森の中に埋めた
- 刑事オリヴァー&ピア・シリーズ (10)
- 焼死体 (75)
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書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点7.50pt |
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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
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表紙のキツネちゃんが可愛くて何度も見てしまいました。 | ||||
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「刑事オリヴァー&ピア」シリーズの第8作。オリヴァーが少年時代を過ごし、現在も住んでいる小さな村で起きた連続殺人事件の謎を解明する警察ミステリーである。 | ||||
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※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
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ご当地ミステリのサイズ感が感じられる、リアルでセコい殺人の動機。シリーズ3作目[ice queen]の動機などに比べ、説得力に欠けるというか…。でも、もともとはピア&オリバーシリーズは、作者在住のタウヌスのご当地ミステリ。その点ではむしろナチュラルなのかも。登場人物がみな同級生だったり家族だったり義理の家族だったり、血縁や地縁がふくざつに絡み合い、ストーリーが進むにつれてこんがらがってくる…。オリバーもピアも幸せそうでよかった、という読後感。 | ||||
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ここまで欧米の麻薬がひどいのには驚きです。 | ||||
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森の中のキャンプ場でキャンプトレーラーが爆発炎上する。現場からは男性の焼死体が出た。ほどなくして被害者と思われる男性の老母が絞殺体で発見される。さらには村の司祭が首をつっているのが見つかる。小さな村ルッペルツハインで次々と起こる怪死事件が、捜査にあたる刑事警察のオリヴァーの幼少期の悪夢をよみがえらせることに……。 ---------------------------------- ドイツのホーフハイム刑事警察署のオリヴァー・フォン・ボーデンシュタイン第一主席警部とピア・キルヒホフ主席警部たちの活躍を描くミステリ・シリーズ第8弾です。ドイツ本国の出版順でいうと、『悪女は自殺しない』、『死体は笑みを招く』、『深い疵』、『白雪姫には死んでもらう』、『穢れた風』、『悪しき狼』、『生者と死者に告ぐ』そして今回の『森の中に埋めた』となります。 700頁に垂(なんな)んとするシリーズ最長の小説で、膨大な数の人物が登場します。巻頭に掲げられた登場人物一覧が5ページにも及ぶほどです。慣れないドイツ人名の波間で溺れてしまいそうなところですが、恐れることはありません。濃密な人間関係こそがこのミステリの要諦のひとつであり、一癖も二癖もあるこれら登場人物たちとオリヴァーの40年におよぶ人間関係の綾が魅力的です。オリヴァーが以前別離を体験したインカとの一筋縄ではいかない長年の関係も顔を出し、オリヴァーのみならず読者である私の心もざわつきます。 また酒寄進一氏の抜群にリーダビリティの高い翻訳文は今回ももちろん健在です。その流れるような和訳文がこの広大な海の中で読者を力強く牽引してくれます。 主人公のオリヴァーは1961年生まれ。ちょうど私と同世代です。物語は2014年10月の出来事を描いていますから彼は現在50代。そして彼が11歳のとき、つまり1972年に起きた事件が40年の時を超えて現代の連続殺人事件を引き起こしていきます。殺される人々も、そして容疑者と思しき人々も、オリヴァーが幼いころからの知り合いばかり。小村で生まれ、そこで生き、そしてそこで死んでいくであろう人間たちが織り成す怪事件といえば、横溝正史の世界と似ています。その世界観は何も今回の物語で始まったものではありません。すでに『白雪姫には死んでもらう』のころには強く感じられたものです。地域ならではの緊密な社会で住民が積み上げてきた因習や掟のようなものが、21世紀を迎えた今もそこには厳然と存在します。だからこそ地域で解決してきた――言葉を換えるならば、皆が暗黙のうちに共同で闇に葬ってきた――過去が蒸し返されることに、人々は恐れと嫌悪を抱いています。 その恐れと嫌悪の対象になっていくのはオリヴァーです。大勢の秘してきた事柄をあえて抉り出すのが彼のなりわいだからです。