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マリオネットK さんのレビュー一覧

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レビュー数347

全347件 141~160 8/18ページ

※ネタバレかもしれない感想文は閉じた状態で一覧にしています。
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No.207: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(2pt)

『館シリーズ』から除名して欲しいレベルの駄作

新装改訂版を入手したので20年ぶりぐらいに読みました。
前読んだ時は細かい部分は忘れましたが、とにかくつまらなくて納得いかなかったのは覚えていました。
シリーズの中でもとりわけ異色作扱いの一作ですが、改めて読み直しても個人的にはただひたすら「駄作」としか思えない一作です。

この真相はもはやアンフェアとか納得行くかどうか以前の問題、「考えるだけ無駄」レベルと感じました。
単純にストーリーだけ見ても、全く好感を持てない、ひたすら陰気な男の陰気な話が続くだけで全く面白く思えませんでしたし、このシリーズの主役である「館」にも今作は全く魅力を感じませんでした。
肝心の「人形」の意味も殆ど感じられません。

『占星術殺人事件』と世界がリンクする(無駄な)遊び心なども盛り込まれていますが、こんな駄作でそれをやられても、『館シリーズ』と『御手洗潔シリーズ』双方の世界が汚されただけに感じて正直不快でした。



▼以下、ネタバレ感想
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人形館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫 あ 52-21)
綾辻行人人形館の殺人 についてのレビュー
No.206: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

オカルトめいた事件を科学的に解き明かす短編集

『探偵ガリレオシリーズ』第二弾。
前作に引き続き個々の話が独立した五つの事件で構成される短編集ですが、題名の「予知夢」の通り、殺人が第三者によって予知されていたなどという超常現象、オカルトめいた謎が事件に絡み、それを探偵役である「ガリレオ」こと天才物理学者湯川が論理的・科学的に解き明かしていくという一貫したテーマが設けられている作品です。

前作が文字通り「物理トリック」と言うべき、物理的専門知識を活かした科学実験のようなトリックを用いた作品が中心だったのに対して、今回はそういった科学実験的トリックの要素は薄めで、オカルトめいた現象を論理的に解釈する推理に焦点が当てられ、前作との差別化がなされている印象です。
個人的には音楽CDのアルバム同様、ただ単にいろんな話を詰め込んだだけの短編集より、統一されたカラーの作品を揃えている短編集の方が好感は持てますが、それゆえにワンパターン化して後半は飽きてくるような所もありました。

話個々の出来としては、全体的に安定しているとは思いますが、所詮短編向きの小ネタの集まりという印象で、特別面白いとは感じない作品でした。
しかし、非常に読みやすいので電車の移動などの「ちょっと空いた時間」などに読むにはもってこいの一冊だと思います。

以下、個別ネタバレ感想です。


▼以下、ネタバレ感想
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予知夢 (文春文庫)
東野圭吾予知夢 についてのレビュー
No.205: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

安心して読める名作

まさにタイトルの大誘拐の通り、100億円という莫大な身代金を巡り日本全土を巻き込み、さらには世界規模にまで注目を集める絶大なスケールの誘拐事件が題材の大作ミステリです。
しかし作中では誰も死なず、登場人物に根っからの悪人も一人もいない、「安心して読める」ミステリでもあります。
自分は普段は登場人物が悪人やキチガイだらけで、皆で憎しみあって殺し合うような作品ばっか読んでますが、同じ犯罪小説でもこういう真逆の作品もいいものだと思いました。
ただそれだけに誘拐を題材にした作品に、最終的な犯人の生死や人質の安否が読めない緊迫感を求める人には逆に物足りないものがあるかもしれません。

70年代発表の作品と言うことで、随所に時代を感じはしますが、悪い意味での古臭さは感じず、あくまで当時という時代を舞台にした現代にも通じる名作だと思います。

とにかく本来人質であるはずの刀自のスーパーおばあちゃんっぷりが痛快でしたね。

途中の外国人記者のインタビューの場面でカタカナ交じりの文章が数ページだけとはいえ、読みにくくてしょうがないところだけがちょっと不満でした。

▼以下、ネタバレ感想
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大誘拐―天藤真推理小説全集〈9〉 (創元推理文庫)
天藤真大誘拐 についてのレビュー
No.204: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(3pt)

