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マリオネットK さんのレビュー一覧
マリオネットKさんのページへレビュー数147件
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矢吹駆シリーズ4作目。かの『人狼城の恐怖』が世に出るまで世界最長の本格推理小説とみなされていたらしい1000ページ超の長大作です。
パリのユダヤ系資産家の大邸宅で”三重密室”状態で死亡した一人の男。 さらにその背景には数十年前のナチスの強制収容所内で発生したやはり”三重密室”内で死亡した一人の女の事件が浮かび上がる…… 2つの三重密室事件の謎を探偵役の矢吹駆(※以下カケル)が解き明かす……という基本プロットはこの上ない本格ミステリですが タイトル通り「密室」に加えて「哲学者」がこの作品のもう一つの主題となります。 誰でも名前ぐらいは聞いたことがあるだろう、実在した20世紀最大のドイツ人哲学者ハイデガー(作中では彼をモデルとしたハルバッハというキャラが登場します) の”存在論”や”現象論”に基づいた死の哲学的な捉え方に倣って、カケルは”密室の死”という題材についても紐を解いていきます。 そして現実でハイデガーが哲学者として高い評価・名声を集めた一方、ナチスへの関与・加担が批判的な見方をされているのと同様 作中のハルバッハもナチスとの繋がりを持っていたことで作中の事件とも直接関わってくることとなります。 一番最初に説明した通り、この作品は滅茶苦茶長いです。 そしてそんなに長くなるのはこのシリーズ全体の特徴でもある、随所に挿入される哲学的なペダントリーが大きな原因であり、純粋な本格ミステリに徹していれば半分にも三分の一にも出来たと思います。 さらに、やはりこれもシリーズの特色であるのですがシリーズ前作のネタバレに配慮がないなんてものではない。ここまでくると作者が意図的に「前作を読んでからこっちを読みやがれ」と訴えてるのかと思うほど、前作の犯人たちの名前を作中で100回は連呼し(数えてないけど大げさじゃなくそれぐらい言ってると思う)100ページぐらいかけて前作を回想したりしているのも長さに一役買っています。 そして正直言って哲学的な部分は何言ってるかよくわかんないし、物語に本当に必要とも思えないんですよね。完全に作者の自己満足の衒学趣味としか。 それも常人とはかけ離れた頭脳と精神を持つカケルがつらつらと語るなら京極堂の蘊蓄みたいなもんで、シリーズの味として受け入れられなくもないんですが 読者の分身である、ワトソン役のナディアにまで何十ページもわたって、私の死の定義がどうのこうの哲学の世界に入られても、いつまで続くんだこれ、としか思えませんでした。 話が正常に進行する時のナディアの思考はとにかく「カケルが好き」「カケルが心配」「密室の謎解かなきゃ!」と凄いシンプルでわかりやすいキャラなだけに 突然長々と哲学的な思考に入ってる彼女は単に精一杯かしこぶろうとしているだけか、薬でもキメてるようにしか見えません。 哲学的、衒学的な部分は無視した単純な本格推理部分とドラマ部分で言えば結構面白かったですが、この長さに見合うかというとトリックも真相も小粒かなぁという気がします。 この作品を読んだ一番の収穫と感想は「こんなブ厚くて難しそうな本読んだぞ、凄いだろー」という自慢や自己満足感に浸れる所かもしれません。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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先日レビューした『蛇棺葬』が今作の作中作という形になる、『蛇棺葬』の謎を解く完結編(ややこしい)
つまりは『蛇棺葬』を読んでいないとさっぱり意味がわからないので先に読みましょう。 『蛇棺葬』には登場しなかったシリーズの主人公である作家・三津田信三と探偵役である彼の友人飛鳥信一郎がようやく登場します。 今作はようやく本格ミステリパートに入り、『蛇棺葬』で起こった不可解な人間消失の謎を理論的に解明していきますが、しかしオカルト要素も依然絡み続け、さらなる脅威として三津田や飛鳥を襲います。 内容としてはただの暗くて気持ち悪い話だった『蛇棺葬』よりはずっと面白かったんですがラストは、うーん…… ▼以下、ネタバレ感想 |
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実質的に上下巻の上巻にあたる今作。
