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本好き! さんのレビュー一覧

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レビュー数336

全336件 121~140 7/17ページ

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No.216:

本性

本性

黒木渚

No.216:
(8pt)

本性の感想

「超不自然主義」で背中が寒くなり(18禁?)、
「東京回遊」で、胸をジーンとうたれ、
「ぱんぱかぱ〜んとぴーひゃらら」で頭がクラクラ(再び18禁?)。
対物性愛の異常を描く「超不自然主義」は、限定盤CDシングル「解放区への旅」に付録されていた短編小説「やとわれ地蔵」の続編かな。
「ぱんぱかぱ〜ん…」は主人公の男女の状況がやりきれなく、救いようのない姿にタイトル「本性」の意味を知らされる。
読み終わってみると、「東京回遊」はまだ救われるストーリーになっている。一服の清涼剤か。
改めて、黒木さんの曲と併せて読むと彼女の独特の世界に浸れる一冊。他にあるようでない黒さ。余談ですが、ブックカバーに真っ黒なのをつけて読むと、この「黒い」世界にどっぷりとつかれます。
本性
黒木渚本性 についてのレビュー
No.215: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

下山事件 暗殺者たちの夏の感想

限りなく事実に近いフィクション、「下山事件 最後の証言」と併せて読めば、昭和史最大の未解決事件の真相がわかるかも知れない。同時に戦後史の闇の部分が垣間見える。でも最も感じたことは、数多い未解決事件、この作品と同じようなことがウラで蠢いているのではと勘ぐらされてしまったのも事実。
600頁以上ある分厚い文庫本だが、あっと言う間の一気読みだった。
下山事件 暗殺者たちの夏 (祥伝社文庫)
柴田哲孝下山事件 暗殺者たちの夏 についてのレビュー
No.214:
(8pt)

恋愛禁止の感想

禁止シリーズの中では普通のミステリに近いような、これまでのシリーズと比べると「らしさ」が感じられなかった。
でも独特の嫌悪感は健在、歪んだ愛情、追い詰められていく焦燥感はしっかりと残っている。シリーズが続くのであれば、またこれまでのリアル感をぜひ。
恋愛禁止 (角川ホラー文庫)
長江俊和恋愛禁止 についてのレビュー
No.213:
(9pt)

監督の問題の感想

万年最下位球団を引き受けることになった新米監督の奮闘ぶりがコミカルに感動的に描かれた、野球好きにもってこいの作品。監督と曲者のコーチ陣、選手との葛藤が、実際もこうなんだろうなぁと思わせてくれながら、強豪チームに立ち向かうチームの奮闘が、笑いとともに伝わってくる。私も野球好きなので、現場の泣き笑いがよくわかる。
好きな場面のひとつとして、監督が電話で奥さんと話したチームを率いていくヒントを得るところ。各章に用意されているが、ちょっとしたポイント。
でも第5章の美人広報のエピソードはなくてもよかったかなぁと思った。
野球好き、特に弱い球団のファンなら最後はウルッときますねよ。
監督の問題 (講談社文庫)
本城雅人監督の問題 についてのレビュー
No.212:
(8pt)

呼吸する町の感想

某乳酸菌飲料の女性配達員をモデルにしたどこかほのぼのする連作短編集。いつもニコニコと元気な彼女たちもそれぞれに事情を抱えており、それが描かれた作品ですが、そんな彼女たちの息遣いが聴こえてきそうな「呼吸する町」というタイトルは実に秀逸。
特に最後の章「リセット」はミステリ色も濃いが、私自身も経験したエピソードもあり、心に響いてきてジ〜ンとくるお話でした。
うちの職場にも彼女たちがやってきていますが、これまで見向きもしなかったので、これを機に売り上げに少し貢献してあげようかな、とも思えるようになる作品です。
呼吸する町
黒木渚呼吸する町 についてのレビュー
No.211:
(8pt)

罪と祈りの感想

久しぶりの貫井徳郎。罪を犯すとはどういうことか、貫井さんのわかりやすい筆致で淡々と進んでいく。わかりやすいのはいいのだが、貫井作品特有のユーモラスさ(私はそういうイメージをもっている)は影を潜め、重苦しさだけが全体を覆っていて締め付けられる思い。また意外さもないので読後感はイマイチ。確かに巧妙なタッチで貫井ワールドからは逸脱してはいないけれど……要は誘拐ミステリの要素が大半を湿るが、それ自体は普通の誘拐モノ。昭和天皇の大喪の礼とリンクさせたところは社会派ミステリ好きにとってはポイント高いか。
次回作ではもう少し明るく笑いの漏れてくるような、ホッとするのをお願いします。
罪と祈り (実業之日本社文庫)
貫井徳郎罪と祈り についてのレビュー
No.210:
(9pt)

