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egut さんのレビュー一覧

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レビュー数738

全738件 181~200 10/37ページ

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No.558: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。の感想

戦時中にタイムトラベルしてしまう戦争×恋愛小説。ミステリではありませんでしたがとてもよい作品でした。

中学2年生の女子生徒。思春期・反抗期。学校では不良模様。母親とケンカをして家を飛び出した先で、意図せず戦時中にタイムトラベルしてしまったという流れ。

戦時中を描いた作品で、私が直ぐに思い浮かぶのは『はだしのゲン』『火垂るの墓』という70-90年代の昔から名前が挙がる作品があります。そういう名作と並ぶかは分かりませんが、現代の思春期の子たちに受け入れやすい戦争もの作品としてとても良い内容であり、2000年以降の戦争ものとして名が挙がるような作品に感じました。

思春期の悩みや不安を持った主人公が戦時中にタイムトラベルする様子は現代作品っぽいですし、現代を知っているからこそ、戦時中の不便さ・辛さをよりよく痛感する主人公の心境がとても感じられます。戦時中にタイムトラベルして混乱している時に助けてもらった少し年上の男性への恋心。ただし彼は特攻隊員であったという、その意味を感じる展開など、戦時話と恋愛小説を巧く絡めて描かれており惹きこまれます。

とても読み易く鬱屈する内容ではない為、戦争ものを中高生が触れる1冊としてオススメです。
あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。
No.557: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

老虎残夢の感想

序盤苦労しましたが、読書した結果は面白い物語でした。

江戸川乱歩賞受賞の本作。乱歩賞は社会派の作品が多いので勝手なイメージから最初はコテコテ中国の歴史ものかと思いきや、読み終わってみれば若い世代を狙ったライトな能力もの作品と感じました。
江戸川乱歩賞というより同じ版元の講談社ならメフィスト賞のような印象。ここ数年ミステリ界隈では『特殊設定ミステリ』がもの珍しさから流行っている為、江戸川乱歩賞としても新たな読者を得るべく、その設定を取り入れた本書を採用したのかなという思いを感じました。その為のダブル受賞というのを感じます。

序盤の感想として、武侠小説に馴染みがなかった為か開始30ページで挫折でした。最初の1ページから読み辛い漢字の羅列。非現実的で意味不明の環境や会話。正直読むの迷いました。江戸川乱歩賞受賞だから再度読む事に決め、そもそも武侠小説とはどういう物なのか調べてから本書を読み直す事にした次第です。

同じ思いの人がいましたらコツとしてお知らせですが、わかりやすく説明すると本書は能力ものです。
武侠小説×ミステリとすると難しく感じますが、能力もので、超能力・ファンタジーを扱っていると考えたら理解しやすい作品でした。

私のように武侠小説に慣れていない人の為のお伝えメモとして、出てくる能力の説明を。
・外功(がいこう)という能力は、力・筋肉の物理能力。
・向功(ないこう)という能力は、防御・治療の回復系能力。
・軽功(けいこう)という能力は、体重を軽くする能力。達人になる程、高く飛べたり水面も歩ける。
ちなみにこれらの言葉はwikiにも存在しており中国武術の一般知識でした。

そりゃこういう能力が成り立ったらファンタジーになっちゃうから"ノックスの十戒"も中国人を禁止したくなるわと思い出しました。一方、こういうものだと設定として認識できてしまいえば本書はとても読み易く楽しめます。
能力ものと認識できればアニメやラノベをイメージしてスラスラと描かれているシーンが浮かびました。軽功の優れた能力者は湖の横断は船ではなく歩いて渡ったり、『踏雪無痕』という能力になると足跡を付けずに雪の上を歩ける。向功の達人には毒が効かない。ふむふむ、だんだんとミステリの設定条件になってきた。そんな具合で理解です。

これらは序盤で一応説明されますが、文章ゆえか理解し辛いのが本音。登場人物も見慣れない名前でイメージし辛い。
是非文庫化する時は、簡単な能力表、登場人物表、周辺地図や現場の図を添えると評判がより良くなると思います。手に取って最初の数十ページの印象が難解過ぎます。50ページぐらい読むと雰囲気と会話文主体で読み易くなりました。文章の雰囲気が違うので加筆して調整したのかな。

中盤以降は、限られた個性的な人物達のやりとりがキャラものとして読ませますし、謎の提示やそれぞれの立場からの議論は面白く読めました。ただミステリとして残念なのがファンタジーの能力ものの条件が曖昧な事。何ができて何ができないのか、現実とは異なる能力が存在する世界なので、条件が定まっていないと、実はこんな事ができます・起きていましたと言われても後出しに感じるのです。

