もし今夜ぼくが死んだら、
- 同級生 (93)
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真夜中に盗難車に轢かれ、死んだ少年。橋の下に落下した車。逃走した罪深き何者か。殺人事件というよりも突発的な事故のようにも見えるある夜の出来事を中心にして本書は、スタートする。場所はハドソン川流域の町ヘヴンキル。著者が住むのは同じくニューヨーク州ハドソン川流域のウッドストックだそうである。何と……! エドガー賞、通称ペーパーバック賞受賞作品……にしては、やはりテーマは重たい気がする。最近のアメリカ小説でよく読むタイプのドメスティック・ミステリーであり、ネット虐めによる社会的暴力に真向から取り組んだ作品である。 叙述形態の進化を感じさせる現代ならではの小説でもある。スマホやPCに表示されるメディアを小説中に取り入れる表現は、今や珍しいものではないのかもしれないが、それ自体が、物語の中で有機的にキャラクターたちを動かすほどのパワーを示す、そしてそのことこそが物語の主題になってしまうという作品は、少し珍しいのかもしれない(つい先日読んだハーラン・コーベン『ランナウェイ』は偶然ながらこの手の作品であったけれども)。 本作は、メディア露出され怪物化してゆく類の、そうした悪意の集合体による精神的暴力を、とても象徴的に、かつ罪深く描いてくれた作品である。対象者と顔を合わせずに攻撃が可能となるメディアならではの悪意や憎悪が、言葉というかたちで、被害者である若者を襲撃する。そうした構図なのだ。 母と、兄弟の三人家族。母ジャクリーンの章、次男コナーの章、さらに容疑者の一人でもある落ち目の女性歌手、捜査を主導する孤独な女刑事の章も加えた四重奏という語り口。 否、もう一つの領域による表現が重要であるのかもしれない。多くのネットに露出された悪意の言葉。それに先立ち、最初に読者が対面することになるウェイドによる遺書のような小説のスタート地点が。 本書で矢面に立たされ追いつめられることとなる容疑者ウェイドの章は、上記の章以外、小説中にほぼ見られず、母と弟による語りの中でのみ彼は表現される。一方で、ウェイドの人格とその行動は、証左も責任もなしに垂れ流し的にネット上で表現され攻撃され始めるのである。学校という名の闘鶏場から。メディアという名の顔なき攻撃により。 物語を司る謎の軸となるのは、あくまで真夜中に自動車事故で死んだ少年である。少年を死に至らしめた罪深き者は、今、どこに潜んでいるのか? 本当にウェイドなのか? それとも津波のように祭り上げられたネットでの攻撃の裏に潜む小鬼のような存在がいるのだろうか? ミステリーという分野では括り切れない現代のアメリカ文化、また、犯罪の多様化、そして容易に意見があたかも統一されそうに見え始めるネット文化の恐怖と、その量的暴力。 そうした理不尽なものへの家族の孤立と愛と闘い、多層的構造の社会とその中に足掻く人間の苦しみと葛藤とを描いて、鬼気迫る作品に仕上げている本作は、本来娯楽に徹したペーパーバック賞というよりは、ミステリーの枠に収まり切れない普通小説の文学賞のほうが似合いそうにすら思える。主題は決して軽いものではないからだ。それでいて強度のリーダビリティも備えているところは凄み、というべきである。地味ながら、普遍性を持っているように思える部分が多く、魅力的な人物も少なくないので、ぼくはこうした芯の強い作品に大いに好感を覚えてしまうのである。 | ||||
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最近のSNSによる誹謗中傷による事件を思い起こさせる内容です。 SNSへの書き込みのより追い込まれる少年とその家族、味方は誰なのか?居るのか? 途中で予測していたのとは思っていなかった結末で、これはこれでありかな?と思いました。 イヤミスかな?と思ったらそうではなかったです。 | ||||
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「もし今夜ぼくが死んだら "If I Die Tonight"」(アリソン・ゲイリン 早川書房)を読みました。 フェイスブックへの書き込みで始まるスリラー。その遺書?を書いたウェイドは17歳の高校生。彼は母親・ジャッキーと中学生の弟・コナーと共にニューヨーク近郊、架空の町ヘブンキルで暮らしています。ウェイドはある理由からいじめを受けており、落ちぶれた女性歌手がナイトクラブでのライブを行なった帰り道、若者に車を奪われ、その車はウェイドの同級生を轢き殺して逃亡してしまいます。そして、SNS上にはウェイドが犯人だと示唆する書き込みが飛び交うようになりますが、ウェイドは何も語ろうとせず、何かを隠し通そうとしているようにも見えます。轢き逃げした犯人は誰?ウェイドが隠そうとする「秘密」とは一体? ウェイドの母・ジャクリーン、弟・コナー、この事件のきっかけとなる女性歌手・エイミー、そしてある過去を持つ女性巡査・パールの視点を通して、このスリラーはドメスティックに、シーンがシーンを補填しながら語られていきます。 テーマは、SNSに席捲されたこの世に蔓延る悪意、憎悪、不信感、疑心暗鬼。親が子供の携帯を覗くことに「罪悪感」を抱き、フェイスブックの友人が減ることが寂しさをもたらす時代の米国の小さな町の<悲劇>。スリラーですからあまり多くを語ることができませんが、ミスディレクションとその揺り戻し、散りばめられた伏線は終盤で綺麗に回収されていて、不自然さが少ないと思います。 感じる欠点もいくつかあります。中盤、盛り上がりに欠け、少し退屈です。女性たちが魅力的に描かれている反面、二人の「少年」を除き、男たちは多く登場していますが不在ですね。登場シーンが少ない女性巡査・パールの恋人、名字のないポールだけが活き活きと描かれています。作者の心が反映されている「男」は、彼だけのような気がします(笑) | ||||
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