重くて胸糞悪くなって二度と読みたくない……

あらすじの時点で敬遠してずっと読んでいなかった作品ですが、評価が高いのでいつか読もうとはずっと思っており、このたびようやく読みました。
……しかし自分の予想していた通りのやっぱり苦手な内容で終始嫌な気分で読むことになりました。
話の展開はスピーディで、物語の起伏も大きく面白いと言えば面白いのですが、それがことごとく私にとっては読んでて暗くなったり腹立たしくなるような場面の連続でした。
自分は最初から所謂「イヤミス」と呼ばれるような暗い話や後味の悪い話はそんな嫌いじゃないのですが、どうもこういう真面目に重い話は苦手です。

そういう好みは抜きにして純粋にミステリとして評価するとどうかと言うと、出来が悪いとは思いませんが、あまりにも主人公の周囲の人間が誰も彼も過去に少年犯罪に関わっていた……という展開に、伏線が張られているとかどんでん返しというよりは、無理がありすぎると感じてしまいました。これがもっと純粋にミステリ性、エンターテイメント性を追求しているような作品だったら「現実では起こりえないことを書くのが創作」「面白ければ細かいことはいいんだよ」と割り切れるのですが、こういう重い題材を扱った社会派でそれをやられると、話の説得力が失われると感じます。
まぁ、終始暗い気分で読んだ私のような読者にとっては「所詮これは作り話」と思うことができてある意味良かったのかもしれません。


▼以下、ネタバレ感想
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天使のナイフ 新装版 (講談社文庫 や 61-12)
薬丸岳天使のナイフ についてのレビュー
No.203: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

”密室の帝王”のデビュー長編

ジョン・ディクスン・カー氏の実質的なデビュー作です。
密室+怪奇趣味とデビュー作から「らしさ」が全開ですね。

あらすじは結構期待したのですが、冒頭であっという間に殺人が起きたかと思うとあとは淡々と話が進み、あらすじをなぞっているだけ感があって正直退屈でした。
トリックもちょっとアンフェア&無理があると思います。

あとこれは作者の責任じゃないですが、私が読んだ創元推理文庫版は日本語訳が読みにくすぎです。
2013年初版の新訳版なのになんでこんな読みにくいんですか?翻訳者は日本人じゃないんですか?と言いたくなりました。
やたらもったいぶった言い回しは原文に忠実に訳しているのかもしれませんが、なぜそこを漢字にせず平仮名で書く?と思うところが多々あったり、擬音も全部平仮名なのが最高に読みにくかったです。

▼以下、ネタバレ感想
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夜歩く【新訳版】 (創元推理文庫)
ジョン・ディクスン・カー夜歩く についてのレビュー
No.202: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

自分もグラス片手に読みたくなる一冊

「仏陀が悟りを開いたのはいつ?」「邪馬台国があったのはどこ?」「聖徳太子とは何者?」「信長はなぜ打たれた?」「明治維新が起きたのは何故?」「キリストはなぜ蘇った?」
バーのカウンター席にて行われる歴史の謎の議論……という形式の連作短編で、「死なないミステリ」どころか「事件すら起こらないミステリ」そもそもこれをミステリと呼んでいいのかさえ微妙です。

誰もが知っている一般常識ながら、謎の残るこれらの議題に、これまでにない「な、なんだってー!」といいたくなる新解釈が提示され、突拍子も無い意見であるのに、どこか説得力があり、納得してしまいそうになります。より詳しい知識のある人なら「いや違う!」と反論したくなる部分も多いのでしょうが、この物語はあくまで「飲みの席」での会話だということを念頭において、自分のグラス片手に楽しむのがいいのかもしれません。

以下個別ネタバレ感想です。

▼以下、ネタバレ感想
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邪馬台国はどこですか? (創元推理文庫)
鯨統一郎邪馬台国はどこですか? についてのレビュー
No.201:
(7pt)