"江戸川乱歩賞"として見ると違和感があるのですが、ミステリを気にせず1つの物語としては本書は面白かったです。
『老虎残夢』というタイトルはカッコよく内容に合ってるのが好感です。表紙のイラストもよくて、今までの乱歩賞のイメージを変える作品に位置付けられているんだなと感じました。宣伝方法から新しい読者を得たい気持ちを感じますが、最初の数ページが難解で、試し読みで敬遠されてしまいそうなのが気がかりにも感じました。

1つの物語として完結していますが、紫苑を主人公とした異なる物語をもっと読んでみたいなと思いました。旅物語ならシリーズ化できるぐらい良い設定と魅力ある舞台です。次作があるなら楽しみです。
老虎残夢 (講談社文庫)
桃野雑派老虎残夢 についてのレビュー
No.556:
(4pt)

Ghost ぼくの初恋が消えるまでの感想

表紙のイラストとタイトルに惹かれて購入。

連続殺人事件の被害者となった幼馴染のお姉ちゃん。10歳の主人公の元に幽霊となって現れ、被害者がこれ以上増えないように殺人犯逮捕に向けて行動するという始まり。著者の作品に触れるのは久々です。

幽霊を用いた青春物語。事件やミステリ要素はありますが謎解きを楽しむものではなく、主人公の少年の成長と当時の姿のままのお姉ちゃんの幽霊との淡い物語がメイン。設定からしてどう展開しても万全のハッピーエンドになり辛い状況なので、読んでいて心苦しい。登場人物の雰囲気や物語の起伏についても明るさはなく、良い意味では落ち着いてますが、主人公の理人もまわりの友達も負の感情の雰囲気が立ち込めていて重苦しい読書な為、個人的に苦手でした。

詳しくはネタバレで書きますが、学園青春ミステリとしての負のテーマである"いじめ"を取り入れていますが、その解法の扱いが自己成長というより環境によるものなので、何か得たり感動する点がなかったのが残念でした。
最終章の最後の一文も中途半端。はっきりすればいいのにと思いました。ネタバレで後述。という事で☆6-2(好みに合わない点が多い)気持ちの点数でした。

▼以下、ネタバレ感想
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Ghost ぼくの初恋が消えるまで (星海社FICTIONS)
天祢涼Ghost ぼくの初恋が消えるまで についてのレビュー
No.555:
(8pt)

蒼海館の殺人の感想

『紅蓮館の殺人』に続くシリーズ2作目。1作目は読んでおいた方が良いです。
前作では名探偵の苦悩が描かれ、すっきりしない読書模様でしたが、本作はその逆境からの成長を感じる前向きな展開。その名探偵復活にふさわしいミステリ要素が豊富な館ものの本格ミステリです。

圧巻となるのが幾重にも重なる事件模様。600ページのボリュームの本書ですが数冊分の仕掛けを盛り込み、ロジカルに解き明かす展開には驚かされました。館で起こる連続殺人。所々に海外古典のオマージュを感じ気づけた所は純粋に楽しい。そして巧く現代的に扱われているのが見事で、コテコテの本格ミステリを現代風に楽しめた作品でした。

前作が好みに合わなかった人でも本格ミステリが好きなら本書はとても楽しめる作品です。むしろ1作目を読んでいるなら本作は外せない一作です。おすすめです。

▼以下、ネタバレ感想
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蒼海館の殺人 (講談社タイガ)
阿津川辰海蒼海館の殺人 についてのレビュー
No.554: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

人狼サバイバル 絶望街区! 生存率1%の人狼ゲームの感想

シリーズ3作目。
人狼ルールは、村人2名。占い師1名。狼2名。今回追加された役職は誰が狼か知る事ができる占い師。
昼は無人の街にて指定時間までに目的地にたどり着かなければいけない『集合ゲーム』。夜は今まで通り誰が狼かを投票する『人狼ゲーム』。この2つを合わせたデスゲームが本作の内容となります。

大人が読む分にはちょっと物足りなくて緊迫感は薄いですが、レーベル通りの児童書ミステリとしてはとても良いバランス作品。小学生が読者ターゲットとしてみれば、何をしてもいい無人の街で拾い食いしたり、火を扱ったりする事は、ちょっとイケない事するドキドキ感がありますし、他にはコンパスを手作りしたりと、年齢層に合ったサバイバル展開。子供に読ませても問題ないサバイバル&デスゲーム内容なのが良いです。さらにミステリのように意外性のある仕掛けをいれてくるシリーズで侮れません。疑心暗鬼の攪乱戦と●●ものの仕掛けが見事に決まり、本作も楽しめました。