壁の鹿の感想

ミュージシャンであり小説家である黒木さんの処女小説、当初はCDアルバムの付録となっていた連作短篇。しかし、あなどるなかれ、その完成度はハンパない!
鹿の剥製と話ができる主人公たち。それだけ聞くとファンタジーそのものだが、荒唐無稽というなかれ。初めはファンタジーとして読み進めていくが、終盤からミステリー、ホラー色が濃くなり、人生を見つめ直していくストーリー展開。そのポイントポイントで話ができる鹿の剥製が重要な位置を占める。
初めての小説でこれだけの作品が書ける著者。彼女が生み出す音楽とともに小説も大いに期待できる。
壁の鹿 (講談社文庫)
黒木渚壁の鹿 についてのレビュー
No.209:
(7pt)

名残の花の感想

天保の改革ののち、歌舞音曲などを厳しく取り締まり市民を苦しめ「妖怪」とまで呼ばれた鳥居耀蔵。幽閉を終えて帰って来た江戸は東京と変わっていた… 
一新を経て世の中の変化に戸惑っていたのは鳥居のみならず、彼を取り巻く能役者も同じ。彼らの境遇がよく描かれており、当時を忍ばせる時代背景もよくわかる。
できれば、鳥居耀蔵が幽閉に至った取り締まりぶりが詳細に描いてあるとさらにその時代の混乱がわかったかも。
鳥居耀蔵を取り巻く能役者たちの奮闘ぶりはよかったが、耀蔵の「妖怪」ぶりに期待していたので、そのへんは物足りなさを感じた。
名残の花 (新潮文庫)
澤田瞳子名残の花 についてのレビュー
No.208:
(10pt)

下山事件 最後の証言の感想

昭和史に残る最大のナゾ多き事件。その事件に関わっていたかも知れない人物の孫にあたる著者による渾身のドキュメンタリー、語られていることはほぼ真実に近いのでしょう。これを読めば下山総裁は自殺だなんて到底思えない。それで一応片付けられているのは戦後の昭和を動かしていた政府の闇がありありと顔を見せているのです。昭和史の、特に戦後史を学ぶに実に有益なノンフィクション。
下山事件完全版―最後の証言 (祥伝社文庫 し 8-3)
柴田哲孝下山事件 最後の証言 についてのレビュー
No.207:
(8pt)

金田一耕助に捧ぐ九つの狂想曲の感想

私にミステリの面白さを教えてくれた横溝正史、彼が生み出した名探偵・金田一耕助。日本を代表する名探偵をめぐる9人の作家によるアンソロジー。それぞれに特徴があって面白かったが、飄々としていてユーモラスなキャラクターからか、思わずクスッと笑ってしまう話が金田一のキャラと合っているようで、特に男性作家の作品が面白かった。近田一や金・田・一トリオも変化球で良かったけど、トリを飾る赤川さんのはさすが。
ちなみに私の好きな横溝作品は、ミステリにめざめるきっかけとなった「犬神家の一族」。(メジャーすぎてスミマセン!)
金田一耕助に捧ぐ九つの狂想曲 (角川文庫)
赤川次郎金田一耕助に捧ぐ九つの狂想曲 についてのレビュー
No.206:
(9pt)

檸檬の棘の感想

孤高のミュージシャン、そして小説家。
音楽好きで本好きな私にとって、これ以上ないものを提供してくれる黒木さんの作品をまずは最新作を読んでみた。
「父」という存在がこれほどまでに主人公・栞に影響を与えていたのか。父を亡くしてそれほど経っていない私にも父とは?家族とは?と考えさせてくれる問題作です。冒頭のエピソードが結構エグく迫ってくるし、ヤなやつが次々出てくるので、全編こんな感じ?と思ったが以外に軽く進むし、途中、黒木さんの曲の歌詞も出てきて思わずニヤリとしたりして読みやすかった。次は作家デビュー作を読んでみよう。
檸檬の棘 (講談社文庫)
黒木渚檸檬の棘 についてのレビュー
No.205:
(9pt)

鴨川食堂まんぷくの感想

毎度おなじみのストーリーながら、食堂を訪れる依頼客のエピソードと、こいしの京女ぽさ、流の食に対する取り組み方はいつもほっこりさせられる。「たらこスパゲティ」の元アイドルのエピソードでは、グループにいるときはチヤホヤされて有頂天になっていても、いざ年をとって人気が下降線になってみると何も取り柄がなくなってしまった哀れな姿をまざまざと感じてしまった。現実にもほら…
「カツ弁」、「かやく御飯」の章も感慨深く、これまでの5巻以上に「家族」をテーマに胸を打つエピソードが多かったように思う。
さて、「まんぷく」となったからにはもう終わり?それともまだ続くのかな?だとしたらなんという副題が?
鴨川食堂まんぷく (小学館文庫)
柏井壽鴨川食堂まんぷく についてのレビュー
No.204:
(9pt)