旧知の仲である人々を前に彼は大いに扼腕することになります。彼の動悸と焦燥の高まりを、物語に伴走する読者もともに感じていきます。 貴族であることを表す「フォン(・ボーデンシュタイン)」の記号を名に含むオリヴァーが、村社会で特異な存在であることのわびしさを吐露する言葉が印象的です。 「わたしを信用してくれる者も多いが、よそ者扱いする住人もいる。元々そうだった。貴族の称号、そしてわたしが領地で育ち、親よりも上の世代がわたしの先祖の下で日々の糧を得ていたという事実が、わたしへの不信を呼びさまさせるのだろう」(231頁) 一方、オリヴァーの親友だった少年アルトゥールもまた同じく、よそ者でした。アルトゥールの姉ヴァレンティナがこう語っています。 「わたしの家族はソ連邦からドイツへ移住しました。ドイツ語を話し、気持ちはドイツ人でした。先祖は十八世紀によりよき暮らしを求めてロシアへ移住しました。しかし第二次大戦後、ドイツ系の人々はすべてスターリンによってシベリアやカザフスタンに移送されました。【……】わたしたちがルッペルツハインに移り住んだのは、ここに遠縁の親戚がいたからです。わたしたちはドイツ人になれると思っていました。しかしものの見事に否定されました。それどころか憎悪の対象になったのです。ソ連邦で、わたしたちは『ファシスト』とさげすまれ、ここでは『薄汚いロシア人』とののしられたのです」(573-574頁) ヴァレンティナの言葉から、アルトゥールの一家がヴォルガ・ドイツ人であることが見て取れます。つまり、18世紀ロシアのピョートル大帝からエカチェリーナ2世にかけて奨励された外国人誘致政策が、21世紀のドイツの連続殺人事件と縁浅からぬ関係にあります。 子どもたちの輪の中である種浮いた存在であったオリヴァーと、ロシアからやってきた移民として敬遠の的だった少年アルトゥールとが友情を育んだ事実は、ドイツの特殊な歴史を強く感じさせます。これはドイツの子どもたちが祖国の歩んできた歴史の犠牲となっていった話でもある。私はそのことを強く感じながら書を閉じました。 ネレ・ノイハウスのオリヴァーとピアの物語はドイツの公共放送局ZDFがTVドラマ化してきています。『Im Wald』も2018年に映像化されました。 興味深いのは、ドラマ化に際してオリヴァーは原作小説よりも10歳ほど若く設定されている点です。オリヴァーを演じている俳優のティム・バーグマンがまだ40代であるためでしょう。したがって『Im Wald』でオリヴァーが幼少期に発生した事件は、原作の1972年代からドラマでは1980年代に変えられています。 また冒頭の場面は、小説では誰が誰に対して何をしたのかが意図的に不明瞭に描かれていますが、テレビドラマでは具体的に誰が誰に会いに行ったのかが俳優たちによって明確に映像化されています。 . | ||||
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第一作から、読み続けており、毎回読後既に次の内容が気になること。 登場人物があまり若くないことも、一つの魅力と言える。 | ||||
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刑事オリヴァー&ピア・シリーズもこれが8作目となり、オリヴァーは刑事生活に疲れてサバティカル休暇をとろうとしており、ピアに捜査課長を引き継ぎたいと思っている(サバティカルの長期休暇は日本では大学教授などにはあるが、ドイツでは公務員にも認められているようで、日本でも「働き方改革」に取り入れてもらいたい制度である)。 皮肉にもこうした時期にオリヴァーの生まれ育ったタウヌス地方の村で放火を含む連続殺人事件が起こり、それがオリヴァーがトラウマを抱える少年時代の事件と深く関わって、複雑な事件展開をしていくのである。 これまでのこのシリーズ同様、連続殺人の犯人は最後まで明らかにならず、息もつかせぬミステリーの謎解きの醍醐味を読者は楽しめる。また、死体や骨に関する法医学的ディテールもしっかりしている。他方、アメリカ流のプロファイリングも活用されているが、「プロファイルは信憑性の高い推測の域を出ない」とか、警察の犯人逮捕が遅いと糾弾されるのはアメリカのテレビドラマ「CSI:科学捜査班」に責任の一端があるとか刑事に言わせているのは、地道な現場捜査を重視する著者の好みを示していて面白い。 さらに、ドイツ・北欧の社会派ミステリーらしく、本書でも移民家族への差別や児童虐待といったテーマが盛り込まれているが、一見平穏な村のいくつもの家庭で親子間の深刻な葛藤が存在することが物語を織りなす横糸として絡められているのが特筆される。 なお、原著の表題は“Im Wald”(「森の中で」)であり、本書を最後まで読めばその意味は過去と現在を結ぶ事件がすべて「森の中で始まり森の中で終わる」ということだとわかるであろう。いわばタウヌス地方の森の喚起するイメージが作品の全体を覆っているといえる。 | ||||
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