ミラクル・クリーク
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ミラクル・クリークの総合評価:
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全2件 1~2 1/1ページ
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今年の一月か二月ごろの朝日新聞の書評欄で宮部みゆきさんが、早くも今年の最高傑作か、とまで評していた一冊。これは読まなければと思い購入。放火殺人で息子を殺したとして裁判にかけられた母親を巡る法廷ミステリー。一章ごとに、刑事、被告、友人など、視点となる登場人物が変わり、裁判などから、次々と当事者が隠していた秘密が判明していくストーリーは、まるでパズルが解き明かされていくよう。先がすごく気になり、500ページもあっという間でした。最後は、意外な犯人とともに、罪を犯す、そして償うということの重さを考えさせられました。 | ||||
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心苦しさの中、引き込まれていく | ||||
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驚くほど面白い、という事はないです。あくまで個人の感想ですけど。リーガルものでもなく、事件の関係者がそれぞれの真実、想いを語っていく群像劇に近いかと。私としては韓国文化がちりばめられていて、それに星ひとつ追加。ミステリー作品自体の評価としては星三つ(トータル星四つ)。悪くはないけど新人賞を複数とるほどの作品とはちょっと思えないかな、と。 | ||||
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2008年8月、バージニア州ミラクルクリークで韓国からの移民パク・ユーの経営する複数人収容型高圧酸素治療施設で火災・爆発が発生します。捜査の結果放火によるものと断定され、治療中の病児の母エリザベス・ワードが放火・殺人の罪で逮捕・起訴されます。本編は翌2009年に開かれた法廷を舞台として展開する物語で、関係する個人、家族の様々な事情が明らかにされていく法廷ミステリーであるとともに人間ドラマでもあります。 高圧酸素治療は他の正統的な治療法で効果がみられなかったものたちが、いわば最後の頼りとする代替え治療です。ですからそこに集まってくる患者・家族は当然のように複雑な事情や家庭環境を抱えています。またこの経営者が韓国移民というのがミソで、これまた複雑な家庭事情を抱えています。ちなみに付け加えておきますと、現在米国では医学的に正統と考えられている治療で効果が得られなかった病児に対してエビデンスのはっきりしない各種代替え治療を受けさせることを児童虐待とする運動があり、この物語でも背景として描かれています。さらに患者の中には不妊治療のために高圧酸素療法を受けている若手医師も含まれており、代替え治療の問題が複雑であることを示しています。あまり書き込むとネタバレになってしまいますが、この若手医師の妻が韓国系で、かつこの施設の出資者でもあることが物語後半に明らかになり問題を複雑にします。この辺は作者のうまいところですね。 当然のようにあまり後味のよい小説ではありませんが、こうした様々な人間模様を見事に描ききったという意味で大変によく書けた小説であるといわざる得ません。とくに韓国移民の家庭事情や移住者としての複雑な心境は自身が韓国移民である作者にしか書けないものだったと思われます。実際アメリカ本国での評価は高く、エドガー賞新人賞、国際ミステリー作家協会新人賞、ストランド・マガジン批評家賞などを独占しました。 この小説はミステリーとしての形態を借りてはいますが、本来は不妊治療に悩む夫婦、病児を抱えた家庭、事情があって外国移住をせざるを得なかった家庭の悩み・葛藤を描くことの方に重点が置かれているのではないかと思われ、小説としてはとてもよく書けているものの、これがミステリーとして高い評価を受けたということは、米国におけるミステリーだけとはいわず小説の位置づけが微妙に変わっているのではないかと考えさせられました。これが現在よく問題にされる格差とか分断といった問題と関係するものなのか否かはわたしたち外国人には分かりませんが、ミステリーの向かう方向としてはやや危ういものを感じたというのが正直なところです。 