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マリオネットK さんのレビュー一覧
マリオネットKさんのページへレビュー数347件
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長らく、世界初のクローズドサークル作品はクリスティの『オリエント急行殺人事件』だと思っていたのですが、クイーンの『シャム双生児の謎』の発表の方がその一年前であることを知りました。
さらに調べたところ、やはりクリスティのこの作品が、それよりさらに前の”世界初のクローズドサークル作品”であるとの情報を得て、クローズドサークルファンとしてはぜひ読まねばと購読したのですが…… まず第一の感想として「クローズドサークルじゃないじゃん!」でした。 雪に閉ざされた小さな山奥の村"シタフォード”を舞台にした物語ということで、なるほどそこで殺人が起こるのかと思いきや、実際の殺人はそのシタフォードのふもとにある町で起こります。 そこは全く閉ざされた空間ではないので普通に警官が来て捜査はするし、容疑者は厳密に言えば無数にいるし、裁判まで作中で起こります。 その殺人に対する容疑をかけられた男の婚約者の女性が本作の探偵役となり、恋人の無実を晴らすためにシタフォードに情報収集に向かうという展開になるので 「なるほど、ここで第二の殺人が起きて、さらに吹雪か何かでシタフォードが完全に外部と隔離されて、今度こそクローズドサークルになるんだな!」 などと期待したのですが、中々次の殺人も起きなければ、村から出られなくなるような事態も起きてくれません。 もう真犯人は誰なのかという本来の謎やストーリーそっちのけで「クローズドサークルになれ……クローズドサークルになれ……」と祈りながら読み続けていたのですが、結局最後までクローズドサークルにはなってくれませんでした。 というわけで勝手に”世界初のクローズドサークル作品”と期待した私が悪く、作品に罪はないのですが、ガッカリさせられた気分になりました。 ただ、この作品は読者目線での容疑者となる人たちが閉ざされた空間にいるために、その外で起きた殺人に一見不可能状況が起きているという、”逆”クローズドサークルとでも言いますか、クローズドサークルというジャンルが確立する前の作品でありながら、ある意味クローズドサークルの変則系とも言える形と言えるかもしれません。 ”開かれた空間”と”閉じた空間”二つの舞台で進行する物語と言う形式は、ひょっとしたら『十角館の殺人』や『殺しの双曲線』などといった日本のクローズドサークル作品の有名作に『そして誰もいなくなった』と同じぐらい影響を与えているかもしれないなどと思いました。 なので考えようによってはこれもクローズドサークルの亜種の一つとみなしてクローズドサークルタグを付けようか……とも思いましたが、やはり私のように騙された気分になり、作品を先入観なく見れなくなる人がいるといけないのでつけないことにします。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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一体いくつあるのかもわからない『そして誰もいなくなった』をインスパイア、モチーフとしたミステリの一つですが、その中でも個人的にはかなりのお気に入りです。
私の場合、元ネタとなる作品が好きすぎるので、もうその時点である程度面白く読めるのは必然なのですが、これは決して他人のふんどしで相撲を取った作品ではなく、『そして誰もいなくなった』を題材としながらまったく独自の良作に仕上がっていると思います。 まずこの作品は所謂クローズド・サークルではなく、舞台は女子高で、そこの学園祭で上演される『そして誰もいなくなった』の演劇の最中、実際に殺人が発生し、当然劇はその場で中止されるのですが、その後も『そして誰もいなくなった』のストーリーをなぞらえて、配役どおりに一人、また一人と死んでいくというストーリーです。 マザーグースの歌詞による連続見立て殺人である『そして誰もいなくなった』の見立て殺人という、いわば”見立て殺人の見立て殺人”ということになります。 ページ数的にはそこまで長い作品ではないですが、元ネタ同様次から次へと人が死に、ジェットコースター的な展開の連続で読者を飽きさせない構成です。 (この作品に限らず『そして誰もいなくなった』を題材としている作品は流石そのへんの本家の魅力を理解しているものが多いと思います) まさ終盤にさしかかるとさらに驚きの展開の連続で、人によっては「つめこみすぎ」「ひねりすぎ」「強引すぎ」との感想を抱くかもしれませんが、個人的にはとても楽しめ、また完成度も高いシナリオだったと感じます。 流石にこの作品は『そして誰もいなくなった』を事前に読んでいることは前提に書かれているのかな、と思いましたが犯人や真相部分はちゃんとネタバレしないように伏せてるんですね。 それでも絶対に事前に元ネタ作品を読んでいた方が面白いと思いますが、ふと、この作品を読んでから本家の方を読んだらどんな感想になるのかな……ともう絶対に叶わない好奇心をふと覚えました。 あと仮に殺人が起こらず、無事に『そして誰もいなくなった』の劇が進行していたらどんな演出となっていたんだろう、とそんな部分まで興味がわいた作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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『御手洗潔シリーズ』の長編作第5弾。
前作『暗闇坂の人喰いの木』も事件が戦前から戦後の時代、さらに舞台が日本とスコットランドを股にかける壮大な作品でしたが、今回は前作をさらに時間的にも空間的にも、そしてドラマ的にも全てにおいてスケールアップさせたような壮大な物語です。 まず作品構成からしてかなり独特で、序盤は古代エジプトを舞台にナイル川に住んでいた少女と若きファラオの物語と、1914年・大西洋に沈む運命のタイタニック号の船上での様子が交互に進行します。 まず冒頭200ページ読んだ時点では誰も『御手洗潔シリーズ』とわからない。それどころかミステリーとさえわからないような作りです。 この時点で人によっては「御手洗潔シリーズが読みたいんだよ!」「本格推理小説が読みたいんだよ!」と拒否反応が出るかもしれませんが、私としてはどちらも独立して魅力的なストーリーであったため楽しむことができ、またこの2つの物語と現代の御手洗潔がどう交わっていくのか序盤から作品に引き込まれました。 200ページを越えた所でようやく、物語は20世紀のアメリカに時代と場所が移り、前作に引き続き、シリーズのヒロイン役となるレオナが登場します。 このレオナも割りと好き嫌いが別れそうなキャラクターかなと思いますが、個人的には好きです。 強気でプライドが高く、ともすれば自己中心的で高慢な女性に映るのですが、実は結構Mっぽい所が好みですね(笑) 今回の事件の本当の主要舞台となるのはアメリカ南部のとある岬に建てられた、エジプトの最も有名で巨大な「クフ王のピラミッド」を上半分を透明にした上で実寸大で再現して作ったという、とんでもない建物。 (本当にアメリカ国内にそんなものが建てられたら、本物のピラミッドに劣らぬ観光名所になっちゃいそうですが) 宗谷岬の「流氷館」も個人が建てたものとしては極めてユニークで凄い建物でしたが、流石アメリカはスケールが違うと感じてしまいます(笑) そして、そこで奇怪な殺人事件が発生し、地元警察はもちろんアメリカの探偵も皆お手上げの状態となった所で、事件に巻き込まれたレオナが助けを求める形でようやく御手洗が登場するのは、400ページを越えてから。しかも鬱病での登場です。 しかしいざ動き出せば相変わらずのスーパーマンっぷりです。 事件現場のアメリカに向かうのはもちろん、その前に「本物」のピラミッドを見るためにエジプトにも向かい、前作に続き御手洗一行の旅行記も楽しむことが出来ます。 極めて壮大で豪華な作品なのですが、悪い部分も多々あり、人によっては(特にあくまで本格推理小説として見れば)駄作と断じられてやむなしと感じる作品ですが、個人的には単純にエンターテイメントとして見るなら最高に面白かったです。 (その点も前作をさらにパワーアップさせたような作品という感想です) ただその面白さも「ピラミッド」「タイタニック」そして「御手洗潔シリーズ」という元々あった魅力的な題材のブランドイメージのおかげという側面もあるかもしれませんね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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表紙やタイトルから山岳小説でもあるミステリなのかと思いましたが、内容の8割ぐらいがとにかく警察内でひたすらゴタゴタグダグダするだけの話です。
