■スポンサードリンク
マリオネットK さんのレビュー一覧
マリオネットKさんのページへレビュー数347件
閲覧する時は、『このレビューを表示する場合はここをクリック』を押してください。
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
とある美女の殺人事件について、フリーライターが友人の女性の口コミを口切りに、事件と時を同じくして行方をくらませている容疑者最有力候補の女性について独自に取材調査を行い、自身のSNSや雑誌記事に取材情報を多分な誇張・歪曲表現を用いて発信していく様子が描かれる、リアルかつ異色なミステリです。
多くの人の視点で事件が語られますが、視点ごとに事件の印象や形がコロコロと変ってしまうという構成や 人間の醜さ、いやらしさが存分に出ているけれど、それが不快感よりは話を面白くする絶妙のスパイス(むしろメインディッシュ?)になっている作風など この作品も彼女の作品「らしさ」が存分に出ていました。 文章だけでなく、SNSのやりとりやゴシップ雑誌の記事が資料として組み込まれているという手法が斬新かつ妙なリアリティを産んでいて面白かったですが、SMSや記事の部分は全部巻末にまとめられて、章の終わりごとに参照ページが書かれると言う形式だったため、どういう順番に読めばいいのかちょっと混乱しました。 実際の所私のように、章の終わりごとにその都度資料に飛んで読んでもいいし、最後にまとめて読むのでもいいし、極論読まなくても大丈夫っぽいですが、章の終わりごとに挿入するのではダメだったんでしょうかね? 真相そのものは面白かったですがラストはやや尻すぼみな印象でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
『西遊記』『三国志』『水滸伝』とならんで中国の四大奇書に数えられる、『金瓶梅』の世界を舞台にした異色の本格ミステリ。
『金瓶梅』自体が『水滸伝』のスピンオフ作品という位置づけなので、ある意味この作品はスピンオフのスピンオフの位置づけでしょうか? 明の時代の中国。豪商にして大好色漢である西門慶は正妻に加え七人の妾、さらには侍女なども含め多くの美女を邸内に抱え、乱れに乱れた性生活を送る……という 登場人物含めここまでの設定、あらすじは原作の『金瓶梅』を完全になぞるものになりますが、そこに女の愛憎・嫉妬・情欲が絡み合った数多くの傷害・殺人事件が発生することで、連作短編形式の本格ミステリ小説の体を成していきます。 原作の『金瓶梅』がそうであるように、設定上必然的に性的な場面が非常に多く、官能小説的な面も多分に含まれるため、人によってはそこをご注意(ご期待)ください。 これ一冊で”歴史小説”にして”推理小説”にして”官能小説”という極めて異色、まさに奇書のさらにその先を行った奇書という感想ですが、作中の各章で起こる事件はアリバイ崩しやホワイダニットなどが主眼となった想像以上に「まっとうに」本格ミステリしている作品でした。 最初は人物の名前が当然のことながら皆中国名なことをはじめ、読みにくいという雰囲気だったのですが、すぐに慣れ、むしろ50年以上前に発表された小説とは思えない読みやすさでした。 『忍法帳シリーズ』もそうですが、本当に山田風太郎御大の作品は、まるで現代の作者がタイムスリップしているのではないかと思うぐらい今読んでも文章・感性ともに古臭さを感じません。 それどころか現在からさらに50年後の人間が読んだとして、今をときめく作家の作品はその時、古臭いと言われても、彼の作品はそう言われないのではないかと思ってしまいます。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
『煙か土か食い物』のスピンオフ的作品。
