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egut さんのレビュー一覧
egutさんのページへレビュー数745件
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傑作。
スタートから最後まで、読書中飽きがなかったのも凄い。 いわゆる巻き込まれ型の作品で、主人公の青柳雅治はただの一般人。目立つ要素もない彼が首相暗殺の犯人にされてしまう。何がどうなっているか状況が分からない気持ちを読者と共有しながらの逃走劇は、スピード感や先が気になる気持ちが相まって止め時が見つからない読書体験でした。 著者特有の軽妙なセリフ回しは健在で活き活きしており、本作では細かな箇所が後々になって伏線として活用されるのが凄い。もう、その箇所が多く、あれもこれも繋がるのかと驚きます。会話や描写以外にも、青柳雅治に関わった人々の些細な行動が影響を及ぼす、人の繋がりの面白さを感じた次第です。 毎回気にする著作特有の悪意の模様については、本作は全然気にならなかったです。結末は人それぞれの好みでしょうが、個人的には爽やかに気持ちよく終わった印象でした。 余談ですが、チュンソフトの「街」や「428」という好きなゲームがありまして、これは街の中の関係ない人々の行動が終盤繋がっていくザッピングシステムのゲームなのですが、その良い感覚を本書で味わえた気分もありました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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これは完成度が高い作品。あれこれ言う言葉がなく、読後の余韻が凄かった。
まず作品への没入感が凄かった。これは丁寧な描写と翻訳が巧く、映画を見ているかのように場面をイメージする事ができる要因が大きい。登場人物達も個性的に設定され、混乱する事もない。残酷な要素は読書の刺激を演出している。翻訳物を読んでいるとは思えない感じでスラスラ読めました。 3部構成で作られている本書。構成が実に巧い。部が変わる事に舞台模様がガラリと変わり先が読めない。物語の魅せ方が大変うまくて惹き込まれました。 好みに合わないと言うか個人的なつぶやきとして、 近年の海外ミステリは、女性被害を作品のキャッチによく使われているように感じます。日本と海外の違いだと思いますが、女性を監禁したり暴行したりの描写が海外作品には多く既読感があり、内容自体も然ることながら好みではない。警察についても職権乱用が激しく、特にアルマンは盗人じゃないのかと思える始末です。 さて、本作は先入観なしで読むのが良いです。 あまりにもランキングで紹介された為、販売戦略的なものかと避けていましたが、読んでみたら面白かったので、疑り深いのは良くないと個人的に反省。 海外作品なのに、とても読みやすいのが一番印象に残りました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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本書はとても書くのに苦労した作品なのでしょうか。そう感じました。
ダンガンロンパも本シリーズも好みで、要所要所は面白くて問題ないのですが、繋がりがバラバラでまとまっていないのが苦しいです。 さらには、発売前からキャッチコピーでPRされていた『難攻不落の密室十二宮』のテーマ。 聖闘士星矢模様?十二の密室で盛りだくさん!っと、思いきや、それは予告だけで全部の事件は本書では書かれず、to be continued...って、完結しないのか!事件が別冊に続くって……『十二宮』も無意味で、ただ多く見せて宣伝しただけだったり、、、それはどうかと思いました。 300Pの前半は事件とは関係ないシリーズの物語の橋渡しで後半が事件。と、ぶつ切り感もあり、個々の内容は好きですが、前後作に影響する本作だけでは完結していない作品構成が残念でした。 その他気になる点として、 主人公の五月雨結の扱いがちょっと酷い。一応探偵で主人公、周りは超人的な探偵の中にいる為、読者が親近感沸きやすい位置にいるはず。そのキャラが本作では完全にアホキャラにされています。事件中にショッピングがどうとか、雰囲気を壊し探偵としてどうなのか?と思う問題発言をしていたり、役立たずキャラ設定が可哀想でした。 シリーズ好きですし、新刊が発売されたのは嬉しいのですが、内容が煮詰まってなく、作るの苦労したのかなと思う次第です。 本書の最後の広告部分に、2015年新プロジェクト『ダンガンロンパ×佐藤友哉』稼働。と、別作家で始まるあたりも、いろいろ危惧する次第でした。 なんだかんだ書いてしまいましたが、シリーズも作家さんも好きなので次回作も楽しみにしてます。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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読書前後でイメージがまったく変わりましたが、なかなか気持ち良い読後感でした。