その警察内のやりとりが面白いという人にとっては面白い作品なのでしょうが、自分には全く合いませんでした。 とにかく話が進まない。そもそも話の先が全く気にならない。 非常に退屈で何度も読むのを止めようと思いましたが、そのうち面白くなるかもしれないという期待と意地でなんとか四日ぐらいかけて読みました。 しかし結局いつまで経っても警察がグダグダする話が延々と続いて、ラスト100ページぐらいでようやく話が動いたと思ったら唐突に終わってしまい、正直山なしオチなしだったという感想です。 特に謎解き要素やどんでん返しもなく、犯罪が絡んでいるというだけで「そもそもこれミステリーか?」と思いました。 最初の100ページを読んで面白いと感じない人にとってはいつまで経っても面白くならない話だと思うので、もうそこで読むのをやめることをおすすめします。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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廃村の跡と儀式に使用する拝殿だけが存在する孤島”鳥杯島”
そこは現在は特別な神事の際以外は無人島となっているが、人の代わりに烏のように真っ黒な巨大な鷲「影禿鷲」の住みかとなっていた…… そんな島で十八年前行われた神事”鳥人の儀”によって当時の巫女と島にいた五人の人間が消失するという怪異が起こった。 それは大鳥様と崇められる神が起こした奇跡なのか、はたまた鳥女と恐れられる化け物の所業か。 ……そして十八年後の今”鳥人の儀”が再び行われることとなり、主人公の言耶は五人の同行者とともに儀式の立会いのために島へと渡る。 それは奇しくも十八年前島にいた男女の人数と全く同じであった。 そうして行われた儀式の結果、またしても巫女の姿は島から消失し、さらにそれにとどまらず十八年前の怪異を再現するかのように、島を訪れた人間が一人、また一人と消えていく…… オカルトと本格ミステリが融合する『刀城言耶シリーズ』シリーズの第二弾はこのシリーズでは珍しく、孤島という閉ざされた空間で次々人が消えていくという「クローズドサークル作品」です。 またこのシリーズは現在過去の複数の時系列、複数の人物の視点で物語が進むことが多く、それが魅力でもあり話をややこしくしているところでもあるのですが、この作品は珍しく、探偵役の言耶の視点のみで物語が進行していきます。 そのためか他の同シリーズに比べると少し短めの作品にはなっていますが、トリックの壮大さは同シリーズでも随一ではないでしょうか。 本格ミステリ オカルトテイスト 特殊な舞台設定 クローズドサークル 驚愕のトリック 自分にとっては好みのシチュエーションの数え役満のような作品だったため高得点をつけさせて貰いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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誰でもおおまかにどんな話かは知っている超有名作の原作を今更読んでみました(正確には小学生時代にも児童書版は読みましたが)
まず中編と言うべき意外な短さなのに驚き。 それゆえに逆にいろいろ膨らます余地が多く、さまざまな媒体で独自解釈などされたリメイクが数多く存在するのかもしれないと思う作品です。 もう現代では「ジキルとハイド」という言葉が同一人物の二面性の代名詞になってしまっているわけですが、当時0から読んだ読者には「ハイド氏は何者なのか」という謎がまず話の主題となる。ある意味「一人二役トリック」のミステリー作品でもありますね(発表年を考えると当時はまずこれ自体が斬新なアイディアだったのでしょうね) ハイド氏の正体が判明してからはジキル博士の苦悩が描かれますが、元々自分から悪事への快感を目的にハイドとなっていた博士は、ある意味「自業自得」なのですが、それでも彼に共感と同情が沸いてしまうのは、人間誰しも悪の快楽に身を任せたいという欲求があることを、それこそなまじ普段は善人な人間であるほど理解できてしまうからでしょうね。 仮に元々悪事に全く抵抗のないハイドのような人間がこの話を読んでも何も感じないのではないかと思います。 |