上記作で探偵役として登場したものの、突然退場してしまったルンババの中学生時代が描かれています。 この作品も『煙か土~』で見られた個性的な文章と世界観が拡がっている、ミステリというよりは「もはやそういう独自のジャンル」と言うべき作品ですが、個人的には一部作風についていけない所もあったものの、見るべき所も多かった『煙か土~』に対してこっちは正直ただのよくわからん作品という感想です。 あっちの作品でよくわからないまま退場したルンババの話とかぶっちゃけ特に興味がわかず、それだったら、奈津川兄弟の誰かのスピンオフの方がよっぽど読みたかったです。 結局私にとっては『煙か土~』は、アウトサイダーでありながらもハイスペックで、優秀な医者で女にはモテる上に喧嘩をすればほぼ負け知らずな奈津川四郎と、そんな彼と同等以上のスペックを持つ彼の兄たちの暴れっぷりが痛快で面白かったんですが、今作の主人公は普通の中学生たちなので、暴れるにしてもたかがしれていて、むしろ周囲に振り回されてる感があるため、前作にあった魅力が感じられなかったのが個人的に合わなかった理由かなと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
タイトルや表紙から、勝手に硬そうな小説という先入観を持ってしまった作品ですが
「死んだ人間がゾンビになって生き返る世界で、主人公すら途中で死に、ゾンビ状態で殺人事件の謎を追う」 という、独創的かつ非現実的な内容のSFミステリであり、ユーモア要素も強めな作品で、少し長いですが読みやすかったです。 しかし設定こそ荒唐無稽ではありますが、その特殊な世界観を十二分に活かし、また説得力のある形で話が組み立てられ、単に面白い発想だっただけでは終わらない、純粋に本格ミステリとして、非常に完成度の高い作品という感想です。 そうなったのもひとえに、死者が蘇るという現実の常識ではありえないSF設定を用いながらも、「人の生と死」という、極めて現実的なテーマに対し作者が真正面から向き合い、多くの参考文献を用いて入念に物語を練った結果だと思います。 舞台はアメリカであるため、土葬を始めとして日本とは死者の埋葬方法や宗教観などさまざまな違いがあるという点が話の大きなポイントとなっており、作中で語られるその面だけ見ても興味深く、勉強になったと感じる作品でした。 よくある「無駄な」衒学趣味ではなく、物語上、必然性がある知識は純粋に知的好奇心が満たされる上に、物語の深みも増すと感じますね。 キャラクターや展開はコメディチックな部分が多いものの、話のテーマと本筋自体は極めて真面目なストーリーであり、特にラストには少しホロリとさせられました。 可能であれば、欧米のミステリファンにも読んでもらって感想が聞きたいと感じる一冊です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
乱歩御大の長編の中でも評価が高い一作。
この小説に登場する犯罪者『蜘蛛男』は ・大胆不敵にも犯罪予告を出し、警察や探偵に挑戦的な態度を取る ・犯罪行為に自身のポリシーや芸術性を求めている ・変装の名人であり、神出鬼没な存在である ・財力にも富んでおり、アジトを持ち手下なども従えている などとあの怪人二十面相との共通点の多い犯人です。 二十面相との最大の違いは、二十面相の目的はあくまで「盗み」であり、殺人は犯さない、血を見るのさえ極力嫌うある種紳士的でさえある犯罪者なのに対し、蜘蛛男は、自分の狙った美しい女性を猟奇的な手段で殺してみせることが目的の、残酷な殺人鬼である所です。 作品発表はこの作品が先なので、むしろ二十面相の方がこの蜘蛛男から猟奇性や変態性を取り除き、ジュブナイル小説向きに焼きなおした存在であると言えるのかもしれません。 『孤島の鬼』同様、二部構成のようなストーリーで、蜘蛛男の正体と不可能犯罪の謎を暴く本格ミステリ要素が強めの前半と さらなる大犯罪計画を企てたまま逃亡する蜘蛛男を追うサスペンス要素が強めの後半といった形の作品です。 蜘蛛男の正体は、推理小説を読みなれていない人ならば驚けるかもしれませんが、ある程度以上読んでいる人間にはバレバレです。 私も大人になってから読んだので、犯人の正体(それに伴う諸々のトリック)などは容易にわかってしまったので、『少年探偵団シリーズ』は卒業して次のステップに移行するぐらいの年齢の時に読めれば良かったな、と思う作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