ノワールをまとう女の感想

女性主人公はお手の物(?)の著者ならでは、西澤奈美がかっこいい。ステレオタイプという意見もあるが、ミステリに登場する女性はこうでなきゃ、という感想を持った。AIやフェイクニュースなど最近のトレンドをもりこんだのは賞を意識した面もあろうが、さすがうまい作家だと思った。乱歩賞も令和になり様変わりしてきたか。
欲を言えば、もっと大掛かりな捕物帳でもあれば読み応えも増したかもしれない。次回作に注目。
ノワールをまとう女 (講談社文庫)
神護かずみノワールをまとう女 についてのレビュー
No.203:
(9pt)

一八二六番目の鏡像の感想

小説現代特別編集2019年10月号「乱歩賞特集」掲載の短編。
タイトルから「鏡地獄」を連想したが、全く異なる内容。鏡がベースにはなっているが、戦争末期の空襲や工員として駆り出される女生徒など、戦時文学としてもグッとくるストーリーになっている。
でもやはり、乱歩へのオマージュということであれば、著者なりに「鏡地獄」からこの作品に昇華したんでしょう、収録作品の中では(乱歩を抜きにしても)読み応えあり、読後感のよい作品でした。
斉藤詠一一八二六番目の鏡像 についてのレビュー
No.202:
(8pt)

九三式の感想

小説現代特別編集2019年10月号「乱歩賞特集」収録。
収録作品の中では最も乱歩からは離れた印象が残った。
冒頭に出てくる帝銀事件とストーリー全体とどう関係してくるのか?読み進めるうち、以外なところでつながってきたが…
「QJKJQ」や「Ank」に見られるような著者独特の世界観は他には見られないものであると改めてかんじた。
佐藤究九三式 についてのレビュー
No.201:
(8pt)

パノラマ・マシンの感想

小説現代特別編集2019年10月号「乱歩賞特集」収録の短編。
町中で拾った不思議な機械が繰り広げる不思議な世界。
SFミステリというか、アニメチックな作品。妖しい場面は乱歩らしさも感じられた。私自身、この機械を手に入れたら奈落の底に落ちて行くんだろうなぁ……
呉勝浩パノラマ・マシン についてのレビュー
No.200:
(8pt)

館の中の散歩者の感想

小説現代特別編集2019年10月号「乱歩賞特集」収録。
もろ「屋根裏の散歩者」。小説誌の企画で描かれた乱歩へのオマージュといったところだが、いい意味でも悪い意味でも、乱歩の世界をどっぷり表現している。個人的には嫌いではないし、この妖しい乱歩ワールドを著者なりに表したらこうなったということなんでしょう。
下村敦史館の中の散歩者 についてのレビュー
No.199:
(8pt)

プシホロギーチェスキー・テストの感想

小説現代特別編集2019年10月号「乱歩賞特集」掲載の短編。
タイトルは「心理試験」の意。著者ならではのロシアを舞台に乱歩の世界を融合したSFチックな作品となっている。
ロシアと乱歩がどこでどうつながるか?と考えながら読んだが、なるほどそう来るか、と納得。逆にいうとそうせざるをえなかった、ともいえる。

No.198:

澤田瞳子

No.198:
(9pt)

蠅の感想

講談社「戦国の教科書」収録の短編。著者初の戦国ものであるが、宗教勢力の統制を進める豊臣秀吉より方広寺大仏殿の造営を任されていた高野山の僧・木食応其を主人公とする当時の宗教思想をテーマに描かれている。古代史ものが多いイメージがある著者だが、それ以外の時代であってもその時代を生きた人たちの生き様はしっかりと伝わってくる。地震の被害から喫緊の対応を迫られる人たちの描き方がインパクトを与える。収録作品の中でも最も心動かされる一品。
澤田瞳子 についてのレビュー
No.197:
(9pt)

おまえの罪を自白しろの感想

誘拐がテーマとあって、全編にわたって漂う緊迫感は圧倒的。
真保さんの名作「誘拐の果実」を凌ぐほど。
孫娘を誘拐されて、あたふたする政治家の様子は、政治家嫌いにとっては溜飲が下がる思いさえした。それは事件の真相が判明しても変わらなかった…かな?
改めて真保作品の圧倒的筆致に感動。
おまえの罪を自白しろ (文春文庫)
真保裕一おまえの罪を自白しろ についてのレビュー