いろんなジャンルがごった煮のシリーズの異色&問題作

『金田一耕助シリーズ』ですが、耕助の出番は少なく、今回主役となるのは音禰という、絶世の美貌を持つ女性です。
設定的には『八つ墓村』と『犬神家の一族』という同シリーズの二大有名作を足したようなストーリーですが、全体を通して見ると本格ミステリというよりはラブロマンス&サスペンス小説といった印象の作品でした。
また半分官能小説と言ってもいいような、かなりエロティックな話でもあり、箱入り娘として育てられてきた主人公の美女が殺人事件に巻き込まれると同時にこれまでの生活で決して経験することのなかった、淫靡な世界に否応なしに触れることになっていく展開にも目が離せません。

いずれも一癖も二癖もある女たちと、その女たちにはそれぞれやはり一筋縄ではいかない男たちが背後に控え、遺産絡みの命がけの駆け引きを演じていく物語は、今でいうチームバトルロイヤル作品の様相も呈しており、この点で見るとすごく時代を先取りしていると言えるかもしれません。

しかしはっきり言って設定にも展開にもかなり無理があって粗が目立つ作品です。
まず遺産額が「百億円」ってやりすぎでしょう。正直「横溝先生、小学生じゃないんですから……」と思ってしまいました。
現代でも文字通りケタ違いの大金ですが、この作品の発表当時の貨幣価値だとさらにその10~30倍くらいでしょう?
スケールの大きさよりも逆に安っぽさを感じるだけでなく、そんな莫大な額だったら逆に取り分のために殺人犯す奴はいないだろ……と思ってしまいます。

他にも細かいところでツッコミどころはいっぱいあり、ミステリ作品として見るとお世辞にも出来がいいとは言えないと思いますが、単純に娯楽作品として見るなら個人的には面白かったですね。



▼以下、ネタバレ感想
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三つ首塔 (角川文庫―金田一耕助ファイル)
横溝正史三つ首塔 についてのレビュー
No.200: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(1pt)

敬意をこめて1ポイント評価つけます

所謂「三大奇書」の一冊に数えられ、読むと精神に異常をきたすとも言われる今作。
確かに読んでいる途中で気が狂いそうになりました。読むのが苦痛すぎて。

正直凡人の私には殆ど内容の意味がわかりませんでした。
恥ずかしながら何度も投げたくなったのを、意地と義務感でなんとか最後まで読んだ形です。

とにかく読みにくい。
その読みにくさは、文章そのものが読みにくいというより、話の流れと全体像が掴めない故の読みにくさです。
文字を追っていき、その場その場の言葉の意味は理解できても、物語の内容がよく理解できずに何度も前のページに戻ったりしながら読みました。
作中の主人公同様、自分の居場所を見失うような錯覚すら覚えるほどです。

同じく三大奇書に数えられる『虚無への供物』が、現在では良くも悪くも普通のミステリになっているのに対し、この作品は良くも悪くも、現代でも(おそらく50年後も)唯一無二の空気を放っていると思います。

少なくとも自分は全く楽しめなかったということに加え、これほど尖った作品を中途半端にわかった気になったり良かった探しをして、中途半端な点数を付ける方が失礼にあたる気がしたので1ポイントにしました。
これはこの作品を評価した結果と言うより、10%程度しか理解することができなかった、私の理解度を示していると言うべきでしょうか。
もし100%この物語を理解出来たならば、その時は10ポイントをつけることになるのかもしれません。
ドグラ・マグラ (上) (角川文庫)
夢野久作ドグラ・マグラ についてのレビュー
No.199:
(8pt)

ブラックな作風とひねくれた物語が面白い


同作者の『告白』のブラックさが面白かったのでこちらも読みました。

それぞれ事情やコンプレックスを持つ二人の少女が「人が死ぬところを見たい」というなんとも不純な動機でそれぞれ、老人ホームと小児病棟を訪れる……あらすじの時点でロクでもない予感のするお話。

今作も期待を裏切らず、いろいろと酷い話なのになぜか暗さや胸糞の悪さは感じずむしろ笑えるという、独特のブラックユーモアが健在で面白かったです。
本当にこの作者はひねくれているな……と思い、そしてひねくれた私はこの作風が大好きです。

ちょっと*ごとに頻繁に一人称が入れ替わるのが最初判りにくく、冒頭20ページぐらいを一度読み直すことになりました。

▼以下、ネタバレ感想
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少女 (双葉文庫)
湊かなえ少女 についてのレビュー
No.198: 4人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