スターリン体制時代のソ連を舞台とした、国家安保捜査官が主役の物語。
実在した連続児童殺人犯である「アンドレイ・チカチーロ」をモデルとした殺人鬼がソ連全土を舞台に次々と子供を殺害するのを主人公が追うストーリーとなりますが、それはあくまで物語の一面に過ぎず、主人公の本当の敵や脅威は殺人鬼よりもむしろ、彼自身が忠誠を誓ったはずの国家体制そのものというのがこの話の最大の特徴だと思います。 国民の誰もが、それこそ昨日までは取り締まる側であるはずだった安保官までもがいつあらぬ疑いをかけられ、処刑されたり強制収容所送りになってもおかしくないという、この時代のソ連の恐ろしさが存分に描かれている作品です。 すごく重そうな内容であることに加え、海外翻訳物、さらに上下巻で700ページ越え、と読みにくそうさの数え役満状態に身構えてしまいましたが、いざ読んで見ると近年の作品と言うこともあり、内容は想像以上にハードなものの、読みやすかったです。 物語のどこを切り取っても緊迫感があって非常に先が気になり、あらゆる面で悲惨・陰惨・凄惨を極めるストーリーでありながらも、とても面白く読めました。 残酷なシーンそのものが苦手な人は別として、決してドストエフスキーの作品みたいに「読みにくそう・難しそう」と身構える必要はありません。 前半部分はとにかく残酷ながらもすごく惹きつけられるストーリーで、関心させられる作品だったのですが、物語の最大の転機となる、これまで保身と出世のために”国”というよりも”体制”に対して忠誠を誓い、スターリン体制の手先となってきた主人公が、自分自身の矜持や本当の意味で自分の生まれ育った”国”のために、”体制”に反旗を翻すように個人で殺人鬼の正体を追うことになった場面あたりから、正直首をかしげたくなる展開になってきました。 また、前半はあらゆる面が主人公への逆境となり、まさに超ハードモードなのに対し、逆に後半になると主人公とヒロインの置かれた過酷な状況そのものは変らないものの、不自然なレベルで全てが主人公にとって上手くいく、ご都合主義全開になってしまったのが残念です。 前半は文句なしに面白くて9点。後半は一気に薄っぺらいただの娯楽作品になり下がった気がして5点。 平均してこの点数という感想です。(後半を酷評してますが、後半も「面白い」ことには変らないんですよ) ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
日本ミステリ史に残る名作である前作『双頭の悪魔』から実に15年ぶりとなる『学生アリスシリーズ』の第四弾。
前作発表時に小学一年生だった子供が今作のアリスやマリアと同じ大学三年生になっていると考えると感慨深いですね。 子供が大人になるほど現実世界ではブランクが空く形になりましたが、作中世界では前作から半年しか経っておらず、昭和から平成に移り変わり、バブルが終わろうとしている時期が舞台の作品です。 今作もこれまでのシリーズ作品同様、コテコテのクローズドサークル作品になりますが、新興宗教団体が建設した「城」という舞台が独創的です。 「城」に閉じ込められ、そこを脱出したとしても、宗教団体の息がかかった「城下町」がさらに待ち受けているという二重のクローズドサークル状態になっているのも面白いですね。 しかし最初の殺人が起きるまでが長いのをはじめとして、前半部分は冗長すぎる感が否めず、ちょっと退屈でした。後半、推理研メンバーたちが強引に「城」からの脱出を試み大立ち回りを演じるあたりからは一気に話が動いて面白くなりましたね。 (私はこの作品は読むのに五日もかかってしまいましたが、うち四日を前半部分に費やして、後半は一気読みでした) これまでのシリーズでは脇役に甘んじていた、モチとノブナガの先輩二人の見せ場があったのが良かったです。 また今作は前作の『双頭の悪魔』と共通するシチュエーションが多数用意されており、読者に15年ぶりのデ・ジャビュを感じさせるのが狙いか?などと思いました。 しかし個人的に『双頭の悪魔』以上に比較したくなる作品は、奇しくもこの作品の前年に発表された同作者の、やはりクローズドサークル作品となる『乱鴉の島』です。 