完結編に相当する『百蛇堂 怪談作家の語る話』の作中作という位置づけでもあります。 つまりこちらだけ読んだのでは多くの謎が残されたままなのですが、「ホラー作品」として読めば一応こちらだけでも完結しているとも言えます。 内容としては、駆け落ちのような形で家を出たはいいけれど、結局今度は出戻りのような形で田舎の旧家である実家に戻った父に連れられた主人公が、そこでさまざまな不可解な恐怖体験をするのといった話ですが、しかしオカルト的な受難よりむしろ主人公が大人たちに直接的なものから遠まわしなものまでいろいろ虐待を受けて幼少期を過ごす、なんともジメジメとした話という印象が強く、主人公の性格も境遇的に当然といえば当然ですが控えめで暗く、正直面白くなかったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ポーのゴシックホラー短編作品。
国内に「赤死病」という恐ろしい病が蔓延し国民たちが死に絶えていく中、王族たちは城内に篭り、優雅に宴を楽しんでいた。しかしそこにもやがて死の影が…… 非常に短く、シンプルで、はっきり言ってしまえば「だから何?」って話なのですが、それぞれ美しく彩られたステンドグラスの部屋、ただし一番奥の黒と赤の部屋だけは不気味がり誰も近寄らない。そんな城内の風景が強烈なインパクトと想像力を読み手に与え、いろんな作品の作中で取り上げられたり、オマージュに使われていますね。 現実的に考えると短い話の中にもいろいろおかしい部分があるのですが、それは単純に創作世界ゆえの破綻というよりは、いろいろなものの暗喩と思われ、読み手側の受け取り方が問われる作品でもあると思います。 |
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まさにタイトル通り、容疑者候補は2人でどちらが犯人なのか……というのが主題の作品であり、読者にしっかり推理しながら読んで欲しいという意志が込められた作品となっています。しかし、個人的には見所というか読者としての作品として楽しむポイントはどちらが犯人なのかよりも、被害者の遺族にして第一発見者であり、そして警察官の身でありながら、最愛の妹を殺した犯人を司法の手にゆだねる気はなく、証拠を意図的に回収し独自捜査を始めるという、主人公も一種の「探偵」であり「犯人」でもあり、シリーズ本来の探偵役である加賀と対決するという、この作品独自の構図が面白く、行く末が気になるストーリーでした。
▼以下、ネタバレ感想 |
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国名シリーズ二作目。
そこそこ評価は高め(少なくとも一作目の『ローマ帽子の謎』よりは)の作品ですが、後のクイーンの傑作と呼ばれる作品を先に読んでいるためか、今作は正直納得できない部分や粗が目立ちました(他の人の感想を見てもそういう声が多いみたいですね) 麻薬組織や暗号云々は正直無駄に話を間延びさせただけな感がありました。 あとどうでもいいですが、私の読んだのはかなり古い訳版だったので、黒人が登場すると当たり前のように地の文で再三にわたり「黒ん坊」呼ばわりして、作中キャラも「黒ちゃん」とか呼んだり、黒人の口調だけ訛らせたり、差別意識を隠そうとしない(意識すらしていないが正しいか)のに苦笑しました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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タイトルからまるで綾辻氏の『館シリーズ』か!?と思ってしまいますが(実際間違えて買った人も日本に10人ぐらいはいるんじゃないかと思ったり)
内容は全然所謂「館物」ではないです。奇妙な館で起こる連続殺人、みたいなものを期待してはいけません。 実際は同作者の『倒錯のロンド』の姉妹版というべき作品で「螺旋館の殺人」はこの作品のいわば作中作的位置づけであり、その内容の詳細は作中でも触れられてはおらず、実際のこの作品の内容は『倒錯のロンド』同様、小説の盗作を題材にした、人物間の駆け引きとどんでん返しの物語です。 話のテンポは非常に良く、読みやすい作品ですが、作者自身も確信犯的というか開き直ったB級感に溢れる作品です(だから倒錯三部作には含めずあくまで番外的位置に納めたのだと思います) 『倒錯のロンド』が楽しめて、かつ過度の期待はせず、広い心を持った読者なら多分楽しめる作品です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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元々法廷ミステリがあまり得意でない私が読むのには少し早かったかもしれないと感じた作品です。