平成産まれの新たな「日本のクイーン」のデビュー作

まず最初に「とうとう平成生まれの推理作家が出てきたか……」と思いました。
そしてまさに今時の子(?)と言うべきか、オタクという設定の探偵による漫画やラノベのサブカルネタがふんだんに盛り込まれ、むしろ往年のミステリファンがついていけない空気になっています。これは本筋的にはあってもなくてもどうでもいいものですし、賛否両論かもしれません。(かくいう自分は全く自慢になりませんが「おっはよほほ~ん」含めほぼネタが判ったので下手な衒学趣味とかより楽しめましたけどね)

しかし内容そのものは、この上なくオーソドックスな正統派本格ミステリで、クドいくらいのロジックにより導き出される真相はまさに新たな「日本のクイーン」の登場を思わせました。
「○○館の殺人」というタイトルはまるで綾辻氏の「館シリーズかよ!」と思ってしまいますが、タイトルに全く偽りなく、ストレートに学校の体育館で起こった密室殺人が題材で、逆に新鮮で面白いと感じました。

手頃な分量と読みやすい文章で良くまとまっていますが、長編小説で殺人が一件、その後も特に大きな出来事などはないので少し物足りない感はありました。
あと探偵役は個性的ですが、主人公(?)の女の子はちょっとキャラが弱すぎるかなぁと。



▼以下、ネタバレ感想
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体育館の殺人 (創元推理文庫)
青崎有吾体育館の殺人 についてのレビュー
No.197:
(6pt)

前作とは少し視点を変えた「スパイミステリー」第二弾

前作『ジョーカー・ゲーム』の続編にあたる、スパイミステリー連作短編集の『D機関シリーズ』第二弾です。
現実のスパイ事情などはよく知りませんが、納得させられてしまう説得力とリアリティは前作から健在です。
……ただ、前作の衝撃に比べると飽きもあるのかあまり面白くは感じませんでした。

今作はD機関に対してライバルや敵対関係にある存在の視点から見た話が中心なのですが、正直いずれも最初からD機関の相手が務まるような存在に見えず、結局どの話もオチは「D機関は凄い!」になるんだろうなぁという予想が出来て、ややワンパターンに感じてしまいました。

※以下個別ネタバレ感想です

▼以下、ネタバレ感想
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ダブル・ジョーカー (角川文庫)
柳広司ダブル・ジョーカー についてのレビュー
No.196:
(5pt)

長野オリンピックからもう20年ですね……

地名+殺人事件の内田氏の定番のパターンに、彼に最も縁のある都道府県である長野の名がとうとう登場しました。
浅見光彦シリーズ第100作目としてまさに満を持した感があります(どれを100作目とするかは諸説ありますが)
舞台が長野県ですので「信濃のコロンボ」との競演作でもあります。

長野オリンピックの際の十数億にも及ぶ多額の用途不明金に関わる、失われたはずの資料をめぐっての殺人事件という、まさに長野県全体、長野県民全体に関わる内容なのですが、なんと言ってもこの作品で一番印象に残るのは、メインキャラとして登場する県知事でしょう。
・名詞折り曲げ騒動
・ガラス張りの知事室
・脱ダム宣言
と、どこからどう見ても田○康○氏がモデル……というより、もはや実質本人を登場させているとしか思えないです。

長野県民や、当時の長野県知事の話題などを興味深く見ていた人などはそれだけで惹かれる内容ではあるのですが、いかんせん肝心のミステリ部分が退屈すぎました。
もう少し面白い話だったら「これを読むのは長野県民の義務!」とでもタイトルに付けたい所だったのですけどね。

どうでもいいですが、あとがきで述べられていた、県知事選挙で「内田康夫」と投票する人がいたり、内田先生の奥さんに「当選おめでとうございます」と言った人がいたというエピソードには笑いました。

▼以下、ネタバレ感想
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長野殺人事件 (カッパ・ノベルス)
内田康夫長野殺人事件 についてのレビュー
No.195: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(3pt)

