黒い塔



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    初公開日(参考)1979年12月
    分類

    長編小説

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    黒い塔 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

    1994年05月31日 黒い塔 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

    ドーセットにある障害者用の療養所で教師をしていたバドリイ神父が急死した。長年の知人であるダルグリッシュ警視が、折り入って相談があるという手紙を受け取った直後のことだった。はたして神父の相談ごととは何だったのか。休暇を利用して調べをはじめたダルグリッシュは、療養所内で患者の事故死や自殺が相次いでいることを知るが…現代ミステリ界の頂点に立つ著者の英国推理作家協会賞シルヴァー・ダガー賞受賞作。 (「BOOK」データベースより)




    書評・レビュー点数毎のグラフです平均点6.00pt

    黒い塔の総合評価:8.50/10点レビュー 8件。Cランク


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    全1件 1~1 1/1ページ
    No.1:
    (6pt)

    厚い上に細かすぎる描写は読者を選びます。

    本作もCWA賞受賞でジェイムズ初期の代表作とされている。前回同賞を獲った『ナイチンゲールの屍衣』から名作『女には向かない職業』を間に挟んで発表された本書で再度受賞だから、この頃のジェイムズはまさに油が乗り切っていたと云えるだろう(ちなみに原書刊行は75年)。

    今回もダルグリッシュは静養先で事件に巻き込まれる。よく休む警部だなぁと思われないよう、ジェイムズは一応ある設定を施しており、それはダルグリッシュが死の宣告を受けていたというもの。悪性の白血病に侵され、余命わずかと云われ、治療に専念していたら誤診だったという、なんとも滑稽な導入部である。療養休暇が余ったので、知り合いの神父から相談事があるとの依頼を受けて彼が勤める身体障害者の療養所へ向かい、そこで事件に巻き込まれるというのが本書のあらすじ。日本人だと誤診と解った時点で休暇を取止め、職場復帰するのだが、英国人は折角貰った休日だから有難く活用させていただこうと休むんだなあ。御茶の時間なども大切にするし、これが英国人と日本人の人生における余裕の持ち方の違いか。
    で、件の神父は死んでおり、なんだかきな臭いものを感じたダルグリッシュはそこに留まり、色々調べると、そこで疑わしい死亡事故が頻発していることが解ってくる。しかもそこにはその施設の創立者が閉じこもって、餓死したといわれる黒い塔があり、さらに経営者の病気を奇跡的に治したと云われるルールドの水なるものも登場する。なんだかカーの作品みたいな曰くつきの伝承が語られるのが今までのジェイムズ作品に無い特徴だ。この舞台設定を意識してか、物語の語り口もどこか幻想味を帯びているような感じがし、なんだか靄がかかっているかのような雰囲気で進む。

    しかしこれが非常に私には苦痛だった。かねてより何度も書いているがジェイムズの文体はうんざりするほどの情報量にあり、今回は登場人物もさらに多く、おまけに特殊な舞台設定でもあるので、人物の説明、描写、舞台の説明、描写がもうページから文字がこぼれんばかりに書かれている。初めから終わりまで全て見開き2ページが真っ黒だった記憶がある。しかもさらにページ数は増し、ポケミス刊行当時、最も厚い本であったらしい。その後、ジェイムズの作品は長大化し、この記録を自ら打ち破っていく。
    とにかく陰鬱で重く、しかもなかなか進まない話に私はなんども本を投げ出そうかと思った。その後も色んな本を読んできたが、特にこの本は苦痛が先立ったのを肌身で覚えている。

    ただ救われたのは意外な真相だったこと。それとダルグリッシュが犯人によって命を奪われそうになり、本書のモチーフとなる黒い塔に救われるシーンだ。ここで前半描写されたある特徴が一助となり、ダルグリッシュが難を逃れるのだが、こういう布石が最後にちゃっかりと活かされる小説というのを私は非常に好むのだ。
    ずっと陰鬱だが、最後はなんだか明るい幕切れで、通常ならば終り良ければ全て良しと前面肯定的になるのだが、本書の場合は本当に気がめいる読書で、読み終って本当にほっとした作品だった。

    Tetchy
    WHOKS60S
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    ※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
    未読の方はご注意ください

    No.7:
    (4pt)

    バドリイ神父は朝まで袈裟をつけていたんですよ

    作者は本名をフィリス・ジェイムズといい、内務省に公務員として勤めるかたわら、早朝と週末に趣味としてミステリを執筆するという1970年代に活躍したイギリスの作家でした。詩人としても名が知れているという設定をもつスコットランド・ヤード(警視庁)のアダム・ダルグリッシュ警視を探偵役とするシリーズを創始しました。P・D・ジェイムズはこのダルグリッシュに超人的な洞察力を備えさせず、素人の素直な努力の延長であるプロの警察官として鍛えられた推理力だけをもたせています。

