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本好き! さんのレビュー一覧
本好き!さんのページへレビュー数329件
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「平将門」と「音楽」。この2つの異質なるキーワードが気になって本作を手にとった。兎にも角にも重厚な世界が広がり、戦のシーンに圧倒されるが、その中で琵琶の音色のみごとな描写、寛朝の将門に対する心の動き、また重厚な中に一種の清涼をもたらしてくれる傀儡女。そして終盤になるにつれて凄惨さを増してくる戦の血腥いまでの場面。当時の人々が何を思って生きていたか。読むほどにひしと伝わってくる思いがした。
この時代をしかと描けるのは澤田氏ならでは。 |
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新潮文庫版。日本美術史にその名を残す十名の芸術家を清張さんなりの解釈で編んだ短編集。
「運慶」から「小堀遠州」までは、同じような調子の文体だが、「光悦」以降はがらりと雰囲気が変わる。「写楽」ファンの私には、「写楽」の軽妙なタッチがよかったし、(止利仏師」に至っては、"伊村"は清張自身なのでは、と思うほどのアイデアで描かれている。解説にも触れられているとおり、芸術家の作品ではなく、芸術家の"人間"を描くのは困難であり、それに挑戦したところが評価ポイント。 |
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長江氏の小説家デビュー作「ゴーストシステム」を加筆・修正のうえ改題。元作品からは大幅に変わっているようです。
氏の「禁止」シリーズの元となった作品らしく、死後の世界、死とは何かを考えさせてくれるある意味奥深い作品。あぁ、この世界観から「禁止」シリーズが生まれて来たのかと、感慨深いものが感じられます。 ホラーとSFが融合したミステリといった内容で、特に後半はSFの要素が濃くなってきます。そういう意味では「禁止」シリーズのようなリアリティはゼロ。恐怖とともに死というものを考えよう、とテーマを与えてくれたような気がします。 可能であれば「ゴーストシステム」との違いも体感してみたいと思いました。 |
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平成によく読んだ井上夢人、貫井徳郎の短編が収録されているので手にとった。いろんな意味で「平成的」なアンソロジー。
平成時代に起きた事件・事故、文化、そして災害、それらをテーマに描かれたものだが、それぞれに特徴が出ていて面白い。 上記の井上氏・貫井氏は安定感がある。その他ではJR福知山線事故をテーマにした青崎有吾、消費税騒動をユーモラスに描いた乾くるみがオススメ。 若い作家ほど典型的に「平成」を表現していて、きっと「令和」でも大活躍するんだろうなぁ、と感じさせる。 |
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MoMAを舞台にマハさんならではのアートストーリーが展開される。9.11や3.11を巧みに織り交ぜ、リアリティ豊かな作品となっている。
「ロックフェラー・ギャラリーの幽霊」や「新しい出口」に登場する初代MoMA館長・アルフレッド・バーの人柄に感銘を受けた。この手のアート小説はマハさんの独壇場か。 最終盤に出て来る一文「Happy To See You」は今の素直な気持ち。 |
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よくできた新人職員と、ちょっと頼りなさげな先輩女子職員の名コンビ。よくあるパターンだが、連作短篇の形をとりながら最後に大きな真相に行き着く。名手ならではの手法、展開で安心して読めた。横浜という自分にも馴染み深い街が舞台で読みやすさもあった。軽いタッチなのも読みやすさの所以。
先輩女子の暁帆も結構行動力あるし、新人君に負けてないですよ。 港には人それぞれのドラマがある、というセリフが頭に浮かんだ。 |
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元新聞記者ならではのリアリティ溢れる内容で、実際にあっても不思議でない、というか似たようなことがあるだろうと言わせる説得力と緊迫感が伝わってくる。メディアというのはこういうものなのだ、とともに現在のメディアのあり方へのメッセージも感じられる。