裏表紙のあらすじに『失くしたものは、何か。心を穿つ青春ミステリ』として書かれています。 ミステリっぽく、謎・真相は?・階段島と言った単語を前面に出したPRですが、個人的にこれは出版社側の商業戦略だと思いました。中身は自己や相手を思う心模様を描いた青春小説だと感じます。 記憶がなく突然島に現れた人々が、とりあえず普通に生活する階段島。舞台設定の謎は、現実的なミステリ寄りではなく、ファンタジーでとらえると良いです。 過去と外界を削除した箱庭舞台なので、登場人物達の、その後の考え方や人との関わり方に焦点が合わせやすくなり、詩的な情景や哲学的な感情を味わえます。 なので、何でだろう?という謎を追い掛けるミステリ的な読書ではなく、情景や皆の気持ちを感じる青春小説として読むと、より良い読書になると思います。 ネガティブな主人公にポジティブなヒロイン。ちょっと癖やコンプレックスがある人々など、特徴的な登場人物達による作品作りは、わかり易く巧いですね。なるほどと思いました。 成長を描くというと厳密的には違うのですが、不安定な心やそれの解放や共感など、若い世代に合う作品だと思いました。中々良かったです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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伊藤博文、山縣有朋など、実在した歴史上の人物を交えた明治+本格ミステリの第2弾。
作者が杉山潤之助の手記を入手して本書にまとめた件りなど、現実感を演出しているのがとても面白い。 作者言葉より、前作が売れず断裁され痛恨の極みなど書かれてますが、負けずにこのシリーズは続けてほしいですね。 首なし、わらべ唄、見立て殺人など定番のミステリ要素を盛り込み、連続殺人が発生。 読書中はバタバタ死んでも雰囲気が軽いから現実味がなかったですし、屋敷内で何人も殺されて事件を防げない月輪&警察に大丈夫かなぁ、と不安も感じる中、残り40ページぐらいで16の謎が提示されます。 残りページが少ない中、解決編はまとまるのかな?と感じた不安は杞憂に終わり、あっと驚く真相で畳み込むのは見事でした。 後味は悪いですが、頭によぎっていた定番を突き抜けた真相は楽しめました。 時代設定が効果的なのと、事件の構図がガラリと変わる様は前作同様面白い。 今後も期待のシリーズです。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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絶妙な構成。狙って作っているのか、勢いで書き上げたらこうなったのか。
文章構造に味がある怪作ミステリ。 本屋の新刊コーナーで表紙と帯を読んで衝動買いした本書でしたが、現代ミステリではなく、実は1945年発表の古い作品である事に驚きます。今でも普通に楽しめます。 語り手による事件の再構成で進むストーリーは時系列がバラバラ。あの時こうだった。そう言えばもっと前はこうだったっけ。と言った具合。 違和感のある構成は叙述トリックでも仕掛けているのか?と思いたくなるのですが、読んで行くうちに、あっこれ、話が整っていないだけかも。。と感じる始末。 ですが、この構成が絶妙な混乱と錯覚を生み出して、スリラー小説がミステリになってしまっているのが面白い。 200P台でサクッと読める古典ミステリ。読後、全体像がわかると、あれもこれもと必要な設定要素である事がわかり、伏線やミスリードが狙って書いているわけではなくて、そういえば普通に書いてあったな……。ほんと普通に、、、構成が奇妙過ぎて見逃した。と、独特の文体にやられました。 話は読みやすく、舞台も小規模の山中の出来事であり、把握しやすいように地図の挿絵が含まれていて丁寧な作りです。 ストーリーや仕掛けではなく、文章に価値がある作品。 好みは人それぞれですが、他にない個性的な一品を感じる意味として手に取るのはアリでしょう。なかなか面白い作品でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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サイロ内の浮遊死体。ビルの屋上での開放的な密室。冒頭の昔話「空を飛ぶ娘」。双子の姉妹。古き良きミステリの要素を感じさせつつも現代的な作品。