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説明不要の超有名作の原作小説を今更読みました。
1989年発表の作品ということで、ミステリ史全体から見ればまだそこまで古い作品ということにはならないのかもしれませんが、まぁもう「古典」の領域ですね。 危険極まりない天才犯罪者に、獄中に逢いに行き犯罪捜査の助言を請うという現在では定番となった一つのパターンの草分け的存在として偉大な作品だと思いますが、今改めて読んで見ると、すでにあらすじを大体知っていたこともありますが、特に大きなどんでん返しがあるわけでもなく、正直冗長さが気になって退屈でした。 映画版をすでに見ている人がわざわざ読む必要はないかなという感想です。 |
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主人公は表向きは生徒に大人気で、同僚からも信望の厚い、有能な高校教師。
しかし彼の裏の顔は、自分にとって邪魔な者は躊躇なく、殺害して排除してしまうというサイコパスであった。 そんなこれ以上悪い奴はいないだろうというぐらいの「悪」が主人公なのですが 学校の問題をテキパキと解決する彼の手腕や、その傍ら読者目線でもうっとうしい存在を次々排除していく様には惹かれるとともに、共感が沸いてしまいます。 主人公「ハスミン」はまさに人間誰しもが多かれ少なかれ持っている黒い部分を代わりに開放してくれるようなダークヒーロー的存在と言えると思います。 そんなハスミンに感情移入しながら読める、前半は楽しかったのですが、後半からはまさにハスミンともどもいろいろ作品にボロが出たという感想です。 不用意な殺人の隠蔽のためにいきなりクラス全員皆殺しにしよう、という発想になるのは、展開としてはぶっ飛んでいて面白いですが、あまりの杜撰さにつっこまずにはいられません。 これまでの人生、常に入念な計画の元に事を運んできて、小学生の頃から決して尻尾を掴ませずに人を殺してきたハスミンはどこへ行っちゃったんですか。 何より、それまでは紛れもない悪であることは変わりないけれど、人間誰もが抱えている「邪魔な人間を殺せてしまえばいいのに」という葛藤を平然とやってのけるハスミンにシビれてあこがれていたのに「生徒を皆殺しにしよう!」と突然発想が飛躍されると、作中の言葉で言えばサイコパスがただのサイコになってしまいもはや共感も好感も沸かなかったです。 あと、続編を意識しているからでしょうか、放置されてるキャラとか伏線が多すぎだと思います。 非常にたくさんのキャラが出てくるんですが、良くも悪くもいろんな意味でハスミンが強すぎて一人勝ち状態でしたね。 以下ネタバレというか個々のキャラについての感想です ▼以下、ネタバレ感想 |
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作者自身がベスト3に挙げ、ファンからの評価も高い作品のため期待した読んだのですが、私にはいまいち良さがわからず完全に期待はずれでした。
まず、クイーンがしばし滞在することになった架空の街「ライツヴィル」を舞台にした物語と言うことで、本の冒頭に街の地図が載っているのが、箱庭ゲーム感があって、「すごく面白そう!」と期待したのですが、結局この地図は推理にも物語にも最後まで全く関わることなく、肩透かしでした。 また『災厄の町』などとタイトルにあるからには、町全体を恐怖に包むような恐ろしい連続殺人!みたいなのを期待していたのですが、最初の事件からして中々起こらないし、その後も淡々とした展開で内容の割りに冗長に感じ、正直「いつになったら面白くなるんだ?」と思いながら読んでいました。 ほとんど法廷ミステリと言ってもいいぐらい法廷パートが長いのですが、その後の展開と結末から考えるとこの形式にした意味もよくわからなかったです。 そして何より肝心の謎解き部分が物足りないです。 事件が起こった瞬間に犯人がわかってしまい、あまりにわかりやすいのでむしろフェイクか?と深読みしてしまったぐらいですが結局そのまんまの結末でガッカリでした。 こんなの『国名シリーズ』のクイーンだったら一瞬で気づいたはずだと思うんですけどね。 今までのとにかくロジック重視だった作品から、人物描写中心の物語ということで、作者にとっての「新境地」であった作品なのでしょうが、私の求めている彼(ら)の作品ではなかったということでしょう。 若い女性とラブロマンスめいたことをしたり、時には暴力も辞さないこれまでになくハードボイルドなクイーンもなんだかしっくり来ませんでした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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発想の斬新さもさることながら、非常に全体の構成が巧みで、かつテンポの良いストーリーは読むものを退屈させない。