これまで読んだ塩田作品はコミカルなものが多かったが、本作はその色合いは薄め。できたら塩田さんの特徴でもあるコミカルさを継承してほしい気もしたが、テーマ的には妥当なところか。 |
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元記者の著書ならではのスポーツ紙記者モノ、記者たちの鬼気迫る仕事ぶりがヒシヒシと伝わってくる。そして「とりあえずニュース出せ」のトリダシこと鳥飼のキャラ。このストーリーは著書でないとここまでの作品は書けないでしょう。記者たちの戦場の様子が十分に伝わる快作です。
実際の取材現場も、デスクを担当する記者もきっとこんな感じなんでしょうね。鳥飼のようなベテラン記者も実在したかも、ですね。 |
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ここまで惹き込まれる作品は久々です。おそらく長江氏ならではのルポルタージュ風の体裁が、まるで実際に起きた事件を扱っているかのように組まれているのも要因のひとつ。
また伏線の張り方が素晴らしく、最後まで一気に読まないと「真実」が見えてこない気持ちにさせる。 最近毎日のように世間を騒がせているニュースを彷彿とさせるストーリーになっているのもひとつのメッセージなのでしょうか。 「真実」の応募期間は終了していたので、サイトで真実のまとめを公開していた人の見解を拝見して納得。最後は感涙ものです。どうか↑の「世間を騒がせているニュース」がなくなりますように、というのが本作を読んで感じた最も大きな私の願いです。 |
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マハさんならではのアート小説と京都を舞台にしたミステリが融合すると、美しくもはかないストーリーになった。
白根樹という謎の新人画家の存在と、京都の四季が何故か絡まりあって妖しくも美しく物悲しささえ醸し出している。 実は非常に醜い人間関係が隠れているのだが。 京都の四季を辿っていくストーリーはともすれば京都のガイドブックになりがちだが、そこはマハさんの芸術観が時の流れに伴って明らかになっていく謎に溶け込んでいってなんとも心地よい。 |
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日本人女性作家でこれだけの大作が書けるとは、と絶賛されただけあって、読み応え十分の小説。ドイツの戦時下の惨状、ユダヤ人の迫害、そして主人公アウグステの健気さ。女性作家なりのきめ細やかさもあり、敗戦国ドイツの悲惨さを大胆に描かれ、直木賞候補になったこともあって深緑氏の代表作のひとつとして、もちろんかなりの評価はされているが、いつまでも読まれていく作品になったと思う。
ただし、カフカが語る箇所や手紙の部分はひと工夫ほしかったかも。 |
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現実に起きた事件を清張さんの緻密な筆致で書かれた生々しいルポルタージュ。それだけにホラー小説を読んでいるような恐怖感さえ覚える3編からなっている。
あの「八つ墓村」のモデルとなった「闇に駆ける猟銃」、殺めた継子の人肉を食するというまさしくホラー「肉鍋を食う女」、警察の勝手な都合で犯人をでっちあげようとする「二人の真犯人」、いずれも昔の日本の暗部を事細かに、淡々と書いた松本清張の筆力に恐れ入りました。フィクションも名作ぞろいだが、ノンフィクションも実際に起きた、現実の世界に加害者と被害者が存在したものだけに、その世界にのめり込んでしまいました。 |
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完結したかに思ったシリーズ、まだ続いていますね。扉子という新たな登場人物も加わってますます楽しみが増えてきました。今回は北原白秋、佐々木丸美、内田百閒といった作品が出てきますが、このシリーズのいいところはこういう過去の作品を読んでみたいと思わせるところ、佐々木丸美は初めて聞いた作家だし(恥ずかしながら…)、内田百閒も古書店で探してみたくなりました。
あとがきによると、まだまだ続きがあるようです。楽しみが続きます。 |
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南極を舞台にした乱歩賞随一のスケール感、SFや恋愛の要素も絡めて読みやすい作品。終戦間際の時代と現代の話が交互に語られ、それが繋がるストーリーはミステリーの定石みたいなところがあるが、緻密なつくりは大したもの。