恥ずかしながら内容が難しく、頭に入ってこない部分が多々ありました。 海外翻訳にありがちな、人物の名前が一致しないのもそうですし、各人の相関関係や立ち居地も理解しにくかったです。 そして作中の展開そのものも、私の理解力が乏しいせいでしょうが 「今主人公はどれぐらい不利な立場にあるのか」「結局これは主人公側にとっていい展開なのか」 この辺がよく理解し辛い法廷の流れが続きました。 その反面、真犯人と真相はすぐに予想がつきました。なので結末も特に驚くことはなかったですね。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ギリシャ神話の「ミノタウルスの迷宮」をモチーフに孤島に建てられた館で起こる連続見立て殺人事件。
1400ページを超える大作クローズドサークル作品であり、さらにクローズドサークルそのものも一つのテーマになっているメタミステリ作品でもあるという、まさにクローズドサークルマニアの私のためにあるかのような作品だと思ったのですが、読んでみるととにかく話がなかなか先に進まず、決して駄作とは思わないのですが、読んでて辛いものがありました。 クローズドサークル本格ミステリだったらどんな長くても無問題、むしろ望むところと考えていて『暗黒館』も『人狼城』も「なげー、なげー(笑)」言いながらも楽しく読んでいた私ですがこれはキツかったです。上の2作を読むのにかかった時間を足したののさらに倍ぐらいかかって読みました。 話を無駄に長くしているのはやはりこのシリーズの特色である哲学的なペダントリー。 ギリシャ神話は好きなのでそれ自体は割と興味深く読めたのですが、如何せんクローズドサークルシチュエーションとは相性が悪い。連続殺人犯と一緒に閉じ込められてる状況でそんなこと話してる場合じゃないだろっていうツッコミが頭をよぎるし、かと言ってそれを無視すると今度はせっかくのクローズドサークルの緊迫感が失われてしまうという。 大掛かりな見取り図があった割にはあんまり推理やトリックに関係ないのも残念でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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とうとう2000ページを超え、文庫版でも一冊に収まらず上下巻という形で出されたシリーズ最長作品。
上巻の特徴としましては「ぬっぺらほう」「うわん」「しょうけら」などの伝承にも十分に正体の記されていない妖怪たちについて、今後の事件の伏線などを散りばめながら我らが京極堂の講釈を聞いていくような連作短編にも似たような形式になります。 正直ここで個々の妖怪に下される解釈などはこの物語そのものの謎解きや真相には殆ど無関係なのですが、この部分こそ楽しめなければこのシリーズを読んでいる意味はないでしょう。 下巻は上巻で散りばめられた各種の事件や伏線を受けて、一つの収束に向けて物語が動き出すというもの。 これまでのシリーズのオールスター総出演と言いますか、ボリュームに相応しい非常に豪華な作品で、エンターテイメントとしては楽しめました。 (正直脇役キャラはいちいち覚えてねーよ、ってのもチラホラいましたが) しかし、最後の最後の黒幕登場後の茶番と言うか、本の分厚さと反比例するような薄っぺらい展開には悪い意味で唖然としました。 なんですかこれ、厨二ラノベ作品ですか?という感想です。 いや、そもそもこのシリーズ自体がこれまでも別にそんな高尚なもんじゃなく、ちょっと薀蓄多可で異様に分厚いだけの厨二ラノベみたいなもんだったのかなぁと思ってしまいました。 こんな風に揶揄してますけど、私は基本厨二ラノベみたいな作品が好きな人間で、なんだかんだで今作もこんな長くても投げ出さず楽しく読んじゃってますからね。 (小難しい本はそれほど厚くなくても読むのに一週間以上かかったりするのに、この本は分厚い上下巻合わせて4日で読んだし) とはいえなんというか私の中でまさに催眠が解けたというか、このシリーズに抱いていた幻想という名の憑物が落ちてしまったような気がします。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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今作で4作品目になる『S&Mシリーズ』ですが、1作目の『すべてがFになる』のインパクトだけ図抜けていて、ここまでその後の作品は特筆することのない、小ぶりなミステリ作品としか思えません。それこそシリーズ作品でなかったらなんらかの賞に応募しても最終選考以前で落選しているんじゃないかと思ってしまいます。