中盤までよくある事件の普通の警察小説として読んでいたら、終盤の怒涛のまとめで社会的テーマ性や登場人物達のドラマや事件の真相などが明かされて綺麗にまとまる。着地が巧くて読後素直に凄いと思いました。 シリーズ三作目を最初に読んだからか、登場人物の姫野広海(ひめのひろみ)刑事が男なのか女なのかわからず、何か仕掛けてくるのかと余計な事で悩んでしまいました。シリーズ最初から登場しているんですね。キャラクターがよかったです。 著者本初読書でしたが、島田荘司を思わせる奇想の基点から現実的に落とし込む謎にプラスして、爽やかな刑事達のチームワークが気持ち良い。好みの作風で他の本も気になる作家さんに出会えました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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1つの密室、1つの死体、限られた登場人物。
定番のミステリ構成の中、推理の基点や条件式を変えると、犯人やトリックが様変わりする多重解決作品。 本書はさらにSF的な要素を加え、間違った解決を行うと違う平衡世界へ飛ばされ、状況が少し変えられてしまう。こんな世界で推理は成り立つのか。 正直な所、複雑さが目立って楽しめなかったです。 後述するこのパラレルワールドならではの仕掛けには、ちょっと面白い。と思える点も確かに存在するのですが、推理する点も物語も変化してしまっては楽しみ所がなく、毎回違った状況設定を読むだけの気持ちになってしまいました。 『七回死んだ男』『STEINS;GATE』『ディスコ探偵水曜日』あたりの平衡世界や多重解決ものは好きな分類なのですが、本書とは相性が悪かった模様です。。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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事件現場の虫の生態から事件を捜査していく法医昆虫学捜査官シリーズの第3弾。
本作では水死体を扱っており、過去作とは違う水に関連した虫の展開で、新たな場を作ったと感じました。虫に関しての薀蓄と、登場するキャラクター達のやりとりは今回も楽しませて頂きました。 点数が低い気持ちとしては、今回は虫に関する刺激が弱め。事件発生の序盤と終盤の解決は虫に関する話でシリーズとして特徴的なのですが、中盤の事件捜査については虫があまり関係していなくて、普通の警察小説を読んでいる気分でした。 虫についての表現も大分落ち着いて淡泊になってます。 1作目では、ウジの表現をウニョウニョと気持ち悪く描いていて、その気持ち悪い虫の話の土台があってこそ、明るいキャラの赤堀が輝いていたり、皆が嫌がる虫から事件が解決する気持ちよさがあったりしたのですが、今作では虫の気持ち悪さがサッパリなくなっているので、なんというかギャップの面白さや個性的な要素が弱まり、よくある警察小説に感じてしまった気持ちでした。 気持ち悪いのが苦手な読者もいますし、今作ぐらいの表現ならTVドラマ向けだなと感じたりと思うところですが、個人的には何か物足りなさを感じました。 とはいえ、虫の捜査や登場キャラの楽しさは安定なので次作も期待です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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相変わらず伊坂幸太郎作品らしいと感じる、ちょっと外れた登場人物達。そして音楽に絡んだキザなセリフや軽妙なテンポは読んでいて楽しかったです。小説ならではと感じます。
個人的に苦手な、著者作品に入り込む悪意の模様については、本作の世界が殺し屋達の物語なので、そういうものだと嫌な気持ちにならずに読めたのが良かったです。 ザ・一般人代表といった鈴木の巻き込まれ型作品で、様々な殺し屋達の視点と共に物語が進み、どこに着地するのかわからない楽しさがありました。 が、一方、読み終わってみると、何も解決していないような、何かが心にグッと残るでもなく、一時の夢のように通り過ぎてしまった不思議な余韻を感じました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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久々に強烈なの来た!面白い。と思ったら、世間の評判がよろしくなくて温度差を感じた1冊(汗)
