九尾の猫

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長編
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あらすじ

2015年08月21日 九尾の猫〔新訳版〕

次から次へと殺人を犯し、ニューヨークを震撼させた連続絞殺魔〈猫〉事件。すでに五人の犠牲者が出ているにもかかわらず、その正体は依然としてつかめずにいた。指紋も動機もなく、目撃者も容疑者もまったくいない。〈猫〉が風のように町を通りすぎた後に残るものはただ二つ――死体とその首に巻きついたタッサーシルクの紐だけだった。過去の呪縛に苦しみながらも、エラリイと〈猫〉の頭脳戦が展開される! 待望の新訳版(「BOOK」データベースより)

評判

九尾の猫の評価:

7.40/10点 レビュー 5件。 A ランク

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平均点7.40pt

九尾の猫の総合評価:

8.49/10点 レビュー 55件。

感想一覧

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全1件 1〜1 1/1ページ
No.1
(9pt)
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探偵の苦悩、さらに深まる

前作『十日間の不思議』で探偵としての自信を喪失したエラリイが今度対峙したのは、今までの事件とは毛色が異なる連続絞殺魔による無差別殺人事件。そして舞台もライツヴィルではなく、元々のホームフィールドであったニューヨークだ。

とにかく色んなテーマを孕んだ作品である。
一番解決が困難とされるのは動機も関係性もない人物が通りがかりに人を殺す事件だと云われている。本書はエラリイのロジックはこのような無差別通り魔殺人事件にも通用するのかが表向きのテーマであろう。

しかしそれを取り巻いて人種の坩堝と云われるニューヨーク市で起こる様々な移民が殺される状況下で想定される市民の暴動、さらに探偵としての自信を喪失したエラリイの奮起も読みどころの1つである。

そして犯人こと絞殺魔<猫>の正体は意外にも物語半ば、全400ページ弱のうち220ページ辺りで判明する。明確になった犯人対名探偵の対決という構図を描きながら、しかし最後にどんでん返しを用意しているのが実にクイーンらしい。

事件の特色も国名シリーズやドルリー・レーンシリーズ、そしてライツヴィルシリーズなどの作品からガラリと変わってきている。

今までエラリイが遭遇してきた事件は限られた空間・状況で限られた人間の中で起きた殺人事件が語られてきた。したがってエラリイは限定された人物の行動と性格を探り、それを論理的に検証して最も当てはまる人物を堅固なロジックで指し示すというものだった。
しかしライツヴィルシリーズ第1作の『災厄の町』では街の名士一家に起こる事件が小さな町ライツヴィルの民まで影響を与え、スキャンダルと狂乱を生み出す様子を表した。そこから更に事件の及ぼす外部への波及効果を広げたのが本書であろう。しかも殺人の対象は名士一家といった限定されたコミュニティではなく、ニューヨーク市民全員。無差別に絞殺し続ける正体不明の絞殺魔だ。
この影響範囲の拡大・事件の拡張性はクイーンとしても非常に大きな挑戦だったのではないだろうか。

連続絞殺魔対名探偵。これはパズラーでもなく、本格推理小説でもなく、もうほとんど冒険活劇である。
クイーンが古典的本格ミステリから現代エンタテインメントへの脱皮を果たした作品だと云えよう。

しかしそんな特異な事件でもクイーンのロジックは冴え渡るのだから驚きだ。クイーンのロジックの美しさを久々に堪能した。

そして理詰めの犯人追求ではなく、次の事件を予見してからの現行犯逮捕という趣向は今までの諸作でも見られたが、従来の場合はエラリイの意図を悟らせず、エラリイが犯人を罠に掛ける有様さえもサプライズとしていたのに対し、本作ではそのプロセスを詳らかに書くことで臨場感とスリルをもたらしている。

そして本編には戦争の翳が物語の底に流れている。笠井潔氏が提言した本格ミステリが欧米で発展した根底に戦争による大量死があったとされる「大量死体験理論」を裏打ちする内容が書かれている。
つまりこの作品は戦争という災厄によって無駄死にを強いられた多くの人間に対する弔魂歌なのだ。