こちらは『作家アリスシリーズ』の作品となり、発表はこの作品の前ですが、作中の年代設定は21世紀となり、携帯電話もインターネットも存在する時代において、クローズドサークルというジャンルにおいては、本来邪魔な異物的存在になるそれをいかに話に組み込むかということを試みたような作品でした。それに対して今作は1990年前後が舞台のため、作中でマリアが「一人一人が携帯できる電話があればいいのに……」と言ったり、アリスが「インターネットって何だ?」と言ったり、一種のメタ的なネタを仕込んでいるのは、前年度に発表した作品を踏まえたうえで作者の「やっぱりクローズドサークル作品にはこれらのものは無いほうがいい」という本音を見た気がしました(笑) 総合的に見て前作には及ばないかなという感想ですが、推理研のメンバーたちの変らないキャラと活躍が見れて楽しかったのでオマケして9点で。 次作が学生アリスシリーズの完結編となる予定のようですが、江神さんの家庭の問題や、アリスとマリアの恋人未満の関係の行く末などいろいろ気になり、待ち遠しいです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
『ミス・マープルシリーズ』では最高傑作との声が多く、ひいては戦後のクリスティ作品では最高傑作扱いかもしれない本作ですが、個人的にはあんまり面白くありませんでした。
新聞広告に殺人が予告され、その日時と場所に、野次馬気分や探偵ごっこのつもりで村人たちが集まったはいいが本当にそこで殺人が起こって……という導入部分は期待したのですが、てっきりその後も『ABC殺人事件』のように次々と第二、第三の殺人予告みたいな、緊迫感溢れる展開を予想していたのに、予告殺人は冒頭のそれ一件だけで、あとは淡々とした展開だったのが残念です。物語も終盤になって第二、第三の殺人が起き、話そのものに緊迫感は出るのですが、犯罪計画全体を見るとお粗末感が出てしまうものでした。 何より個人的にはもう作中序盤の最初の事件が起きた時点で犯人におおよそ見当がついてしまったのが最大の難点ですかね(動機は最後の最後までわかりませんでしたが……) この作品は主役のマープルが老婆なのをはじめ、多くの年老いた女性が登場し、それまでの彼女たちの歩んできた人生というものがキャラクターに現れ、物語に影響を及ぼしていた作品でした。そして同時にジュリア、フィリッパ、ミッチーという3人の若い娘も登場し、彼女たちに対しては各々その後の人生をいろいろ想像したくなるような女性たちでした。 この作品の発表年にクリスティ女史は60歳を迎え、老境に差し掛かって自身の人生を振り返っていろいろ思うところがあった時期だから書けた作品かもしれないですね。 (もっともこの作品が決して彼女の晩年の作品と言うわけではなく、この後もクリスティはかなりの数の作品を発表していますが) |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
「十五年前、とある高校で起きた、自殺と判断された女教師の墜落死事件は実は殺人であった」というタレコミの元、時効成立当日にして一大捜査が始まるという、これだけなら典型的な警察小説のストーリーの作品なのですが、その十五年前の事件の重要参考人になる、事件当夜、学校に忍び込んでいた不良三人組の回想が青春ミステリとしての要素も強めています。(個人的に社会派ミステリ……とはちょっと違うと思います)