なお小説の紹介としては蛇足ながら、アメリカの事情にやや詳しいもののひとりとして書き込んでおかなければならないと思われることがあります。作者のアンジー・キム自身が韓国系の移民であることから、これは自身や周囲の人々の苦しみを訴えた作品なのではないかと誤解するひとがいるのではないかと懸念されるからです。作者の略歴を見ていただければ分かりますが、11歳で移民後、スタンフォードからハーバード・ロークスクールを経て『ハーバード・ロー・レビュー』の編集長を務めるに至っています。これは移民であるなしにかかわらず、普通の社会階層のひとの経歴ではありません。勉強のできるできないという問題ではなく、この経歴が積めるひとの出身家庭は国籍にかかわりなく相当程度の資産家であるということです。わが国ではあまり語られませんが、韓国には一握りの特別な上流階級が存在することが知られており、そうした特殊な家庭の出身者であるとしか考えられません。少なくとも生活困窮から移民した一家の子弟であると考えてしまうと大誤解が生じてしまいます。作者自身が障害児を抱えているらしいことにはもちろん同情しますが、この物語を作者自身と過度に結びつけてしまってはいけないことは付け加えなければと考えました。 | ||||
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題名の「ミラクル・クリーク」とはバージニア州郊外の町の名前。ここには、傷害や難病の治療を行なう韓国人移民一家(ユー一家)が経営する酸素治療施設「ミラクル・サブマリン」がある。ところが、「ミラクル・サブマリン」で酸素爆発事件が発生し、焼死した少年ヘンリーの母親エリザベスが逮捕され、一年後に裁判が開かれる。本作はその裁判を通じて真相に迫って行く法廷ミステリであると同時に、「Who Done It?」ものの本格ミステリでもある。なお、「ミラクル・サブマリン」にはユー一家の他、患者として、患者第一号で不妊症の医師マットを含むトンプソン/チョウ一家、エリザベス・ヘンリーを含むワード一家、脳性麻痺のローザを含むサンティアゴ一家、口をきけない少年TJ及び焼死してしまったたその母親で5人の子持ちのキットを含むマズラウスキー一家が居住している。ユー一家のパクは高気圧酸素治療(<Hボット>という医療機器を用いる)専門技師である。 直ぐに法廷シーン(勿論、陪審員制度)に入る。1日目の公判の証人喚問(「マット(医師だけに<Hボット>に詳しい)→テレサ(ローザの母親)→パク→マット→ヨン(パクの妻)→メアリー(パクとヨンの娘)→エリザベス」の順)を通じて、各自の"人となり"や人間関係が描かれる(が、人種的偏見や治療を受ける患者の"負い目"を繰り返して描くので、チョット退屈な印象)。それでも、施設内の人間関係が少しは窺えると共に、エリザベスの逮捕が状況証拠に依るものだけである事及び地元住民が施設への抗議活動をしている事が分かる。2日目の公判でのシャノン弁護士の元での証人喚問順は以下。「マット→ヨン→テレサ→エリザベス→マット→メアリー→ジャニーン(マットの妻)」。施設の人間模様が濃厚に描かれ各自の"秘密や心の傷"が暴かれると共に犯行の具体的方法や施設に掛けられた火災保険(動機?、とすればパクが被疑者))が言及され、やっと法廷ミステリらしくなって来たが、真相は未だ「ツイン・ピークス」の如く茫洋としている(むべなるかな(後出))。 そして、3日目の公判での証人喚問順は以下。「パク→ヨン→テレサ→エリザベス→ヨン」。どうやら、ユー一家、エリザベスとキットとの関係及びマットとメアリーとの関係に焦点が絞られて来た感がある。4日目の公判時、それを裏付ける様な描写があり、事件の経緯はほぼ明らかとなるが、"誰"の責任なのかは"ボタンの掛け違い"の連鎖で曖昧模糊としている(米国移住者である韓国人作家自身の体験談の色彩が濃い)。 法廷ミステリ兼本格ミステリと言うよりは、"秘密や心の傷"を抱えた小規模コロニーにおける人間関係・コミュニケーションの難しさを何とかミステリ仕立てにしたという印象。本作がデビュー作の由で、まだ粗削りで冗長(内容にしては頁数が多過ぎる)だが、自らの体験をバネにした作者の心意気を買いたい意欲作だと思った。 | ||||