壊れっぷりが凄く良くて、刺激や毒のある構成が好みでした。 世の中、期待するものと内容の差が激しくてがっかりしている印象なので、どんな本なのか少しガイドします。 ネタバレを避けると要点は下記2つ。 ・超コテコテな孤島のミステリが舞台 ・事件シーンはスプラッター色が強い(グロい) あらすじにある『本格ミステリ』に期待してやってくるものを強烈な刺激で返り討ちにする作品です。 著者の本は本書が初めてなのですが、作品傾向でグロさが1つのウリでもある模様なので、そこが苦手な人は嫌な気持ちになる事でしょう。 グロいのも刺激、そして緊張感の中でミステリがあるなら好みかも。という人にはアリかもしれません。 本書で特徴的な演出の1つは『透明標本』。ネットで物を見てなんとも言えない気持ち。 骨格を染色した標本で、その神秘的というか背徳的な芸術を感じます。 その透明標本の博物館がある孤島が舞台。 見学会に集まった男女9名。 迎えのボートは明日の朝。 閉じ込められた孤島の屋敷内で、首だけ発見された殺人事件が発生する。 誰がどうやって?胴体はどこ?疑心暗鬼にかられる中、偶然メンバーの中に名探偵がいる事がわかり、事件の捜査を名探偵に"させる"。 うん。させるんです。人間臭さや人の醜い所を描きます。「名探偵解いてよ。」と人任せな流れ。後々効いてきます。 館の雰囲気も新鮮。透明標本に覆われ、室内は赤く染めれられている。 この不気味な空気感がとても読みやすく感じるので、嫌なんだけどなんか不思議な雰囲気を描くのは著者の持ち味なのかもしれません。 どういう展開になるのかはネタバレなので言えませんが、 冒頭に書いた通り、本格ミステリを期待した人をホラー色で蹴散らす狂騒っぷり。 でもちゃんと伏線があり、ミステリとして筋が通る話なので、面白く楽しめました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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これは圧巻の作品でした。
なんというか、読む前の先入観と読後の印象は大分違いますね。 単純にあらすじからの印象での『ホラー』では括れないですし、SFでもミステリでもアリです。 ファンタジー過ぎた『新世界より』は好みに合わずでしたが、『クリムゾンの迷宮』『黒い家』は好みなので、現実からホンの少しずれたリアルな世界での気持ち悪さは自分と相性が良いです。 『新世界より』は、こういう作品が存在した後で生まれた作品なので、別系統のファンタジー色が強いものが描かれる事になったのかと改めて感じました。 本作もありえそうなバランスが見事なのと、この舞台を構築している知識量が半端ない。 それが薀蓄だらけの衒学小説にならずに意味を持っているのが本当に凄かった。 作者が参考文献を載せなかったのは、本書の密度を担う為の文献数が多いのと、先入観を読者に与えない拘りだと思いました。 優れた作品に出会うと、凄いとしか言えず感想が書けない。本作はそんな作品の1つでした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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これは好きな部類。90年代の新本格系のミステリを感じました。細かい矛盾は気にせず、閉ざされた空間で、探偵がいて、密室トリック、消失トリックなどの犯罪が行なわれて誰が犯人?という作品が好きなら当たります。この手のコテコテ作品が今の世は減ったので嬉しいです。
ゲームダンガンロンパのスピンオフ作品ですが、ダンガンロンパ自体は知らないでも問題ないです。 ただ前作を読んでないと、登場人物や犯罪者・探偵図書館などの設定が分かり辛い為、前作は読んだ方がよいです。 予め読者へ通知される本事件の主の題材は、『密室トリック』『消失トリック』『現金10億円』。 閉ざされたホテルに集められた10名にそれぞれ1億円づつ配布。 夕方にオークションが開催され、一番現金を積んだ者がその日の探偵権を獲得。 夜は各自部屋に待機しなければならず、犯人と探偵権を持つものが自由に行動できる。 犯人は夜に犯行を遂行する。探偵権を持つ者は殺されない。 デスゲーム作品のペナルティなどルールがある特殊設定、探偵権を得るためのオークションの心理戦、従来のミステリの密室・消失トリックなどなど、かなり面白い要素が豊富でした。 そして、それらがバラバラなエンタメ要素ではなく、上手く関連して事件を構成しているのが見事です。個々は見慣れていても使い方の複合技がとても巧妙です。 ゲームをしているのでより一層ですが、霧切の家庭や意外な一面を見せる素顔も魅力的でした。 ミステリ以外にも霧切&五月雨のペア探偵物語としても面白いですし、犯罪被害者救済委員会や探偵図書館の今後の展開も気になります。 続編が楽しみな作品です。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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読後の率直な感想は、バカバカしい(笑)。そして初期のメフィスト賞を思い出すキワモノ。