東野圭吾氏の才能というよりも、作家としての総合力の高さを見せ付けているような作品で、このサイトではあまり総合順位が高くないのが意外に感じます。 通常のミステリの流れでは終わらない、二転三転するストーリーと、真相でまさに気づかされるタイトルに込められた意味に唸らされました。 この作品は出来れば、話全体の長さ、続きが後どれぐらいなのかわからないような形式で読みたかったです。 (と言っても私は仮に電子などで読むにしても全体の分量がどれぐらいなのか読む前にどうしても気になっちゃうんですけどね) ▼以下、ネタバレ感想 |
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本物の殺人が起きる前にまるで予告のように「人形」が殺されていくという奇怪な連続殺人という、興味が沸かずにはいられなくなる題材。
タイトルの通り「なぜ人形が殺されるのか」というホワイダニットのテーマ。 顔のない死体、アリバイト崩し、脱出、消えた死体、○○○○り、惜しげもなく散りばめられた数々の鮮やかなトリック。 まさに本格推理小説というジャンルの魅力の全てがつまったような作品だったと思います。 また、古い作品なので、随所に時代は感じるものの、文章はとても読みやすかったです。 ミステリファンなら早い時点で読んでおくべき名作と思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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タイトルのまんま囲碁に関わる殺人事件です。
全編にわたって囲碁の薀蓄が溢れているのをはじめ、いろいろな部分で囲碁のルールを理解していないと判らないだろうという所がありました。 冒頭のルール説明の文章からして、ルールを知らない人へのフォローというよりはむしろふるい落とそうとしてんのかと思う判りにくさでした。 私は碁が打てるので(弱いけど)割りと楽しんで読めましたが『ヒカルの碁』のように囲碁を知らない人が読んでも面白いという話ではありません。 純粋にミステリとして見てもそこまで出来が良いとは思いませんが、囲碁を題材にするという独創性を評価してこの点数としました。 主人公(?)のIQ208の天才少年智久が天才でありながら言動は実年齢より幼いぐらいに見えて少し違和感でした。 天才であってもあくまで年相応の子供であるというキャラを前面に押し出したかったのかもしれませんが、あまりにも記号的な「無邪気な可愛い男の子キャラ」を押し出してる感があってちょっと苦手でしたね。 |
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孤島に避暑に向かった8人の男女。
しかし二日目の朝、一人の女性が心臓を持ちさられて惨殺された死体となって見つかり、それを口切りに一人、また一人と殺されていく…… という定番の孤島の連続殺人ものですが、それだけにとどまらず中々に個性を持った作品でした。 まず物語全体の雰囲気が、夏に島にバカンスに来ているとは思えないほど、タイトルの通り陰鬱で寒々しい印象を受けます。(それこそ殺人が起きる前の楽しく遊んでいるはずの所から)しかしどこか詩的で美しい、独特の世界が拡がっています。 また文章そのものも独特です。テーブルを「テエブル」とかコーヒーを「コオヒイ」などなぜか「ー」を使わずに表記するのにかなり違和感を覚えます。 かといって絶対に使わないわけではなくカレーは普通に「カレー」と表記していたりして作者の中でのルウルがよくわかりません。 そして女性作者ならでは……と言っていいのかわかりませんが島を訪れた表面上は和気藹々としていた8人の男女の奥に潜む三角関係や愛憎が事件に大きく関わり、恋愛要素が単なるミステリーのスパイスや動機付けにとどまらず、推理小説であると同時に恋愛小説でもある作品と感じました。 真相に関してはかなり無理がある&少しアンフェア感はありましたが、斬新ではあったと思います。 |