最初からタイトルに「密室」と入っている作品の密室トリックは大した事ない法則

典型的な「雪の足跡」を題材にした作品ですが肝心のトリックがショボすぎると思いました。

▼以下、ネタバレ感想
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雪密室 新装版 (講談社文庫)
法月綸太郎雪密室 についてのレビュー
No.194:
(6pt)

『葉桜の季節~』と似て非なる作品

タイトルといい表紙といい、同作者の有名作『葉桜の季節に君を想うということ』を連想させます。
実際登場するキャラクターや展開もややあの作品を思い起こすような雰囲気があるのですが、全く持って似て非なる作品です。

あちらを読んだ後は、「自分も人生これから前向きに頑張りたい!」と思えたような作品でしたが、こちらを読んだ後はなんだか自分まで人生に疲れたような気分になった非常に後味が悪い作品でした……

完成度は高いと思うのですが、多分二度と読まないと思います。

▼以下、ネタバレ感想
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春から夏、やがて冬
歌野晶午春から夏、やがて冬 についてのレビュー
No.193:
(8pt)

夢見る乙女たちの物語……?

時代設定は昭和30年前後くらいの日本でしょうか。
いずれも名高い資産家の令嬢と、彼女たちが集う読書サークル「バベルの会」を題材とした五つの物語で構成される短編集です。
どの話も終盤ではいろんな意味で裏切られるような衝撃的な展開が待っています。
文章そのものはライトで読みやすいですが、内容は割りとヘビーで、一気読みすると精神にクるものがあるかもしれません。
しかしどの話も面白く、長編のネタにしてもいいぐらいレベルが高い作品だと感じました。

「読書サークル」が共通の題材であるため、作中で多くの古典が引用されますが、私の場合読書傾向が偏りすぎなのもあり、元ネタは3分の1もわかりませんでした。
この辺が全てわかるような人はより楽しめるのかもしれませんね。

※以下、個別ネタバレ感想です。

▼以下、ネタバレ感想
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儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫)
米澤穂信儚い羊たちの祝宴 についてのレビュー
No.192: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

題名の意味を理解した時鳥肌が立った

『学生アリスシリーズ』第三弾にして最高傑作とも名高い作品。
前二作同様クローズドサークルものですが、今回は半ば世間を捨てた芸術家たちの住む孤立集落という舞台設定や
川を挟んで二箇所で同時進行する殺人事件。それに伴いアリスとマリア交互の視点で進行する物語という構成も面白いです。

前作の最後に傷心の状態で推理研を去ってしまったマリアの再登場がまず嬉しかったですね。
随所に見える先輩の江神さんを頼りにしてなついている彼女の様子が非常に可愛いです。
でも、今回は川の向こうでアリスも江神さん抜きでがんばっていたので、彼の活躍も知ってあげてほしいと思いましたね(笑)

純粋な話の面白さ、キャラクターの魅力、真相の衝撃、物語の構成。
個人的に完璧に近い作品だと思うのですが、唯一惜しいと感じるのが、今作に限らずこのシリーズ通して言える点として、犯人を指摘する根拠が物証ではなくロジックに基づく消去法のみ、という所です。
これは否定されたら決定打に欠けるというか、それこそ他の人が「なんらかのトリック」を使った可能性もあるんじゃない?などと思ってしまい、納得行きかねる所があります。単に好みの問題とも言えるでしょうが。


▼以下、ネタバレ感想
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双頭の悪魔 (創元推理文庫)
有栖川有栖双頭の悪魔 についてのレビュー
No.191: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

つながってしまった輪

『速水三兄妹シリーズ』第三弾にして、とりあえず完結編ということになるのでしょうか?
今回の題材はミッシング・リンクもので、クイーンの名作『九尾の猫』を意識したような作品となっています。
とはいえ前二作同様、作風はユーモアミステリなので「後期クイーン問題」などはどこ吹く風で、楽しく(?)推理が進んでいきます。

発表が1990年という事を考えると、パソコン通信などを取り扱ったミステリとしては当時としてはかなり前衛的な部類に入ったのではないかと思います。
ただ今読むと、ある意味古典作品以上に時代を感じてしまい、90年代のインターネット黎明期をよく知らない人などはイメージが沸かない部分もあるかもしれません。