少しだけ難を言うとサブタイトル『絶望街区 生存率1%』が中身と合っていないと思いました。まったく絶望感はありませんし、生存率を問われる感覚もないです。むしろ無人となった街で小学生の皆がのびのびと冒険を楽しんでいるようにも感じました。

次回作もどんな仕掛けを取り入れてくるのか楽しみです。

▼以下、ネタバレ感想
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人狼サバイバル 絶望街区! 生存率1%の人狼ゲーム (講談社青い鳥文庫)
No.553: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

人狼サバイバル 極限投票! 騎士 vs.人狼ゲームの感想

2作目も読んでこのシリーズはちゃんとしたミステリの部類だと感じました。
児童ミステリの部類ですが、しっかりとしたデスゲームものであり、かつ知能を使った謎解き&犯人(狼)当てのストーリー。

シリーズものなので1作目から読書推奨。
前回の人狼構成は狼vs村人でしたが、本作は騎士が加わります。"人狼"自体を知らなくてもどういう役回りなのかちゃんと1作目から順番に説明されている丁寧な作り。ルールをしっかり読者に把握させたうえでの犯人(狼)当ての事件模様は面白いです。騎士という役回りから誰を守るか、皆どういう疑心暗鬼になるか、登場人物達の思考回路に違和感なく読めるのが意外と素晴らしかったです。
終盤のトリック的な仕掛けについてはもう少し説明があればと思いました。少し納得し辛い内容なのが残念。とはいえ、そういう細かい所が気になるぐらい他は十分に面白いので次巻も楽しみなシリーズです。

▼以下、ネタバレ感想
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人狼サバイバル 極限投票! 騎士 vs.人狼ゲーム (講談社青い鳥文庫)
No.552: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(5pt)

法廷遊戯の感想

作品テーマや物語の構造はとても素晴らしかったです。ただ好みでいうと何とも言えない気持ちになる作品でした。

2020年度のメフィスト賞受賞作。最近のメフィスト賞からイメージする緩さはなく硬派な社会派作品でした。
タイトルから感じる通り法廷ミステリの部類。そして特徴的なのは、事件を主軸に争う法廷ミステリというより、法律自体がメインとなっている作品。法律の紹介、その法律に従い動く者たちの姿が強く印象に残りました。

読書中の正直な気持ちとしては好みではなく楽しめませんでした。
なんというか、事件の報告書を読んでいる気分。登場人物達が曲者で好きになれない為、誰にも感情移入できません。なので俯瞰して物語を眺めますが、事件模様の描き方がエンタメという起伏ある魅せ方というより、淡々と何が起きたのか描かれているような感覚。それでいてミステリとする為に出来事を小出しにしている為、全体像が掴めず物語が良く分からなくて退屈という気持ちでした。

終盤はそれまでに散らばった各エピソードが意味を持って繋がり全体像に驚きます。ただその全体像が見えた時はなんとも言いようのないイヤミスのような嫌な印象でした。本書の紹介帯では『感動、衝撃の傑作ミステリ』とありまして、確かに言葉の意味通り感情が動かされた"感動"となりますが、印象は悪い意味でどんよりさせられました。ミステリとしては巧いです。
これは人により好みが分れるかと思います。

読者に身近な事件を扱い、それによる負の連鎖、冤罪や贖罪を体感する作品としては傑作なので社会派好きにはオススメ……かも。ただ個人的にはちょっと合わない作品でした。
法廷遊戯
五十嵐律人法廷遊戯 についてのレビュー
No.551: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

同姓同名の感想

猟奇殺人犯の名前があなたと同じだったら……?
現代的な問題を内包した社会派のミステリ。

読書前は全員が同姓同名という題材のネタ的な作品かと思っていました。キャラの書き分け小説?ぐらいの印象。
が、読んでみたら速攻で考えを改めます。現実的で起こり得る社会的テーマを持つ考えさせられる作品でした。

未成年による児童殺傷事件。世間を賑わせる事になった猟奇殺人が発生。警察やメディアは未成年事件である事から犯人の名前は非公開。この時点では他人事のように犯人の名前を公開しろ!と世の中が騒ぎ立てます。ここら辺の導入は神戸の事件を思い出させました。当時と違うのは現代のインターネット社会により、SNSによる情報の拡散、特定班、不確かな情報と思い込み、炎上……。という感じで、いざ公開された犯罪者の名前が自分と同じだったという展開。名前が同じである事による悪い方向への運命の転換が描かれていきました。

