分と緩和されていると思いますね。次に本来のヒロイン、女弁護士エヴェリーンは愛する恋人パトリックを襲う悲劇や犯人に囚われる苦境に耐えてまあよくがんばったと思いますね。そして最後にやもめ刑事ヴァルターは喘息に苦しむ日々ながら娘との関係も良好で、今回の事件でも高が一娼婦の殺人と切り捨てて本腰にならない上司に逆らって単独で最後まで事件を追い続ける執念には誠に頭が下がる思いですし携帯電話の電池残量が僅かになりながらも精一杯奮闘しましたね。著者のキャラ達は何時もなりゆきで後ろ盾がなく単独で危険な殺人鬼に立ち向かう事となるのは思慮に欠けると思いますし実際共に大ピンチに陥りますが、今回は切り札と言うべき復讐の天使ミカエラが控えていて意外な大活躍の見せ場を演じてくれましたので最後の最後に胸がスッとしましたね。この危なすぎる女ミカエラは今回無造作に多くの殺生をしてしまいましたが、まあ相手がみんなろくでなしの悪党ばかりでしたから正当防衛という事で良しとしましょうね。そしてラスト・シーンで互いの娘同士が友人になれた事実は書かれましたが、肝心のヴァルターとミカエラはめでたく結ばれる事となるのか?今は裁判が大変な時期で仕方ありませんが全てが片付いてすっかりほとぼりが冷めたならば二人の再婚は十分に有り得る話ですし、その結果は次に書かれるであろう「復讐の冬」が紹介される日まで楽しみに待ちたいと思いますね。 | ||||
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まず主人公の一人ヴァルター警部があまりに軽率で、ウンザリ。被害者の母親ミカエラが死んだ妻に似ているというだけで、勝手に感情移入し、郵便物を盗まれるは、捜査報告書を盗まれるは、挙句に自分の車まで盗まれて、見知らぬ街に置いてきぼりにされる。そしてその都度、「彼女を信用してはいけなかったのだ」と後悔しながら、また次には同じことの繰り返し。この人、本当に警察官なの? それとも男性はみんな、死んだ妻に似ている女性にはこうなるのかな?その御都合主義の設定のおかげでミカエラが捜査を主導しているかのように思わせているが、三文ドラマに過ぎない。 こんな安易な人物設定で小説を書くのは、読者をあまりに軽んじていると思うけど、私以外の読者はそう思わないのでしょうか? | ||||
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若きカルラはウィーン総合病院の50代の外科医ヨハネスの誘いにのってその自宅へ向かう。しかし彼女はヨハネスに殴られ、薄れゆく意識の中、彼の胸に巨大なサソリの刺青が光るのを目にする…。 ---------------------------- オーストリアの作家アンドレアス・グルーバーの『』の続編です。前著の名コンビ、ドイツ・ライプツィヒ刑事警察のヴァルター・プラスキーとオーストリア・ウィーンの弁護士エヴェリーン・マイヤースの3年後が描かれます。『夏を殺す少女』のあまりの面白さにすっかり魅了されて以来、私はこの作者の小説を『』、『』と読み継いできました。 これまでスタンドアローンの小説を物してきたグルーバーが、『夏を殺す少女』をシリーズ化したわけです。前著の原題が『Rachesommer』(復讐の冬)、そして今回の作品は『Racheherbst』(復讐の秋)といいます。秋とはいえ事件が発生するのは10月の末。舞台は中東欧ですから、気温は氷点下に近くなります。日本でいえばじゅうぶん冬と言って構わない季節に、二人の主人公はまったく別の事件をそれぞれ追いかけ始めます。 ヴァルターは、長女を殺害されたチェコ出身の女性ミカエラに協力するため、警察機構のルールをはずれて捜査を進めることになります。コンプライアンスを無視したヴァルターを、警察に全幅の信頼を置いているわけではないミカエラがさらにだましながら下の娘の行方を捜して、ドイツ、チェコ、オーストリアと駆け巡るのです。 このヨーロッパミステリーの面白さはこうした国境を越えた謎解きにあります。主人公たちはいともたやすく軽やかに隣国へと捜査の手を伸ばし、異文化や異言語の中で犯人を追い詰めようとしていきます。島国日本ではなかなか味わえない異世界の物語が魅力的です。 もう一方の主人公エヴェリーンは、信頼のおけない依頼人の弁護に翻弄されていきます。果たして依頼人は実際に殺人を犯しているのか。それとも全くの冤罪なのか。事件は混迷をきわめていくばかり。謎に謎が覆いかぶさっていく物語展開に、その先の真相に早く手を伸ばしたいと、主人公ばかりでなく読者の私も気がはやる読書となりました。 そして刑事と弁護士の真相追跡劇がようやく交差するのは、なんと400頁を超えたところです。それまではそれぞれがかかえる事件が相互に関連があることすら見えないままでした。グルーバーの見事な作劇術に、すっかり手玉にとられてしまったことに、心地よさを感じないではいられません。最後の200頁は息も継がずに一気に読み通しました。 グルーバーはこれまでも猟奇殺人事件を描かせると天下一品のところがあり、この『刺青の殺人者』も同じくオカルティズムの色濃い、人を人とも思わぬ犯人像がやがて立ち上がってきます。 そしてなんといっても訳者の酒寄進一氏の訳文は今回も見事の一言。酒寄氏が日本におけるドイツ語圏ミステリーの普及に果たす役割の大きさは計り知れません。 来月(2017年6月)にはトーマス・ラープ『』の翻訳が出ると聞いています。それを手にするのが今から大変楽しみです。 ---------------------------- *64頁:3人組の子どもがウィーンのスクラップ置き場でミイラ化した死体を発見します。