恭三氏の将来のお嫁さん候補が出来たのは良かったですね。



▼以下、ネタバレ感想
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メビウスの殺人 (講談社文庫)
我孫子武丸メビウスの殺人 についてのレビュー
No.190: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

オカルトとロジック・黒と白が混ざり合うミステリ

昭和中期を舞台に、日本の土着・民俗学を題材としたホラーと本格ミステリが見事に融合し、独特の世界を作り出している『刀城言耶シリーズ』の第一弾です。
人ならざるものの仕業としか思えぬ怪異、しかしその真相はこの上なく本格ミステリのロジックで解決する二面性がまさに「黒」と「白」あるいはそれらが混ざり合ったそれぞれのカラーの魅力を感じるシリーズです。
また、このシリーズは作者が非常に綿密な取材で知識を身につけ作品を描いていると感じますが、それはあくまで物語にリアリティと説得力を持たせるためであり、よくある衒学趣味的な蛇足さや嫌味さがないところが個人的に好きですね。(あくまで個人の感想です)

序盤から次々に起こる怪異の怖さから、終盤の怒涛の謎解きまで楽しく読めましたが

・物語の視点が目まぐるしく入れ替わって時系列も前後するため混乱する。
・名前が同音異句の「サギリ」という女性が大量に登場してややこしい。
・部屋の間取りや村の地図が頭に入りにくい(図があっても)

など、全体を通してちょっと読みにくい、わかりにくい部分が多いのが難点ですね。
これは後のシリーズでは改善されていった点だと思います。


▼以下、ネタバレ感想
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厭魅の如き憑くもの (講談社文庫)
三津田信三厭魅の如き憑くもの についてのレビュー
No.189:
(6pt)

殺人者4人vs探偵4人

人間性の評判はあまり良くないが、面白いパーティを開くことで定評のあるシャイタナ氏。
ある晩彼は「殺人者4人」と「探偵4人」を招待した、奇妙なパーティを催すが、自らのお膳立て通りにトランプゲームの最中何者かに殺害されてしまう。

容疑者候補は4人と少ないながら、全員が過去に殺人を犯しながら法から逃れているという、ブリッジパーティよりインディアン島にでも招待されろよという面々であり、実際一人一人の過去の殺人も明かされるのも相まってかなり「濃い」面子です。

一方の探偵側の4人は、よく「クリスティオールスター」的な大げさな紹介をされたりしますが、実際の所主役のポワロ以外は、単に捜査に協力してくれる人たちという域を出ません。マープルが競演してたりしたら豪華だったのですが。

ブリッジというトランプゲームは日本ではメジャーでなく、かく言う私もこの作品を楽しむためにブリッジのルールを事前に勉強しました。ハヤカワ版ではあとがきの解説でルールを説明しているので、そこを先に読むのがいいかもしれません。
しかし概ねルールを理解しても、やはり実際に何度かゲームをプレーしてその雰囲気や基本定石そのものを理解しないと100%楽しめないのかな、とも思いました。
(ちなみに作中の推理の理論的には別にゲームのルールを理解していなくても十分理解可能、納得のいくものです)

決してつまらなくはなかったですが、いろんな面でもっと面白くすることも(読むことも)できた気がするのが惜しい作品ですね。

▼以下、ネタバレ感想
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ひらいたトランプ (ハヤカワ文庫―クリスティー文庫)
アガサ・クリスティひらいたトランプ についてのレビュー
No.188:
(7pt)

もう一回乗りたくなるジェットコースター・ミステリ

嵐の中の閉ざされた別荘に集う人々、という定番のシチュエーションのミステリですが、定番と言えるのはそこだけ。
次々と予想外の展開が待ち受け、息をつく暇もない、謳い文句の通りのまさにジェットコースター・ミステリです。
西澤氏お得意の非現実的なSF設定こそ出てこないものの、あまりにハチャメチャな展開のせいで、もはやSF作品レベル。
このジェットコースターにもう一回すぐにでも乗りたくなるか、「二度と乗るかボケ!」と思うかは人それぞれでしょう。


▼以下、ネタバレ感想
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殺意の集う夜 (講談社文庫)
西澤保彦殺意の集う夜 についてのレビュー