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『13日の金曜日』のパロディ?という感じに、斧をメインウェポンとした大男の殺人鬼がキャンプに来た男女を殺しまくるというストーリー。
セックスしている男女がその最中に襲われたり、次に殺される人間が前に殺された人間の生首を発見するとかB級ホラー映画のお約束な展開がちりばめられています。 入念な殺害描写などが「文章だから表現できるグロさ」みたいなのに挑戦している感がありましたが、単にグロいだけで怖くはないです。 綾辻氏なので、これだけでは終わらないだろうとオチのどんでん返しに期待して最後まで読みましたけど、まぁなんとなく途中で予想がついたオチで、全体的にビミョーに感じた作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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個々の話に直接の繋がりはないけれど、一貫したテーマと雰囲気を持った連作短編集という形の有名作品。
タイトルは個人的にはシリーズの総評である「花葬」の方が良かったのではないかなと思います。 いずれも「花」をテーマとして男女の情愛が絡んだ殺人(心中)事件を扱ったミステリ作品になりますが その美しい文章で紡がれる悲劇的な五編の物語は、まさに花が儚くも美しく散る様のようです。 純文学としても純ミステリとしても非常に質の高い作品だと感じました。 (純文学と呼ばれるジャンルの作品を普段から殆ど読まない私が言うのもなんですが) フーダニットよりホワイダニットに焦点が当てられた作品、というのは他人の感想でもよく目にしますが、 私はそれとは別に、「誰が犯人であるか」のフーダニットではなく、「本当に愛したのは誰だったのか」というフーダニットを全ての話に共通して感じました。 以下個別ネタバレ感想です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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戦後、政府の移民政策で、希望を抱きブラジルの大地へと渡った日本人たち。
しかしそこで待っていたのは国から聞いていた話とは全く異なる、地獄だった。 満足な耕地も住む場所も用意されないまま未開のジャングルの中に放り出されるような形となった日本人移民たちは極貧や病気に苦しみ、多くの者が命を落としていった…… それから時は流れ、二十一世紀。日本に地球の裏から3人の男たちがやってきた。 彼らの目的はかつて自分たちを、自分の父や母を、騙し見捨てた日本政府への復讐だった。 という戦後の日本のブラジル移民問題を取り扱った本作。 バリバリの本格好きで、社会派やハードボイルドはあまり好きではない私ですが、これは面白かったです。 まず第一章のブラジルでの話は、読む前から大まかな知識としては向こうに渡った人たちがとても苦労したことは聞いていたものの 詳しい実情を知らされると、そのあまりに過酷で悲惨な描写に、読んでいて辛くなる部分も多かったです。 それでも目を離せない、まさに読まされる文章とストーリーでした。 そしてこれは二章以降のストーリーのために、絶対に必要な描写であったと思います。 二章以降からは時代は一気に二十一世紀に飛び、一章の主役であった日本人移民の男の義理の息子であるケイへと主役が移ります。 見た目は日本人ながら中身は生粋のブラジル人である彼の、その豪胆さと快活さゆえに、題材こそ重いものの、決して陰惨なストーリーではなく、エンターテイメント性の高い話へと変貌したと感じました。 ジャングルで生まれ、原始人さながらの極貧の中で育ち、病気で死んだ両親が目の前で腐っていく様子を見たケイの境遇も親世代に勝るとも劣らぬ過酷さと悲惨さなのですが それでも明るく楽しそうに生きているのが、まさに一章から二章で主役が日本人からブラジル人に交代し、その民族的気質の違いを見たように感じました。 日本とブラジル、日本人とブラジル人、どちらの方が良いとは言えないと思いますが、物語の主役にして面白いのは圧倒的にブラジル人的な性格のキャラクターだと思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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『虚無への供物』『ドグラ・マグラ』と並んで国内三大奇書に数えられる今作。