十五年前の殺人事件だけにとどまらず、丁度当時時効をむかえたあの「三億円事件」も物語に関わってくるという盛りだくさんなストーリーで、実質的な処女作にも関わらず、数多くの伏線に、二転三転する真相と非常に練りこまれた大作でした。 個人的には警察が必死こいて追っている事件よりも、不良三人組の試験問題を盗む計画、「ルパン作戦」のパートの方が本筋以上に面白かったです。 ただ喜多たち三人は、ただの不良の高校生のスケールを越えている連中で、ケンカでは米兵二人をブチのめせるほどの強さに加え、喜多も十分不良とは思えない頭の良さだけれど、それに輪をかけ橘は天才的な機転の持ち主で、正直こいつらは今更「試験問題盗む」なんて程度のことを必死になってやるような器じゃなくないか?と思ってしまいました。 プロットを分解すると2つ3つの作品が書けてしまうのではないかと思うほどの作品ですが、むしろ「盛り込みすぎ」で若干話の展開に無理があったり、リアリティに欠けると感じる所はありました(いくらなんでも時効成立一日前でここまで捜査が進むのは……それ以前にタレコミだけでここまで警察は必死に動くものなの?という疑問が沸きました)しかし「フィクションなんだから細かいところはいいんだよ」と割り切ってしまえるパワーとエンターテイメント性がある作品だったと思います。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
私の好きな作家の一人、三津田信三氏のデビュー作ということで期待したのですが、いろんな意味でこれは私にはダメでした。
まず衒学趣味ですらない単なる作者の趣味の垂れ流しが酷いです。 ミステリについては、自分も好きな題材であることに加え、乱歩のくだりですとか中身のある内容を語ってるからいいのですが、ホラー映画についてはマイナー作品も含めた単なる自分の好きな作品の垂れ流しのような駄文についていけません。まさに「辟易」します。 そして中身に関しては、ホラー:ミステリの割合が8:2ぐらいでホラー寄りの作風なんですが、肝心のホラー作品として全然怖くなかったです(表紙は怖いですけど) 何故怖くないかというと、作中作となる主人公の作者の書いている同人世界にしろ、作者自身の身の回りパートにしろ、はっきり何を怖がればいいのかわからないからです。 確かにホラーには「そもそも何故怖いのかわからないゆえの怖さ」や「怖がる対象について本当に何もわからない故の怖さ」ってのはあると思いますし、それを狙っているのかもしれないのですが、最低限恐怖の対象へのイメージや説明がないと読者としては怖がりようがないです。 あと結局説明不足のまま終わってる部分が多すぎます。 ホラーなんだから、別に理屈で説明がつかなくてもいいですよ、あえて謎として残っててもいいですよ、でもこの作品の場合あまりにも放置された謎の数が多く、また単純に「物語」としてそこを放置したらオチてないだろ。って部分まで投げっぱなしにされていて不満です。 もしこの作品を最初に読んでいたら「この作者の話は二度と読まねー」となっていたでしょうから、その後『刀城言耶シリーズ 』で化けてくれて、そして私はそちらから読むことが出来て幸いだったと思いました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
トリックは現代の日本の推理小説をある程度読み漁ってる人ならなんとなく想像はつくかもしれません。
しかし発表が1972年ということを考えると、この発想、先見性は賞賛されるべきで、おそらく近年に至るまでの多くの類型トリックを用いている作品の先駆けとなった話だと思います。 (それだけにさらにその半世紀前に活躍してるクリスティとかの作品があらためてどれだけ凄いかと再認識するんですが) ただ正直に言ってこの作品はストーリーそのものが全然面白くなかったです。登場人物も魅力や感情移入以前にどんな人間か伝わってこないですし。 もしこのトリック、プロットでドラマや人物にも魅力があったら、日本ミステリ史に残る作品として、『点と線』とか『虚無への供物』とかと並んでオールタイムベストの上位常連になっててもおかしくなかった作品だと思います。 そういった意味で非常に「惜しい」作品だと思いました。 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
殺人犯の汚名を着せられ、真犯人に口封じに殺されようとしている、別れた妻・通子を救うため、主人公の刑事・吉敷が孤軍奮闘するストーリーです。