本書はこの問題をある種のシミュレーションのような感覚で読みました。
どういう被害が発生するのか。SNSによる誹謗中傷の攻撃者やその活動のきっかけとなる情報源、でも実はその情報そのものが思い込みであり真実とは異なる可能性も秘めている。拡散していく分かりやすいステレオタイプの表面と、真相となる裏側の話。ここら辺が現代的な社会的テーマで問題喚起を打ち出しつつ、ミステリとしても楽しめるようになっているのが見事でした。

ちょっと思うのが表紙が地味すぎというかエネルギーがないというか、書店や新刊情報で見てても印象に残っていませんでした。
たまたまネットの感想が流れてきて目に留まって読んだ次第。
現代的な社会派ミステリとしてオススメなのでもうちょっと広まって欲しいなと感じます。良い作品でした。

▼以下、ネタバレ感想
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同姓同名 (幻冬舎文庫)
下村敦史同姓同名 についてのレビュー
No.550: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

元彼の遺言状の感想

カッコいい女性主人公ものとして面白く読めました。
冒頭からエリート弁護士事務所所属の強い女性の思考が全面に出ており、キャラの印象付けとしては十分。
過去に3ヵ月だけ付き合った元彼の奇妙な遺産相続の遺言状から物語は展開します。

『このミステリーがすごい!』大賞作品ではありますが、ミステリというより弁護士のお仕事小説といいますか、 企業を舞台にしたエンターテインメント小説の印象でした。
第一章は主人公のキャラ付け、第二章では弁護士ならではの企業を相手にした戦い方。ここまでは抜群に惹きこまれました。それ以降ももちろん面白い物語であり、事件模様や展開、真相に至るまで綺麗にまとまっており楽しめます。
ミステリっぽくなくお仕事小説に感じるのは、読者の目線と主人公の目線が重なり辛く感じる為です。主人公が強すぎてこの事件の物語を俯瞰して眺めているような、主人公を追っ掛けるような読者目線であり、事件よりも凄い人の背中を見ている読書感。一緒に謎を考える余地がありません。いい意味では力強く勢いがある主人公。読者はそうだったのか!と驚くのではなく、事件の結末を教わったような気分。遺言状の経緯やそれぞれの舞台裏の真相はミステリとして内容十分なので、明かされていく演出や展開が欲しかった所。さらによくなりそうな勿体ない印象でした。

文章は読み易く、一見固くなりそうな弁護士や企業話もコミカルで楽しめました。主人公の魅力が分かりやすいので俳優を引き立てるドラマ向きかも。
続巻があれば読みたいと思います。
【2021年・第19回「このミステリーがすごい! 大賞」大賞受賞作】元彼の遺言状 (宝島社文庫 『このミス』大賞シリーズ)
新川帆立元彼の遺言状 についてのレビュー
No.549: 6人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(10pt)

硝子の塔の殺人の感想

これは傑作。一つの到達点的な作品でした。
"本格ミステリ"と言えば?思いつくシチュエーションや要素がふんだんに盛り込まれています。

クローズドサークルの館を舞台に怪しい面々が集い密室殺人が発生する。
テンプレートのようなコテコテ要素。こういうのが好物な方はもちろん。そんなの今の時代見慣れたよという方へも一筋縄ではいかない展開が待ち受けています。

本書の好みの別れ所として、数々の先人たちの実在する作品名がミステリマニアよろしくの如く挙げられていきます。
綾辻行人の館シリーズが…島田荘司や探偵は御手洗潔がうんぬん…アガサクリスティやエラリークリーンやホームズ…etc...
悪く言えば他作に便乗していたり、衒学的なノイズを感じられる為、この点は少し読んでいて気恥ずかしい印象を受けます。ただ読み終わってからの印象は好感でした。先人たちのミステリを引用し継承して生み出された本作は、数学の証明が解き明かされたような歴史をも感じました。数学の証明は過去に解明された証明の積み重ねにより未解決問題を解き明かします。そのような歴史の受け継がれている様を模しており、ミステリの過去作を用いてここ数十年のミステリの歴史の集大成を感じた次第です。

あと、やはり優れている点は文章の読み易さです。以前から著者の本は読み易い。
ネタバレ無しなのであまりここでは書きませんが、本当にいろんなミステリ要素が盛り込まれています。企画として色んなものを詰め込もうというのは誰でも発想できますが、それらが煩雑にならずに綺麗に作品として混ざり合えているのは本当に凄いと思いました。