読む前から予備知識として凄く読みにくい作品ということは知っておりましたが、実際前評判に違わぬ読みにくさでした。 とにかく全編にわたって、話の本筋とは関係ない無駄な衒学趣味のオンパレード。 それも最初からそれについて知っている読者だけを対象として、それ以外の読み手に興味を抱かせたり、理解を促すような意図は全く見られず、単に知識を羅列してるだけにしか見えません。 作者の自己満足に延々付き合わされるのが苦痛なのに加え、話の本筋そのものがよくわからなくなります。 約500ページに及ぶ長編ですが、この無駄な脱線をしてなきゃ100ページぐらいで終わるんじゃないか?と感じてしまいました。 この作者と趣味が合致していて、作中に登場するそれらの内容の2~3割でも判れば楽しめるのかもしれませんが、90%以上の読者にとってはただの読みにくくてつまらない作品だと思います。 はっきり言って読み手のことを全く考えず、小説の体を崩壊させている駄作という感想ですね。 純粋にミステリ部分だけ読んでも、『MMR』みたいな謎理論で全く納得できない暗号解読や、無駄な駆け引きを散々した挙句、次々殺人を許している探偵などツッコミ所だらけです。 先見性や独創性という面で見ても、他の奇書2冊と比べれば、正直これは単にヴァン・ダインの真似をして、悪い部分でそれを超えてしまった作品にしか思えません。 作者の知識量にだけは敬服する、みたいな意見が多いですが、個人的にはそれすら疑問です。 知識というものは適切な場所で活かすことで意味があるのであって、全然関係ない場所でただ「自分はこんなこと知っている」とひけらかすことに、本人の自己満足以外の何の意味があるんですかね? アイドルに詳しい人間が、他人には興味のないオタクトークを延々繰り拡げるのと何が違うんでしょう(アイドルトークもわかる人にだけは面白いという点も同じこと) 本当に知識のある人、頭のいい人なら他者の知的好奇心も刺激する形で知識を活用、披露して欲しいですね。 |
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タイトルを見た時点で「こんなの絶対面白いやん!」と期待してしまったのですが、迷路のような屋敷見取り図などが挿入されるわけでもなく、
そもそも屋敷そのものがそこまで迷路、迷路していたわけではないので、少し拍子抜けでした(中村青司の建てた「迷路館」ほどとは最初から期待していませんでしたけど) 迷路荘というよりは「隠し通路荘」とでも呼んだ方がイメージどおりですね。 屋敷に隠された抜け穴から通じる、天然洞窟を改造したような地下通路で展開される謎と冒険は『八つ墓村』を髣髴とさせます。 前半部分の聞き込み部分が冗長な割りには結局あんまり意味が無く、間延びしてしまっただけだな、と感じました。 全体的に凡作かなぁという感想でしたが、ラストの真相にはちょっと驚きました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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『S&Mシリーズ』の三作目。
前作の『冷たい密室と博士たち』が第一作の『すべてがFになる』に比べて、ストーリー、キャラクター、舞台、トリックの「すべてがショボくなる」で正直ガッカリさせられたのですが、今回は奇人が住まう、奇妙な館で、奇怪な殺人事件が起こるという私好みのストーリーで、天才数学者のキャラクターやそれに伴う禅問答的な会話(数学的な定義で持って話す本人的にはむしろ禅問答や哲学的なものとは対極的なつもりなのでしょうが)も面白い作品でした。 ただ他の方のレビューにもあるとおり、肝心のトリックがミステリを多く読んでいる人ならすぐにわかってしまうようなもので、私も館の見取り図と冒頭のやり取りを見た時点で殺人すら起こる前にすぐ見当がついてしまったため、さも超難問のように煽られているのに滑稽さがぬぐえませんでした。 まぁ今回は犀川や萌絵より自分の方が頭が良かったぞ!と優越感に浸れたのでよしとしましょう。 (ちなみに作中に出てくる数学の問題は一つも解けませんでした) ▼以下、ネタバレ感想 |
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