黒い塔
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本作もCWA賞受賞でジェイムズ初期の代表作とされている。前回同賞を獲った『ナイチンゲールの屍衣』から名作『女には向かない職業』を間に挟んで発表された本書で再度受賞だから、この頃のジェイムズはまさに油が乗り切っていたと云えるだろう(ちなみに原書刊行は75年)。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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作者は本名をフィリス・ジェイムズといい、内務省に公務員として勤めるかたわら、早朝と週末に趣味としてミステリを執筆するという1970年代に活躍したイギリスの作家でした。詩人としても名が知れているという設定をもつスコットランド・ヤード(警視庁)のアダム・ダルグリッシュ警視を探偵役とするシリーズを創始しました。P・D・ジェイムズはこのダルグリッシュに超人的な洞察力を備えさせず、素人の素直な努力の延長であるプロの警察官として鍛えられた推理力だけをもたせています。 本書はダルグリッシュ・シリーズとしては5作目の"The Black Tower"(1975年)の翻訳です。英国推理作家協会賞(CWA)を受賞。難病から全快したばかりのダルグリッシュは、旧知のバドリイ神父から葉書で助力を求められていたのを思い出し、ドーセット地方へ静養をかねて出かけることにしました。ところが神父が勤め先として住んでいたトイントン・グレンジという身体障害者専用の収容施設へ行ってみると、神父は急死をしていたと知らされます。ダルグリッシュはいくつかの奇妙な事実から神父が殺されたのではないかと疑いを抱くのですが…。緊張をはらんだストーリーが美しい田舎の風景をバックにして始まります。 収容施設の限られた環境での連続する死、奇蹟により救われた経験をもち事件を公にすることを頑なに拒む施設の経営者、ヴィクトリア時代にある奇人が餓死したという伝説がある不吉な黒い塔、意外な展開と結末。映画のシナリオになりそうです。 | ||||
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懇意にしていた神父の依頼である身体障碍者の療養施設に赴いたダルグリッシュに件の神父が亡くなったと言われ・・・というお話。 今回は海辺での療養施設に赴いて、不審死が相次いでいるその施設の内情を探る内に意外な事実が浮上し・・・という展開でこの著者お得意の執拗な伏線が至る所に張られそれが最終的に一点に収斂していくお得意の内容になっております。それといつもながらの人物造形の彫りの深さに重厚な小説を読んだカタルシスがあり堪能できます。 あと、作品にでてくる、題名にもなっている「黒い塔」が作品全体のメタファーになっているようにも思いました。モノリスみたいにそそり立つネガティブな塔が作品全体に黒い影を落としていて、作品の雰囲気作りに大きく貢献しているように感じました。 蛇足ですが、この著者が影響をうけた(らしい)トロロープの小説がもうちょっと読みやすくなると嬉しいですが・・・。 最高傑作の一つ「ナイチンゲールの屍衣」には若干劣りますが、読んで損のない秀作としてお勧めできます。機会があったら是非。 | ||||
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死病の疑いを宣告されたダルグリッシュが療養先で遭遇する奇怪な殺人の顛末を通して描かれる生と死を巡る誠実な思索が感動的で激しく心を揺さぶられる。その小説としての重厚な完成度が、伏線の張り方が巧妙極まりない秀逸なフーダニットの面白さと全く無理なく共存している事が何よりも素晴らしい。作者の美質である精緻な風景描写やゴシック的な恐怖醸成も見事だ。 | ||||
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ダルグリッシュ警視は療養休暇を利用してドーセットの海岸を訪れます。身体障害者用療養所「トイントン・グレンジ」に務める旧友バドリイ神父から、相談したいとの手紙を受け取っていたのでした。しかし、ダルグリッシュが着いたとき、神父は亡くなっていました。トイントン・グレンジの複雑な人間関係のなかに巻き込まれたダルグリッシュ警視は、病み上がりの体で療養施設に潜む犯罪に挑みますー。面白いミステリーなのですが、難点はダルグリッシュを通して観察される世界が女性の視点であることです。作者が女性ですからそうなるのでしょうが、男はーしかも刑事はそれほど些細なことに神経を尖らせません。ダルグリッシュの視点を多用したのはどうもー。もちろん、ミステリーとして優れた作品であることに間違いはありませんが。それと、身体障害者や精神障害者への差別語の頻出は実に不愉快。訳者と編集者の見識を疑いますね。 | ||||
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詩人であり、優秀な警視であるダルグリッシュは、探偵としては粗野という印象は無くむしろ品格を感じさせる。そのダルグリッシュのシリーズものなのだが、殺人事件自体はあまり印象に残らず、むしろ登場人物の病んだ心理描写や、人間関係にスポットが当てられている。主人公であるダルグリッシュの心境に加え、この作品はトリックを楽しむものというより、重厚な人間関係がポイント。 | ||||
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