斬新やら驚きを求める人にはちょっと期待外れになってしまいます。
そうではない所で本書は凄い事をしています。今の若い世代に対しては新本格ミステリが登場した頃の衝撃を味あわせたい。これを読んでもっとミステリの深みにはまって欲しいという思い。古くからのミステリ読みには懐古的にも楽しめるように要素を豊富に混ぜ込んでおく。そんな意図を感じられた作品でした。
例えば著者は今までライトミステリの方向で読者を掴んでいます。それらの読者が今回の本格ミステリを楽しみ、作中に登場する作品たちに興味がわけばミステリにハマって行くわけです。
綾辻行人の『十角館』を気に入り、作中に出てきたエラリークイーンやカーを読んでみたくなる。そういう読者の未来への影響も取り入れ考えられているのでしょう。既存の作家の方々を巧く巻き込んだ一冊という事も感じられた作品でした。ミステリ界で話題になってしまう事も想像できます。書店にしてもこの本が売れれば他の本も売れる期待値が秘めているので話題になります。読者としても読んだ人同士で、ここの要素はあれだよねと非常に盛り上がるネタが豊富。などなど、気づくたびに作者の意図が感じられ驚かされた次第です。
改めて書きますがこれらの要素がちゃんとまとまって読み易い物語になっている作家の力が本当に凄い。ネタだけなら他作を浮かびますが本作はそのクオリティが本当に良かった。人により内容が好みに合わなかったとしても違和感なくサクサク読んでいる事でしょう。整った構成と文章力がないとできないと感じさせられます。

余談で点数について。
最初は8-9点ぐらいの気持ちであり、本作は万人向けではなく少しマニア向けで、オリジナルや斬新な物語ではなく他作品の影響力や身内ネタをよぎってしまう所が少しモヤモヤしました。特段震えるような驚きがあったわけでもなく、斬新な仕掛けを味わったわけでもないです。ですが著者のミステリが好きな気持ちをとても強く感じる所、読んだ後にじわじわと要素要素が蘇って話題に尽きなくなる豊富な点、これらが忘れられない1冊である事を考えて満点としました。

好みは人それぞれですが、ミステリが好きなら見逃せない一冊です。非常に印象的で満足な作品でした。

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硝子の塔の殺人
知念実希人硝子の塔の殺人 についてのレビュー
No.548: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(4pt)

呪殺島の殺人の感想

設定は面白いのですが、雰囲気作りや言動がそぐわなかったのが残念に感じました。

内容は呪われた孤島を舞台にしたクローズドサークル・館もの。屋敷を舞台に密室殺人から始まる連続殺人が発生。タイトルからしてミステリ読者がターゲットなので、ミステリ好きが好む要素を盛り込んだ作りは好感でした。冒頭にて主人公が目を覚ますと遺体と一緒の密室内にいるシチュエーション。さらに記憶喪失で状況不明。主人公と読者の情報量を合わせ、何が起きているのかという所から始まる物語です。

さて、これらの設定や要素はとても興味が沸きました。ただ残念なのが雰囲気作りと各人の言動です。悪い意味でライトな扱いになっていました。タイトル『呪殺島』にある通り一族が不幸な死を遂げる呪いを扱いますが、おどろおどろしさがなく、そもそも"呪い"を何で扱ってしまったのかと疑問に感じるほど意味がない。ただ単に人が多く死ぬ理由付けでしょうか。
登場する人物達の会話も緊張感がなくライトというよりボケや冗談を聞かされているように感じます。笑い話な感覚での会話であり、真面目さが感じられない。それでいて大事な所は急に固い口調で説明される。
例えるなら映画やドラマで役者のセリフが棒読み過ぎるとシラケますがその感覚に近いです。無理して悲鳴を上げたり推理しているのですかと感じる。特に主人公が大根役者で、言動が軽すぎて作品にまったく没入できませんでした。

所々に好みはあるのですが、残念に感じた読書でした。
呪殺島の殺人 (新潮文庫nex)
萩原麻里呪殺島の殺人 についてのレビュー
No.547: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

探偵くんと鋭い山田さん2 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくるの感想

学園ラブコメミステリ。☆7(+1好み)
版元レーベルの兼ね合いでタイトルと表紙が超ラノベテイストなので、ミステリ読者には敬遠されそうですが中身はちゃんと謎解きしている学園ラブコメミステリです。

