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大いなる眠り



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大いなる眠りの評価: 5.67/10点 レビュー 3件。 Cランク
書評・レビュー点数毎のグラフです平均点5.67pt

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サイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
全3件 1~3 1/1ページ
No.3:
(5pt)

独特の表現が小気味良い

チャンドラーを初読。チャンドラーが本格推理を批判しているように、本格派には現実感がなく登場人物が生き生きとしていないと言うならば、まさにフィリップ・マーロウは魅力的な人物で生き生きとしているだろう。ハードボイルドというと「固ゆで」ですから口を閉ざした寡黙な人間を私はイメージしていたのですが、とっても剽軽でおしゃべりな印象を受けました。余計なことばっかり言ってるなと。それでも恐怖に立ち向かう強い心の持ち主が格好良かった!

一方で禅問答のような内容は非常にわかりにくい。細かな謎を提示しておいて、それを数ページに渡って引っ張るのでなかなか頭に入って来ない。場面の転換も一気に飛ぶので、行間を補うことが大変でした。似たような悪玉が多くて区別が付きにくいし、何をしているのかさっぱりなことも多々ありました。
とはいえ、シリーズで続くフィリップ・マーロウの作品は他も読んでみたいと思っています。英語を直訳したような翻訳も、チャンドラー独特の表現なのかわかりませんが、味があって軽妙洒脱に感じられました。次回作以降に期待です!

陰気な私は地球を回さない
L1K3MG03
No.2:
(4pt)

中身のない本

レイモンド・チャンドラーは私には合いませんでした。ちっとも面白くないです。なによりも本人の風貌が嫌いです。

わたろう
0BCEGGR4
No.1:2人の方が「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

フィリップ・マーロウ登場!

チャンドラーを読んだのは社会人になってからだった。学生の頃、私は敢えて読むのを避けていた。ある程度社会に揉まれてからでないとその面白さが解らないと思ったからだ。
学生の頃、ふいに目覚めたミステリへの興味は尽きることなく、島田荘司を足掛かりにしてその後新本格1期作家から派生していき、やがてガイドブック、『このミス』を片手に自分のミステリの幅を広げていった。そしてどのガイドブックにも書かれているのはハードボイルドというジャンルにおいてハメット、チャンドラー、ロスマクの御三家の名だ。特にチャンドラーの評価は三者の中でも広範囲の書評家に賞賛され、代表作とされる『長いお別れ』は早川書房から当時出ていた『ミステリ・ガイドブック』のオールタイムベストの人気投票で2位か3位に位置していた。
そんなことから社会人になったらチャンドラーを読むぞ!といつの間にか自分の中で目標が出来てしまった。しかし最初に手に取ったのは本書ではなかった。それは『長いお別れ』だった。この辺の経緯については語ると長くなるので、また後日語ることにする。
通常ならば読んだ順に感想を語るのが普通だが、私が読書メモを書く前に読んだ本に関する感想はその本に纏わる私の追想も混じっているので、順番自体に特別に意味はない。従って刊行順に即してチャンドラー作品の感想をこれから述べていきたいと思う。

この『大いなる眠り』はチャンドラーの長編第1作でハンフリー・ボガード主演で『三つ数えろ』という題名で映画化もされた。
既に有名な話だが、チャンドラーはこの『大いなる眠り』を著わす前に既に『ブラックマスク』誌などに短編の数多く発表しており、ほとんどの長編はそれら短編を原型にして組み合わせたような作り方になっている。従って、事件の途中でマーロウの捜査対象が変わり、寄り道をしているようで、その実、最後には最初に追っていた事件と繋がり、関係者に苦い余韻を残して事件が閉じられるというパターンになっている。
またこれらの短編にもマーロウは登場するが、これは後年チャンドラーが主人公をマーロウに書き換えたものだ。従って本書がフィリップ・マーロウ初登場作品である。つまり本書に描かれたマーロウこそ、当初からチャンドラーが構想していた“卑しき街を行く騎士”なのだ。

冒頭の一節からチャンドラーの本作に賭ける意気込みがびしびしと伝わってくる名文が織り込まれている。丘の上に立つ富豪を訪れるマーロウのちょっと緊張気味の仕草などは後のマーロウからは見られない所作で初々しさすら感じる。
端的にいえば金満家の娘に訪れたスキャンダル処理を頼まれたマーロウが自分の納得行くまで調査を行う物語。
ストーリーは難解(というよりも捻くり回されている?)でボガードが原作を読んだ後、「ところで殺したのは誰なんだ?」とぼやいたのは有名な話だ。

本作はアメリカの富裕層の没落を犯罪を絡めて描き、一見裕福に見える家庭が豊かさと幸せを履き違えたために招いた悲劇を卑しき街を行くマーロウという騎士が、自嘲気味の台詞を交え、自身の潔白さをかろうじて保ちながら浮き彫りにしていく。このフィリップ・マーロウ第1作にその後ロス・マクドナルドが追究するテーマが既に内包されている。
私はハヤカワミステリ文庫の清水訳を読んだ後だったので、本書で初めて接した双葉氏の訳は新鮮だった。個人的には清水氏よりもこちらの方が好きだ。

この作品で登場した時のマーロウは33歳。この時代の33歳と現代の33歳では明らかにその成熟さは異なる。なぜなら時代の不便さと治安の悪さゆえに、男が社会で生きていくことの厳しさが違うからだ。それは後年チャンドラーのあの有名な台詞でも証明されている。
そしてその戦いに疲れた男は題名が示す「大いなる眠り」に就くのだ。
ミステリにリアリズムを持ち込み、ハードボイルドという新しいジャンルを確立したのがハメットならば、それを文学に押し上げたのがチャンドラーだ。本書を読んだ後、しばらくの間、書く文章がことごとくなんだか皮肉めいて、そして比喩が多くなった。この偉大なる文豪はそんな風に僕にかなり大きな影響を与えている。

Tetchy
WHOKS60S

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