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撓田村事件 ―iの遠近法的倒錯
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撓田村事件 ―iの遠近法的倒錯の評価:
書評・レビュー点数毎のグラフです | 平均点3.62pt |
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Amazonサイトに投稿されている書評・レビュー一覧です
※以下のAmazon書評・レビューにはネタバレが含まれる場合があります。
未読の方はご注意ください
全8件 1~8 1/1ページ
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今までに何冊も「横溝正史の遺鉢を継ぐ」と名づけられた作品を期待とともに読んできましたが、どちらかといえば失望することが多かったです。ところがこの小説は、雰囲気や登場人物がかなり横溝作品に近く、そう呼ばれる資格が充分にあると感じました。現代であの雰囲気を再現することはむずかしいのではないかと思っていましたが、これはなかなかのものです。 この小説の舞台ともなる岡山の田舎で起きたおどろおどろしい話といえば、津山三十人殺し事件を題材に取った西村望「丑三の村」や岩井志麻子「夜啼きの森」、また同じく岩井志麻子作でホラー大賞を取った「ぼっけえきょうてえ」などがあります。そのためか、自分の中では岡山の村と言えばなんだかそんなイメージが定着してしまっているのですが、そのような場所を背景にすれば、現代でもここまで雰囲気を出せるものなんだと思いました。(住んでいる人は複雑な気持ちでしょうが(^^;)また、ラストは二転三転のどんでん返しがあり、最後まで気が抜けません。おもしろかったです。 お話は事件が起きる3日前から始まります。その3日間だけで187ページ分も取ってあり、そのあたりは地元の中学生たちの日常がややユーモラスに淡々と描かれていきます。なので最初は「あれ?ミステリだと思って読み出したのだけど、これは?」と??になってしまいました。その後は猟奇的な事件がきっちりいくつも起きるのですが、この小説は甘酸っぱい青春小説としても成り立つのではないかと思います。なかなか自分に自信が持てず、まわりの状況もうまく読めなくて、友達や片思いの相手の間で右往左往する微妙な思春期の頃がうまく描かれています。 それにしても、岡山弁はかなり関西弁に近いのでしょうか?関西人の自分は、ここに描かれている方言をまったく抵抗なく自分の日常の言葉のように読めました。地方色もよく出ていて、なかなか味があると思います。この作者の作品は初めて読んだのですが、思わぬめっけものとなりました。 | ||||
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タイトル通り、読後にはすっきりしない感覚が残りました。ミステリとしての仕掛けや回収はいいと思うんですが、物語としては「え、そんなもん」というくらい、がっかりな落ちでした。オカルトちっくな要素をちりばめておいてからの、イヤに現実感のある展開に少々脱力してしまったんです。二転三転する事実の露見はいかにも本格ミステリといった匂いがするので、そちらを期待して読むのがいいかと思います。 | ||||
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この作者がアーティストMORRIEの曲名をタイトルによく使っているのは解る人には解ること。 この「iの遠近法的倒錯」(オリジナルのタイトルは「愛の遠近法的倒錯」)というのはMORRIEのソロアルバムの2枚目、「ロマンティックな、余りにロマンティックな」に収録されている「破壊しよう」が、CD音源化される以前にライヴ゙で演奏された際の、いわば仮タイトルである。 このマニアックさが、知らない人には解らない秘密なのだと思う。 | ||||
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ミステリーの部分が複雑というほどでもないが面倒くさい。ミステリーをメインにしたのがやや失敗か。ミステリーはおまけ程度にして、それ以外(人物とか)に力を入れた方が良かった。探偵キャラもあと一歩という感じ。岡山弁?は良かった。 | ||||
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学生、特に中学生がメインで登場する作品には、大きく分けると二種類ある。 ひとつは、あの頃は良かった。 また、あの頃に戻りたい、と読者に思わせるものである。 そういう作品は、品行方正というか、道徳観の正しい学生達が多数登場する。 もちろん、一部はそうではない者もいるが。 そして、もうひとつが、あの頃は嫌な時代だった。 あんな時代には戻りたくない、と思わせるものである。 本作は、この後者の部類に属する、実にいやな中学生の生態が描かれている。 まあ、これは作品のテーマ的に必然性があってのことなのだが、あまり良い感じではない。 さて、そういう背景ではあるが、本作は著者には珍しい本格ミステリである。 舞台は岡山の田舎、ということで、いかにもという横溝ワールドの雰囲気満載だ。 