シリーズ2作目で変にキャラものや別ジャンルになる事なく、1作目から順当に学園内の日常を舞台にしたミステリをしているのが好感でした。扱われる謎も現代寄りで新鮮。同級生からの相談で、ネット上の知り合い調査やSNSの文脈などを元に人物を推測するというものが扱われます。"学園ミステリ"というジャンルは昔からありますが、時代設定が現代的になっています。

本書は謎解きに重みがあるのではなく、謎解きを軸にそれに関わる同級生や先生たちとの交流を描く青春小説にも感じられました。山田姉妹と主人公の掛け合いも良く、学園内の悩み事を好奇心だけでなく、無下にはできない優しさが感じられるのが良いです。1作目以上に皆との接点が増えていき充実した学校生活を感じられる展開でした。さらに巧いのが3話目に至ってはその学園生活の姿に対比する形での物語が扱われている事。この年代の負のテーマがあり、雰囲気を壊す事なく巧く扱われている事が印象的でした。

前作同様に謎を解く事で人の救済となっている点が大変好み。
キャラクターの明るい雰囲気や会話の流れが優しくポジティブなので読んでいて嫌な気持ちにならないのが良い。作者の性格なのかな。このシリーズは好みで続編希望です。

余談。
本書は去年の発売時期11月ごろに購入しましたが表紙が水着だったので気分的に夏まで寝かせました。読んでみたらリアルな季節は関係なくて物語内が1巻の高校生活新学期から始まり、そのまま時間軸が夏という事でした。イラストは明るく可愛く作品にマッチしていて好み。1作目の表紙はミステリ読みにも伝わるシャーロックでしたが、本書の水着は振り切っていきなり攻めたなと笑えました。

▼以下、ネタバレ感想
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探偵くんと鋭い山田さん2 俺を挟んで両隣の双子姉妹が勝手に推理してくる (MF文庫J)
No.546: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

大聖堂の殺人 ~The Books~の感想

堂シリーズ完結。
メフィスト賞を受賞してデビューした『眼球堂の殺人』は理系の本格ミステリとしてシリーズを期待させるものでした。2,3作目と少しパワーダウンしましたが、4作目『伽藍堂の殺人』からは物語を様変わりし最後に向けて出来る中での物語を作り上げて、ちゃんと完結させたという所は評価です。
毎回の読後感は謎の勿体なさを感じる気持ちで不満が多いのですが、読みたくなる魅力は備わっていました。数学的な話や本格ミステリ、キャラクター達は気になる方々。今回最終回ということで主要な人物達を出してまとめているのは改めて最後なんだなと寂しさを受けました。

ミステリの仕掛けについて思う所として、4作目ごろから本作品は理系の本格ミステリ傾向の中、題材やトリックは数学的な机上の空論であり、実際にそれができるのかという物理的制約が無視されているのが気になりました。面白くて派手ならいいでしょという感覚が見え透いております。物語は数学なのにミステリの解決は論理的ではなく、トリックは物理的なのに現実では実現できない。このちぐはぐが残念な印象を受けました。

本作ではシリーズに出てくる大ボスの数学天皇の藤衛が登場しました。最終回という事で風呂敷を閉じる意味で出てきたのもありますが、なんというかしょぼい幕切れかなと。
このシリーズをリセットさせたいのか、読者に好まれるキャラクターがいなくなってしまっているのが残念。個人的に好むキャラは善知鳥神ぐらいでした。十和田も1-2作目の頃は好きですが、それ以降はちょっとね。

途中で辞めず最後まで読みたくなったシリーズとしての魅力。物語が完結したという所の評価で☆6。
大聖堂の殺人 ~The Books~ (講談社文庫)
周木律大聖堂の殺人 ~The Books~ についてのレビュー
No.545: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~の感想

堂シリーズ6作目。残り1冊で完結の最終巻前。
単体のミステリを楽しむ作品という感覚ではなく、シリーズとしての物語を楽しむ作品でした。
本書はシリーズを順番に読んでいる人向けの作品となります。

本作は過去編。
シリーズ内の重要人物として挙がる沼四郎や藤衛などが会し2名の被害者が出たとされた過去の事件。
鏡で覆われた堂での事件となります。最終回に向けて風呂敷を畳んでいくような印象でした。

ミステリ単体で見ると事件内容は大味なのですが、シリーズ作品として見れば、本シリーズ特有の館ものとしてのお約束や、理系要素を用いた仕掛けが楽しめました。
トリックも物理的や現実的にどうかとか、このシリーズに関してはもう気にしなくなりました。なんか凄い事をしているという雰囲気で押し通しちゃう感じですね。ここまでくればこれはこれでアリかな。