満身創痍になり、文字通り血を吐く思いをしながら、過酷な冬の北海道で通子を探し続ける吉敷の姿は痛々しく、読んでいるこちらも苦しくなるほどでしたが、「惚れた女のためだろ!頑張れ!」と前向きな気持ちで読み続けることができ、ラストには吉敷も読者も報われる、いろんな意味でのカタルシスが待ち受けていた作品でした。 全体的な作風はハードボイルド寄りなのですが、不可能犯罪を可能とする驚きのトリックは実に島田氏らしいですね。 すでに彼の作品はそれなりに読んでいたので、なんとなくどんなトリックかは察しがついたし、人によってはこういうのを「バカトリック」と呼ぶのでしょうが、私は好きですね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
あらゆるところでボロクソに言われている作品。ここまで評判が悪いと怖いもの見たさで逆に読んでしまいたくなりました。
そして読んでみての感想ですが、読むに耐えず途中で放り出すのを覚悟(期待)してたのですが、確かに内容はツッコミどころ満載で稚拙極まりないストーリーだったものの、アイディアそのものは面白いし、娯楽作品だと割り切ってしまえばそれなりに読めてしまいました。 私の読んだのは「改訂版」で、最初に出版されたものはそれこそ文章が文章の体をなしてないレベルに酷かったらしいので、怖いもの見たさで読むならそちらを入手するべきだったのかもしれません。 とりあえずツッコミたいのは ・冒頭で「佐藤を改名させればいいだろ……」と読者の9割以上が思ったでしょうね ・西暦3000年で科学が発達した独裁王国という設定なのに、実際に描かれる世界観は現代日本そのものという謎ワールド ・海外逃亡か、そうじゃなくても山奥とかに逃げれば見つからないんじゃ……なんでみんなわざわざ街中にいるのよ 個人的に、この出来で少しでも作者のナルシシズムや「賢ぶろう」とする態度が透けて見えてきたら許せなくなるんですが、この作品の場合最初からとことんB級ですらない、C級娯楽作品だと割り切って書かれてる感があったので、不快にも感じず、そういう楽しみ方をするものとして読めました。 いずれにせよここまで悪評が広まってしまったのは「何かの間違い」で下手に大ヒットしてしまったからでしょうね。 というわけで私は言われてるほど酷いとは思わなかったので平均点を大幅に上回る点をつけます(それでも3点だけど) ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
とある大学付属病院が誇る、優秀な外科医・桐生を中心に、成功率六割という難易度の高いバチスタ手術を二十例以上連続で成功させてきた、栄光の「チーム・バチスタ」
しかし、状況は突如一転し、三件の術中死が相次いで発生するようになり、その真相を探るという医療ミステリ。 映画化などもされた有名作ですね。 医療の現場という特殊な舞台・状況設定であり、現在の大学付属病院や手術の現場体制の問題に切り込んでいる社会派ミステリの側面も持つものの、探偵役・ワトソン役が存在し、フーダニットを突き詰める形式は紛れも無い本格ミステリであると思います。 作者の海藤氏が現役の勤務医ということで、医療現場に関する知識、リアリティ、説得力は言うまでもないですが、主役の田口は医者でありながら外科手術は門外漢であり読者目線に立ってくれるため、特に医療知識は必要とせずに読めます。 また、内容は最初もっと硬くて重い話と言う先入観があったのですが、キャラクターや会話にはコミカルな部分も多くて読みやすく、いい意味で裏切られました。 それでも前半部分はやや退屈だったのですが、後半に探偵役であり、真の主役である白鳥が登場してからは一気に話に活気が出てきました。 この白鳥の強烈なキャラクターは人によっては拒否反応が起きそうですが個人的には好きです(あくまで読者という外から目線で、実際にはお近づきになりたくないですが…) ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
『国名シリーズ』の4作目ですが、時系列的には大学を卒業したたてのクイーンが本格的に犯罪捜査に関わった最初の事件とされている作品であり、それゆえにまだ彼が探偵としても人間としても未熟な面が多々あり、後期クイーン問題とはまた違った苦渋を舐めさせられることになるお話です。