大学を舞台に密室殺人が起こるというプロットは2作目の『冷たい密室と博士たち』とかぶってますし(本当に密室トリックしか興味が沸かなかったその作品よりは今作の方がまだ楽しく読めましたけど)犯人もかなり見え見えでした。 そしてやっぱり主人公2人のキャラが好きになれないです。犀川のことあるごとに世間の不合理さを指摘するような思想にイラっときます。しかもその内容が正直知性を感じるよりは、斜に構えた10代の世間への文句と大差ないレベルに思えてしまいます。事件に首突っ込んでは毎回危険な目に逢う萌絵も何時までたっても好きになれないです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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『鏡の中は日曜日』に登場した名探偵・水城優臣が登場する番外編。
それゆえに『鏡の中は日曜日』より先に読んでしまうと重大なネタバレをくらうことになります。 現在は『鏡の中は日曜日』の文庫版に同時収録されているのでこちらの単体本はあまり出回ってないとは思いますが。 試みは面白いですけど、トリックもプロットもしょぼいです。 まさにおまけって感じでした。 |
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他人の心を読む事が出来る超能力者である主人公の少女七瀬。彼女は住み込みのお手伝いとしてさまざまな家庭を転々とし、その能力で各家庭の裏側を覗いていくという連作短編。
あらすじだけでも想像がつく通り、人間の心の醜さがまざまざと描かれている作品ですが、一見円満そうな家庭がそれぞれの心の中では……と言えるような話は最初の一話だけで、残りの話はもう直接口には出さないだけで、最初から目に見えて壊れているような家庭の話ばかりに思えました(また、一見仲が悪そうで実は愛し合ってる、なんて逆バージョンのいい話なんてのは当然ありません)それでも決してワンパターンとは感じない所が流石筒井氏なのですが、いくらなんでもこうも出てくる人間、出てくる家族みんな酷いなんてありえない。いくらなんでも人はここまで醜くないと思ってしまいました。 しかし、普段はフィクションなんだからむしろ性格の悪い人間がいっぱい出てきて醜い争いを繰り広げる話の方が好きな私がこんなふうに感じてしまうのが逆に、この作品に嫌なリアリティがあることの証明かもしれません。 |
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『名探偵信濃譲二シリーズ』の三部作完結編と言うべき作品でしょうか。
正直私は、このシリーズは作者の歌野氏の後年の作品が好きなので読んでいるだけで、これ自体はお世辞にも出来が良いとも面白いとも思えず、特に褒める所のないシリーズと言った感想なのですが、三作目となる今作は前二作に比べると、まだ粗はあるものの後の同作者の名作に繋がる、成長の軌跡が感じられる作品だと感じました。 ミステリとしては特別トリックが良くできていたり真相がひねられてるわけでもないんですが、単純に前二作に比べると遥かにキャラクターが活きていてストーリーに引き込まれて「面白かった」です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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マイナーながら単独で一冊になっている長編では金田一耕助シリーズの中では最短作品ということで、割りと早い段階で読んでいた話ですが、はっきり言って駄作です。
中々に想像力を沸き立たせる禍々しさのあるタイトルではありますが、百唇譜とは結局ちょっと悪趣味なゆすりのネタ帳でしかなく、はっきり言って肩透かしでした。頭にとってつけたような”悪魔の”という部分も安っぽさを助長してます(最初のタイトルはただの『百唇譜』だったようですが) 終戦直後のまだ戦争の爪跡が残る日本という時代背景が活かされていた同シリーズの代表作・有名作に対して、高度経済成長期が舞台となる今作はなんというか「時代に置いていかれた」感が漂う、この時期の横溝氏の低迷を象徴しているような作品と感じました。 とはいえ腐っても(失礼)横溝御大とは言うべきか、長編にしては短い作品というのもありますが、駄作とはいえ読むのが苦痛になって途中で投げ出したくなるということはなく、とりあえず読ませてしまうだけの筆力はあるのは流石だと思いますね。 |
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【ネタバレかも!?】
(1件の連絡あり)[?]