次回最終回。残りの登場人物達がどう動くのか楽しみです。

▼以下、ネタバレ感想
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鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~ (講談社文庫)
周木律鏡面堂の殺人 ~Theory of Relativity~ についてのレビュー
No.544: 2人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(3pt)

絶体絶命ゲーム 1億円争奪サバイバルの感想

児童書ミステリのデスゲームもの。
著者は角川ホラーにてデスゲーム作品を出している人です。同角川からの児童書レーベルでどのようなデスゲームを描くのか期待していた次第。ですが正直な感想としては期待し過ぎだった気持ちでした。

物語は賞金1億円を求めて、それぞれの事情がある者達がデスゲームに参加するというもの。
デスゲームの定番要素となる、集められた男女10名、ゲームのルール、報酬とペナルティのお約束は守らています。が、肝心のゲーム内容が面白くない。理由は行きあたりバッタリで敗者が決まり、知的な感じが全くない為です。結末から考えればルールの存在意義も感じませんでした。

端的に言うと、本書はゲームの駆け引きが描かれていない作品。
プレイヤー同士の頭脳戦がない。不注意で死んだり、相手の影響がなく勝ったりと、ゲームにおけるキャラ同士の接点が弱く戦っている感じがしませんでした。この場合、小学生の読み物として類似ジャンルを例えると、妖怪ものや学校の怪談の部類の本であると感じます。本書はデスゲームの舞台を扱っただけで、キャーキャー怖さを描くだけの本という印象でした。とすると小学生低学年向けなのですが、中身にははっきり死が描かれているので低学年には読ませ辛い。内容とターゲットが少しミスマッチな印象を受けました。

まぁでも版数を重ねて売れているので子供には刺さっている内容なんだなと、気持ちの差を感じる一面を得た次第でした。
絶体絶命ゲーム 1億円争奪サバイバル (角川つばさ文庫)
No.543: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

人狼サバイバル 絶体絶命! 伯爵の人狼ゲームの感想

土砂崩れで避難した洋館を舞台に行われる人狼・デスゲームもの。☆7(+1好み)
毎夜、仲間に化けている人狼を見極め投票をする。見事狼を当てられれば助かるが外せば喰われるという人狼をモチーフにした作品。

児童書ミステリなので子供が読んでも平気。誰が狼なのか疑心暗鬼や謎解きの様子をシンプルに楽しめた作品でした。
ある程度デスゲーム作品や人狼もの作品に触れている場合、捻った考え方を持つと思われるので想像の範囲で真相が見えてしまうかもしれません。ただ本書のレーベルの小中学生をターゲットに考えると巧いバランスで仕掛けてきていると感じます。子供思考での誰が狼なんだと仲間を疑い悩む展開が良かったです。

個人的にデスゲーム作品は好きで、本書は読み易くちゃんと仕掛けがある内容だったのでシリーズを追っかけようと思いました。

▼以下、ネタバレ感想
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人狼サバイバル 絶体絶命! 伯爵の人狼ゲーム (講談社青い鳥文庫)
No.542: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

アンダー・ユア・ベッドの感想

ストーカーが主人公のホラー作品でありますが、ラブストーリーとも思える不思議な体験が得られた作品。

学生時代に出合った女性をふと思い出した主人公。彼女の現在を興信所を使って調べ、家に侵入しつつ盗聴・盗撮などストーカー行為をする日々。ただそこで見知った現在の女性の暮らしはDV夫によって奴隷となっている姿だったという流れ。

最初の数ページは主人公のストーカー行為に気持ち悪さを感じましたが、それ以上にDV夫の異常な暴力の姿に嫌悪感を抱きました。著者の作品の持ち味として凌辱シーンとなる暴力と性描写が描かれますが、本作は単なる小説の娯楽要素ではなく、DV夫の狂人を描き、圧倒的な悪の表現と手が出せない恐怖を植え付ける効果として描かれ読ませます。

よくあるストーカー作品はストーカーをする者が敵位置にいるのですが、本作はどちらかというと応援したくなるようなヒーロー側の立ち位置。不幸なヒロインの女性、それを盗聴・盗撮して見る事しかできない主人公。陰の者の思考や行動がよく表されており、それぞれの登場人物がどうなっていくのか中盤からは先が気になる一気読みでした。

現実的には好む内容ではないのですが、1つの作品として異常者の恋愛作品として楽しめました。
著者作品の傾向で暴力と性描写が多いのでこれらが苦手な人にはオススメできませんが、 その点を踏まえた上で異常な恋愛作品を求める方にはオススメです。

