諏訪徳雄は、コンピュータおたくの四十男。ある日突然、妻の沙夜子がコツコツ貯めた一千万円の貯金とともに蒸発してしまった。

“四ヶ月の浮浪者生活で、イクオの服装はそれにふさわしく汚れていた。かなりの異臭が立ち昇っていた。

マリーは泣きそうな子供のような顔をした。「なにする!」圧しころした声で言った。

天使のような容貌と肉体を持ちながら生まれつき生理がない人妻・涼子は、大学の後輩の大島に好意を寄せられ、凌辱されてしまう。

27歳のタクシードライバーをいまも脅かすのは、親に捨てられ、孤児として日常的に虐待された日々の記憶。

家庭教師・鷲津兵輔が、生徒として引き受けることになった女子高生の乾倫子。

南シナ海の烈風。眼下で砕ける三角波。

朝子は、活気あふれる19歳のロックシンガーだ。ライブで人気を集めるバンドを率いている。

組織によって選ばれた「社会的要人」の弱みを人工的に作ること、それがユリカの仕事だった。

ヤク中で慢性自殺志願者のブンガクさん。浅草置屋の娘で、文学少女のくせに暴走族にも一目置かれているタカミ。

白称モデルで、過食嘔吐を繰り返す宮島弥生は、カルチャーセンターの小説講座に通う作家志望の女性。

人を殺し、育った修道院兼教護院に舞い戻った青年・朧。なおも修道女を犯し、暴力の衝動に身を任せ、冒涜の限りを尽くす。

人を殺し、育った修道院兼教護院に舞い戻った青年・朧。なおも修道女を犯し、暴力の衝動に身を任せ、冒涜の限りを尽くす。

タイム・マシンを発明して、直前に起った出来事を眺める「笑うな」など、ユニークな発想とブラックユーモアのショートショート集。

不自由な日常から、自由な世界へ。オートバイを愛し、野宿旅を続けている人気作家が、その思想と実践について語る。

北海道の奥深く潜伏していたヒカルと鉄男は、冬の到来を前に、南に向けて旅を再開する。

レーザーディスクのように輝く絹織物―。

深夜2時、渋谷。少年院から出たばかりの貢は、北勢会のチンピラを蹴り上げていた。

俺の求めているのは本物のブルースだ―。

北海道の最北端・宗谷岬に傾いて建つ館―通称「斜め屋敷」。

嵐の夜、マンションの十一階から姿を消した男が、十三分後、走る電車に飛びこんで死ぬ。

「バカ」海底に置き去りにした女に向かって、伊禮ジョーはひとこと呟いた。

太平洋戦争。 寒村で起きた悲喜劇。

密室で殺された画家が遺した手記には、六人の処女の肉体から完璧な女=アゾートを創る計画が書かれていた。

哀しく、それでいて熱い旋律。沢村がつま弾く音に、麗子が目を付けた。

青年よ、旅に出よ―。大学生の「僕」は、学園祭で講演に来た「花村」という作家にそそのかされて、北への独り旅に出かけた。

五歳のころ、放浪癖のあった父親と同居することになり、程なく、花村少年の地獄の日々がはじまった。

琵琶湖のほとり、田圃の真ん中で派手なネオンを輝かせる雄琴のソープランド街。

元ヤクザの木常は、神保町にある呑み屋のオヤジだ。ある日、現役の徳光からアタッシェ・ケースを預かる。

9歳のさきちゃんと作家のお母さんは二人暮し。毎日を、とても大事に、楽しく積み重ねています。

母の死の翌日海水浴に行き、女と関係を結び、映画をみて笑いころげ、友人の女出入りに関係して人を殺害し、動機について「太陽のせい」と答える。

人間は空を飛べるはずだ、と日頃主張していた幻想画家が、四階にあるアトリエから奇声と共に姿を消した。

ノワール文学史上もっとも美しい〝運命の女〟への妄執――。 ゴダール名作映画の原作となった犯罪ノワール。

キューバの海を舞台に、年老いた孤独な漁師と巨大なカジキとの死闘を描いたヘミングウェイ不朽の名作が新たな訳で生まれ変わる。

さらし首の名所・暗闇坂にそそり立つ樹齢2000年の大楠。

1972年夏、キクとハシはコインロッカーで生まれた。

伊賀には表と裏がある。八劔なる裏伊賀の忍者たちは、血を掛け合わせて人材を生み出す謎の集団。

いちばんの快感は、他人の意思、あるいは意志をねじ曲げることである。

那覇は、熱気に覆われている。11月の倦怠に抱かれ、作家は街を流れた。

もう許していただきたいのです。負けを認め、教子が祈りを捧げた朧の息子・太郎。

歴史。それは「姫」の思うがまま。

“物書き”とは?“匂い”とは?“鬱屈”とは?“音楽”とは?“表現”とは?“卑近”とは?奇才・花村万月が、あなたのすべての“問”に答える!エッセイと初期の短編を集め、いろんな「万月」を楽しめる“闇鍋”のような貴重本。

俺は、住み込みの牛乳配達員として働きはじめた。「暴力太郎」と渾名される筋者と付き合うようになり、生活は次第に乱れてゆく。

五十八歳にして初めて子を得た小説家・愛葉條司。「家族クソ食らえ」の條司だが、子育ての喜びを知り、のめり込む。

この中に紹介されている悪所場に独りで、あるいは悪友と出かけた、著者の味わった愚かさと無常観と、そして幾ばくかの快感を味わってみてください。

ここは骨ばかりだ。白い骨ばかりで、ささくれだっているよ―八ヶ岳に拠点を移し、「王国」は動きはじめる。

施政権返還直前の沖縄、那覇。

小説を愛してやまない文芸編集者の澤野逸郎は、文芸誌“小説○○”の編集長になった。

僕はただの犬にすぎなかったんだ…。自分がつくろうとしていた王国の「王」が自分ではないことに突如気づいた朧。

歌舞伎町の中国黒社会で生きる武基裕。彼は残留孤児二世として中国から日本へやってきた。

新宿で最も有名な探偵“眠り猫”。俺はその息子だ。

私は喰い散らすだけの存在である。作法もなにもない―。

少年の名は峰岸情、十七歳。彼にとってトルエン、窃盗、暴行は日常茶飯事。

新宿で最も有名な探偵“眠り猫”。俺はその息子だ。

現代の「神と人間」をめぐる壮大な叙事詩『ゲルマニウムの夜』『王国記』『汀にて』に続く王国記シリーズ最新作。