    本書はダルグリッシュ・シリーズとしては5作目の"The Black Tower"(1975年)の翻訳です。英国推理作家協会賞(CWA)を受賞。難病から全快したばかりのダルグリッシュは、旧知のバドリイ神父から葉書で助力を求められていたのを思い出し、ドーセット地方へ静養をかねて出かけることにしました。ところが神父が勤め先として住んでいたトイントン・グレンジという身体障害者専用の収容施設へ行ってみると、神父は急死をしていたと知らされます。ダルグリッシュはいくつかの奇妙な事実から神父が殺されたのではないかと疑いを抱くのですが…。緊張をはらんだストーリーが美しい田舎の風景をバックにして始まります。

    収容施設の限られた環境での連続する死、奇蹟により救われた経験をもち事件を公にすることを頑なに拒む施設の経営者、ヴィクトリア時代にある奇人が餓死したという伝説がある不吉な黒い塔、意外な展開と結末。映画のシナリオになりそうです。
    黒い塔 (ハヤカワ・ミステリ 1268)Amazon書評・レビュー:黒い塔 (ハヤカワ・ミステリ 1268)より
    4150012687
    No.6:
    (4pt)

    「黒い塔」の影が全編を覆う本格ミステリの秀作

    懇意にしていた神父の依頼である身体障碍者の療養施設に赴いたダルグリッシュに件の神父が亡くなったと言われ・・・というお話。
    今回は海辺での療養施設に赴いて、不審死が相次いでいるその施設の内情を探る内に意外な事実が浮上し・・・という展開でこの著者お得意の執拗な伏線が至る所に張られそれが最終的に一点に収斂していくお得意の内容になっております。それといつもながらの人物造形の彫りの深さに重厚な小説を読んだカタルシスがあり堪能できます。
    あと、作品にでてくる、題名にもなっている「黒い塔」が作品全体のメタファーになっているようにも思いました。モノリスみたいにそそり立つネガティブな塔が作品全体に黒い影を落としていて、作品の雰囲気作りに大きく貢献しているように感じました。
    蛇足ですが、この著者が影響をうけた(らしい)トロロープの小説がもうちょっと読みやすくなると嬉しいですが・・・。
    最高傑作の一つ「ナイチンゲールの屍衣」には若干劣りますが、読んで損のない秀作としてお勧めできます。機会があったら是非。
    黒い塔 (ハヤカワ・ミステリ 1268)Amazon書評・レビュー:黒い塔 (ハヤカワ・ミステリ 1268)より
    4150012687
    No.5:
    (5pt)

    荘厳に生と死を描き切った感動的作品

    死病の疑いを宣告されたダルグリッシュが療養先で遭遇する奇怪な殺人の顛末を通して描かれる生と死を巡る誠実な思索が感動的で激しく心を揺さぶられる。その小説としての重厚な完成度が、伏線の張り方が巧妙極まりない秀逸なフーダニットの面白さと全く無理なく共存している事が何よりも素晴らしい。作者の美質である精緻な風景描写やゴシック的な恐怖醸成も見事だ。
    黒い塔 (ハヤカワ・ミステリ 1268)Amazon書評・レビュー:黒い塔 (ハヤカワ・ミステリ 1268)より
    4150012687
    No.4:
    (4pt)

    英国・シルバー・ダガー賞受賞作

    ダルグリッシュ警視は療養休暇を利用してドーセットの海岸を訪れます。身体障害者用療養所「トイントン・グレンジ」に務める旧友バドリイ神父から、相談したいとの手紙を受け取っていたのでした。しかし、ダルグリッシュが着いたとき、神父は亡くなっていました。トイントン・グレンジの複雑な人間関係のなかに巻き込まれたダルグリッシュ警視は、病み上がりの体で療養施設に潜む犯罪に挑みますー。面白いミステリーなのですが、難点はダルグリッシュを通して観察される世界が女性の視点であることです。作者が女性ですからそうなるのでしょうが、男はーしかも刑事はそれほど些細なことに神経を尖らせません。ダルグリッシュの視点を多用したのはどうもー。もちろん、ミステリーとして優れた作品であることに間違いはありませんが。それと、身体障害者や精神障害者への差別語の頻出は実に不愉快。訳者と編集者の見識を疑いますね。
    黒い塔 (ハヤカワ・ミステリ 1268)Amazon書評・レビュー:黒い塔 (ハヤカワ・ミステリ 1268)より
    4150012687
    No.3:
    (4pt)

    推理小説?

    詩人であり、優秀な警視であるダルグリッシュは、探偵としては粗野という印象は無くむしろ品格を感じさせる。そのダルグリッシュのシリーズものなのだが、殺人事件自体はあまり印象に残らず、むしろ登場人物の病んだ心理描写や、人間関係にスポットが当てられている。主人公であるダルグリッシュの心境に加え、この作品はトリックを楽しむものというより、重厚な人間関係がポイント。
    黒い塔 (ハヤカワ・ミステリ 1268)Amazon書評・レビュー:黒い塔 (ハヤカワ・ミステリ 1268)より
    4150012687



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