マイ・シスター、シリアルキラー
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ナイジェリア発新人女性作家によるデビュー・ヒットということである。ロンドンとナイジェリアの大都市ラゴス島を往来する若き女流作家(1988年生)のこれまでの人生がどのようなものかはわからないが、英国へ留学し、キングストン大学の学位を取得している上流育ち。写真は可愛らしくお洒落なイメージ。 まずはアフリカ発ミステリーというだけでも珍しいし、数々のミステリー賞を獲得したという、本作の煽情的なタイトルも話題性豊かで目立つだろう。ちなみに本書は、二百ページに満たない短めの小説である。内容は細かく区切られた章立てによる、場面転換の豊富な、とても読みやすく興味深い作品であった。 三人以上の殺人で「連続殺人鬼=シリアルキラー」の称号は得られるのだそうである。我らがヒロインは、殺人者の姉コレデ。彼女の愛する妹アヨオラこそが、殺人者である。アヨオラは三人目の彼氏をナイフで刺し殺してしまったことで、ついにシリアルキラーとなったのである。コレデは、愛する妹のために率先して死体を始末し、部屋の証拠を片付け、妹を救うべく奔走し、隠蔽する。 コレデの仕事は看護婦。その職場でのエピソードが現在時制で、ストーリーの軸となりながら、凶器のような存在でありながら美貌を誇る妹アヨオラとの共存生活を描いてゆく。殺人鬼の妹が姉の生活に割り込んでくることで、姉は様々なトラブルに巻き込まれることになる。病院も自宅もスリリングな場面でいっぱい、ということに。 この通り、基本プロットはとってもブラックなのだけれど、実は明るく、元気で、デリケートで、読みやすい家族小説とも言えてしまう。今は亡くなっているらしい父親の隠されたストーリーを背後に思わせぶりに秘めつつも、比較的無頓着な母親と姉妹という女三人、彼女らの暮らしにアヨオラが引っ張り込んでくる犠牲者たち、という構図が、何とも言えないスリルを生み出す。 異常な事態を描いた状況小説、という読み方もできるし、人種や生活格差など様々な社会問題を孕んだ、ラゴスというアフリカの大都市を風刺する小説という側面も持っている。さらに家族と青春を描いた前向きな自立小説と言った側面も多分にある。どこを取ってもエネルギッシュな生命力に満ちているが、墓の中を覗くような怖さもつき纏う。 恐怖とスリルをまぶしたシリアルキラーという異常を軸に、クライム小説としての切り口も添えて、読者の前に出される極彩色の民族料理。よく掻き混ぜて口にしてみると、様々な新しい味わいが得られる珍味食材。馴染みのないこの発見の喜びは、少なくともどなたにも感じ取って頂けることと思う。 | ||||
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「マイ・シスター、シリアルキラー "My Sister, The Serial Killer"」(オインカン・ブレイスウェイト ハヤカワ・ミステリ)を読み終えました。ミステリの範疇で語っていいのかどうか悩みますが、ナイジェリアから打ち寄せた「新しい波」は、そのテーマ性をも破壊尽くす重苦しさとは別に爽やかな、乾いた<さざ波>のように感じられます。 舞台は、ナイジェリア、ラゴス(私には、何の知識もない(笑))。「殺しちゃった」と姉・コレデに告げる妹・アヨオラ。彼女は既に何人かの恋人を殺害しています。と言っても、いつものスリラーのようなストーリーが続くわけではありません。ナイジェリアのアッパーの家族の生活、看護師として働くコレデの日常、ファムファタール・アヨオラの美しさ、新しいアヨオラの恋人、そしてその後の顛末。コレデはアヨオラをかばい、憎み、内なる鏡に映るアヨオラと向き合うことになります。この物語を分析的に姉妹の中に存在する「共依存」、母と姉妹の中にあるもう一つの「共依存」、父権の崩壊と暴力と原罪の物語として捉えてしまうとおそらく何も見出せない、遠い彼方の国の「クライム・ノヴェル」と化してしまうでしょう。 姉妹の物語だとしてもボールドウィンの「ビールストリートの恋人たち」とは遠くかけ離れ、そう、ラゴス島と本土をつなぐ「第三本土連絡橋」を渡ってしまって、<よきもの>をラグーンに深く沈めてしまえばこのように世界は変わってしまうのかもしれません。砂漠のように酷薄で、何の希望も見い出せない物語にもかかわらず読み通すことができるのは、何もかも見通してしまっているのではと思えるほど作者の眼差しが澄み渡っているように思えるからでしょう。それは、才能と言っていい。 鍵は、病室で昏睡状態のまま横たわるムフタールの存在にありますね。何も答えることのないムフタールに向かって、コレデはアヨオラの罪を語り尽くします。まるで「神の国(シオン)」に向かって告解するように。 「愛ねぇ。なんとも斬新な発想だ」ムフタールは目を閉じる。(Kindle の位置No.2154-2155) そう言えば、この物語に語るべき男たちが一人もいないことに気がつきました。 | ||||
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