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昭和から平成に移り変わろうとしている時代の広島を舞台に、暴力団同士の抗争と、全面戦争を阻止すべく奔走する警察の姿を描いた作品。
警察小説というよりはヤクザ小説です。 それは警察の話よりもヤクザ絡みの話の方が多いから……ではなく、物語の中心となる刑事の大上がほとんどヤクザだからです(笑) それも単に口調や態度がヤクザ顔負けというだけでなく、実際に懇意にしているヤクザが多数いて情報はもちろん上前まで貰っていたり、目的のためには手段を選ばず違法捜査のオンパレード、彼の行為が公になったら懲戒免職どころか実刑を食らうレベルです。そんな大上は比喩や誇張抜きに、警察組織に籍を置いているという形の一種のヤクザと言うべきでしょう。 ただそんな大上の型破りの行動やキャラクターが非常に魅力的な作品でした。 大上はヤクザはヤクザでも、筋が通って情の深い「いいヤクザ」です。 (もちろん現実のヤクザにはいいも悪いもありませんが、極道映画と同じくこれはあくまでフィクションですので。 現実世界にそれこそ、大上のように筋が通っていない警察に籍を置いているヤクザも多数いるかもしれないですね……) ▼以下、ネタバレ感想 |
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最初に”この映画の製作において動物への危害は加えられていません”という注意書きがありますが、実際には犬猫を遊びで殺すクズどもが登場する作品です。
この作品で一番重要な部分は本来そこじゃないんでしょうが、自分のような、作り話の中で人間は何人死のうとかまわないけど、犬や猫が殺されるのは作り話の中でも嫌だという人は要注意です。 私は途中から話の本筋よりも、「この遊びで犬猫を殺している奴らが出来るだけ酷い死に方で死にますように」と祈りながら読んでしまいました。 その点抜きにしても最初はユーモラスな雰囲気の話かと思いきやどんどん重い結末に向かっていき、あんまり読んでいて楽しい作品ではありませんでしたね。 途中までは「これはミステリなのか?」と思いながら読んでいましたが、真相部分に触れると、それまで多くの伏線が張られていたことがわかり、その点は関心しました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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とあるホラー作家が私費をもって作り上げた迷路のような巨大な庭園。最初からあえて荒廃的な雰囲気を持って作られたその”廃墟庭園”は製作者であるホラー作家の失踪により、正真正銘の”廃園”となるが、その後もそこに興味本位で入り込んだものが死体となって発見される事件が起こり、そこには謎の”怪人”が巣食っているなどと不穏な噂が流れるようになった……
その”廃園”をこれ以上ないホラー作品の撮影舞台とし、乗り込んだ映画会社のスタッフ一同は、”廃園”へと足を踏み入れるが、そこに出現した怪人物の手にかかり、一人、また一人と惨殺されていく…… そんなありふれたスプラッタB級ホラー映画のような内容を小説化したかのような作品ですが、そこは本格ミステリ作家でもある三津田氏の作品だけあり、それだけで終わらず、真相はしっかり本格ミステリしている作品です。 綾辻氏の『殺人鬼』と同系等の作品と言えるかもしれません。 人物の殺戮描写が入念でグロいですが、それはまぁあらゆる面で事前に予想できる作品なので、苦手な人は最初から避けるべきで、読んでから文句を言うようなものではないでしょう。 三津田氏の作品はもはや衒学趣味とすら言えない、作者の好きなホラー映画の知識の羅列に辟易されることが多く、この作品もその例に漏れないのですが、まぁこの話の場合、内容が内容なので許容範囲でしょうか。 総括するとB級ホラーにB級ミステリが組み合わさった作品という感想で、特別優れた作品とは思いませんが、単純に娯楽作品としてはそこそこ面白く、真相もひとひねりしてあって良かったと感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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雪の山荘で殺人事件が発生し、”足跡問題”が生じるという定番のパターンを扱った作品。 この作品は良くも悪くも(個人的にはどちらかと言えばいい意味で)これ以上ないぐらい「普通」の本格推理小説だなぁ、と感じた一冊です。 何一つとして目新しい要素がなく、特に驚くような展開が待っているわけでもなく、定番の舞台で定番の事件が発生し、事件の謎を探偵が解き、真犯人の名前を挙げて事件を解決するという極めて王道な展開の作品です。 特別秀でた部分はないものの、トリックは小粒ながらよく出来ているし、プロット、キャラクター、ドラマ全ての面において、一定水準以上に纏まっている作品ではあります。 ここまでいい意味でも悪い意味でも個性のない作品も逆に凄いというか、個性がないことが個性と感じるレベルです。 (作中に出てきた川の水を汲んで火を消すパズルは面白かったです。これも作者の有栖川氏のオリジナルなら作中のトリックよりこっちに関心しますね) 本格ミステリが好きな人にはおススメできるかなという作品ですし、そうでもない普通の本好きの人にはわざわざ薦めるほどではないかなという作品でしょうか。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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