誰が犯行を成しえたかを精緻なロジックで解き明かしてきたクイーンのシリーズが後期に入り、犯罪方法よりも犯人の動機に重きを置き、なぜ犯行に至ったかを心理学的アプローチで解き明かすように変化してきている。しかしそれは犯人の切なる心理と同調し、時には自らの存在意義すらも否定するまでに心に傷を残す。
最後の一行に書かれた彼がエラリイに告げる救いの言葉、「神はひとりであって、そのほかに神はない」がせめてエラリイの心痛を和らげてくれることを祈ろう。
次の作品でエラリイがどのような心境で事件に挑むのか興味が尽きない。


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Amazonレビュー

※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
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No.50
(5pt)

かなり現代的な作風で、クイーン中期の異色作にして傑作

時系列的に前作「十日間の不思議」と繋がっていて、前作での挫折からの再起を描く物語。ただし作風はかなり異なるもので、本作は王道の謎解きミステリとは一線を画し、サイコ・スリラーのような展開をみせる。
それでも、物語中盤、無関係にみえていた被害者たちの意外な繋がりや、犯行の規則性が明らかになる場面はとても鮮やかで、ミッシング・リンクものとして秀逸な出来栄え。物語後半は犯行の証拠を掴むための苦闘が描かれるが、エラリィや刑事たちの焦燥感の描き方も見事だ。
かなり現代的な作風で、クイーンとしては異色作であるが、よくできた傑作だと思う。
九尾の猫〔新訳版〕 Amazon書評・レビュー: 九尾の猫〔新訳版〕より
4150701520
No.49
(4pt)

だいぶ読みやすい

新訳で読みやすかったです。衒学趣味でやや冗長なのは訳のせいではなく、筆者の性質だろうと思います。ストーリーはなかなか面白く楽しめました。犯人の動機とか結末を思うと、ちょっと悲しい事件でした。
九尾の猫〔新訳版〕 Amazon書評・レビュー: 九尾の猫〔新訳版〕より
4150701520
No.48
(5pt)

とても面白い

数十年ぶりに読んだが、ハラハラドキドキ、とても面白い作品です。
九尾の猫〔新訳版〕 Amazon書評・レビュー: 九尾の猫〔新訳版〕より
4150701520
No.47
(5pt)

クイーン版ABC殺人事件

面白くて数時間で読みました。
クイーンの小説って正直古臭さを感じることもあり、名作と言われる数タイトルも「いつの時代だよ…」と結構途中しんどさを覚えたものもあるのですが、こちらはあまり古さを感じずテンポも良く読み進めることができました。
それでいてラストにどんでん返しもあり!
私の場合読むと大体メルカリ行きですが、こちらはエンタメミステリーの傑作として手元に置いておこうと思った一冊でした。
九尾の猫〔新訳版〕 Amazon書評・レビュー: 九尾の猫〔新訳版〕より
4150701520
No.46
(4pt)

名探偵の苦悩と再起を描く、文学的ミステリーの傑作。

ニューヨークと言う大都会で起きた、連続殺人事件。全く手掛かりのない事件に捜査の中心人物として任命されたエラリイが、挑むストーリー。一見何の関係もなさそうな被害者の共通項を探る推理は、クリスティー「ABC殺人事件」を想起した。

 大都会で起こった連続殺人で、パニックに陥った人々が暴動を起こして、事件より多くの犠牲者が出る描写もあり、犯罪パニック小説のようにも読め、そのリアリティに戦慄。

 謎解きミステリーとしては、容疑者が少なく、真犯人を割り出すのは比較的容易。だが、その人物の犯行動機を考えると、意外であった。クライマックスに向けて、畳み掛けるような真相究明の迫力は十分。同時に、事件の真相を暴けば良いのか、と言うエラリイの苦悩も伝わって来た。

 名探偵の苦悩と再起を描く、文学的ミステリーの傑作と評価する。
九尾の猫〔新訳版〕 Amazon書評・レビュー: 九尾の猫〔新訳版〕より
4150701520

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