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新聞の書評で宮部みゆき氏が激賞していたので、読んでみた。ミステリ界の著名な新人賞を3つも獲得しているそうで、確かに優れた作品なのだろう。でも、本作のように主観(語り手)が章ごとに替わって、しかも揃いも揃って “闇” を抱えてるという設定はちょっとね。正直疲れる。 舞台設定自体はシンプルだ。米国のとある田舎に設けられた代替医療施設で火災が発生、死傷者を出す事故になった。これが放火と断定されて、事故から1年後に裁判が開かれる。被告人は事故で死亡した受療者の母親なのだが、実は別の真相が…というわけ。 このお話。事故の通報を受けて警察が駆け付け、現場検証、遺留物を捜索するとともに関係者の事情聴取を重ねて、という具合にオーソドックスな展開だったら、恐らく大して面白くないし、犯行動機も腹落ちしないだろう。事件関係者それぞれの経歴、家族事情、心の動きを主観表現で積み重ねることによって、じわじわと事の真相を浮かび上がらせる筆さばきは実際見事だ。 でも、これって警察・検察のあからさまな失態だよな。結果的に誤認逮捕して、裁判も始めてしまって、挙句被告人が事故死(自殺?)して、その後でようやく検察官も真犯人に気付くんだから。1年間、何やってたんだ? 構成の妙で、その辺を感じさせずに読ませてしまうのだが、なんか嫌だな、登場人物が皆 “小さな不幸” と “小さな悪意” を持ってるのって。申し訳ないが、私の好みじゃない。 | ||||
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「ミラクル・クリーク "Miracle Creek"」(アンジー・キム 早川書房)を読み終えました。作者の長編デビュー作だそうですが、緻密な構成を持った優れたリーガル・スリラーだと思います。 舞台は、米国、バージニア州郊外の町「ミラクル・クリーク」。韓国から移住したユー一家が経営する「高気圧酸素治療施設(ミラクル・サブマリン)」で火災が発生し、そのことによって酸素治療中だった子供ヘンリーと自分の子供(TJ)に治療を受けさせるべく同伴したキットが命を落とします。その後、ヘンリーの母親・エリザベスが逮捕され、1年後にその裁判が開廷します。火災が発生したその日に何が進行していて、何が起き、誰がその火災の原因を作り出したのか? ミラクル・サブマリンのオーナー一家、患者たちでもある四組の家族の大人たち一人一人の視点からその事件に纏わる過去、現在、それぞれの家族の「高気圧酸素治療」へのかかわり合いが法廷の中、あるいは彼らの記憶の中から語られ、真実が炙り出されていきます。リーガル・スリラーですから、検察官、弁護人、刑事が法廷を通してそれぞれの役割を果たしていくわけですが、この物語の主眼は、「自閉スペクトラム症」の治療を受ける子供たちとその家族の「現実」を詳細に描写することで、難病と闘う労苦と保護者たちの心理のスペクトラムを描き切ろうとしています。もし子供たちがこうではなかったらという"もし"を振り払おうとしながらも"ふつう"の幸福を求めようとするその「哀しみ」の深さは計り知れない。 スリラーとしては、多くの視点から「羅生門的に」その火災事故が語られ、少しずつ生じた顛末のズレが物語を追うに従い、真実へと収斂していくプロセスが繊細なスリルを醸し出し、誰がその事故を発生させたのかという<Who-Done-It>が明かされます。 また、自閉スペクトラム症、不妊治療、脳性麻痺、多くの精神障害から派生する苦悩に覆いかぶさるように「韓国人移民」として生きることで喪失したアイデンティティへの希求もまたこの作者ならではのものなのでしょう。そのことは、目を背けたくなるほどの悲しみを抱えた現実があったとしても、人は少しだけ力を蓄えながら、そこはかとない希望を抱きながらも生きていこうとするエンディングによく表れているような気がします。それは、まるで泣きじゃくる子供達が泣き止んだ瞬間に見せるささやかな「笑み」と同じようなものなのかもしれません。 病からある程度回復したとしても、家族が「つねにふつうとちがう徴候、つまり後戻りを示すサインに注意し、その一方で妄想に振りまわされないようにしなければならない」 (Kindle の位置No.4077-4078)のだとするならば、それは何と不安で苦しい現実なのでしょう。 | ||||
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