▼以下、ネタバレ感想
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アンダー・ユア・ベッド (角川ホラー文庫)
大石圭アンダー・ユア・ベッド についてのレビュー
No.541: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(7pt)

復讐執行人の感想

タイトルから感じる印象と読後は違うものでしたが、犯罪小説の1つとして巧く整ったと感じる作品で楽しめました。

物語は平凡な家庭が凶悪犯罪に巻き込まれる内容で、生き残った男性被害者の視点と犯罪を行なった加害者の視点が交互に描かれます。著者作品は凶悪犯罪者の視点で暴力やエロの描写が持ち味ですが、本書はさらに被害者の視点を取り入れて復讐という憎悪の立ち上がりを加えました。
ジャンルはホラーやサイコもの。謎解きやミステリを求める人には不向き。ただ毒を食らうと言いますか、犯罪者視点の少し刺激が強いものが読みたくなる時は著者の作品を手に取る次第。

犯罪に巻き込まれる理不尽さ。犯罪を行なう異常心理。世の中どういう繋がりで巻き込まれるか分かりません。些細な1つの切っ掛けが描かれた本作。現実的に起こり得そうなバランスと結末の虚無感は見事でした。

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復讐執行人 (角川ホラー文庫)
大石圭復讐執行人 についてのレビュー
No.540: 1人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(6pt)

予言の島の感想

『初読はミステリ、二度目はホラー』のキャッチフレーズの本書。
2度読みを謳う作品は警戒しつつも手に取ってしまう性分であります。

さて、結果としては宣伝に偽りなく2度読みしたくなる要素を兼ね備えた作品でした。とある意味でミステリからホラーへ変容するのはとても面白い。終盤は見事です。

ただ正直な所、読書中は面白くありませんでした。
率直な理由として非常に読みづらい。文章から情景が浮かばず読んでいて混乱でした。
著者のデビュー作『ぼぎわんが、来る』は読書済み。ホラーとミステリの融合の面白さ、そして雰囲気も然ることながら読み易さが印象的でした。が、本書は同じ作者なのかと疑う程に文章が分らない。今この場に誰がいて何処で何をしているのか混乱が多い読書でした。その為、物語を楽しむ事ができませんでした。
霊能者や番組の参考として宜保愛子や上岡龍太郎など、芸能人の名前を挙げますが知らない人は余計な登場人物名ですし、ファミコンのゲームソフトの「くにおくん」など挙げる必要があるのかわからないノイズが多かったのも気になりました。横溝、京極、三津田…と、作家の名前を挙げて現実感を出す表現も違和感でした。

本書の評価は最後のネタをどう楽しむかに集中するのではないでしょうか。
初読はミステリと言えど、途中の被害者などの事件模様の印象は残らなかったです。
とはいえ最後のネタは面白かったですし、2度読みしたくなるのは間違いないので好みの問題でこの点数で。

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予言の島 (角川ホラー文庫)
澤村伊智予言の島 についてのレビュー
No.539: 3人の方が下記のレビューは「ナイスレビュー!!」と投票しています。
(8pt)

四元館の殺人: 探偵AIのリアル・ディープラーニングの感想

AI探偵シリーズだからこそ可能となる奇想の仕掛けに驚きました。
本格ミステリが大好きな気持ちが伝わる要素やセリフが多く散りばめられており読んでいて楽しい作品でした。☆7+1(好み補正)。

注意点として本作は単体では楽しめないです。
シリーズを順番に読んで作品の性質を把握した上で、著者が仕掛ける普通とは違ったミステリが味わえる作品となります。

シリーズの好みとしては、1作目は好みで2作目が思ったのと違う方向性で敬遠していたのですが、3作目の本書は前作の苦手意識が杞憂に終わり、ミステリのお約束をお約束としてそのまま扱う面白さや、AI探偵&主人公の掛け合いなど読んでいて楽しい作品となりました。

"四元館"という"館もの"作品の中で斬新さを打ち出す仕掛け。AI探偵シリーズという特性だからこそ納得できるバランスが見事でした。どんなにぶっとんでいても、そこに辿り着くまでの事前説明や要素がちゃんと小出しで盛り込んでいる丁寧さを感じます。
真相解明の終盤の展開と演出はかなり巧かったです。

犯罪AIがコーディネートする事件という設定もよく、今後の事件に期待が持てます。
主人公&相以と以相の物語としても今回は面白く楽しめました。次回作も楽しみです。

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四元館の殺人 ―探偵AIのリアル・ディープラーニング (新潮文庫)