新しい刺激としては満足。心が広くミステリを読み慣れている人向け。万人に薦められないけど、理解ある人へは薦めてみたくなるそんな作品。だけど理解ある人が分からない(苦笑)読んだ人いますか?と悶々とする作品。 タイトルからネタ本なんだけど読んだ後はネタを突き抜けた巧妙さがうかがえます。 ミステリとコミカルが上手く合わさっており、読んでいて楽しかった。没ネタになりそうなアイディアを世に出したメフィスト賞にも拍手。新たな刺激に出会えました。 当初は、あんまり気にしていなかった本なのですが、タイトルの特殊性からネットでの話題が目に入る。ネタバレされる前に読んでおこうと思って手に取りました。何も知らずに読めて良かったです。 冒頭に読者への挑戦があり、ちゃんとミステリが読みたい!って人向けに、孤島のクローズド・サークルを用意して密室殺人事件も起きる。 ミステリの中に1発ネタを盛り込んだ奇作ですね。 読み返すと、あれもこれもとネタが巧妙で素晴らしく感じます。 ネタとミステリがちゃんと関連しているのが見事でとても楽しい作品でした。 なんとなく「かまいたちの夜」の裏シナリオのような登場人物達のコミカル+ミステリは個人的にツボです。 好みが非常に分かれると思う作品。 ネットやAmazon書評などネタバレが増えてきているので、ネタ本も楽しめる方は調べず読書が良いと思います。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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ゲーム『ダンガンロンパ』のスピンオフ作品ですが、ゲームは知らないでも問題ない独立作品です。というか、ゲームでの要素はまったくありません。では、キャラモノ作品かと思いきや、そうでもなく、"ダンガンロンパ"や"霧切響子"の名称を借りたほぼオリジナル作品と言った感じで、ちゃんとしたミステリとして読めます。キャラクター要素が強いゲームと作家の組み合わせは結構良いと思いました。
まず、舞台設定が面白いです。 『犯罪被害者救済委員会』なる謎の組織が、何らかの事件の被害者に対して復讐をコンサル・サポートする。サポート内容は復讐する場所の提供、出所の分らない凶器やトリック、金銭の提供である。 また舞台には探偵が呼ばれ、犯人は探偵に真相を見破られず、見事切り抜ければ復讐と新たな人生の獲得。探偵に真相が見破られれば、最悪を代償として受ける事になる。ここら辺はデスゲーム系のノリを感じます。 読者には予め、『黒の挑戦』という名目で事件に何が提供されているのかわかるのが面白い。 最初に、天文台を舞台にしたバラバラ殺人と提示されます。誰がどんな方法で事件を起こしたか推理をする楽しみもありました。 トリックが仕掛けられる金田一少年やデスゲーム系の作品が好きなので、個人的には当たり。 ミステリとしてもキャラ小説としても、さらっとした軽い小説で、物語の舞台の紹介が主に置かれた印象ですが、今後も期待できるシリーズとして楽しみになる作品でした。 |
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なんというか盛りだくさんな物語でした。投げかけているテーマは社会派とも感じられますし、ミステリとしては異常犯罪の犯人の行動に驚かされたり、学園小説・児童文学的にはマドカとサファイアの物語を楽しむと言った具合。
あらすじにファンタジーとありますが、主人公の女子高生マドカと出会ったお化けのサファイア(あだ名)の存在がファンタジーなだけで、中身は現実的なお話です。 著者の読書本はこれで3冊目ですが、現実世界に不思議な設定をほんのちょこっと入れた絶妙な味があります。 街に存在する異常犯罪者のコードネーム『ドッグキラー』『インベイジョン』『ラフレシア』『グレイマン』と言った名前付けが能力が分からないボスを攻略していくようで興味が沸きます。『ドッグキラー』は文字通り盲導犬を次々と殺す犯罪者。その後の犯罪者も名前からどんな異常犯罪が街で行われているのか?それを知った時のヤバいモノに関わってしまったと感じる所が見事です。 『インベンション』の舞台背景や伏線、犯罪内容には唸りました。その後の『ラフレシア』についても舞台背景に驚きます。物語が進むごとに犯罪も凶悪になり、1話ごとに舞台背景や解決を通じて弱者のメッセージを感じたり、ボスの攻略と共に主人公とサファイアの関係が深まり成長していく。そんなゲームのような気分を受けました。 不思議な面白さでした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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読後、ついに念願の作品を完成させたんだな……。と感慨深くなりました。