クイーンに限らず、なぜ名探偵は何かに気づいていながらもったいぶった言動で最後まで真相を告げず、周囲の人間や読者をイラつかせるのか、という答えを提示してくれていると言ってもいい作品です。 この事件は作中人物が、どいつもこいつもとにかく嘘つきだらけです。 そして真犯人を筆頭に事件の中心にいる人物ほど、重要かつ高度な嘘をつくので、探偵と犯人の壮絶な知略戦に読者は巻き込まれることになります。 ロジカルさもさることながら、まさに二転三転していく真相は凄まじいものがあり、戦前ですでにこんな作品があっては、欧米ではとっくに本格推理というジャンルが廃れてしまったのもやむなしか……と思うほどでした。 クイーンの中で「最長」の作品でもあり、海外古典で500ページクラスとなると少し読むのに尻ごみしましたが、序盤から終盤まで話の動きが大きかったので退屈せずに読めました。ただ、登場人物が多いわりに人物相関がわかりにくいのが難点かなと。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
とりあえずクローズドサークル物は手当たり次第読んでいる私ですが、これはあまり芳しい評価は得ていない様子の作品なので、あまり期待はせず読みました。
予想通りのB級ミステリといった感じの作品で、特別驚くような結末や、何か心に残るような内容があるわけではありませんが、手頃な分量で気軽に楽しめる話でした。 名作、傑作とはお世辞にも言えないですけれどクローズドサークル系、脱出物の作品が好きな人ならそこそこ面白いんじゃないかと思います。 トレーラーハウスという少し変った舞台設定であり、せいぜいワンルームマンション+α程度の狭い空間に9人も閉じ込められてしまうので、人口密度、閉塞感という点では、クローズドサークル作品の中でもトップクラスでしょうか。 しかもそんな狭い中で死人が出たばかりか、タイトル通りそこらじゅうに針やら壊れる椅子などいろんなトラップが仕掛けられており、さらに水やガスなどのインフラまで止められるので、主人公たちはかなりたまったものではない状況に陥ります。 仕掛けられたトラップの脅威や、閉じ込めた犯人側からの脅迫・挑戦的なメッセージなど、少しデスゲームっぽい雰囲気もある作風であり、その辺がエンタメ性を高めると同時にチープさにも拍車をかけています。 犯人が閉じ込めた人間たちに、過去の事件の検証を行わせる目的があったというのは、岡島二人氏の有名作『そして扉は閉ざされた』を彷彿させられましたが、この作者の代表作である『扉は閉ざされたまま』とちょっと紛らわしい、とかどうでもいい感想が沸きました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
||||
|
||||
|
|
||||
|
||||
---|---|---|---|---|
『点と線』とともに鉄道ダイヤトリックの先駆け的作品であり、さらに鉄道ダイヤ関連はあくまでトリックの一部に過ぎず、メインは死体を入れた二つのトランクを利用した綿密なアリバイトリックであり、当時としては非常に練りこまれた作品だと思います。
しかし、正直読みにくくて状況を理解するのに精一杯。ストーリーや推理を楽しむ余裕がほとんどありませんでした。 それに加えてよく判らない衒学要素まで加わってくるのでますますもって読みにくいです。 注釈も無駄に多くて、いちいち読んでいたらかえって話の筋がよくわからなくなるし、国内作品なのに、悪い意味で海外翻訳物を読んでいるみたいな気分になりました。 実際当時にしてもこの辺の読みにくさのせいで一般層の支持は『点と線』に差を開けられてしまったのではないかと思いました。 同作者でも『りら荘事件』などは凄く読みやすかったのですが、この時はまだ書きかれていなかったんですかね。 そんなわけでせっかくのトリックの謎解きも「なんとかしてなんとかしたんだね」というような感想を抱いてしまいました。 これはよく理解して、考えて読もうとしなかった私が悪いと言えばそれまでですが。 しっかり再読すればまた評価は変るかもしれません。 |
||||
|
||||
|