ただし、横溝作品よりは、メインで登場するのが中学生たちということで、ずいぶんとジュヴナイルにシフトしている感じである。 しかし、背景となっている人間関係は、まさに横溝ミステリも真っ青のドロドロ状態である。 著者が本作の執筆にあたって、横溝ミステリを十分に意識していたことは明確だし、ある点ではそれがミスディレクションにもなっている。 ただし、探偵役の造形に金田一のイメージがチラチラするのまでは、少々やり過ぎのようである。 本作のキーワードは、多分ネタバレにはならないと思うが、「ニセモノ」である。 実は・・・実は・・・というのが終盤に繰り返される。 まるで、白土「ワタリ」第四部の終盤を見ているようである。 分かりにくいたとえだが、分かる人には分かってもらえるだろう。 本叢書はけっこう力作が多く、まったくの“はずれ”はない。 本作も、伏線の張り方とその回収、そして終盤のロジックなど、ミステリとしての完成度はかなり高い力作である。 しかし、本作に登場する中学生たちに、終盤までほとんど好感が持てないままだったことが、残念である。 確かに、自分のことを振り返ると、そんなこともあった。 しかし、そんなこと“ばっかり”ではなかった。 だから、もう少し好感の持てる描写があったら、もっと評価が高くできたのだが、と思う。 ただし、この好感の持てないところが伏線として機能している。 さまざまな感情の交錯の中に、さりげなく伏線を忍ばせているのだから、何とも評価のしづらい作品である。 読後感がけっして良いとは言えないあたり、著者の持ち味なのだろう。 | ||||
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特に言われてはいないが、この物語、終幕へ向かうその流れの中での二転三転が非常にたくみで、まさにラストシーンまで見逃せない趣向となっている。 ストーリーは、岡山の片田舎で起こる殺人事件。その捜査と解明の中で主人公の少年の周りを流れる人間模様の変化を描くというものだ。 横溝正史を意識しているため、この作者としては珍しく、ハイクライムな場面が皆無に等しい。葬列や彼岸の奴隷のように、いわゆるキレた人間など全く出てこないため、この作者のほかの作品を好んでいる方にとっては少々物足りないかもしれない。 ところが、この作者、他の作品を読んだ方ならわかると思うのだが、完全なまでに美しい伏線の張り方をする。 そこは、ハイクライムノベルではないぶん今作では大いに幅を利かせて打ち出されている。 真相が二転三転し、完全に解明された後に、今まで読んできた中で妙だが、なんとなく思い過ごしてきた瑣末な事柄がすべて意味を持ち始める。私などは、思わずその箇所を探し読み直したほどだった。 また、文章としては全く此れまでの作品同様一気に読ませるリズムのよい文体であるし、クオリティは劣っていない。 この作者の伏線の張り方が好きな方は、読んでみてはいかがだろう。作者のハイクライムでは見られない別の一面をのぞけること請け合いだ。 | ||||
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横溝正史へのオマージュに彩られた衝撃のミステリ大作 ってなってる割には横溝先生に比べると全然 オドロオドロしくもなく変にいろんな男女が 関係を持ってしまったために複雑な事件になってしまった だけに思われました 謎解きをする探偵も金田一耕助を現代風に アレンジするとこんな風になるのかなと?思いましたけど 軽薄で自己満足だけのつまらない人物になっててがっかりです | ||||
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この作家が本格推理を書く。意表を衝くのもいい加減にして欲しいのだが、思えば、この作家から意表を衝くことを取ったらどうなるものか。奇才。鬼才。怪作。そういう表現が似合う男、小川勝己。またもやってくれたのが珍しく本格ミステリー。それも横溝正史を意識しての、ずれまくり小説。 いきなりミステリーに見えない書き出し。映画なら山田洋次あたりが似合う田舎の長閑さ。でも岡山の山に囲まれたへき村。あぜ道や坂道を通う中学生たちの長い長いイントロ。寄り道だらけの中に中学生たちの淡い恋愛関係などを軽いストーリーとして走らせながら、その実、ばら撒かれてゆく伏線の山だとはそのときには気づかず……。 和洋折衷とも言える妖気を副えて、やがて惨たらしい殺人劇が……。多くの人脈が絡み、錯綜した人間関係は、地主の系譜を軸に真贋混交しと、よほど明晰でないとわからなくなってくるのだが、そこは中学生の視点。時折り30年前の未解決事件を抱え込む老刑事の視点を挟みつつ。 玉石混淆と言おうか。真面目なのか、ふざけているのか、作者のお手玉のうちにすっかり心を奪われながらの大作一気読みとなってしまった。どこかふざけた名探偵のアンチヒーローぶりと臭いジョーク。レトロな引き出しも沢山使ってよくぞ仕上げたなと思うまさに本格ニューウェイヴ(新本格ではないでしょう)。 主人公の少年は狂言回しみたいではあったけれど、ラスト、紙芝居を作り続ける少年のシーンはまるで大林信彦のノスタルジィ溢れるモノクロ映画みたいに悲しくシックでじーんと来る。こういう視点がこの大作を成功させている秘訣だなあとつくづく思う。 | ||||
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