物語の面白さについては正直好みとは違うのですが、歴史に刻まれる仕掛けの1つを作品に残した点で評価です。 著者言葉にある、 『すべての文章、いや、すべての言葉が伏線になっているミステリー』 このコンセプトを実現させる為にどんな方法をどう表現して物語に組み込んだらよいのか。その1つの解答が本書です。 作者初めての方の場合は、読んでもさっぱりかもしれないので、 導入のしやすさ、わかり易さという点で『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』を手に取ると良いと思います。 私は著者の作品は『三崎黒鳥館白鳥館連続密室殺人』から入った口ですが、その作品以前である5年以上前から、幾度となく作者の言葉で、作中すべてが伏線になっているミステリーが理想でそれを作りたい。という想いを読んできました。著者の写真や、参考文献まで伏線にした病的な作品も生まれていますが、『本』である事自体が絶対的な要素。電子書籍では表現できない、本と言う作品を作るという事の想いはとても感銘を受けたものです。 本書で使われている題材と仕掛けの選び方は見事に調和されていますし、過去作の『五色沼』『不可能楽園』では仕掛けを施す為に読み辛くなってしまった点が、本書では改善され質も上がっています。 ついに完成したんだな……と、感動しました。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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『死神の精度』の続編で本作は長編。
率直な感想としては好みではない。前作が好きだっただけに期待値が上がってしまいました。 まず、自分が気に入っていた死神像の千葉は短編で活きているんだと気づきました。普通の人間と感性が違い、一般人とはちぐはぐなになってしまう会話も短編毎で初対面の人物同士のやりとりではクスっとくるのですが、長編で同じ人物とずっと続けていると、この人たち大丈夫か?となります。作中でも苦労してそうで、千葉さんは不思議な人だ。と、割り切ってまとめている様子が感じられました。 物語はどうかと言うと、作者の他の作品でも感じる『悪意に満ちたキャラクター』が登場するのですが、それが強調されすぎています。悪意のキャラはサイコパ スであり、主人公の娘を殺した後日からのストーリー。主人公達はこのサイコパスへの復讐劇の話でして、悪意でドロドロしていて重く、千葉が登場する死神のシリーズとは別でやってほしかったと言うのが正直な感想です。 話を和らげようとする千葉のコミカルさはなんか苦しかったり。結末もなんだかしっくりきませんでした。 死神として関わる生と死を考えるような題材は本作は弱く、千葉のユニークなキャラクターを使ったという、望んでいたシリーズとは別物の印象でした。 ▼以下、ネタバレ感想 |
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本書は単品作品としては楽しめず、1作目『リライト』2作目『リビジョン』を読んでいて、なおかつ設定を事細かく把握していないと楽しむ事ができません。
1作目『リライト』のタイムパラドックスにおける不可思議さ、理不尽さ、なんだかわからない様子も想像で楽しめる良さが利点となっていたのですが、2作目、3作目と順を追うごとに蛇足というか前作の解説本になってしまっている感じが好みに合わずでした。 前作までの設定をちゃんと把握していないと、実はこうだったと驚きの真相を言われてもちんぷんかんぷんで、楽しむ為の敷居が高いと感じます。 個人的には1作目『リライト』単品だけでシリーズは完結している事にします。 |
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警察官になる前の、警察学校が舞台の連作短編集。どんな思いで警察官になろうとするかは人それぞれだと思いますが、本書に登場する人物達やエピソードが陰湿で暗い。相手を利用したり騙したり陰口やらで足を引っ張り合う。仕舞には退学や傷を負ったりとする訳で、厳しい所なのは伝わりましたが、これから警察官になろうとする人たちが舞台の警察学校において本書の内容はいかがなものかと思いました。
新しい警察小説としてPRされてますが、警察学校の舞台と内容の組み合わせが今までやらなかっただけで、 囚人達が更生して行く舞台の方が合っているような複雑な心境になりました。 ただ、感情的な好みの点はおいておいて、 警察学校の舞台を活用した、職務質問の実習内容や、拳銃の考え、書類、日誌などの制度を元にした物語の作りは良かったです。 他のミステリに登場する警察官達も、こういった警察学校を卒業していると思うと違う見方に変わります。 他の本の話になりますが、ミステリでスパイ養成学校を舞台にした柳広司『ジョーカー・ゲーム』と言う作品があるのですが、こちらは一種ファンタジーのような無関係な舞台のスパイの場を使う事で、場の疑問は感じさせず、厳しさや頭脳的な要素に専念できました。本書は警察官という現実的な存在を扱った為、仕掛けの面白さ以外に、日本の警察はどうなの?と、違うノイズを感じてしまった事が個人的に好みとは違った次第です。 |
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