この子ども3人のうちのひとりがSonjaという名の少女ですが、「ゾーニャ」とカタカナ表記されています。これは「ソーニャ」とするべきではないでしょうか。 ドイツでは確かに「s」の直後に母音が連なるとその「s」は有声子音になるので、Sonjaは「ゾーニャ」と発音するのが一般的です。しかしドイツと異なり、隣国オーストリアではこの場合「s」は無声子音で、「ソーニャ」と発音するのが一般的です。 同様に、オストロフスキー上級検察官の姪Ursulaも「ウルズラ」ではなくて「ウルスラ」と表記する方がオーストリアのドイツ語としては適切だと思います。 *177頁:「ナターリエを雇っていたはグレゴリーという男だ」とありますが、「の」の字が欠けています。正しくは「ナターリエを雇っていたのはグレゴリーという男だ」。 | ||||
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紹介のペースが最初はゆっくりでしたが気づけば早い物で本書が邦訳四冊目となる猟奇サイコ・サスペンスの鬼才グルーバーが2015年に著しドイツで大絶賛された最新傑作です。「夏を殺す少女」のあの人一倍正義感が強いやもめ刑事ヴァルターと女弁護士エヴェリーンの男女コンビが久々四年振り(本国と同じペースで)に帰って来ました!著者は「黒のクイーン」の探偵ホガート・シリーズ一冊と「月の夜は暗く」のスナイデル&ザビーネ・シリーズを二冊(+近刊一冊)を順調に書かれていて何れ紹介されるだろう日が本当に楽しみですね。 ライプツィヒの貯水池で見つかった若い女性の死体は全身の骨を折られて血を抜かれるというおぞましい様相を呈していた。身許確認に現われた母親ミカエラは残虐な犯人と殺された姉娘と同時に失踪した妹娘を捜す事に執念を燃やす。事件を追う刑事ヴァルターはミカエラの強引な性格に手を焼きながらも何時しか彼女のペースに巻き込まれて行く。一方、ウィーンの女弁護士エヴェリーンは女性殺害の嫌疑をかけられた医師から弁護を依頼され着手しようとしていた。 本書をフーダニット・ミステリとして読むと容疑者の範囲が二者択一でそれ程に難解な謎解きではありませんので一抹の不満を覚える厳しい方もおられるとは思いますが、著者は最初から複雑なパズル・ミステリを書こうとは考えておらず緊迫のサスペンスの部分に力点を置かれている様にお見受けしますので私としましては、その点は何とか気持ちを切り替えて納得しようと思います。また著者が「謝辞」で述べられている「将来またみなさんのために殺人が犯せることを楽しみにしつつ」という結びの言葉は少々悪趣味な冗談ではありますが、ありきたりでない殺人パターンを今後もどんどん考え出そうという確かな情熱が感じられますし、まだまだ倦み疲れてはいない著者の心意気が伝わって来て頼もしく、私としては険しい道程が予想されますが著者には猟奇サイコ・サスペンスの王道を極めて欲しいと願っています。キャラクター別に見て行きますと、まず冒頭から登場する「刺青の殺人者」である犯人のイカレタ人間性と殺人計画は今回も十分にぶっ飛んでいて抜群の存在感とカリスマ性で特異な狂気が存分に描かれていましたね。今回も犠牲者は殆どが女性で後追い捜査の為に悲劇が幾度も繰り返されるのですが、著者はそんな不公平な筋書きに対して被害者の強き母ミカエラを登場させる事で「女性だって何時までも大人しくやられっ放しじゃないからね!」という姿勢を示して見せたかったのだと思いますね。無惨に殺された姉娘の敵討ちと失踪した妹娘を捜す為ならなりふり構わず暴力を振るう夫にも負けずに立ち向かって行くミカエラはプロの刑事ヴァルターも思わずタジタジとなる程にど根性を持った「肝っ玉母ちゃん」と言えますし、過去の女性キャラ、リスベット(ミレニアム)やアレックス(その女アレックス)に貫禄で負けない(但し二人に比べて健全な方の)堂々たる女傑と呼んでいいと思いますね。また残虐な犯行描写は著者の得意技ではありますが、ヴァルターとミカエラが周辺諸国を調査して回る内に接する善意の人々とのふれあいの人情や友情の心が描かれる事で随分と緩和されていると思いますね。次に本来のヒロイン、女弁護士エヴェリーンは愛する恋人パトリックを襲う悲劇や犯人に囚われる苦境に耐えてまあよくがんばったと思いますね。そして最後にやもめ刑事ヴァルターは喘息に苦しむ日々ながら娘との関係も良好で、今回の事件でも高が一娼婦の殺人と切り捨てて本腰にならない上司に逆らって単独で最後まで事件を追い続ける執念には誠に頭が下がる思いですし携帯電話の電池残量が僅かになりながらも精一杯奮闘しましたね。著者のキャラ達は何時もなりゆきで後ろ盾がなく単独で危険な殺人鬼に立ち向かう事となるのは思慮に欠けると思いますし実際共に大ピンチに陥りますが、今回は切り札と言うべき復讐の天使ミカエラが控えていて意外な大活躍の見せ場を演じてくれましたので最後の最後に胸がスッとしましたね。この危なすぎる女ミカエラは今回無造作に多くの殺生をしてしまいましたが、まあ相手がみんなろくでなしの悪党ばかりでしたから正当防衛という事で良しとしましょうね。そしてラスト・シーンで互いの娘同士が友人になれた事実は書かれましたが、肝心のヴァルターとミカエラはめでたく結ばれる事となるのか?今は裁判が大変な時期で仕方ありませんが全てが片付いてすっかりほとぼりが冷めたならば二人の再婚は十分に有り得る話ですし、その結果は次に書かれるであろう「復讐の冬」が紹介される日まで楽しみに待ちたいと思いますね。 | ||||
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