ただ、70年程の時代を経ている割にはその期間を感じなかったのは残念。昭和20年感がないなと感じた。でもこのスケール感は大事にして個性的な作品を今後も期待します。 |
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2つの大震災とテロを織り交ぜて、展開の読めないサスペンスを描けるあたりはさすが七里さん。そして”人を護る”というテーマも入れられていて読み応えはあった。
けど、他の作品にあったユーモラスさ・面白みに欠けていたような気が…シリアスさが前面に出過ぎているのか、七里作品を読んでいる気がしなかった。これも新境地ということか。 それと気になったこと。前半で小学生の主人公たちが森の中に入っていくシーンがあるが、そこで「禁止された場所に行くこと、禁忌に背くことには背徳の悦びがある。」の表現。小学生が背徳の悦び?大人ならまだしも、小学生が背徳の悦びって… 七里作品には妙に堅い熟語が出てくることがあるが、シーンによっては柔らかい言葉でもいいのでは?と思う瞬間だった。 |
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若手騎手と女性記者の成長物語としての要素が濃く、特に厩舎の調教師以下、厩務員たちとの交流や競馬サークルの人たちの様子がよく描かれていてさすが元スポーツ新聞記者だなと感心させられた。実際、同厩舎でも仲良しとは限らず、いろいろなしがらみもあるんだろうな。
レースシーンも緊迫感大あり。競馬サークルを描いた作品としたは上位に食い込む作品と言えるか。ミステリとしては普通レベルかな。 単行本時代は「サイレントステップ」というタイトルだったのが文庫化にあたって「騎手の誇り」に改題。たしかにそのとおりのタイトルだけど、そのものズバリ感がありすぎ。元の方がかっこよかったと思う。 |
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乱歩の長編の中でも最高傑作の呼び声高い本作。多くのキャストで映像化や舞台化されていることからも完成度の高さが伺える。何よりも、黒蜥蜴と明智小五郎の対決は読み応えバツグン、作品全体に漂う「妖」の文字。これは乱歩でないと描きえない世界観。黒蜥蜴という婦人の本名が明かされないのもそれを強調しているといえる。一度映像化作品か舞台を見てみたい気はする。
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シリーズ4作品を通して、魅力的なキャラが登場してきましたが、結局は佃製作所が一番カッコイイ。モノ作りの現場での紆余曲折、保身ばかり考えている幹部。それぞれが現実世界に起きている事件とリンクして作品にすっかりはまりこみました。TVドラマがあるだけに、それを意識したシリーズではありますが、この作品の世界観にハマリこんでしまいました。
特に帝国重工VSダーウィンの図式は圧巻。殿村さんの米作りの現場での苦悩もきっと同じような境遇にある農家があるでしょうね。 ロケットに始まり、心臓弁、そして農業。宇宙から大地へ、というと何だか世界の拡げ方が逆では?とも思ったけれど終わりよければすべて良し、です。 |
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ボクシングにはあまり興味ないのですが、塩田作品独特の軽妙さがあふれていて、あっという間に読破しました。
大阪の人情あふれる商店街を舞台にしているだけに、吉本新喜劇でも見ているような軽妙さで、笑わせられたと思えばホロッとさせりたりというのは塩田さんの真骨頂。 帯にも書かれている作品中の会話。 「あんた誰やねん?」 「ビル・ゲイツの遠縁のもんです。」 「えらい距離ありそうやな。」 これだけで作品の軽妙さ、大阪人のノリがうかがえ、併せて随所に組み込まれたボクシングシーンの迫力が半端ないことが印象的でした。 |
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大人の恋愛小説という触れ込みにまさしくピッタリ、荒野さんならではの奥ゆかしい心の動きが感じ取れる。九州の離島に赴任してきた少々変わった教師・石和。彼になぜか心をとらわれる主人公・セイ。ストレートに何かを仕掛けるわけでなく、遠目で観察しているか、近づいてもそっけない態度をとるか。
現実的にはこの辺がリアルなんでしょうね。 特に何が起こるわけでない離島の日常にちょっとした恋愛劇があった、というホンのひと幕。殺伐としたミステリーの合間にちょうどいい息抜きになりました。 |
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